スポーツ関連4法案 質疑(アンチドーピング法案、オリパラ・ラグビーW杯特措法案 反対)
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
提案のあった四案のうち、今日は時間にも限りがありますので、スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法案について伺っていきたいと思います。
まず、提案者に伺います。
ドーピング防止活動やドーピング違反した選手らの制裁については、世界アンチ・ドーピング機構、日本アンチ・ドーピング機構の規定に沿ってスポーツ界の中で自主的に進められております。
そうした下で、スポーツ基本法第二十九条においても、ドーピング防止に関する教育や啓発、防止活動の体制整備などを講じており、スポーツにおけるドーピングは許されないという合意はもう既にあると思うのですが、本法案でドーピング違法化の規定を盛り込むとしたのはなぜなのか、お答えください。
衆議院議員(馳浩君)
この法案は、第四条から第七条までに責務規定等を置いてございます。ドーピングの防止を推進する上で一番重要な役割を担うのはスポーツ選手本人であるところ、スポーツ選手の責務の実質は、まさにドーピングを行わないことであると言えます。
そこで、御指摘のとおり、日本国内におきましてもスポーツにおけるドーピングは許されないという合意ができているところでありますが、ドーピング行為の禁止規定を置いて、確認的にドーピングが違法であることを明確化したところであります。
吉良よし子
禁止規定を置いて明確化と、違法行為であることを明確化ということではありますけれども、立法化段階の中ではドーピングに対する刑罰化についても議論がされたと伺っておりますが、ドーピングの違法化明確にするということになれば、ドーピング防止の自主的な取組に対して政治が口を挟むことにつながりかねないのではということもあるということを指摘したいと思います。
また、本法案については、東京オリパラに当たりIOCなどからドーピング防止のための情報の共有などへの協力体制を求められていて、それを法案化しようとするものだとも聞いております。しかし、世界各国では必ずしもこのドーピング防止活動を法制化しているわけではありません。
そこで、この十五条について提案者にまた聞きたいんですけれども、この十五条では、行政機関、日本スポーツ振興センター、日本アンチ・ドーピング機構や世界アンチ・ドーピング機構などとの間で、スポーツにおけるドーピングに関する情報の共有を図ること、さらに、文科大臣は必要があるときに関係行政機関の長に対し資料や情報の提供などを求めることができるとしております。
しかし、現状でも実はこうした情報共有というのは既に行われている、ただ、それは行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律などに基づいて本人の同意を前提にした情報共有だと。それが本法案が成立した後は本人同意を必要としなくなるということだと聞いていますが、それはなぜなのか、お答えください。
衆議院議員(馳浩君)
現行法において、例えば行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第八条第一項及び第二項では、本人の同意なく情報共有を行う場合が限定列挙してございます。
この法案第十五条第二項も、こうした現行法を前提に置いて法令上の定めを設けるものであります。すなわち、第十五条第二項の規定によりまして、法令に基づく場合として本人の同意なく情報の提供を求めることができるようになるものもありますが、提供を受けることができる範囲は、ドーピングの防止というこの法律の目的を達成するために真に必要な範囲での限定的なものとなっております。
なお、同項に基づいて、本人の同意なく情報の提供を求めることができるようになるもの以外にもドーピングの防止のために重要な情報が存在し得ると考えられますが、それらについては、現行法の枠組みにのっとり、本人の同意の範囲内での情報の取得を検討していくべきと考えております。
吉良よし子
個人情報保護法に基づく場合もあると言いつつも、真に必要なものは、限定的にではあるけれども、本人の同意なく共有できるようにするのがこの法案だというお話だったと思うんですけれども、じゃ、限定的というけど具体的には何なのかということは法案には書かれていないと思うんですね。
そこで、法案提案者に再度伺いますけれども、この第十五条に言う情報の共有というのは誰のどのような情報を共有するのか、お答えください。
衆議院議員(馳浩君)
この法案の第十五条第一項では、スポーツにおけるドーピングに関する情報の共有を図ると規定しているところ、この法案第二条第三項では、スポーツにおけるドーピングとは、禁止物質の国際競技大会等出場スポーツ選手に対する使用その他の国際競技大会等出場スポーツ選手の競技に関する能力を不当に向上させると認められる行為、禁止物質の使用等の目的でこれに用いられる薬品その他の物品を所持する行為、ドーピングの検査を妨げる行為その他の国際規約に違反する行為として文科省令で定める行為をいうと定義をしております。
したがって、本法案第十五条に言う情報の共有とは、具体的には、例えば国際競技大会等出場スポーツ選手の禁止物質の使用の情報などを共有することがこれに当たるものと考えております。
なお、本法案第二条第三項に規定のある文科省令については、スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約に基づいて定められることを想定しており、第十五条第一項で共有される情報は、この国際規約に違反する行為に関する情報が基本になるものと考えております。
吉良よし子
国際規約に準ずる中身だというお話だったと思いますけれども、では、法律施行後の担当となる大臣にも伺いたいと思います。
例えば、過去ドーピング違反をした選手や支援者らの入国情報、出国情報、税関の情報などを国やJSC、JADA、競技団体等と共有するということは想定し得るということでよろしいでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 林芳正君)
今回のインテリジェンス共有の仕組みにおきましては、あくまでもドーピング防止活動に必要な情報を共有することが目的でございまして、本法案第十五条第二項に基づきまして、本人の同意なく共有される情報につきましては、先ほどお答えがあったとおり、税関での荷物検査や入管での入国日時などに関する情報が想定されると考えております。
このため、委員御指摘の要配慮個人情報の収集や共有、基本的には想定されないと考えております。
吉良よし子
先の質問にも答えていただいたんですけれども。入国、出国の情報などは想定し得るけれども、私、次で、人種や病歴、犯罪の経歴といった要配慮個人情報も含まれるのかと伺おうと思ったんですけれども、それは一応想定はされないというお話だったと思うんですけれども、ただ、それはやはり全部省令なんですね。国会で議論されないという話になっていると思うんです。
極めて限定的と言いますけれども、やはりそういった非常にプライバシーに関わる個人情報、出入国の情報、税関の情報などが本人同意なく共有されるわけであると。それが国会等での議論を得ることなく、選手や支援者始め国民には知らされることなく、どこかで、どこでというのは、一定、国とかJSC、JADAなどと言われていますけど、それが共有されているかというのは本人には全く分からないまま共有されてしまう。
そういう中では、こうした共有する情報、共有する機関、限定されず無限に広がっていくんじゃないかという懸念がやっぱり湧いてくるわけなんですけれども、その点、提案者、いかがでしょうか。
衆議院議員(馳浩君)
まず、この法案の第十五条に言う情報の共有等については、ドーピング防止活動を推進し、もってスポーツを行う者の心身の健全な発達及びスポーツの発展に寄与するという本法案の目的に必要な範囲に限って行われるものであります。また、この同条第二項におきましても、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときに限って規定しております。
次に、対象となる情報については、スポーツにおけるドーピングに関する情報と定めているところ、スポーツにおけるドーピングについては第二条第三項において明確に定義を置いております。加えて、情報を共有する機関、いわゆるセンター、JADA、WADA等についても第十五条に限定的に列挙されております。
以上のとおり、議員の御懸念のように、共有する情報や機関が無限に広がっていくことのないよう、本法案において措置をしております。
なお、基本方針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとしておりまして、その機会に国会等で御議論いただくことも可能であると考えております。
吉良よし子
国会で議論することも可能であると、極めて限定的だということはおっしゃっているわけですけれども、やはり私、一例としてであっても、出入国情報だとか税関の情報だとか、非常にプライバシーに関わる重要な情報が一定の範囲で共有されてしまうというところには非常に懸念があるわけで、情報の漏えい、目的外使用などを食い止める歯止め、確実な歯止めはどうしても必要だと思うんですけれども、文科大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(林芳正君)
本法案の第十五条第二項におきまして、文部科学大臣が関係行政機関の長に対して協力を求めることができる場合につきまして、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときと歯止めが掛けられているため、御懸念のように、共有できる個人情報の範囲が際限なく広がるというものではなく、あくまでドーピング防止活動の推進に真に必要な場合に限定されるものと考えております。
また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律におきまして、行政機関及びこの職員は、個人情報の保有、利用及び提供に関して様々な制限が課されておりまして、今回のケースにおいてもそれらの制限に何ら変更があるものではないため、既存の仕組みの中で一定の歯止めが掛けられているものと承知をしております。
今後、関係行政機関との情報共有に関する具体的かつ詳細の事項は、基本方針の策定におきまして文部科学大臣が関係行政機関の長と協議しながら定めていくことになると考えておりまして、その際には、既存法の趣旨にのっとって適切に定めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
既存の個人情報保護法によって一定定められているので大丈夫というお話だったと思うんですけれども、ただ、アンチ・ドーピング体制の構築に関わるタスクフォースなどでは、中間報告の中でも、やっぱり行政にかかわらず様々な民間団体も情報を共有する中で、特例的な対応も必要じゃないのかと、そういった指摘もあったと思っておりますし、また、本法第十五条では、やはり、そうはいっても、関係行政機関の長に対し、資料又は情報の提供その他必要な協力と書かれているだけで、限定これでされていると言い切れないとやはり思います。
先ほどの答弁、私が示したものも例示にすぎず、ドーピング防止の目的の下に、非常にプライベートな情報を含め、どのような情報をどの機関が収集していくのか、民間団体であるアンチ・ドーピング機構へ提供するのかも含め、一切が時の文科大臣の裁量に委ねられてしまっているという状況の中では、選手らの個人情報の保護が後回しになってしまうのではないかという懸念は拭い切れませんので、本法案には賛成しかねます。
ドーピングの刑罰化については、スポーツ界の自主的な取組に政治が口を挟むことにもつながりかねませんし、文科省、政府においては、アスリートファースト、基本的人権の制限というのは抑制的であるべきであると、この前提を十分に尊重したドーピング防止活動の推進を今後も進めていくよう強く求めるものです。
また、二〇二〇年東京オリパラ特措法、二〇一九年ラグビーワールドカップ特措法の電波法の特例についてなんですけれども、これは、過去日本で開催されてきた様々な国際競技大会の際には、海外からの放送事業者に対する電波利用料は組織委員会が負担してきていると。にもかかわらず、なぜ今回だけ変更するのかという理由については見当たらないので、これについても反対をします。
また、スポーツ基本法改正案、祝日法改正案については賛成するということを申し上げまして、私の質問を終わります。
以上です。