羽田新ルート中止要求/落下物の危険追及/参院委
要約
日本共産党の吉良よし子議員は4日の参院決算委員会で、羽田空港の国際線増便により東京都心上空を通過する新ルートでの、航空機からの落下物対策について質問しました。
国土交通省によると全国の主要7空港で昨年11月~今年5月、外国航空会社も含む全航空会社等が報告した部品欠落は219件にのぼります。
吉良氏は、5月の熊本での日航機の部品落下事故や、昨年9月に大阪市でオランダ航空機からパネルが落下し乗用車に衝突した事故を紹介。「落下物事故はかなりの頻度で起きている。飛行ルートから離れた場所に落ちることもあり、周辺住民や自治体に重大な被害を及ぼす」と指摘しました。
国交省が今年3月にまとめた落下物対策の強化策について、吉良氏が「落下物ゼロにできるのか」とただしたところ、石井啓一国交相は「ゼロを目指す」と答弁するだけでした。
吉良氏は、同強化策では、事業計画に書けば対策を終えていない航空機でも飛行が可能だとして、「落下物ゼロにはできない」と批判。「住民や自治体が望んでいるのは落下物ゼロだ。ゼロにできないなら、無謀な陸側新飛行ルートはやめるしかない」と主張しました。
議事録
吉良よし子
この羽田空港、国際線増便して都心上空を飛行する新ルート、設定されようとしている問題です。これに関しても、住民の不安や疑問、批判の声が強いです。
先日、私、ルート直下の地域、現地調査しまして、住んでおられる皆さんのお話を聞いてまいりました。品川区のあるマンションで二歳の男の子を育てていらっしゃるという女性は、周りには結婚して子供ができて引っ越してきたママ友も多いと。けれども、新ルートの下で、落下物や騒音、大気汚染など、どの問題を取っても鳥肌が立つ、子育てできる環境ではなくなるんじゃないかと、不安の声を上げていらっしゃいました。
飛行ルートというのは、東京二十三区、都心の住宅や学校、保育園、病院、事業所などが密集する地域の上を飛ぶわけです。品川区の上空では一分二十秒に一機、高度三百メートル以下、超低空飛行することになるわけで、ここで騒音や落下物等の問題は本当に重大だと思うわけですけれども。
ここで国交省に確認します。
昨年十一月から、国際便の就航が多い全国の七空港で内外の航空会社から部品脱落の報告というものを求めているといいますが、その報告された件数、十一月九日から今年五月三十一日まで、直近の合計件数、そのうち外国航空会社のものは幾らか、二件、数字をお答えください。
政府参考人(国土交通省航空局長 蝦名邦晴君)
お答え申し上げます。
昨年十一月九日に航空機の運航に必要な情報を掲載する航空路誌、AIPと申しますが、この改訂を行いまして、国際線が多く就航する七つの空港を離着陸する航空機に、部品欠落、これはいわゆる落下物と違いまして発見されているものではございませんけれども、部品欠落が発生した場合に、外国航空会社を含む全ての航空会社等から報告を求めております。
先月五月三十一日までの報告件数は二百十九件となっておりまして、このうち、外国の航空会社からの報告は二十三件でございます。
吉良よし子
約半年間で二百十九件の部品脱落があったと、外国会社のものは二十三件ということですけれども、国交省は、従来、国内航空会社についての内外の空港で到着後に確認された部品脱落の件数として、八年間で四百五十一件という数字を明らかにしていたんですね。もちろん単純に比較はできない、その集計の数の方法が違うということで単純比較はできないわけですけれども、外国会社含めて約半年で二百十九件というのは本当に大変な数だと思うんです。
これ、本当に頻繁に部品落下というのは起きていて、先日、五月二十四日にも、お配りした資料にありますけれども、熊本で日航機の部品が落下した事故がありました。機体のエンジンを包むケースに亀裂があって落下があったということなんですけれども、空港から七キロメートル離れた医院のガラスが割れたと。少なくとも十数片、十か所に金属片が見付かったという。
また、今年一月には政府専用機からパネルが脱落していたということも明らかになっていますし、昨年九月には大阪市の中心部で、オランダ航空機から約四・三キログラムのパネルが脱落、京阪国道を走行中の自動車に衝突するという事故が起きていると。これ、テレビや新聞などでも繰り返し報道されて、毎日新聞は、その後、この飛行ルートと落下現場というのが水平距離で三キロメートル離れていたことが分かったと報じているわけですが、その資料もお付けしているんですけれども。
いずれにしても、落下物事故というのはかなりの頻度で起きている決して珍しい話ではないし、本当に落ちてくれば重大な被害を及ぼしますし、しかもその落ちる場所というのも、決して飛行ルートの真下とは限らないと。かなり広い地域の住民の方々の命、都市機能に重大な危険をもたらすことになるわけです。
本当に問題だと思うんですけど、ここで伺いますが、オランダ航空機などから落下物の事故を受けて、国交省は、昨年十一月に落下物防止等に係る総合対策推進会議を設置して、会議の報告受けて今年三月末に落下物対策の強化策等を明らかにしておりますが、この対策で落下物ゼロにできると断言できますか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(石井啓一君)
本年三月二十六日に、有識者や実務者等から構成をされます落下物防止等に係る総合対策推進会議におきまして、落下物防止対策基準の策定、落下物防止対策集の活用及び補償等の充実策を主な内容といたします落下物対策の強化策が取りまとめられました。
国土交通省といたしましては、取りまとめられた報告書を踏まえまして落下物対策を充実強化することといたしまして、落下物対策総合パッケージとして公表いたしました。特に未然防止策の徹底の観点から、落下物防止対策基準を今年度早期に策定をいたしまして、今年度中に我が国の本邦航空会社のみならず、日本に乗り入れる外国航空会社にも適用させまして、航空法に基づき提出する事業計画に関連付けることで実効性を担保してまいりたいと考えております。
この対策基準は世界的に類を見ないものでありますことから、基準の策定と並行いたしまして、規制の対象となります外国の航空会社はもちろんのこと、外国航空会社の指導監督を行う外国航空当局等に対しましても、様々な機会やチャンネルを通じて情報提供及び協力要請を行っているところであります。
国土交通省といたしましては、航空機からの落下物に対する懸念や不安の払拭を図るべく、関係法令の改正も含めまして、落下物対策総合パッケージに盛り込まれた対策を着実かつ強力に実施することによりまして、落下物ゼロを目指して最大限取り組んでまいります。
吉良よし子
ゼロを目指すとおっしゃいましたけど、ゼロにできるとはおっしゃっていないんですね。けど、住民の皆さんや自治体からの要望は落下物ゼロなんですよ。オランダ航空機などの事故を受けて、豊島区や新宿区の区長は再発防止の徹底を求める要望を国に出して、新宿区議会でも意見書が採択されているんですけど、これは落下物をなくせと、ゼロにせよというものなんですね。それに応えられていないんじゃないのかと。ゼロを目指すじゃ駄目なんですよ。
先ほど事業計画を今年度中になどとおっしゃっていましたけれども、対策の計画を事業計画に盛り込んだとしても、早期実施と言っている時点で、羽田空港で新たなルートの運用が開始された時点では、対策が取られていない飛行機が飛行することもあり得るんじゃないですか。いかがでしょう、大臣。
政府参考人(蝦名邦晴君)
お答え申し上げます。
落下物防止対策基準の施行をいたしまして、その後、基準が適用される航空会社に対しまして改修等の落下物防止措置の実施を求めるということになります。改修等の措置につきましては、あらかじめ安全上のリスクを評価した上で、交換、修理部品の調達でありますとか整備作業の工程数などを踏まえまして整備計画を策定の上、実施していただくということを想定しておりまして、実施を航空会社に強く指導してまいりたいというふうに思っております。
吉良よし子
いや、強く指導すると言うけれども、ルート変更した後にそれがちゃんとできているかどうかということはお答えにならなかったわけです。計画さえあれば飛ばすことは可能だという御答弁だったと思うんですよ。これじゃ落下物ゼロにはならないですし、対策済みでない航空機が飛んでしまうこともあり得るということなんです。
さらには、このパッケージには落下物による被害への補償や見舞金制度までうたっているわけで、つまりこれは、落下物がある、ゼロにできないということを前提にしたものになっているということなわけですよ。結局、やはり対策するのは当然なんだけれども、ゼロにはできないんです。なのに陸路を飛ばすというのは、本当に無謀だとしか言いようがない。
やはり、住民の皆さんの不安に応えるためにはこのルート変更をやめるしかない、このことを強く申し上げて、私の質問を終わります。