学テ「参加強制権ない」/文科相に認めさせる
要約
吉良よし子議員は5月22、24両日の参院文教科学委員会で、政府が提唱する「教員の働き方改革」に対し、「現場の負担になる全国学力テスト(学テ)をやめるべき」だと主張。学テ不参加を決めた市町村教育委員会等に国は参加を強制する権限はないと林芳正文科相に認めさせました。
吉良氏は、都内のある小学校では、朝・昼休み・放課後など日常的に学テ対策が行われていると事例を紹介。自治体独自のテストもあるもとで学テ対策が年間を通して行われ、学テが実施される4月には教科書を開かず直前まで対策に追われる実態を示し、授業の過密化、教員の多忙化に拍車をかけているとして、学テの中止を強く求めました。
また、各自治体で学テ中止を求める声が相次いでいるとし、毎年成績最上位の福井県では県議会が「過度の学力偏重は避けること」などを同県教委に求める意見書を昨年12月に採択したと紹介。「学テは『悉皆(しっかい)調査』(対象を全て調べる調査)というが、自治体が学テに参加しないと判断したら国は強制できないはずだ」とただすと、林氏は「権限はない」と認めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
初めに、この間、理事会等で質問時間厳守とのことが言われておりますので、是非答弁は簡潔にお願いをいたします。
それでは、法案に関わって伺います。
デジタル教科書も活用しながら子供たちの学びを充実していくことは大事なことだと思っております。しかし、その条件整備というのは、午前中の質疑などでもありましたけど、まだまだであります。全国的に進んでいる東京荒川区でさえ、導入が始まった三年前から改善を行っているそうですが、今でも一斉に電源を入れてダウンロードしようとするとフリーズしてしまう、使っている途中でも突然フリーズしてしまって授業が止まってしまうなどということもあると伺いましたし、他の自治体でも同様の声が上がって、使いづらいとも言われていると聞いております。
そういうところでは、学校におけるICT環境整備、早急に改善して、全国どこにいても必要があればデジタル教科書を利用できるように条件を整えることは必要だと思います。地方交付税措置と言いますが、午前中もあったように、自治体によってその環境整備に回らない可能性もあるわけです。だからこそ、自治体任せにするのではなく、文科省として、自治体間、学校間での教育内容の格差を生まないようなあらゆる手だてを尽くすべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 林芳正君)
この地方交付税でございますが、これは自治体の一般財源ということになりますので、文部科学省においては、各自治体において学校ICT環境整備の重要性が十分に認識をされまして適切な整備が進められるように、引き続き働きかけていくということだと考えております。
今回の学習指導要領の改訂では、情報教育に関する内容が充実をされておりまして、学校ICT環境整備に取り組むことが重要な課題となっておりますので、新学習指導要領の趣旨、内容の周知にもしっかり取り組んでまいります。
吉良よし子
地方交付税措置ということですけれども、これも五年間と区切られているわけでございます。タブレットPCなどの機器の更新などもあるわけですし、長期的な支援の方策も検討していただくよう強く求めておきます。
そして、もう一点。この間、先ほどの議論の中でも、今年末をめどにガイドラインを作るというお話もありました。そうした学校現場での活用についてなんですけれども、先ほど来の議論の中では、そうはいっても、その教育効果の検証などもまだやっている最中で、二十九年度から三十年度にかけてその実態の調査研究をして、様々な把握、検証をしていくということですけれども、デジタル教科書の利用については様々な意見があるわけです。
午前中もいろいろありました。その効果があるということがある一方で、子供たちの心身、健康面への影響に対する懸念もあるわけで、そうした年末にできると言われているガイドラインを見た上で実際にどう利用するかどうかなどを検討する自治体や学校もあると思われるわけです。
ついては、このガイドラインが、学校現場や保護者も含めてですけれども、の判断に資するものとなるよう、つまり自主性を阻害しないように配慮することが重要と考えますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(林芳正君)
文部科学省では、平成二十九年度から平成三十年度にかけまして、現在使用されているいわゆるデジタル教科書の使用実態等について調査研究を行っておりまして、その成果も踏まえて、現場の教員、教育委員会関係者、これを含めた有識者による検討の上、法案が成立すれば、今年末を目途にガイドラインを策定することを予定しております。
各学校や教育委員会においては、このガイドラインの内容を踏まえて、それぞれの地域の児童生徒の状況を踏まえつつ、教科、単元等の特性、教職員の体制、学校の施設整備等に応じて、自らの裁量によってデジタル教科書の使用の在り方を適切に判断をしていただくことを想定をしておるところでございます。
吉良よし子
自らの裁量において適切にということでした。
先ほど御紹介した荒川区では、既にこのICT教育におけるタブレットPC活用の成果検証及び今後の方針についてというものをまとめておられます。その中には、タブレットPCの活用を進めるに当たっては、タブレットPCを使うことに邁進する余り、筆記具を用いて実際に手で書くことや、声を出して文章を読むといった活動を軽視することがあってはならないと、タブレットPCの活用については、それが最もふさわしい場面で活用することが大切であると指摘しています。
これは大事な指摘だと思いますが、この最もふさわしい場面の判断というのは、まさに日々教育に当たっている教師や学校現場の判断こそ優先すべきものだと考えます。文科省としてもそこを大事にして、デジタル教材、教科書の利用を進めていってほしいということを重ねて申し上げたいと思います。
その上で、午前の質疑でも、これにより現場の多忙化の促進されることのないようというお話もありましたので、関わって、この教員の働き方改革について前回に引き続き伺いたいと思います。
様々、新たな教育などなどが言われている下で、やはり、ただ押し付けるだけじゃなくて、いや、必要ないものはなくしていくということが必要だと、そういう意味では、今現場に大きな負担を掛けている全国学力テストを、これを中止すべきと私前回求めました。前回は、文科省の方では、競争が激化しないように通知を出したとおっしゃっていましたけれども、その通知が出されて以降も学テによる競争の激化というのは是正されていないという現実があるわけです。それどころか、現場からは、この全国学テに代表される学力偏重、これをやめるべきとの声が出されているというのが実情なんです。
二〇一七年の三月、全国学力テストで毎年最上位となっている福井県、ここで教師から厳しい叱責を受け続けた中二の生徒が自殺するという痛ましい事件が起きました。この事件を受けて福井県議会は意見書を上げたんですね、二〇一七年の十二月十九日。その自殺の背景に何があるかというところで、最長月二百時間を超える超過勤務を始めとした教員の多忙化があるということを指摘、さらに、学テで最上位を目指す、学力日本一を維持するということが教育現場に無言のプレッシャーを与え、教員、生徒双方のストレスの要因になっているとも指摘した上で、過度の学力偏重は避けることなどを県教委に求める意見書を与党自民党も含めて採択をしているわけです。
全国学テがあるがゆえに、最上位を目指す、つまり、学力日本一を維持するという現場へのプレッシャーが掛かっている、それが生徒の自殺にまでつながってしまったという、こういう悲劇だと思うんですけど、この指摘は重大だと思うわけです。こうした自治体から出されている悲鳴に応えて、現場にプレッシャーを掛け続ける、教員の負担となる全国学テ、今こそやめるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(林芳正君)
先日の引き続きのお尋ねでございますが、この全国学力・学習状況調査は、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握いたしまして、分析を行って、教育施策及び教育指導の成果と課題の検証やその改善に役立てることを目的として実施をしておるところでございます。
各学校においては、児童生徒一人一人への教育指導や学習状況の改善等に役立てることを目的として、通常の授業時数の中で実施するものでございまして、学校にとって過度な負担になっているという認識はしておりませんけれども、他方で、各学校の負担をできる限り軽減する観点から、調査実施方法の見直し等に努めているところでございます。
本調査の結果を踏まえて、教育施策、教育指導の改善充実を図ることは重要であり、文科省としては、本調査を引き続き実施することで、児童生徒の学力向上を図ってまいりたいと考えております。
吉良よし子
実施方法の見直し等を含めとおっしゃいましたけど、でもやめるとはおっしゃらないと。一人一人の学習指導に役立てるための学テだとおっしゃいますけれども、先日お示ししたとおり、現場では一人一人に向き合うどころか、その学テの対策に次ぐ対策でもう疲弊しているというのが現状なわけです。やはり、ここにメスを入れていかないと働き方改革にはならない、負担軽減にはならないということを強く申し上げたいと思うんです。
ただ、国は残念ながら今のところやめないとおっしゃっているわけですけれども、自治体の判断で全国学テを受けないということはあると思うんです。全国学テというのは悉皆調査と言われていますけれども、あくまでもこれは、法文上ではできる規定になっていると。つまり、各自治体や学校が全国学テに参加しない、受けないと判断した場合、それについて国が無理やり強制する、そういうことはできないということでよろしいですね。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(林芳正君)
全国学力・学習状況調査は、全国的な学力や学習状況を把握、分析することを通じまして、教育施策の改善に役立てること、学校における教育指導の充実や学習指導の改善等に資すること等を目的として、国が実施主体となりまして全国の教育委員会等の合意と協力によって実施をしております。
調査への参加は学校の設置管理者である市町村の教育委員会等の判断でございますが、不参加の自治体については、域内の児童生徒が必要な学力を身に付けているか、全国や県内の状況と比べてどうか、学習状況や生活習慣等含めどこに課題があるか等について、把握、分析をし、施策や指導の改善を図る契機を失うこととなるものと我々としては考えておりますので、引き続き本調査の目的、内容等への理解が得られるように努めてまいりたいと思っております。
吉良よし子
お答えになっていないと思うんですね。
不参加すると判断した場合に強制はできませんよね。この点について簡潔にお答えいただければと思います。
国務大臣(林芳正君)
先ほど申し上げましたように、調査への参加は学校の設置管理者である市町村教育委員会等の判断でございますので、強制という権限は我々持っておらないということでございます。
吉良よし子
強制という権限を持っていないということなんですよ。実際そうなんですね。
国公立の小中学校については後日実施も含めれば一〇〇%実施ですけれども、私立の場合は小学校でも中学校でも半数程度受けていない学校がいるわけです。公立であっても、犬山市教育委員会などでは全国学テに参加しないと判断していたこともありました、かつて。そういう意味では、前例もありますから、悉皆といっても強制でないということなんです。と同時に、この間、自治体によっては、現場の負担軽減という角度で自治体独自の学力テストをやめる、そういう方向性を打ち出してきているところもあるわけでございます。
時間がありませんので、こちらで数字紹介しますけれども、平成二十九年度の学テ実施予定というものの中で、自治体独自の学テを実施しない又は廃止すると言っている自治体、この数は、十一道府県三政令市がやめると言っているんです。広島県など様々なところでそういう動きがあると。その中で言っている理由の中に、教員の負担軽減ということを言っているわけです。
大臣に伺いたいと思うんですけれども、自治体が負担軽減、業務削減の一環として自分たちが行っている、これは自分たちの自治体での独自の学力テスト、これをやめるという判断、それをするのは当然のことだと思います。否定できないと思いますが、いかがですか。
国務大臣(林芳正君)
この地方自治体の独自の学力調査は、教育指導の改善、充実に向けた検証改善サイクルを確立すること等を目的として、国との役割分担の中で、それぞれの教育課題や教育施策に応じて各教育委員会の主体的な判断の下で実施されているものと認識しております。
吉良よし子
主体的な判断でということですけど、やめるということはもちろんあり得るということですよね、大臣、自治体のテスト。
国務大臣(林芳正君)
主体的な判断でございますので、委員から御紹介いただいたようにやめているところも実際にあるということでございます。
吉良よし子
自治体独自のテストは自治体の判断で業務負担削減のためにやめるという判断ができるし、実際そういう動きもあるわけです。そして、全国学テも強制はできないということが確認されたわけです。
ただ、先ほど大臣が言っていたように、幾ら自治体の判断だといっても、やはり国が悉皆調査だとか様々な把握、分析が必要だとか、そういうふうに言っている以上、やはり自治体がそこから抜けるという判断をするのは大変な実態もあると思うわけですよ。やはり、全国学テがある限り、過度な競争、負担はなくならないし、自治体独自のテストというのもなくせない、いい点数取りたいというそういう方向に行ってしまいがちになると。だから、やっぱりそういうところで見直さなきゃいけないと思うんです。
先ほど来、学テやるというのは現場の学習指導の改善だということもありました。学力向上ということもありました。ある現場の先生がおっしゃっていました。学力向上と言うなら、私に授業準備、子供と向き合う時間を下さい、そうしたら必ず学力アップできますからと。やはり、学テじゃなくて、そういう時間を下さいというのが現場の声なんです。そういう声に向き合ってこその働き方改革だ、そういうことを強く求めて、質問を終わります。