暴走政治と対決、国民の暮らし守る/ハラスメントの一掃へ/実効性ある法整備こそ
要約
吉良よし子議員は21日の参院決算委員会で、職場でのハラスメント問題を取り上げ、社会からあらゆるハラスメントを一掃するための実効性ある法整備を求めました。
吉良氏は、2006年にセクハラ防止対策の措置が義務化されながらいまだセクハラ被害はなくならず、労働政策研究・研修機構が行ったセクハラ対応についての調査では「労働局に相談した」0・9%に対し、「がまんした、特に何もしなかった」が63・4%にも上っているとし、「多くの被害者が泣き寝入りし、沈黙せざるをえないのが現実だ」と指摘。「人生を壊すセクハラは起こしてはならない」と述べ、企業でのセクハラ対策の徹底だけではなく、法にセクハラ禁止を明記せよと迫りました。
加藤勝信厚労相は、措置義務の周知徹底を図ると述べましたが、禁止規定については「慎重に議論する」と答えました。
吉良氏は、パワハラを防止する法律が日本にないことも批判。国際労働機関(ILO)総会では、職場のハラスメント防止が議題となって国際基準づくりが進められているとして、「最低でも法制化を」と求めました。加藤氏は「パワハラ対策を前に進める」と答弁。法制化も含め議論を進める方向性を示しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
私は、この間、ブラック企業の問題について取り上げてまいりました。まるで何かの部品か消費財のように労働者を長時間働かせてその尊厳を踏みにじるブラック企業、職場での人権侵害というのはもう絶対に見過ごすわけにはまいりません。そこで、今日は職場でのハラスメントの問題について取り上げたいと思います。
まず、厚労大臣に伺います。
現在、セクハラ、パワハラ、マタハラなどの様々なハラスメントがあらゆる職場で横行している事態が起きていると。これら職場におけるありとあらゆるハラスメントというのは、全ての職場からなくすべき、絶対にあってはならないという立場でよろしいでしょうか。
国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君)
セクシュアルハラスメント、また妊娠、出産等に関するハラスメントなど職場におけるハラスメント、これは働く方の尊厳、また人格を傷つけるものであり、また職場環境を悪化させる、あってはならないものというふうに認識をしております。
吉良よし子
あってはならないという御答弁でした。
けれども、そのあってはならないはずのハラスメントが、残念ながら国の中枢で起きておりました。財務省の福田前財務事務次官のセクハラ問題ですね。しかも、起きただけではなくて、それに対する財務省の対応、又は麻生財務大臣のセクハラ罪という罪はないなどの発言が被害女性らを更に傷つけ、セクハラ問題の重大性を理解していないのではないかと、国民からの大きな怒りの声が上がっております。
こういう中で、財務省は、五月九日に初めて幹部職員を対象としたセクハラの研修会を行ったといいます。二〇〇六年にセクハラ防止対策の措置が義務化されてから十二年、人事院規則にもセクハラ防止対策としての研修の実施、盛り込まれているにもかかわらず、この幹部職員の対象の研修が財務省では初めてだったと。私、驚きなんですけれども。
ここで、人事院に確認したいと思います。
財務省だけではなく、そのほかの府省庁、各府省庁でセクハラの研修会というのはちゃんと適切に実施されているのか。誰を対象とし、どのくらいの頻度で実施されているのか把握しているのかどうか、その状況をお答えいただきたい。
政府参考人(人事院事務総局職員福祉局長 合田秀樹君)
お答え申し上げます。
人事院規則一〇—一〇、セクシュアル・ハラスメントの防止等第四条では、各省各庁の長の責務といたしまして、職員がその能率を十分に発揮できるような勤務環境を確保するため、セクシュアルハラスメントの防止及び排除に関し必要な措置を講じるとともに、セクシュアルハラスメントに起因する問題が生じた場合には、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないと規定しております。
研修に関しましては、この規則の第七条で、各省各庁の長は、セクシュアルハラスメントの防止等を図るため、職員に対し必要な研修等を実施しなければならないと定めておりまして、同規則では、具体的には、各省各庁の長は、新たに職員となった者に対し、セクシュアルハラスメントに関する基本的な事項について理解させるため、及び新たに監督者となった職員に対し、セクシュアルハラスメントの防止等に関しその求められる役割について理解させるために、研修を実施すると規定しております。
現在、これに基づきまして各省各庁でセクシュアルハラスメントの防止に関する研修を実施しているところでございまして、人事院の方におきまして各府省における研修の詳細については把握していないところでございますが、今後、この規則に基づきまして、各府省で取られている施策の状況についてしっかり把握してまいりたいということでございます。
吉良よし子
長々答えられましたけど、把握していないということなんですよ。これ、大問題だと思うんですね。こんなだから、やはり財務省のような中枢でセクハラ問題が起きてしまうんじゃないのかと。
やはり人事院、先ほど御紹介された規則の中でも、各省各庁の長がその防止対策、ちゃんとやっているかどうか指導、助言に当たらなければならないとあるわけですから、把握していくと言いましたけど、もう今すぐにでもちゃんと把握するべきではないですか。お答えください。
政府参考人(合田秀樹君)
先ほどお答えいたしましたように、各府省におけますセクハラ防止対策について、その状況を把握してまいりたいと思いまして、早速に進めてまいりたいと思います。
吉良よし子
早速にということでしたので、是非進めていただきたいと思います。
〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
問題は、国、府省庁だけではないと。民間企業を含む様々な職場においてもいまだにセクハラがなくなっていないわけです。
お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、雇用環境・均等部への相談件数です。平成二十七年度九千五百八十件、二十八年度は七千五百二十六件。ちなみに、二十八年度というのは算定方法が変わったので少し減ったように見えているわけですけど、単純には比較できないということで、いずれにしても、措置義務とされて十年以上たってもセクハラの相談件数というのは減ってはいないし、一定数の被害が生まれているということです。
しかも、この相談件数だけでその被害状況というのを測れないというのが現状で、資料二の方を御覧いただきたいんですけれども、この独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によりますと、労働局等に相談した方というのはセクハラを受けた方のうちたったの〇・九%、一方、我慢した、特に何もしなかった方は六三・四%にもなる。多くの被害者は、この問題言い出すこともできず、泣き寝入りして沈黙せざるを得ないような状況になっているのが現実。これを私、何とかしなくてはならないと思うわけです。
ちなみに、厚労省では事業者向けのハラスメント対策のパンフ作られていると。その中にも書いてあるんです。ハラスメント対策は制度をつくっただけで完成するものではない、対策を充実させる努力が必要だと、そういうことを書いてあるわけですけど、適切な対応や体制の整備、各職場でちゃんとできているのか、それ、どう把握されているのでしょうか。
平成二十八年度の実態把握の状況、実態把握した事業所数、そのうちセクハラについての是正指導件数の状況を端的にお答えください。
政府参考人(厚生労働省雇用環境・均等局長 宮川晃君)
お答えいたします。
平成二十八年度に、男女雇用機会均等法に基づく報告徴収により雇用管理の実態把握を行った七千二百五十七事業所のうち、何らかの法違反が確認されたものが五千七百八十七事業所ございました。
セクシュアルハラスメント防止措置義務第十一条違反に対する男女雇用機会均等法の是正指導の手法として助言、指導等がございますが、その是正指導として助言した件数は三千八百六十件でございます。
吉良よし子
七千二百五十七事業所の報告を受けて、その中で三千八百六十件是正指導した。決して少なくないし、むしろ多いと。大体、措置義務になってからもう十年以上たっていてもこれだけの措置義務違反が出てきている。とてもじゃないけど、措置義務が徹底されているとは言えない状況じゃないかと私は思うんですけれども、こうした適切な対応、体制の整備の徹底、今こそ本腰入れてやっていくべきでないかと思いますが、厚労大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君)
今お話がありましたように、男女雇用機会均等法では、事業主に対して、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のため、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備等、雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けているわけであります。
これ、実際どういう状況になっているのかということの調査でありますが、常時雇用する労働者が千人以上規模の企業ではほぼ一〇〇%がセクシュアルハラスメント防止のための対策に取り組んでいる、中小企業では十人以上の企業で全て見ると五八・二%にとどまっているということでありますので、私どもとしては、こうした対策の必要性について事業主の理解を深め、実効ある対策が講じられるよう均等法や指針の周知徹底を図っていく、そして、実際対策が講じられていない企業、また適切に対応されていない企業に対しては、報告の徴収、助言、指導、監督、これらのことによって男女雇用機会均等法の履行の確保、これにしっかりと取り組んでいきたいと思います。
吉良よし子
実効ある対策をと、そのために取り組んでいくという御答弁でした。
本当にこれ、徹底的に私、やっていただきたいと思うんです。というのは、この措置義務というのは、単純に何か起きたときの相談できる体制を整えるだけじゃなくて、やっぱりセクハラ起こさないための措置だとも思うからです。
セクハラというのは、一回起きると本当に被害者に重大なダメージを与えるわけです。場合によっては精神疾患患うこともありますし、加害者と同じ職場にいるのがつらいなどという状況の中で休職や退職を余儀なくされる方は少なくないわけです。さらに、新しい職場に行こうとしても、その当時のことがフラッシュバックするなどで、同じ被害に遭うんじゃないかという不安でその職場にも行けないという事態もある。一回のセクハラで人生が壊れてしまう、そういう重大問題ですし、また、一人の働き手を失ってしまう、経済にとっても大きな損失だと言わざるを得ない。だからこそ、救済するのは当然ですし、やっぱり一度たりとも起こしてはならない問題だと言いたいんです。
そのためには、やはりこの措置義務を徹底することだけではなく、セクハラというのはやってはならないことなんだと徹底的に周知することが必要だと思います。だからこそ、私、提案したいんですけれども、今こそ法律の中にセクハラ行為を禁止すると明示するべきではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君)
今お話のありますように、こうして、あってはならないということを含めて、事業主に対して、あるいは労働者に対して様々な相談していく、あるいは周知を図っていく、こういったことは当然必要だと思います。
その上で、禁止をすべきだという御議論がありました。私どもの、労働法の世界ということでお話をさせていただきたいと思いますが、男女雇用機会均等法は、御承知のように、事業主の雇用管理上の責任を明らかにする性格の法律ということでありますから、同法で職場におけるセクシュアルハラスメントを禁止して罰則を科すということ、また行為者に刑事罰を科すということは、なかなかその性格になじまない。
また、労働法制も、御承知のように、交渉力の弱い労働者を保護するという観点から契約自由の原則を修正するものでありますので、基本的には法律上の責任の主体は事業主とされておりますので、労働者間、あるいは顧客など、労使間、労使以外の者との間で問題になり得るセクシュアルハラスメントを禁止して行為者に刑事罰を科すということはこの労働法制の基本的な枠組みと異なるのではないかというふうに思いますし、また、そうした刑事罰を科すためには構成要件の明確化ということが必要になります。
セクシュアルハラスメントに当たる行為が幅広く今想定をされているわけでありますから、具体的にどういった行為が刑事罰の対象になるかということに関しては十分な議論が必要ではないかというふうに思います。
吉良よし子
私、罰則じゃなくて禁止事項にするべきじゃないかということを申し上げているつもりです。まずは、とにかくハラスメントはどういうもので、禁止、やってはならないことだと法律に明記する、そこから始めるべきではないかと、そういう御提案をしているつもりなんですよ。
セクハラ罪なんてないということを財務大臣おっしゃるわけですけど、そういうふうにして加害者をかばうような発言ができてしまうこの現状を一歩でも変えるために、せめて禁止事項にするべきじゃないかということなんです。いかがですか、大臣。
国務大臣(加藤勝信君)
いずれにしても、均等法や労働法制の性格についてはもう先ほど申し上げましたので同じことを繰り返すつもりはありませんけれども、そうしたセクシュアルハラスメント行為を禁止する法律の在り方については、先ほど申し上げた法制的な課題あるいはセクシュアルハラスメントの実態、これらを踏まえて慎重に議論していく必要があるのではないかと思います。
吉良よし子
慎重にと言いましたけど、是非議論を始めていただきたいと思うんです。
というのは、今、五月二十八日からILOの年次総会が開かれますが、ここでは職場でのハラスメント、これはセクハラもパワハラも含まれています、マタハラも含まれているわけですけど、ハラスメントが議題になっている、国際基準を作ろうという話になっていると。そういう中で、事前の調査の中で、日本は規制のない国というところに分類されてしまっているんですよ。セクハラについては禁止規定すらないと。
さらに、問題はパワハラです。パワハラについても資料を御覧いただきたいんですけれども、三番目。相談件数というのは右肩上がり、平成二十七年度で六万六千五百六十六件、平成二十八年度で七万九百十七件と、どんどん増えていると。このパワハラを防止する法律というのは、今、日本にあるのかどうか、端的に、大臣、お答えください。
国務大臣(加藤勝信君)
職場におけるパワーハラスメントそのものに対する法規制はないということであります。
吉良よし子
ないんですよね。だから、規制のない国なんかに分類されてしまっている。日本はハラスメント後進国とも言われても仕方がないような状況に今なっているわけですよ。
今、このパワーハラスメントについては検討会が行われて、その報告書が三月三十日にまとまり、一定の方向性というのが、五項ぐらいですけど示されたという話です。ただ、検討会の中では、ガイドラインで一定の対応措置を明示するということも含まれていると。ガイドラインでは、私、話にならないと思うわけです。セクハラ防止法だって措置義務になっていても今これだけ被害者がまだ出ているということから考えれば、最低でもパワハラについてはセクハラと同等の措置義務、法律に明記する、そうした法制化が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君)
今お話がありましたように、昨年五月から検討会を開催して、この三月三十日に報告書が取りまとめられ、その報告書では、現状の取組よりも職場におけるパワーハラスメント防止対策を前に進めるべきだという意見で一致をしております。また、現場で労使が対応すべき職場のパワーハラスメントの内容や取り組む事項を明確化するためのものが必要であるということについても異論はなかったものと承知をし、そして具体的な対応において、事業主に対する雇用管理上の措置義務を法制化する対応案を中心に検討を進めることが望ましいという意見、これが多くありました。
しかし、他方で、どのような場合が職場のパワハラの要素を満たすのかの判断が難しい、あるいは、実際、中小企業等の場合には、どういうふうに対応したらいいのか、なかなかよく分からないという点があり、事業主による対応ガイドラインで明示することが望ましいという、今委員が言われた意見があったというのも事実でありますが、私ども厚労省としては、今回の検討会の報告書で示された論点について今後の労働政策審議会の議論に付していきたいと思っておりますが、そのためにも、まずは具体例の収集、分析を行い、その上で労政審の審議に諮っていきたいと、こう思っております。
吉良よし子
前に進めるという御答弁でしたので、是非とも最低でも法制化と、そういう立場で臨んでいただきたいですし、パワハラでもセクハラでもマタハラでも、あらゆるハラスメントを社会からなくしていく実効性のある体制をつくっていただきたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。