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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2018年・第196通常国会

著作権法改定案 参考人質疑

議事録

吉良よし子

日本共産党の吉良よし子です。
 今日は、四人の参考人の皆様、それぞれの立場から貴重な御意見を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。
 では、早速ですが、山田健太参考人から伺っていきたいと思っております。
 まず、様々懸念を示していただいたと思うんですけれども、とりわけその第二層の部分について、著作物の全文スキャニングそのものが問題なのではないかと。その中で、そのペーパーの中でも内容チェックの問題性ということが指摘されておりますけれども、この内容チェックというのはどういうことなのか、この点を詳しくお聞かせいただければと思います。

参考人(専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科教授 山田健太君)

御質問ありがとうございます。
 ここで申しますのは、基本的に、今回、一層にしても二層にしても大きなポイントは、全て情報を利活用したい者が全ての情報を全量的に収集する、しかもそれを集積する、そしてそれを自由に使うというところに大きなポイントがあるというふうに考えております。それからすると、当然ながらそのサービスの中で、まあ一番考えられ得るのは情報解析サービスや所在検索サービスかもしれませんが、その中で、当然その集積されたデータをデータベース化して内容をチェックすることが可能になってくるということであります。
 実際、それは目的としていないというふうに言うかもしれませんが、現実的に、今般の例えば個人情報保護法でも非識別、非特定の情報がビッグデータの中で事実上特定できるということもあり得るわけでして、今回のこの著作権の、著作物の集積、活用の中でも、そのような内容上の特定とあるいは内容上の選別というものが起き得る可能性があるということを考えた上では、特に第二層のこのサービスについてはより厳格な歯止めというものが必要ではないかというふうに考える次第であります。
 以上です。

吉良よし子

大事な御指摘だったと思っております。
 また、山田参考人からは、この本改正案については文化政策として論じることが大事ではないかというようなお話もありました。ペーパーの中には、文化政策が経済振興優先議論の中で軽んじられてはいないかという懸念も書かれております。
 先ほど吉村参考人の話の中でも、法令事項が政令事項になることで迅速に物事が進んでいくというお話もあったことを踏まえれば、やはりそうした懸念というのも考えられるのではないかと思うわけですが、この点、より詳しく、また、守るべきその日本型表現自由モデルは大切にした方がいいとありますが、その辺との比較と併せてお答えいただければと思います。

参考人(山田健太君)

先ほど時間が足りなくて少しはしょってしまいましたので、改めて御説明させていただきます。
 まさに文化政策が経済振興優先議論の中で軽んじていないかというふうに書いた部分でもありますけれども、昨今の議論を聞いておりますと、例えば、放送制度改革において、民放はもう要らないのではないかというような議論がありました。あるいは再販、再販売維持契約の問題や軽減税率の問題でも、そのようなメディアの特恵的な待遇というのはもう要らないのではないかという話がありました。
 これで大事なのは、一つこういうような形で、メディアの公共性や表現の自由についての議論よりも経済的な効率性というものが優先されているという議論自体にも問題があるんですが、より私はここで確認をしておきたいのは、このような不要論が出てきたときに、与野党問わず、国会の中で、やっぱりそれは表現の自由大事なんじゃないかと、あるいはそのメディアの公共性をもっと大事にした方がいいんじゃないかという議論が巻き起こって、結果的に、このような放送制度改革については少し慎重にいきましょうよと、あるいはその軽減税率や再販についてのメディア特恵も大事にしましょうよという結論に落ち着いたということがあるんですね。ですので、まさに今回のこの著作権法の改正議論におきましても、議論をいただく中で、やはり表現の自由やメディアの公共性が大事なんだよということに話が行くことを願っているということであります。
 具体的に言うならば、例えば表現の自由でいいますと、みんなのためという名において、そういう、みんなのためという名における経済的な利益のために表現の自由が制約されるということについてはできる限り避けた方がいいということがあります。あるいは、内容や流通においては多様性というのが大事なわけでして、それがまさにメディアの公共性の意味合いであるわけですから、その公共性が維持、担保するにはどのような権利制限がいいのか、それからするならば、柔軟なという言葉で一くくりにするのではなくて、より具体的に法律に書き込む形で、一体どの場合にはどのような形でこの公共性や自由が担保できるかという議論を進めていただきたいというふうに思っているわけであります。

吉良よし子

みんなのためにというところで、どこまでかと具体的に制限していく方向がよろしいということでしたけれども、あわせてもう一点伺いたいのですが、その辺に関わって、先ほど著作権の保護と著作物の公正な利用のバランスで文化の発展を図ると著作権の保護と文化の継承のバランスにおいて著作物の公正利用を図るとは違うんだというお話があり、公正な利用というのは改めてどういうものが望ましいのか、また公共とは何なのかという点について、もう一度詳しくお聞かせいただければと思います。

参考人(山田健太君)

先ほど文化の発展というのがどうも引っかかるというふうに言いましたのは、文化の発展というのの中身がどうしても現在では、特に日本の場合には公共という言葉が、パブリックという言葉がですけれども、公的なもの、国家のものと、国家的な利益というふうに結び付きがちなものですから、ここでも結果的には公正利用というのが事実上は経済的なイノベーションの創造、そして文化の発展というのが国としての経済的な発展というふうに読み替えられてしまう可能性が高いんではないかという、やはりそこについてはより限定的に、厳格にこの著作権法の法の趣旨に基づいて、一体どういう形で著作権の保護と文化の継承のバランスを取っていくかということについての御議論がいただきたいという意味合いであります。
 そして、まさにその表現の自由の、まさに一番最初にお話しした点でありますけれども、あくまでも日本の場合には包括的な例外はつくらないということを決めてきたわけです。それがまさに憲法で定められている表現の自由の大原則でありますので、今後の著作権法におきましても包括的な例外において表現者の表現の自由が制約されるということがないような形での法改正を望みたいということであります。

吉良よし子

表現の自由が侵されないような法改正という点では、本当に重要な指摘だったと思います。
 その点で、吉村参考人にも一点伺いたいと思います。
 最初のお話の中でも、吉村参考人からも、そうはいっても権利者の声は大事であると、また、その著作物の創造サイクルが維持されることは大事な点であると。その点においては、山田参考人のおっしゃっていた表現の自由を保障した上でという話と一致する部分はあるかと思うんですけれども、経団連の中では著作物の利用等についてずっと議論されてこられたとおっしゃっておりましたけれども、では、表現の自由や文化政策としてどのような議論をされてきたのか、どう表現の自由を保障していくべきかという議論があったのかどうかも含めて、経団連として、あるいは参考人御自身のお考えとしてお答えいただければと思います。

参考人(一般社団法人日本経済団体連合会産業技術本部長 吉村隆君)

御質問ありがとうございます。
 我々としては、決して文化と経済といったものは二律背反の関係にあるとは全く思っておりません。こういう時代にあっては、ますますもって両者のいい関係が築くことが誰にとっても非常に重要なことだというふうに思っています。
 その中で、先ほど表現の自由というお話がございました。経団連の中で、正直言って表現の自由についてどう考えるかということだけを大上段にして議論したという経験は私自身は持ってございませんけれども、議論するまでもなく、表現の自由というのは非常に貴重な権利であるというふうに思っておりますので、そこは議論するまでもなく、経団連会員企業、普通の企業さんであれば、そこに疑義を持つところはいないということだと思います。
 文化政策についてはなかなか一言では言いにくいんですけれども、すごく狭い意味での文化政策といったものともう少し広い意味での経済と連動したような文化政策があるような気が個人的にはすごくしております。なので、我々が特に主としてできることは、経済としてのサイクルを回しながら、文化の力もお借りしながら、あるいは文化の力をより強めていただくようなことにも貢献しながらやっていくという、そういったところが大事だというふうに思っております。
 実際問題として、著作権法が掛かる、何というんですかね、著作物の範囲って物すごく広くなっていて、まさになりわいとして作家さんがやるようなそういったものから、先ほど来議論が出ているデータみたいなものまで全部一律に掛かってくるということなので、なかなか一律に議論するのは難しいなと思うんですけれども、産業界としては、そうですね、もちろん本業として、あるいはCSR的な観点で文化を応援していることもたくさんやってございますし、ビジネスとして活用させていただくこともありますしという、いろんな意味で文化との関わり合いというのは切っても切れないものだと思っていますし、これからも重要だと思いますし、表現の自由について疑いを持っている団体だと思われないような矜持を示していきたいというふうには思っております。
 以上です。

吉良よし子

どうもありがとうございました。終わります。