障害者の文化・芸術活動推進/「幅広い支援を」/参院で可決
要約
自民、公明、民進、維新、希望の会(自由・社民)、立憲民主、希望の党による議員立法である「障害者文化芸術活動推進法案」と「国際文化交流祭典実施推進法案」が18日の参院本会議で可決され、衆院に送付されました。日本共産党は、障害者文化芸術活動推進法案には賛成、国際文化交流祭典実施推進法案には反対しました。
17日の参院文教科学委員会で質問に立った共産党の吉良よし子議員は、障害者文化芸術活動推進法案について「障害者の文化芸術に対する理解や評価が国内では途上」だとして、支援対象に実演芸術なども含め幅広く支援するよう要求しました。提案者の福岡資麿参院議員は「幅広く支援していく。重要性はある。支援対象は文化芸術基本法の文化芸術全般」と答えました。
吉良氏は、国際文化交流祭典実施推進法案は同祭典に関する基本計画などを閣議で決定するとしており、「政権に左右され、施策の対象が変わってしまわないか」と質問しました。提案者の中山恭子参院議員は「国による文化芸術への不当な介入はあってはならない。本法案は祭典の安定的かつ継続的な実施のため施策を講ずる」と答弁。吉良氏は、祭典への支援は否定しないが、閣議決定で基本計画などに恣意(しい)的判断がもちこまれる懸念は拭えず「賛成しかねる」と述べました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
先ほどの理事会では報告ありませんで、後でということですけれども、質問に先立って一言申し上げたいと思うんです。
加計学園に関わる新たな文書について、報道では、文科省においては確認できなかった、その一方で、今治市の官邸訪問については知っていた旨の報道がありました。これ、事実とすれば重大な事実です。
また、辞職して一年以上たつ前事務次官の出会い系バー通いについて一方的な報道に基づき執拗な調査を行った文科省の対応、この間問題になっている、一方で、現職の財務事務次官がセクハラをした若しくは女性の接客する店で言葉遊びをしていても不問に付している。安倍政権のこの政治姿勢というのは本当に異常としか言いようがない事態だと思います。
こうした様々な問題の真相究明、事実を明らかにする必要がある、本委員会でもそのような場をしっかり持っていただくことを強く要求いたしまして、法案の質疑に移りたいと思います。
まず、両法案に関わって、両法案を所管することとなる文科大臣に伺います。
二法案が提出された背景には、諸外国に比して少な過ぎる文化予算の下では文化芸術活動を思うように推進できないという文化芸術に携わる人々の共通の認識があるように思います。文化芸術基本法の質疑の際に私は、この予算規模を思い切って増額すべきとただしたのに対して、当時の松野文科大臣は、趣旨を踏まえ、文化芸術振興のための予算の充実に努力をしてまいりたいと答弁をされました。しかし、今年度の文化予算については一千億円台の微増にとどまっている状況です。
文化芸術活動の裾野を広げるためには、やはりそれではなくて、抜本的にこの予算、増額することが必要と考えますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 林芳正君)
文化芸術施策の推進に当たりましては多様な文化芸術の保護、発展が図られる必要がございまして、我が国の文化芸術を振興するために、芸術家等の人材の育成、また広く国民に開かれた参加、鑑賞機会の充実、地域、学校等での文化活動の充実、文化関係機関への支援、観光、まちづくり、国際交流、福祉、産業等との連携など、関連する施策を国、地方、民間などとともに総合的かつ計画的に推進していく必要があると考えております。このため、文化芸術基本法では、政府は、文化芸術施策の実施に必要な法制上、財政上又は税制上の措置を講じていくように求められておるところでございます。
文部科学省としては、今後とも文化芸術の振興に必要な予算の確保に努めてまいりたいと思っております。
吉良よし子
努めてまいりたいということですけれども、抜本的な増額を改めて要求したいと思います。
そして、もう一つ確認をしておきたいと思います。
文化芸術を進める基盤となるのが芸術家の自主性、そして表現の自由の尊重だと思います。どのような発表の場であっても、誰であっても、不当な理由でそうした自由を侵害されたり、芸術家の自主性が奪われるようなことはあってはならないですし、時の政権の意向に沿ったような方が支援を受けられるのではと、意向をそんたくして創作活動を萎縮させるようなことはあってはならないと考えますが、その点、大臣のお考えを伺いたいと思います。
国務大臣(林芳正君)
文化芸術活動におきまして表現の自由は極めて重要であり、我が国の憲法第二十一条で保障されている権利でございます。
昨年六月に改正されました文化芸術基本法においては、改正前においても文化芸術活動を行う者の自主性の尊重について繰り返し規定をされておりましたが、改正後は、「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、」という文言が新たに追加されるなど、改めてその必要性について明文化をされたところでございます。
文科省としては、障害者の文化芸術活動や国際文化交流の推進に当たりまして、この文化芸術基本法の理念を踏まえて、文化芸術活動を行う者の自主性と表現の自由を十分に尊重した施策を推進してまいりたいと考えております。
吉良よし子
文化芸術、鑑賞すること、参加すること、さらに、創造し、発表の場や機会が保障されることはもう本当に国民の権利です。大臣も極めて重要とおっしゃられましたけれども、その芸術家の自主性、表現の自由の尊重、また予算の抜本的な増額、改めて強く求めまして、次に、両法案の提出者に法案について伺っていきたいと思います。
まず、障害者による文化芸術活動の推進に関する法案についてでございます。
法案の基本理念において、専門的な教育に基づかず人々が本来有する創造性が発揮された作品が高い評価を受け、その中心が障害者の作品であること等を踏まえ、障害者による芸術上価値が高い作品等の創造に対する支援を強化するとありますが、これだけ見ていると、芸術上価値が高い作品等だけを支援するというふうに読めなくもない部分があると思います。
しかし、私は、価値の高低にかかわらず、全ての障害者の文化芸術活動を支援することが必要と考えますが、本法案もそうした立場という理解でよろしいかどうか、御説明をよろしくお願いします。
委員以外の議員 参議院議員(山本博司君)
吉良委員にお答え申し上げたいと思います。
今回の、芸術上の価値が高くなければ支援がなされないのではないか、こういう御懸念についての御質問をいただいたものと思いますけれども、この法案は、まず基本理念の第一に、芸術上の価値を問わず、障害者の方々の文化芸術活動について幅広く促進することをまず掲げております。これは、文化芸術を創造し享受することが人々の生まれながらの権利であることを鑑みたものでございます。これに加えて、この法案では、芸術上価値が高い作品等について定め、優れた才能の更なる飛躍に向けた支援も行うという仕組みとしておりまして、両方の観点から支援を定めているわけでございます。
御指摘の芸術上価値の高い作品等について規定しておりますのは、近年、アールブリュットなどの呼称で障害者の方々の作品が優れた作品として高い評価を受けるようになっているにもかかわらず、そうした作品等についての支援が十分ではなく、それらが世に出ないままとなっていることや、また、販売、公演等の事業化が円滑に進んでいない、こういった課題があることがございますので、特にそれに対応する必要があったからでございます。
この法案を契機として、全ての障害者の文化芸術活動の推進について一層の充実を図ることが重要であると考えております。
吉良よし子
幅広く支援するのが基本であり、また全ての障害者の芸術活動を推進するというお立場だということでした。
その上で、障害者の文化芸術に関する理解や作品の評価などについて、国内においては途上であることを鑑みれば、支援、広く行っていくというのは大事だと思いますし、作品等というところについてなのですが、そこには実演芸術も含まれるべきと考えますが、その点についての提案者のお考えをお聞かせください。
法案発議者 参議院議員(福岡資麿君)
委員御指摘の幅広く支援することの重要性については、発議者としても同じ認識でございます。
その上で、基本理念の第一として、文化芸術活動を幅広く促進することを掲げておりますが、その促進の対象は、文化芸術基本法の文化芸術活動全般となっておりまして、御指摘の実演芸術に関する活動も含まれるというふうに思っております。
また、御指摘のように、作品等という表現がございますが、この等を付けることによりまして、演奏や公演などの実演が含まれるものというふうに考えております。文化芸術の創造の様態は様々なものがありますから、その全てを例示することは難しいことからこのような表現とさせていただいているところでございます。
吉良よし子
改めて、幅広いものであり、実演も含まれるという御答弁でした。大事だと思っております。
それでは、次に、国際文化交流の祭典の実施の推進に関する法案について伺いたいと思います。
まず、本法案の立法に至った背景についてお聞きしたいと思います。昨年は、全会一致で成立した文化芸術基本法第十五条には、国は、文化芸術に係る国際的な交流及び貢献の推進を図ることにより、我が国及び世界の文化芸術活動の発展を図るため、文化芸術活動を行う者の国際的な交流及び芸術祭その他の文化芸術に係る国際的な催しの開催又はこれへの参加など、必要な施策を講ずるとされております。
これでも一定こうした国際文化交流の祭典の実施というのは担保されていると思いますが、これだけでは不十分とお考えなのか、その点についてお聞かせください。
委員以外の議員 参議院議員(中山恭子君)
発議者を代表してお答えいたします。
文化芸術基本法は、吉良先生御指摘のとおり、昨年六月に改正され、第十五条に文化芸術の国際的交流として芸術祭等について国が必要な施策を講ずることが定められました。今回の法案はその趣旨を実行に移すことを目指したものでございます。
ベネチア・ビエンナーレに代表される伝統ある世界レベルの祭典と肩を並べるような大規模な文化の祭典を我が国で開催するには、その祭典が継続的に実施されること、また安定的に実施されることが重要でございます。そのためには、法律をもって世界レベルの祭典の実施を目指す方針等を示し、その内容の充実を図り、そしてその継続性、安定性を担保することが不可欠でございます。
また、国際文化交流の祭典の実施の推進は、文化芸術の振興だけでなく、国際相互理解の増進、我が国の国際的地位の向上といった面でも大きく貢献すると考えられます。特に、世界レベルの祭典の実施のためには、海外の情報の収集や海外への発信力の強化等が求められます。そうした観点から、外務省を共管とすることが必要です。さらに、経済産業省、国土交通省、総務省等の関連施策との連携も大切になってまいります。こうした点を実現するためには、文化芸術基本法第十五条の定めに加え、この法案が必要であると考えております。
現在、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムが進められているところでございますが、オリンピック・パラリンピックの後も日本において国際文化交流の祭典が各地で開催されることは好ましいことであり、そのためにも早期に法律を整備する必要があると考えております。
吉良よし子
十五条の趣旨を実行に移すためということでございました。
もう一つ伺いたいのですけれども、先ほど大臣から、芸術家の自主性、表現の自由の尊重は極めて大事だという御答弁もありましたが、本法案においても上からの押し付けというのはあってはならないと思います。芸術家らの自主性の尊重、表現の自由、最大限尊重すべきと思いますが、その点いかがでしょうか。
委員以外の議員(中山恭子君)
私の思いといたしまして、文化芸術への不当な関与はあってはならないと考えております。また、国による文化芸術の内容への干渉は、かえって文化芸術の質の低下につながるとさえ考えております。
この法案は、文化芸術基本法の体系の中に位置付けられるものであり、表現の自由を重視し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重する文化芸術基本法の基本理念はこの法案にも当然に及ぶところでございます。したがいまして、自主性や表現の自由の尊重に十分配慮をしつつ、この法案の運用がなされるべきであると考えております。法案の基本的施策では、文化芸術の内容に踏み込まず、祭典の実施を推進するための言わば環境整備としての項目を定めているところでございます。
吉良よし子
自主性、自由は最大限尊重すべきということでしたけれども、その仕組みが本法案だということですが、ここでやはり一つ懸念があるのが、本法案は政府の閣議決定により基本方針と推進基本計画を定めて大規模な国際文化交流祭典の実施を推進するものと、つまり、閣議決定される基本計画が時々の政策によって左右されて推進される対象が変わってしまうのではないかという懸念があるわけですが、その点いかがでしょうか。ちょっと簡潔にお願いいたします。
委員以外の議員(中山恭子君)
時の政府の考えにより推進対象が変わるのではないかとの御懸念につきましては、そのような国による文化芸術への不当な関与はあってはならないことであると考えております。
この法案の第八条におきまして、大規模祭典の継続的かつ安定的な実施を図るため、企画等に関し専門的能力を有する者の継続的な確保、公演、展示等を行う施設の確保、海外の芸術家を円滑に受け入れることができる体制の整備等を行えるよう必要な施策を講ずるものとしております。
吉良よし子
そうならないようにということではございますけれども、ただ、やはり私、法案を読んでいると、それだけでは推進する対象が法案で明確になっていない、その時点でやはり時の政権の恣意的な判断や政策が文化芸術の場に持ち込まれかねない、そういう懸念は払拭できないと思うんですね。
文化行政については、戦後、憲法の下、国は金を出しても口を出さないことが原則だったはずですが、本法案が時の政権によって場合によっては悪用され、金も口も出す事態にならないとも限らないその懸念が払拭できない以上、ちょっとこの法案には賛成しかねるという意見を申し上げたいと思います。
委員長(高階恵美子君)
お時間が参っておりますので、おまとめください。
吉良よし子
また、なお、障害者の文化芸術活動の推進に関する法案については賛成することを述べまして、質問を終わらせていただきます。
済みません。ありがとうございました。