文科省の前川氏授業調査/教育現場萎縮させるな
要約
日本共産党の吉良よし子議員は10日の参院文教科学委員会で、前川喜平・前文科事務次官が行った名古屋市立中学での授業について文部科学省が執拗(しつよう)に問い合わせた問題を追及しました。
吉良氏は、下関市教委が前川氏の講演会の後援を断るなど現場で萎縮が始まっていると指摘し、「現場を萎縮させる調査はあってはならない」と今後の対応について迫りました。林芳正文科相は「萎縮を含め、誤解が生じないようにするのは大前提。丁寧な対応をしていく」と答弁。吉良氏が、現場が外部講師として前川氏を呼んでも「学校や教育委員会が十分な検討をし、適切に配慮が行われれば今回のような調査は必要ないな」と確認すると、林文科相は「そのとおり」と認めました。
また吉良氏は、文科省が最初の電話調査の際、名古屋市教委に対し「自らの違法行為で停職処分相当」となった前川氏の事実関係を問題視した調査だという今回の調査理由の核心を全く伝えていなかった事実を指摘。「与党議員の言いなりに、なんでもいいから前川氏を呼んだ市教委の弱点を見つけようとする『悪質クレーマー』のような不当な調査で介入した文科省は問題だ。財務省、防衛省、厚労省も含め、政権全体の体質が問われている」と批判しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日も、名古屋市への授業調査、教育介入問題について伺いたいと思います。
この間、名古屋市が出した公開質問状に対して文科省が回答したと。しかし、その回答について名古屋市側は納得していなくて、再質問を検討しているということも報じられております。また一方、こうした経過の中で、山口県下関市では、四月十四日に行われる前川氏の講演会について、市教委が後援団体として名を連ねることを断ったという報道もありました。現場では既にこういった萎縮とも思われるような状態が起きていると。重大な問題だと思うわけです。
そこで今日は、まず、今後の文科省の学校現場に対する基本姿勢についてを確認しておきたいと思うわけです。
三月三十日の衆議院文部科学委員会で、大臣は、地方の自主性と現場の創意工夫を前提としつつ、適切な役割分担が大事だと、教育行政については。公立学校に関する事務は基本的に自治事務であり、教育に関する実務の管理及び執行については、本来、学校の設置者である教育委員会若しくは学校の権限と責任において適切に行われるべきものであるという答弁をされています。
ということは、つまり、今後、文科省が行う個別の授業に対する調査があったとしたとしても、それは現場の自主性や創意を萎縮させるようなものではあってはならないということだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 林芳正君)
個別の事案に関して事実関係の確認を行うに当たっては、教育現場において誤解が生じないよう十分に留意すべきことは当然でございまして、そのような観点から、今回の書面についてはやや誤解を招きかねない面もあったと考えられるため、今回確認を行った担当の初等中等教育局に対し、このような事実確認を行う際には表現ぶり等について十分に留意する必要がある旨注意したところでございます。
こうした今回の事案の経緯を踏まえて、今後、教育現場等に対してより一層丁寧な対応を行うように努めてまいりたいと思っております。
吉良よし子
誤解を招きかねないとおっしゃったんですけれども、現場の自主性や創意を萎縮させてはならないんじゃないかということを伺っているんですけど、その点だけ、いかがでしょうか。
国務大臣(林芳正君)
御指摘のとおりでございまして、先ほどの答弁の中で、教育現場において誤解が生じないようというのは、そういうところも含まれておるということで申し上げましたけれども、委員おっしゃったとおりでございます。
吉良よし子
現場を萎縮させるようなことは絶対にあってはならないということです。そういう調査はあってはならないと。
もう一点確認したいんですね。先ほど神本議員からも質問がありましたけれども、同じくその三月三十日の衆議院の文科委員会の中で、外部講師の選任に関して、学校や教育委員会において十分検討され、適切な配慮が行われており、そして文部科学省も確認できる場合には、今回のような行き過ぎた調査や文書による問合せは不要だと、こうした認識でよろしいかということを問われて、その方向で対応してまいりたいと考えておりますと大臣は答えられておりました。
ということは、具体的にちょっと確認したいと思うんですけれども、その外部講師が前川氏だった場合、今後どこかの学校が前川氏を呼んで授業を行う場合であったとしても、その学校や教育委員会で十分な検討がなされ、適切な配慮がなされているならば、今回のような調査は不要だということでよろしいですね。
国務大臣(林芳正君)
御質問のあったとおりでございます。先ほど御紹介いただいた城井先生への御答弁の中で、外部講師という言葉を一般論として使っておりますが、そこには前川氏も当然含まれるものと考えております。
吉良よし子
前川氏も含まれるということでありました。
いずれにしても、前川さんの経歴については、今回、全国の教育関係者が改めてよく知るところになったわけですから、もう既に知らないまま呼ぶなんということは起きないわけですし、文科省が授業の内容も問題ないと言っているわけですから、現場が適切な配慮の下、自分たちの判断で自由に前川氏も含めて誰でも呼べるということだと思うわけです。二度とあのような狙い撃ちのような調査はあってはならないということ、強く申し上げたいと思います。
そして、もう一つ、今回の調査の理由について、どう先方に伝えたのかというところを私、今日確認したいと思うんです。文科省は繰り返し、この調査というのは、教育行政の事務方最高トップだった方が、単に監督責任だけではなく、自らの違法行為で停職処分相当という、そういう方が教壇に立ったから調査をしたと説明してきたわけです。そして、その調査の結果、名古屋市教委に対して行った唯一の助言が、先ほども申し上げたとおり、同氏のこのような事実関係を十分に調べることなく学校の授業の講師として招いたことが必ずしも適切ではなかったというものだったわけです。
つまり、今回の調査の核心というのは、前川氏自身のこうした事実関係が問題にされているということなわけです。これだって問題だと思うんですけれども、じゃ、その調査の核心部分を名古屋市教委にどう伝えたのかというところが私、問題だと思うんですけど、文科省がこの調査で初めて市教委に接触した二月十九日の電話、この調査のときに、あなた方は、こうした、この間国会で説明してきた調査理由というものを市教委に説明したのでしょうか。局長、いかがでしょうか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 高橋道和君)
二月十九日の名古屋市教育委員会への電話については、初等中等教育局の教育課程課より、前川氏の講演の概略的な内容や対象学年、総合的な学習の時間の年間指導計画の位置付け等について確認を行い、名古屋市教育委員会からメールで関係資料の提供を受けました。
関係資料といたしましては、保護者及び関係者向けそれぞれの公開授業の案内、当該中学校における公開授業の実施案、名古屋市教育委員会の事業の概要や企画書、公開授業のチラシ、当日の流れ及び記録、マスコミへの広報についての資料、平成二十九年度における当該中学校の総合的な学習の時間の全体計画、こういった資料について提供を受けました。このうち、名古屋市教育委員会の事業については、当該中学校における企画書が添付されていなかったため、当該中学校の企画書について名古屋市教育委員会に提供を依頼し、改めて提供を受けたところでございます。
吉良よし子
経緯説明されたんですけど、問い合わせた中身をおっしゃったんですけど、私が聞いているのはそこじゃなくて、なぜこの調査をしたのかと、なぜそういう質問をしたのかということを市教委側に伝えたのかどうかと。前川氏が、呼んだことの経緯について聞きたいんだと、そういうことをおっしゃったかどうかということなんです。それはいかがですか、局長。
政府参考人(高橋道和君)
その点については必ずしも明確ではございません。
吉良よし子
明確ではない。
実は、私たち日本共産党市議団の方で聞き取りをしたわけですけれども、対応に当たった市教委の担当者は、こうした前川氏の問題だと、教育行政の事務方トップだった方が自らの不法行為で停職処分相当を受けた、そういう人を呼んだのが問題だと思っているという言葉は一言も聞かなかったと明言しているんですよ。
もう一つ更に聞きたいと思うんですけれども、じゃ、その前川氏をなぜ呼んだかという経緯というのはこの最初の電話の調査で聞いたんでしょうか。
政府参考人(高橋道和君)
その点につきましては、三月一日に名古屋市教育委員会に対して照会いたしました文書によって前次官を招いた理由や経緯について質問をしております。
吉良よし子
つまり、三月一日になるまで前川氏についての調査だということを一言も先方に伝えていなかったということなんですよ。これ、今回の調査の真相を語る重大なポイントだと思うんです。
そして、先ほど三月一日のメールでということをおっしゃいましたけれども、このメールの質問事項を改めて見ると、今回の助言の基になった、単に監督責任でなく、自らの違法行為で停職処分相当という文言は三月一日のメールには出てこないんですよ。該当部分読むと、文部科学事務次官という教育行政の事務の最高責任者としての立場にいましたが、いわゆる国家公務員天下りの問題により辞職し、停職相当とされた経緯としか書かれていなくて、自らの違法行為でというその言葉は書かれていないんですね。それが初めて出てくるのが、二回目の三月六日のメールに初めて、いわゆる天下り問題について自らが直接関与したことが認められというふうなことが出てくるわけですけれども。
つまり、この間、本人自らの非違行為云々が問題だと、それを知らなかったことが問題だということを文科省はずっとおっしゃっていたわけですけれども、この調査理由というのは後付けだったという、三月六日になるまでそれは考えていなかったということになるんじゃないですか。いかがですか、局長。
政府参考人(高橋道和君)
既に三月一日の質問状において、停職相当とされた経緯がありますということは明確に質問をさせていただいているところでございます。
吉良よし子
停職相当とされた経緯とは書かれているけれども、本人自らの非違行為で停職相当とされたと、そのことを知らなかったのが問題だと。
つまり、三月六日の、最後の最後に出てきた、いわゆる天下り問題について自らが直接関与したことが認められ云々という問合せに対して、学校長が、辞任された以上のことは知りませんと回答して、それを取って文科省は、十分に事実関係を調べることなく云々ということの助言を行ったわけですよね。
つまり、この最後の最後に出てきたメールのこの文言に対する回答を取って、それが不適切だというのがあなたたちの調査、助言なわけですよ。これ、後付けと言う以外にほかないんじゃないですか。
政府参考人(高橋道和君)
繰り返しになりますが、最初の質問のメールの中には、天下り問題により辞職し、停職相当とされた経緯がありますということを明確にいたしました。それについて、そのことについては、辞職したこと以外は存じ上げていないということなので、その点について、再質問についてより詳しく具体的に問合せをしたものでございますので、最初からそういう問題意識を持っていたということでございます。
吉良よし子
いやいや、問題にされているのは、本人自らの非違行為を理由として停職相当とされたということを知らなかったことが問題だと、それが助言の中身じゃないですか。なのに、それを最初から聞いていたと私到底思えないんですよね。結局、やっぱりこういう経過を確認していくと、幾ら聞いても欠点が出てこない、最後の最後に揚げ足を取るように助言を行ったとしか私は見えないんですよ。
最初の電話を受けて、市教委が文科省に送った十六枚の資料というのを私も手に入れて拝見しました。当該校というのは、年度当初、四月の時点でこの総合学習の時間のテーマを、様々な人の生き方を考えると決めて、その時点で、二月十六日に全校一斉総合というのを行うということを指導計画として決めていたわけです。教育委員会は、この計画をもちろん知っていましたし、その講師に前川氏が決まったということは十二月の時点で報告を受けていて、市教委の笑顔いっぱい絆づくり推進事業の一つに位置付けるということを了解したんですよ。
まさに、学校と教育委員会が十分に検討した公開講座だったと、教育的配慮の下に行われたものだったということは最初の電話で十分に分かったんじゃないのかと、メールでの問合せは全く必要なかったんじゃないですか。いかがですか、局長。
政府参考人(高橋道和君)
今回の事案につきましては、繰り返しになりますが、直近まで文科行政の事務方の最高責任者として、その発言が教育行政に関して正当な根拠があると受け止められる特別な立場にあったことから、影響力が極めて大きいこと、それから天下り問題等に関わって、単に監督責任だけでなく、本人自身の違法行為をもって停職相当となったものであることから、特に心身の発達が途上段階にあり、必ずしも公正な判断を行う能力が十分に備わっていない中学生に対して授業を行うことについて適切な教育的配慮が求められること、さらに、保護者への当該校に対する信用に与える影響についても十分な考慮が行われる必要があること、こういったことを考慮して、調査、事実確認を行ったものでございます。
吉良よし子
ですから、その調査理由を先方に伝えないまま調査を始めたわけです、電話では。そして、三月一日に初めて前川氏の問題だということを伝え、さらに、その本人が非違行為で停職相当とされたとしたことを知らなかったことが問題だということが不適切だという助言を受けてしまったと。
もう本当に後付けとしか言いようがない、指導、助言のための調査という法令の一線を越えて、何でもいいから前川氏を呼んだ名古屋市教委の弱点を見付けようと、悪質クレーマーのような不当な介入に手を染めたのが今回の文科省の調査なわけですよ。こんなの絶対に許しておくわけにはいかないんです。
これ、文科省だけの問題じゃないですよ。もう防衛省や財務省や厚労省とか、様々な問題が出ているわけですけど、本当に政権全体の体質が大きく問われる事態がこれだけ起きている。文科省のこの案件というのはその一つなわけです。
大臣には、こうした事態であるという認識を持って事に当たっていただきたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。