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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2018年・第196通常国会

「ブラック校則」は人権侵害/下着のチェックまで/背景に文科省通知あり/参院委で「撤回を」

要約

 日本共産党の吉良よし子議員は29日の参院文教科学委員会で、生徒の心身を傷つける「ブラック校則」の実態を告発するとともに、背景にある厳罰で処する生徒指導(ゼロ・トレランス=寛容度ゼロ=方式)の撤回を求めました。
 吉良氏は、「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」が行った実態調査に基づき、「社会通念に照らし合理的でない校則は見直すべきだ」と求めました。林芳正文科相は「校則は絶えず積極的に見直すべき」だと述べた上で「児童生徒が何らかの形で参加した上で決定するのが望ましい」と答弁しました。
 調査では「下着の色が決められている」校則もありました。「服装検査のときは別室でブラウスの前を開けてスカートをめくって女性教師がチェック」し、男性教師が確認や指導した例もあります。吉良氏は「セクハラ、パワハラ、人権侵害ではないか」と強く批判し、林文科相も「自尊感情の低下を招き、児童生徒を精神的に追い詰めかねない」と懸念を示しました。
 吉良氏は、この10年で理不尽な指導が増えていると指摘。その背景に2006年の「児童生徒の規範意識の醸成に向けた生徒指導の充実について」とする、違反行為に罰則を厳格適用する「ゼロ・トレランス方式」に基づいた生徒指導を求める通知があると告発しました。
 通知を受けて「別室指導」「特別指導」等の罰則が細かく決められたのは広島県福山市です。吉良氏は、指導から逃げた女子生徒が教員の手を振り払っただけで「対教師暴力」だと警察に逮捕された事例を紹介。「子どもと教師の関係が崩され、学ぶ権利まで奪われている。(ゼロ・トレランス方式を推奨する)通知は撤回するしかない」と強く求めました。

しんぶん赤旗 2018年03月30日付より抜粋

議事録

吉良よし子

日本共産党の吉良よし子です。
 まず、私は、初めに名古屋市立中の授業の調査、不当な介入問題について伺いたいと思います。
 前回、私、質疑の中で、二月二十二日から三月一日の間の経過について資料を要求いたしました。これについては、昨日の午後になって、通告の直前ようやく届いたわけですが、届いたのは紙一枚であります。
 読み上げますと、文部科学省初等中等教育局教育課程課において、名古屋市教育委員会の質問状の質問内容の検討を継続し、その案を作成するとともに、初等中等教育局長が確認を行った。なお、二月二十二日から三月一日の間、二月二十三日及び二十六日は国会審議が行われており、教育課程課から初等中等局長への相談を行うことができなかったと。以上なんですね。全く中身がないんです。
 午前中に神本議員の質問に対しては、この間、二月二十八日に案文が上がってきて局長に来たと、そういう回答もあったわけですけど、そのことすらこの御報告には書かれていないと。余りにひどいと思いませんか。与党の議員の問合せに対しては丁寧に対応するとお答えになられましたけど、野党の議員に対してはこんな対応で済むというのかと。
 しかも、私、問い合わせたのはこの中身、経過だけじゃないんですよ。十五項目にわたるメールの質問内容がどうしてそういうことになったのか、決定したのか、その経過が分かるものを出してくれと言いましたが、そのことについては何ら回答がなかったわけです。
 ただ、これ重要な過程なんですよ。そもそもこの問題については、社会的な問題でもあるんですけど、大臣ですらこの質問の書きぶりが誤解を招きかねないと問題視されていたわけでしょう。その十五項目の質問内容が決められた過程なんですよ。そこが全く白紙だと。それが分からない限りは再発防止できないじゃないですか。
 大臣に私伺いたいんですけれども、今回の件、再発防止する気ないんでしょうか。

国務大臣(文部科学大臣 林芳正君)

度々ここで申し上げておりますように、今委員からも触れていただきましたが、表現ぶりについて誤解を招きかねないところがあったということで注意をしたところでございまして、当然この誤解を招きかねないようなことが起こらないようにしっかりとやっていくという意味でそういう注意をしております。

吉良よし子

注意しただけで終わりなのかと。やっぱり、なぜこういう質問が出されたのか、こんな調査がされたのか、何でこんな社会的な問題になっているのかということも含めてきちんと解明しなきゃ再発防止になると私、思えないんですよ。
 大体、今回の件は誤解を招いた程度のものじゃないわけです。調査項目というのは、読めばまさに前川氏を講師に招いたその判断の、学校や市教委の判断の是非を執拗に問うものであって、それは名古屋市のみならず全国で前川氏を招きたいと考えているかもしれない学校や教育委員会に対する圧力になり得る、そういうものなわけですよ。だから問題だと言っているのが本当に分かっていらっしゃるのかと。
 ちなみに、前回の質疑でも今日の質疑でもありましたけど、文科省は、今回の調査、前川氏が授業をするに当たって適切な教育的配慮が求められると、その配慮がなされているかの調査をしたとおっしゃっていましたけれども、じゃ、文科省の言う適切な教育的配慮とは何なのか、今回の件について現場が行うべき配慮とは何だったのか、お答えください。

政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 高橋道和君)

中学生は、心身の発達が途上の段階にあるということに加えて、他方では、心身の発達上の変化が著しく、生徒の能力、適性、興味、関心等の多様化も一層進展する段階であること、さらに、知的な面では抽象的、論理的思考が発達するとともに、社会性なども発達していること、こういった中学生の特性を把握した上で、これらに配慮して学校の教育活動を行う必要があると。そういった意味で、適切な教育的配慮と申し上げているところでございます。

吉良よし子

全く何の配慮か分からないんですけれども、具体的にどういう配慮なんですか、どういう配慮をすればよかったんですか。

政府参考人(高橋道和君)

これは前回の答弁とも重なりますが、例えば、前川前次官におきましては、国家公務員法に自ら違反して停職処分相当という重い懲戒相当になったということもございます。そういったような方を招くことについて、心身の発達の途上の段階にある中学生に対して適切な教育的配慮が行われたかどうか、この点を確認する必要があると考えたところでございます。

吉良よし子

いや、全然回答になっていないですよね。結局経歴が問題だとおっしゃっているだけなんですけど。何の配慮が必要だったか分からないです。
 名古屋市教委は一回目の回答で、生徒には先入観や思い込みなしで話を聞いてもらおうと意図した、だから事前に特定の事柄を詳しく説明する必要はないと考えたと、この方はどんな方だろうと、話の中身だけでなく話し方や振る舞いなどから感じさせたい、その感じ方は個々によって違うし、その違いを共有させることにとても意義があると考えていますと答えていらっしゃる。いや、本当に、私、こういった学校側の対応こそ本当の意味での教育的な配慮だと思うんですよ。
 一方で、文科省が送り付けた調査項目は、子供たちや学校関係者に対して、前川氏が天下り問題の非違的な行為を行ったとか出会い系バーの問題だとか、先入観や思い込みを植え付けようと迫るような中身じゃないですか。これこそ教育的配慮に欠ける調査であり、中身であります。教育内容に対する不当介入であり、これは絶対に許してはならない、そういう問題なんです。
 大臣、文科省には、事の経過、真相を明らかにする責任があるということを改めて申し上げたいですし、この問題の重大性を認識して、猛省するように強く求めます。
 そして、今日はもう一つ、別の問題について伺いたいと思います。ブラック校則の問題なんですけれども、生徒指導に関わる問題です。
 昨年秋、大阪の女子高校生が学校から度重なる黒髪強要を不服として裁判を起こしたことに端を発して、私も昨年十二月、当委員会で質問させていただきました。この十二月に、ちょうど質問に前後するときですけれども、子供に関する様々なNPO法人の代表若しくは著名人の皆さんなど有志によるブラック校則をなくそうプロジェクトというのが立ち上がりました。
 このプロジェクトの皆さんが先日、三月八日に問題校則、いわゆるブラック校則などの実態調査、この結果を公表いたしました。資料をお配りしました。一を御覧いただきたいと思います、これは一部抜粋ですけれども。この調査は全国の中高生、またその保護者など四千人、あらゆる世代の方対象に調べたもので、どういう校則、自分が経験した校則、あったかなかったかということを聞いたと、そういうものです。
 それによると、大阪の例のように髪を黒く染めるように学校から要求された中学生二%、高校生は六%、でも四十代、五十代の親世代が中高生だった頃にこんな校則ほとんどなかったと、現代になってこういう校則が増えてきたということなんですね。ほかにも、髪型が細かく決められているとか下着の色が決められている、マフラー、タイツなど防寒対策の禁止など、子供たちの了解なく一方的に決められている理不尽なブラック校則というのが全国にあって、これによって子供たちが傷ついているというようなこともこの調査によって明らかになっております。
 これら、いわゆるブラック校則なくそうという署名もプロジェクトの皆さんが今集めていらっしゃるんですが、現時点で全国三万人以上の方がこの署名に賛同を示していらっしゃいます。この署名は最終的には文科大臣のところにも届ける予定だと伺っておるわけですけれども、大臣はこうした声についてどう応えていくおつもりか。少なくとも、私、社会通念に照らして合理的ではない校則というのは見直しを進めるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君)

今委員からお話のありましたこのブラック校則をなくそうプロジェクト、これが全国の校則等の実態を調べた調査結果、これを発表されたことは報道等で承知をしておるところでございます。
 一般的に申し上げまして、校則については各学校がそれぞれの教育目標を達成するために必要かつ合理的な範囲内で定めるものであり、また、校則に基づいて具体的にどのような手段を用いて指導を行うかについても各学校において適切に判断をされるものと、そういうふうに考えております。

吉良よし子

合理的なことで学校長の権限で校則というのは決められると言っていますけれども、生徒指導の提要というところの校則の項目では、社会通念に照らして絶えず積極的に見直さなければなりませんと、こう書いてあるわけですけど、これは間違いないですよね。

国務大臣(林芳正君)

今お話をいただきましたように、この校則の内容ですが、学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況の変化に応じまして絶えず積極的に見直す必要があると、こういうふうに考えております。
 校則の見直しは、今お触れいただいたように、最終的には校長の権限において適切に判断されるべき事柄でありますが、見直しの際には、児童生徒が話し合う機会を設けたり保護者からの意見を聴取するなど、児童生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定するということが望ましいと、そういうふうに考えております。

吉良よし子

積極的に見直さなければならないし、保護者、そして生徒、子供たちが関わって校則決めていく、それが望ましいという答弁だった、これ本当に大事な答弁だと思うんですよ。
 一方で、この先ほどのプロジェクトの調査にはこんな声も寄せられているんです。黒タイツ禁止という校則を変えようと思って生徒総会で発議されたのに、学校からは認める理由がないと言われてしまったという声が寄せられたそうなんです。せっかく提案をしたにもかかわらず学校から取り合ってもらえなかったという、こういう事例だと思うんですけれども、これでは子供たち納得できるような校則にはならないと思うし、先ほどの大臣の答弁とも整合性が取れないと思うんですけれども、こうした子供たちから主体的に校則改正を求める声を理由なく学校側が握り潰すということはあってはならないと思いますが、大臣、いかがでしょう。

国務大臣(林芳正君)

児童生徒を指導するに当たって、例えば先ほどちょっと御質問であったように、体罰とか不適切な言動、こういうことが許されないというのは当然のことでありますが、そこに至る手前でも、児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく厳しい指導を行うということは、先ほどもありましたけれども、児童生徒の自尊感情の低下等を招いて、児童生徒を精神的に追い詰めるということになりかねないと、こういうふうに思いますので、せっかくの校則のこういう提案があったときに、生徒会というようなところでしっかりと、言わば自分たちでしっかり考えてやっているんだという意味で、こういう自尊感情の低下等を招かないようにするということは大事なことではないかというふうに考えております。

吉良よし子

自尊感情の低下を招かないことが大事だと。だから、やっぱり、子供たちが校則変えようとせっかく学校内で声を上げたのだったら、それを潰すようなことはやっぱりあってはならないことだと私は思うわけですし、大臣もそうおっしゃったということだと思います。
 ところで、今回の調査結果を見て驚いたのは、この内容に移るんですけれども、下着の色が決められているという校則なんですよ。親世代の三十代、四十代、まあ今から二十年、三十年前にこのような校則があったというのは全体の一から三%なのに、今現在、中高生である十代の回答を見ると、中学校では約一六%、高校では約一二%が下着の色を指定する校則がある、あったと答えているわけですけど、大臣、こういう下着の色が決められる、決めている校則というのは、社会通念や学校や地域の実態に照らして合理的なものだとは私、言えないと思うんですが、いかがですか、大臣。

国務大臣(林芳正君)

今の特定の御質問についてちょっと通告をいただいておりませんでしたので、私、この調査で見ると、五十代でございますので、下着の色が決められていたのが我々の代でもまだいたということに大変驚いておりますが。
 まあ、そういう社会通念上、どういう理由で、どういうプロセスで決められたのかということを存じ上げませんから一概に申し上げることはここでは差し控えたいと、こういうふうに思いますが、先ほど申し上げたように、自尊感情等しっかりと踏まえて判断がされるべきものと、こういうふうに考えております。

吉良よし子

大事な答弁だったと思うんですね。
 とりわけこの校則、問題なのは、じゃ、下着の色を指定した場合にその違反の有無をどうチェックするのかという問題なんですよ。この実態調査に寄せられた声でいくと、こうした校則がある学校では、例えば、服装検査のとき別室でブラウスの前を開けてスカートをめくって、まあ女性の教師ですけど、がチェックするとか、又は、女子生徒について男子教諭が違反チェックをやった例というのもあるそうで、今日、下着、青だったでしょう、駄目だよと男性の先生から言われて怖かったという声も寄せられているわけですね。これ、もはや生徒指導ではなくてセクハラであり、パワハラであり、人権侵害だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

政府参考人(高橋道和君)

児童生徒への指導に当たり、例えば体罰やあるいは不適切な言動が許されないのは当然です。そして、それらに至らなくても、児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく厳しい指導を行うことは、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、児童生徒の自尊感情の低下を招き、児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねないと考えます。そういった点に指導に当たっては十分な配慮が必要であると考えております。

吉良よし子

十分な配慮かどうかじゃなくて、やっぱりそういう下着の調査をするということ自体がセクハラになるんじゃないんですか、人権侵害じゃないですかと、そういうことを聞いているんですけれども、お答えいただけませんか。

政府参考人(高橋道和君)

個々の事例については、やはりその背景等がございますので一概に申し上げられませんが、児童生徒の自尊感情の低下を招くような、そういったような生徒指導については、それは好ましくないと考えております。

吉良よし子

自尊感情の低下を招くような指導はあってはならないというお話だったと思いますけど、もう本当、こういう人権侵害につながる指導というのはもう絶対にあってはならないと思うんです、学校現場において。やっぱりこれは各学校にもう徹底するべきと思いますが、大臣、この点、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君)

先ほど申し上げましたように、こういった、自尊感情の低下等を招き、児童生徒を精神的に追い詰めるということにつながりかねないということは、そういうことがないようにしていかなきゃいけないと、こういうふうに考えておりますので、生徒指導に当たっては、児童生徒の持つそれぞれの特徴や傾向、よく理解をし、個々の児童生徒の特性や発達の段階に応じた指導を行う必要があると、こういうふうに思っておりますので、引き続きこの点については周知徹底してまいりたいと思っております。

吉良よし子

是非周知徹底してほしいし、やっぱり個性は尊重されるべきだし、人格、もう絶対に侵してはならないんだと、人権侵害なんてとんでもないんだと、そういうことを是非徹底してほしいと思います。そして、ブラック校則もやっぱり見直していくべきだということも強く訴えたいと思います。
 ところで、この生徒指導ということでいうと、このプロジェクトの調査、後段の方を見ていただきたいんですけれども、この間、やはり理不尽な指導というのが増えてきている傾向にあるんです。例えば、人前で叱責されたとか、みんなの前で謝らされたとか、反省文を書かされた等々なんですけれども、こうした本当に理不尽とも言えるような厳しい指導をされたということを答える割合というのが、中学、高校共に十年前に比べてこの十年間の間に急激に増えている、そういう傾向があるのが分かると思うんです。これは一体なぜなのかと。
 この背景にあるのが、私、二〇〇六年第一次安倍政権の当時ですけれども、に出された児童生徒の規範意識の醸成に向けた生徒指導の充実についてという通知があると思います。いわゆるゼロトレランス方式を参考にするとした通知なんですけれども、このゼロトレランス、直訳すると寛容ゼロということなんですが、文科省は毅然とした対応というふうに訳されております。
 じゃ、このゼロトレランスとは一体何なのか、二〇〇六年一月三十一日付けの生徒指導メールマガジンに、そこ書いてありますので、該当部分、五段落目ですか、を御紹介ください。

政府参考人(高橋道和君)

ただいま御指摘いただきました生徒指導メールマガジンは、各関係者間の意思疎通の緊密化を図り、施策の効果が円滑に子供まで届くようにすることを目指して、平成十六年から十八年まで文科省のホームページで配信されたものでございます。
 今御指摘の点のところを読み上げますと、「「ゼロトレランス方式」とは、クリントン政権以来、米国の学校現場に導入されている教育理念及び教育実践を表現したもので、学校規律の違反行為に対するペナルティーの適用を基準化し、これを厳格に適用することで学校規律の維持を図ろうとする考え方であり、軽微な違反行為を放置すればより重大な違反行為に発展するという「破れ窓理論」による説明も見られます。」、このような記述がございます。

吉良よし子

つまり、ゼロトレランスというのは、違反行為にペナルティーを与えるというのが基本的なスタンスなんです。それは、このメールマガジンの中でも、我が国の生徒指導の在り方を考える上でも参考にすべき点が少なくないと考えるとおっしゃっていて、事実、二〇〇六年の通知の中には、体系的で一貫した指導方法を確立して、学校内の決まり等を守れない児童生徒に対して毅然とした粘り強い指導をするようにというふうに書いています。
 また、この通知の中では、同じく二〇〇六年に取りまとめられた生徒指導体制の在り方についての調査研究報告書を参考にするようにということで添付資料として付いているわけですけど、この報告書のⅡの2、生徒指導の運営方針の見直しの(4)、懲戒処分及び回復措置についてのところには何と書いてあるか、お答えください。

政府参考人(高橋道和君)

ただいま委員に御指摘いただきました文書は、平成十八年五月に国立教育政策研究所の生徒指導研究センターが取りまとめた生徒指導体制の在り方についての調査研究報告書の概要の部分でございます。その2の(4)のところについては、「指導を通じても事態が改善されない場合には、あらかじめ定められた罰則に基づき、懲戒を与えることを通じて、学校の秩序の維持を図るとともに、子ども自身の自己指導力を育成することは、教育上有意義なことである。」、このように記述をされております。

吉良よし子

要するに、あらかじめ定められた罰則に基づき懲戒を与えるということがここに書かれているわけですね。これがゼロトレランス方式に基づく指導の中身なわけです。
 このゼロトレランスに基づく生徒指導というのが広く適用されているのが広島県福山市なんです。この文科省の通知を受けて、二〇一一年の夏に福山市内の小中学校において生徒指導規定というものが一斉に作られました。これは、保護者らに対しては校則の詳細版だよというふうに説明されているということですが、ほかの校則と違うのは、問題行動の内容によって段階的に説諭や反省文とか、服装や頭髪違反などのその場での改善とか、保護者引取りや警察等関係機関と連携などを示した特別な指導とか、若しくは、別室指導などの罰則が細かく定められているということなんです。
 お配りした資料二がその一例なわけですけれども、同じような規定というのが各学校で作られているわけですけど、例えば別室指導というところでいえば、普通教室を区切った反省室に最短でも一日、最長で一週間からそれ以上入れられて、その間授業は一切受けられないと。代わりに学習活動をするということになっていると。この学習指導の内容は何かというと、例えば漢字八百字書くとか教科書の書写をするなど、それも規定に書いているような学校もあるわけなんですけれども、だから、授業と全く関係ない、そういう学習活動をさせられるということなんですね。
 ある学校のある生徒、この別室指導させられたわけですけど、その指導中にやらされたプリントで数学の問題が分からぬと言ったと。そうしたら、いや、そこはもう習ったはずだと教師から言われて、それで終わり。何ら補講もなかった。教室に戻してほしいと、そうしたらまた頑張るからと教師に訴えても、そんなことしたらルールが崩れる、取り合ってもらえない。そのまま不登校になってしまったということを保護者の方から伺いました。
 大臣、これは子供にとっては学ぶ権利の侵害になると思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君)

今御指摘のあった通知でございますが、学校内の決まり及びこれに対する指導の基準、これあらかじめ明確にしておいて、そして、こういうことになったらこうなりますよということをちゃんとあらかじめ知っておいてもらうということだというふうに思います。
 その際に、今ゼロトレランス方式というのがございましたが、ここはゼロトレランス方式を取り入れろということではなくて、ゼロトレランス方式にも取り入れられている段階的指導、最初から頭ごなしに駄目だというのではなくて、最初は、ここにありますように、家庭連絡を行い今後の指導について協議するとか、その辺から入っていってということが、実はゼロトレランス方式の中に段階的指導ということで方法としてあるということで、この段階的指導等の方法を参考とするなどして、体系的で一貫した指導方法の確立に努めることなどに留意しつつ、各学校における生徒指導の一層の充実を図るように示したということでございます。

吉良よし子

段階的と言いますけど、もちろん段階を踏む指導というのは一定必要だと思いますけど、最終的に、先ほど言ったような事例では、別室指導を行われた結果、授業を受けられない、学ぶ権利が侵害されているんじゃないですかと、そこを伺っているんですけど、大臣、いかがですか。

国務大臣(林芳正君)

お配りいただいたこの福山の、福山市立A中学校ですか、ここで、先ほどの一番から行って五番ぐらいですか、特別室にて別室指導を実施すると、こういうルールが書いてございますので、これは見させていただきましたが、こういうルールの下で実際にどういう運用されておられるかというのは、今委員からの御指摘があってそういう事例があるという御発言でございましたけれども、その事例事例に基づいてちゃんと判断をされなければいけない問題であろうというふうに思っております。

吉良よし子

二〇〇六年の後、二〇〇七年にも通知出されているんですけど、でも、子供を教室に入れない場合であっても授業に代わる指導を行わなきゃいけないというふうなことも書いてあるわけですよ。若しくは、生徒指導提要の中にも、反省指導中に教科指導を行うことは大切だって、そういうことも書いてあるわけですよ。私が今紹介した事例というのはそれに反する事例だと言わざるを得ないと思うんです。
 問題は、別室指導だけじゃないんです、規定の中にある特別指導の中には警察等関係機関との連携という項目もあるわけなんですけれども、これに関わる事例も紹介したいと思います。
 現在中学三年生のある女子生徒は、化粧をしているということを疑われました。日頃からこの子は校則違反を繰り返し疑われている状況で、そういうことからの不信感から指導を避けたいと校内を逃げ回ったと。その是非は置いておいて、女子トイレの個室にこもったところ、女子教諭二人がドアをこじ開けて無理やりこの子を引きずり出したと。一人の教師が女子生徒の手をつかんだので、その手を振り払っただけなのに、それだけで対教師暴力だということで警察に通報されて逮捕されたんです。
 ひどいのは、逮捕されただけじゃなくて、手を振り払っただけなのに、学校側は警察に対し、教師の首を絞めて壁に教師を押し付けた、そういうふうに話したというんです。本人は、事実とは違う、手を振り払っただけだと一生懸命警察で訴えたんですけど、二晩留置された挙げ句、手を振り払っても首を絞めた場合でもどちらも傷害罪だから同じだと、認めなければ帰さないと言われて自白を強要されて、サインをさせられて帰ったというんです。
 実は、これ横で見ていたほかの生徒がいまして、いや、手振り払っただけだよと、首絞めたりなんかしていないよと、そのお友達が経過を話そうとしたのに、学校側はそれについても全く聞く耳を持たなかったというんですね。これはもう女子生徒本人もその友人も、そして保護者にとっても屈辱そのものだし、まさに保護者の皆さん、生徒たちもこの事件で学校に不信感を持ったと話されていました。
 私、当然だと思うんですけれども、人格の完成を目指すべき学校でこのようなひどい対応が許されるのでしょうか。大臣、いかがですか。

国務大臣(林芳正君)

個別のケースで、今御紹介がありましたけれども、先生の方の御主張とか生徒さん方の御主張とかいろんな御主張があるんだろうと、こういうふうに思いますので、個別のケースについて私がここで何らかの判断や見解を示すというのは差し控えたいと思いますが、先ほどお話のありました通知でございますが、生徒指導に当たっては、やはり個々の児童生徒の状況に応じて問題行動の背景や程度、それぞれの児童生徒が抱える問題などをきめ細かく把握して対応するように求めておるところでございますので、一人一人の児童生徒の人格を尊重して、個性の伸長を図るためにしっかりと指導をしていただければというふうに思っておるところでございます。

吉良よし子

個性の伸長を図ってきめ細やかな対応が必要だって、これは二〇〇六年の通知だけじゃなくて、そもそも生徒指導提要にもきちっと書かれていることなんですよね。しかし、やっぱり通知の中で一番に訴えられているのは厳格な指導なわけですよ。厳格にあらかじめ定められた罰則に基づき懲戒を与える、問答無用でと、そういう形になっている下で、きめ細かな、そういう背景を把握する対応が取れなくなっているのが今福山で起きている事例だということを私申し上げたいと思うんです。
 この福山で起きているこの規定の背景には、実際にこの二〇〇六年の先ほど来ある通知があるということは市議会で福山市の教育委員会が答弁しているわけです、この規定の背景にこの通知があると。やっぱりゼロトレランスに基づいたこの二〇〇六年の通知に基づいて、子供たちに対しては、規範意識が醸成されるどころか、子供と教師の信頼関係や関係性が崩されて、学ぶ権利まで奪われている、そういう事態が起きてしまっている。もう通知は撤回するしかないんじゃないでしょうか。大臣、いかがか、お答えください。

委員長(高階恵美子君)

時間が参っております。簡潔に答弁願います。

国務大臣(林芳正君)

ゼロトレランスとそれから段階的指導と通知の関係については、先ほど御答弁したとおりでございます。

吉良よし子

時間来ていますけど、午前の質疑では、先ほどもあったけど、個人の尊厳、自己肯定感、大事だっておっしゃっていたわけです。しかし、今起きているのは、それが踏みにじられている、この通知の下で。そういう事態だと、それはもう絶対に許してはならないということを強く申し上げて、質問を終わります。