学校事務、職員増こそ/「ジタハラ」の実態指摘/参院文教科学委
要約
日本共産党の吉良よし子議員は11月27日の参院文教科学委員会で、教員の労働時間の適正な把握を求め、学校事務職員に負担増を強いるなとただしました。
吉良氏は、教員も勤務時間把握が義務化されタイムカードの導入がすすむ一方で、出勤時の打刻ができても、出張やシステム上の制約で退勤時の打刻ができない場合があるほか、業務があるのに帰宅を強要するなどの「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態を指摘。柴山昌彦文部科学相は「実態にあわない記録を残すのは明らかに不適切」とする一方、「ジタハラ」には言及しませんでした。吉良氏は「教員に『早く帰れ』といって帰れるくらいなら毎日11時間も働いていない。授業も減らさず、人も増やさないで帰れというのはハラスメントだ」と批判しました。
吉良氏は、業務が増加している学校事務職員の配置が公立小中学校では1校1人で、平日は10~12時間働いている状況を示し、「これでいいのか」と質問。柴山文科相は「(配置に)限界がある」とする一方、「(文科省は)共同学校事務室体制をすすめ、加配措置している」と説明。吉良氏は、東京の共同学校事務体制では仕事量がかえって増えているとの現場の声を示し、事務職員の配置基準見直しと増員こそ必要だと主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
私は、前回に引き続いて、教職員の働き方について引き続き取り上げたいと思います。
まず、お配りしている資料一を御覧いただきたいと思います。
労働安全衛生法、これの改正によりまして、来年四月から公務員、教職員もその労働時間についての把握が義務付けられることになります。この間、多くの学校現場で校長の目視や教員からの自己申告によってその勤務時間管理が行われていた。その状況を踏まえれば、タイムカードなど客観的な方法で労働時間を把握するよう求めている、これは勤務実態を正確に把握する上で重要だと思います。
その一方で、聞き捨てならない事態もあるわけです。実際にタイムカードを導入しているある学校の教員は、出勤時は打刻ができる、けれども退勤時は打刻ができないんだという。どうやら学校側が終業時刻を一斉に打刻してしまって、教員が帰宅していようが若しくは残業していようが、一定の時間で全員退勤したことにしていると。このような一斉打刻というのはあってはならないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 柴山昌彦君)
初めて伺った事案でございます。
業務改善を進める基礎として、各学校において教職員の勤務時間を適正に管理することとしたわけでございます。帰宅していないにもかかわらず帰宅したとしてタイムカードを打刻するような実態と合わない記録を残すことは、明らかに不適切だと考えます。
中央教育審議会の中間まとめにおいても、勤務時間の把握を形式的に行うことが目的化し、真に必要な教育活動をおろそかにしたり、虚偽の記録を残す、又は残させたりすることがあってはならないと指摘されております。
文部科学省としては、これまでも各教育委員会に対して教師の勤務時間の適正な把握に関する取組を求めてきたところであり、今の御指摘も踏まえ、引き続き指導を徹底してまいりたいと考えております。
吉良よし子
指導徹底ということで、いずれにしても不適切だということですので、それは本当に徹底していただきたいと思うんですけれども、更にもう一つ伺いたいと思うんです。
形式的な記録は駄目だということですけど、例えば都内のある区では、その日中にやるべき業務が終わっていないにもかかわらず、管理職、学校長がその教員に対して早く帰りなさいと、全員帰ることを強要され、その結果、業務を持ち帰らざるを得なくなった、翌朝早くに出勤せざるを得ないような状況が生まれていると伺っています。
私、こうした帰宅の強要というのは、声掛けにとどまらず強要を迫るというやり方はまさにジタハラ、時短ハラスメントだと思うんですけれども、大臣、学校現場でこうした見た目の残業時間を短縮するために教員に対して威圧的に帰宅を強要するようなハラスメント、あってはならないことだと考えますが、いかがでしょうか。特に威圧的な言動により無理やり帰宅を迫る、そういうハラスメントは許さないと、そういう立場でよろしいでしょうか。
国務大臣(柴山昌彦君)
御指摘の事例につきましては、個別具体の状況や経緯ですとか背景を承知しておりませんので、ちょっと軽々なコメントはできないと思いますが、当然のことながら、どのような職場であれ、またどのような目的であれ、緊急避難的な場合を除いて有形力の行使などは全く許されないということは当然であります。
他方で、一般論としては、文部科学省が実施した平成二十八年度教員勤務実態調査の結果においても、例えば、ノー残業デーの実施回数が多ければ勤務時間が短いという分析結果となっておりまして、教職員が勤務時間を意識して働くことを促すような取組は有意義だと考えております。
子供たちにとっても貴重な資源である時間について、子供たちの時間を最大限に引き出すという観点から、優先順位を定めて最も効果的にその時間の配分を行うという意識を学校全体で共有することは重要であると考えておりまして、そのため、ノー残業デーなどにおいて学校を一定の時間に施錠するといった取組を行う場合においても、学校や教師が担うべき業務の明確化、適正化を図りながら勤務時間を効果的に配分することが大事だという意識を教職員で共有し、そのための教師の取組を支えるということが管理職の重要な役割であると今認識をしておりまして、そういった一環として穏当な形で進めていただければというように思っております。
吉良よし子
穏当な形でとありましたけどね、ノー残業デーなどでと。ただ、ノー残業デーがあれば勤務時間が減ると言っているけど、本当に勤務時間が減っているのかという問題があると思うんですよ、意識改革なんておっしゃいますけれどもね。いや、本当に、早く帰りなさいよと言われて早く帰れるんだったら、みんな帰っていると思うんです。
そうじゃなくて、十一時間も学校に残らなければならない、業務があるから帰れないわけですよ。なのにもかかわらず、そういう実態を放置したままただ帰れというのは、やはり私はハラスメントしか言いようがないと思うわけで、やはりそれは絶対に許さないんだと、そういう立場を文科省には取っていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。
国務大臣(柴山昌彦君)
御指摘のとおり、ほかのことを全くやらないで時短だけを強要するということは実効性がないということはおっしゃるとおりでありまして、その結果、我々としては、例えば、負担軽減のために、前回も申し上げましたけれども、教師でなければできない業務以外の多くの仕事を教師が担っている現状を抜本的に変えるための役割分担、適正化の着実な実施などの緊急対策を取りまとめているところでもありますし、また、これも紹介させていただいたところですけれども、小学校の英語教育のための専科教員千人の定数改善など、いろいろと取組を進めさせていただいております。
ですので、そういった取組ですとか、あるいはその時短に成功した学校でどのようなことをしたかということの例えば横展開の事案の研修なども進めていただいて、実効的な時短を穏当な形で是非進めていただきたいと考えております。
吉良よし子
穏当な形でと言いますけれども、いずれにしても、そういうジタハラ、ハラスメントは許されない、そして形式的な時間把握も許されない、適正に個別具体にしっかりと時間を把握して管理していただくと、それを是非学校現場に周知徹底をしていただきたいと思うのですが、その点も簡潔に答弁をお願いします。
国務大臣(柴山昌彦君)
適正な働き方改革を進めていくように周知をさせていただきたいと思います。
吉良よし子
先ほど来ありましたとおり、徹底はしていただきたいんですけれども、働き方改革というところで言われているのが業務の改善、適正化ということですけれども、教員の、じゃ、それを具体化すると教員の業務は一定適正化、減っていくかもしれないけれども、その分業務が増える人々が出てくると。その一つが学校の事務職員だと思うんです。
資料の二を見ていただきたいんですけれども、その緊急対策の中で書かれている五番や十二番や十三番については、学校事務職員に担わせるとか連携や協力を求めるということが書かれているわけですけれども、つまり、今回の働き方改革では学校事務職員の負担は増える、この理解でよろしいでしょうか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(柴山昌彦君)
まずは、学校や教師の業務の役割分担や適正化を着実に実行して教師の負担軽減を図るということが重要であります。教師でなければできない業務以外の多くの仕事を、業務を担っている現状を抜本的に変えることが重要でありまして、事務職員は、学校徴収金の徴収、管理や調査、統計への回答、学校行事の準備、運営などについて、その役割を積極的に果たすことが求められると思います。
ただ同時に、事務職員に過度の業務負担が掛かることを避けなければなりません。ですので、学校徴収金の公会計処理など、教育委員会事務局の主導による事務処理の効率化ですとか、あるいはスクールサポートスタッフ等外部人材の活用ですとか、また地方交付税交付金を活用した市町村費負担事務職員の充実、これを地財措置でやるですとか、採用、人事、研修を通じた事務職員の資質能力の向上ですとか、また昨年三月の義務標準法等改正により制度化された共同学校事務室の活用による事務処理の効率化と事務職員の職能の伸長などを図ることが重要だと考えております。
吉良よし子
いろいろおっしゃいましたけれども、効率化も図るとか様々言っていますけど、でも、やはりこの働き方改革見れば、事務職の負担は増えるのは明らかだと思うんです。
しかも、私、都内で働く学校事務職員の皆さんから直接話を伺っているんですけれども、特に先ほど申し上げたタイムカード、勤務時間管理、出退勤管理が相当大変だという話なんです。例えば、終業時刻前に打刻がされたとしたらば、その教員が時間休を取ったからなのか、例えば出張で学校を離れたからなのかなど、他の記録文書と確認しながら勤務実態とその打刻データとを一つ一つ突き合わせる帳尻合わせが必要になってくる、そういう作業を全部事務職員がやっていると。
だから、時間休などの勤務状況と出退勤管理、一元管理できるシステムであればまだしも、出退勤の時間だけを打刻するようなシステムであれば、結局そういう帳尻合わせに余計に時間が掛かってしまうなどという話も伺っている。こういう声一つ取っても、働き方改革によって事務職の負担が増えているのは間違いないわけです。
しかも、今までの事務職が、じゃ、本当に学校総務や財務だけだったのかというとそうではない、やはり教員の様々な任務を負担している。例えば、学校で飼育している動物のお世話なんかも含めて、学校現場で様々やっている話も聞いているわけですけど、そういう中で事務職の労働実態というのはどうなっているのかと。
ここで、厚労省と文科省の委託事業、過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業において、学校事務職員の勤務実態についても調べられているわけですが、この調査で、学校事務職員の勤務時間、一日何時間なのか、平均のものと最も忙しい時期の一日の平均、それぞれお答えください。簡潔にお願いします。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 永山賀久君)
先般公表されました御指摘の調査でございますけれども、これは、自己申告によりましてそれぞれの回答者の任意の時期の状況を回答すると、そういった調査方法だというふうに承知をいたしておりますけれども、そういった前提ではありますけれども、この報告書の結果によれば、学校の事務職員の平均勤務時間は、平日一日当たり、通常期では九時間四十三分、過去一年間で一番忙しかった時期では十一時間五十六分というふうになってございます。
吉良よし子
つまり、平日でも約十時間近く、繁忙期になるともう本当に十二時間、一日、学校で事務職員の皆さん働いている実態があるということなんです。時間だけ見ても教員と同様、多忙を極める職種だということはもはや明らかなわけですね。実際、こうした多忙の中で過労から心身に不調を来して職を辞したとか、在職中に仕事の最中に亡くなられたというお話も現場の職員の皆さんから、私、聞いているわけなんです。
これ、何でそうなるのかというと、やはり現場に足りないからだと思うんです。文科省の調査では、小学校でも中学校でも都道府県費による常勤の職員配置、現場に配置されている職員の数というのは平均で一人。その一人が、先ほど、タイムカードだけではなくて、校内の文書管理、旅費の計算、備品管理、学校ごとの来年度の予算策定、そしてその学校で働く全教職員の労働時間等の管理を一手に引き受けてやっていると。まあ非常勤も入っているという事態もありますけれども、非常勤の方は数日しかいないとか一部しかいないという状況なので、こういう状況からいっても、長時間勤務になるべくしてなっていると言わざるを得ないわけですね。
これだけ多忙を極めている学校事務職員の配置状況、現状のままでいいと大臣お考えなのか。現時点で事務職員足りていないという認識ありますかどうか、いかがでしょうか。
国務大臣(柴山昌彦君)
現在、全国三万校あるわけですね、公立小中学校。そこには、おおむね各学校に今おっしゃったように一名、都合三万人の事務職員が配置をされておりまして、学校における事務処理や学校経営の参画に当たっているわけです。
他方、チームとしての学校の機能強化の観点から、先ほどもちらっと紹介をさせていただいたとおり、昨年三月に義務標準法等を改正をいたしまして、学校教育法における事務職員の職務を、「事務に従事する。」から「事務をつかさどる。」とまず改正いたしまして、学校経営における事務職員の主体的な役割を明確化するとともに、公立小中学校の事務職員の配置は基本的に一校一人であり、事務職員の職能形成や効率的な事務処理には限界があることから、地教行法において複数の学校の事務組織を共同化しまして、機能強化を図るための共同学校事務室を位置付け、制度化を図るなど工夫をさせていただくというところだと思います。
このような共同学校事務体制を推進するために、共同化する場合には、インセンティブと申しますか、事務職員を加配して措置することといたしまして、平成三十年度予算においては、共同学校事務体制強化に係る事務職員の加配については前年度プラス四十人の千百七十五人を措置しているところでありまして、引き続きこういった形で取組を推進していきたいと考えております。
吉良よし子
いろいろおっしゃいましたけど、まず、限界があると、現状の三万人体制、各校一人という体制では限界があるという認識があるというのは本当に重要だと思うわけです。その上で加配だと。先ほど言われた共同学校事務体制を強化していって、今度の概算要求では四百人だということをおっしゃっているわけですけれども、それは本当に少ない中身だし、共同学校事務体制を取っていないところにはそれは加配されないということになるわけですから、無理やり共同学校事務をどんどん推進していくということになりかねないと。
実際、じゃ、都内で共同学校事務、試行しているある自治体のアンケートを聞いてみました。本当にこの共同学校事務で効率化されたのか、業務負担軽減されたのかと。そうしたら、副校長の事務負担については確かにやや軽減されたという声がある一方で、全体の仕事量としては変わっていないと感じるという声が多数です。また、効率されたかという問いにも、分からない、そう思わないという声の方が、変わった、効率化されたという声よりも多いというのが実態です。さらに、個別の教職員対応や各校文書決裁等、共同事務室内で完結しない事務も多くて、それが二度手間、三度手間となって逆に業務負担が増えていると感じることがあるとか、共同実施の拠点校になったところではよかったという話を聞くが、反面、連携校では、学校に正規職員がいなくなったので一人はいてほしいという話があるとか、また様々、教員と事務職員が直接やり取りしていたものが、試行後には都の事務職員とその間に都の支援員、教員というまた様々話をしなくてはならなくなって逆に効率が悪くなったと、そういう声が上がっているわけです。
共同学校事務、全てうまくいっていないとは言いませんけれども、今やらなければならないのは、そういう共同学校事務を広げるじゃなくて、やはり各学校現場に常勤の学校事務職員を抜本的に増やしていく、配置基準の見直し、それが必要なのではないですか。大臣、いかがでしょう。
政府参考人(永山賀久君)
今おっしゃられました事務職員の体制でございますけれども、私どもとしては、共同事務、共同学校事務室の推進ということで改善の増を要求しているところでございますが、事務を共同処理することによりまして、学校間の事務の標準化ですとか、あるいは教材などの共同購入によるコストの低減、さらにはOJTなどで事務職員の育成あるいは資質の向上等々の効果も期待されるというふうに考えておりまして、こういった改善につきまして努めてまいりたいと思ってございます。
吉良よし子
お答えになっていないんですけれども、私は基準を見直せと言っているんです。複数配置が必要だと、それはもう事務職員皆さんの声なんですよ。その声に応える気がないのかと言っているんですけど、大臣、いかがですか。
委員長(上野通子君)
お時間ですので、答弁は簡潔にお願いします。
国務大臣(柴山昌彦君)
だから、まず、人数を全く増やさないと言っているわけではありませんので、今申し上げたように、創意工夫をしているところに加配をするということを通じて、またそういったうまくいっているところもいっていないところもあるというのであれば、うまくいっているところのやはり横展開をしっかりと応援をしていくということを考えていきたいと考えております。
委員長(上野通子君)
時間ですので、おまとめください。
吉良よし子
それはそれとして、やはり複数配置、そのことを考えないと、業務削減にもならないし、働き方改革にも絶対にならないということを申し上げて、質問を終わります。