婦人相談員「専門職」化を/参院委で吉良議員が要求
要約
日本共産党の吉良よし子議員は23日の参院総務委員会で、婦人相談員を安定的に相談・支援ができる「専門職」に位置づけるよう求めました。
吉良氏は、DV・性暴力被害や生活困窮など女性が抱える困難について相談を受け、生活再建への支援を行う婦人相談員の役割が重要になっていると指摘。石田真敏総務相は「婦人相談員は広い範囲にわたり役割を果たしており重要な役割を担っている」と認めました。
吉良氏は、市区における婦人相談員の設置率が約4割にとどまることに触れ、すべての市区への設置を目指すべきだと言及。厚生労働省の新谷正義大臣政務官は「相談者の身近な場所で相談・支援が行われることは重要だ。配置が広がるよう取り組みたい」と答弁しました。
一会計年度ごとに契約更新・雇い止めができる「会計年度任用職員制度」(2020年度実施)の対象に婦人相談員が含まれています。この問題について吉良氏は「傷ついた女性と信頼関係を築き、支援へつなぐのが婦人相談員だ。雇い止めで相談員が次々代われば被害者が相談をやめる恐れがある」と指摘。安定的・継続的に支援できる「異動や兼務のない専門職」に位置づけるよう求めました。
婦人相談員の処遇について吉良氏は、「婦人相談員の給料だけで生活ができずダブルワークをする方もいる」と述べ、処遇改善や実態調査を迫りました。厚労省は勤務実態などの実態調査を行うと答弁しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子でございます。今日は、総務委員会の場で質問する機会をいただきまして、感謝を申し上げるものです。
さて、今日は、婦人相談員について伺いたいと思います。
この婦人相談員は、都道府県や市区など自治体が公的に配置しているものでありますが、まず、この婦人相談員による婦人保護事業の根拠法並びにその対象はどのような女性たちなのか、厚労省に御説明をいただきたいと思います。
政府参考人(厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長 藤原朋子君)
お答え申し上げます。
婦人保護事業でございますけれども、昭和三十一年に制定をされました売春防止法、これを根拠に実施をしているものでございます。その後、平成十三年に制定されました配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律などによりまして、事業の対象者が順次追加、拡大をされてきたところでございます。
現在の対象者でございますけれども、先ほど申し上げました売春防止法に直接基づく対象の方といたしまして、売春経歴を有する方で、現に保護、援助を必要とする状態にあると認められる者、あるいは、売春経歴は有しないけれども、生活歴などから判断して現に売春を行うおそれがあると認められるような者、これに加えまして、DV法の支援対象ということで、配偶者からの暴力を受けた方、あるいは、これは通知上の対象でございますけれども、家族関係の破綻ですとか生活困窮等正常な生活を営む上で困難な問題を有していて、支援する機関がほかになかなかないというようなことで現に保護、援助を必要とする状態にあると認められる者と。これ以外にも、人身取引被害を受けた者ですとかストーカー被害者、こういったことが対象となってございます。
吉良よし子
御説明いただきましたとおり、根拠法も幅広く、また対象もとても広いということが分かると思うんです。
私がお話を伺いました婦人相談員の方々からも、DV被害を受けた女性の保護のほかに、JKビジネスなどの性暴力の被害者となった十代から二十代前半の若い女性、若しくは単身の高齢女性、日本人と結婚して日本で暮らす外国人女性など、あらゆる女性の総合相談窓口になっているというお話もありました。
暴力を受けた女性の緊急保護から、警察や司法、福祉部局など公的サービスへつないで、再び自立していけるまでの支援を行う、文字どおり女性たちの人権を守る最後のとりでとしての役割を担っているのが婦人相談員であります。
また、女性本人だけではなく、この間繰り返されている児童虐待を防ぐ上でも重要な役割があるわけです。DV家庭には虐待あり、虐待の陰にはDVありとNPO法人全国シェルターネットが指摘しておりまして、DVと虐待を一つながりのものと捉え、女性と子供を連動して守る支援システムが必要とも述べられているわけです。
それこそ、この間、千葉県野田市で起きた虐待死事件では、子供だけではなく、母親へのDV被害も報告されているわけでして、もしそのときに、子供はもちろんのこと、母親に対してもその保護、支援の手が差し伸べられていたら、婦人相談員とつながっていたら、幼い命が失われるという最悪の事態、免れたのではなかったのか、こうした事例を踏まえれば、婦人相談員の役割というのはますます重要になってきていると思うのですが、総務大臣、いかがでしょうか。政治家としてお答えください。
国務大臣(総務大臣 石田真敏君)
今の御議論聞かせていただいておりまして、婦人相談員については、非常に幅広い、当初は売春防止法において要保護女子の発見、相談、指導等を行うこととされておりましたけれども、その後、今御議論いただいたような、DV防止法を始めいろんな幅広い場面で相談に乗っておられるということで、重要な役割を担っていただいていると考えております。
吉良よし子
重要な役割担っていると大臣からも答弁いただきました。
その上で、じゃ、この婦人相談員の配置状況、今どうなっているのかというところ、確認したいと思うんです。厚労省、その全体の数、都道府県、市区、それぞれの人数、特に市区の配置率どうなっているのか、お答えいただければと思います。
政府参考人(藤原朋子君)
お答え申し上げます。
婦人相談員につきましては、根拠法となる売春防止法におきまして、都道府県は配置が義務化をされておりまして、市区につきましては任意配置というふうな仕組みになってございます。
具体的な配置状況でございますけれども、平成二十九年四月一日現在の数字でございますが、都道府県に四百六十六人、市区に九百八十一人、合計千四百四十七人が配置をされてございます。
また、この市区の婦人相談員の配置の率でございますけれども、全国の市区数が八百十四に対しまして婦人相談員が配置をされている市区数が三百四十八となっておりまして、この割合でいいますと約四割という状況でございます。
吉良よし子
約四割と。細かい数字で言うと四二・八%だということを伺っているわけです。
先ほどおっしゃられたとおり、都道府県は必置であるものの、市区はできる規定の任意設置で、もう町村においては法律の適用外となっているわけですが、この婦人相談員の果たしている役割に照らせば、やはり各自治体、せめて市区全てにこうした相談員配置するべきだと私思うんですけれども。
今日、厚労政務官にも来ていただいています。やはり、この市区の設置率四割、現状をもっと引き上げて全ての市区にせめて設置していく、これ目指していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
大臣政務官(厚生労働大臣政務官 新谷正義君)
お答え申し上げます。
先ほど申し上げたとおりでございますけれども、市区のうち四割の自治体でこの婦人相談員が置かれているというところでございます。地方分権の観点もございまして、市区に必置とするのは難しいところでございますが、相談者にとって身近な場所において相談、支援が行われることは重要でございまして、これまでも全国会議を通じて配置の拡充について適切に検討いただくようお願いをしているところでございます。
さらに、三月十九日に関係閣僚会議において決定されたことでございますが、児童虐待防止対策の抜本的強化について、このことにおきまして、DV対応と児童虐待との連携強化に資するよう、婦人相談員が置かれていない市区において配置について検討するように要請をすることとしておりまして、配置が広がるように取り組んでまいりたいと、そのように考えております。
吉良よし子
配置が広がるようにということでした。
是非一〇〇%を、できる規定ではあるものの目指していくということでお願いしたいと思いますし、総務大臣も、所管ではないものの、やはり市区の状況でありますから、現在の配置が四割にとどまっている実態について、やはり総務大臣としても増やすべき立場にあるということでよろしいかどうか、その点もお答えいただければと思います。
国務大臣(石田真敏君)
先ほども答弁申し上げましたように、婦人相談員の皆さんは広い範囲にわたって今役割を果たしていただいておりまして、重要な役割を担っていただいているという認識をしております。
その上で、市及び特別区における婦人相談員の配置につきましては、まずは厚労省におきまして十分御検討いただくべき問題だというふうに考えております。
吉良よし子
まずは厚労省でとおっしゃっていますけれども、やはり自治体が設置をしたくてもできない状況の背景には、その各自治体の財政状況の問題もあるかと思うわけです。やはり、設置したいと思った自治体が婦人相談員を適切に配置できるような応援を総務大臣としてもしていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(石田真敏君)
そういうことも含めまして、まずは厚労省で御検討いただいた上で、我々として対応させていただくということであります。
吉良よし子
厚労省任せ若しくは自治体任せでは限界があるわけですから、総務大臣には是非とも、各自治体が婦人相談員を配置したいと、設置したいと思ったときにそれができるように、言わば人減らしじゃなくて、必要な人をちゃんと増やせる財政措置をしていただくよう強く求めるものでございます。
そして、同時に、この婦人相談員の雇用が継続的、安定的に保障されているかどうかというのも大事な論点だと思うわけです。二〇二〇年度四月から会計年度任用職員制度というのがスタートするわけですけれども、現在の臨時・非常勤職員の多くがこの制度に移行することとなると伺っております。婦人相談員の場合、その多くが非常勤職員の扱いになっているわけですけれども、その婦人相談員もこの会計年度任用職員への移行の対象となり得ると、そういうことでしょうか。総務省、お答えください。
政府参考人(総務省自治行政局公務員部長 大村慎一君)
お答えいたします。
臨時・非常勤職員の適正な任用、勤務条件の確保を図る観点から、御指摘のように、地方公務員法等の改正によりまして、一般職の会計年度任用職員制度を創設したところでございます。このため、令和二年度以降に地方公共団体が非常勤の婦人相談員の方を任用する場合にはこの制度の対象となり、会計年度任用職員として任用することになります。
なお、同制度におきましては、任用服務規律等の整備を図るとともに、会計年度任用職員について期末手当の支給を可能とするものでございまして、その処遇改善にも資するものと考えております。
吉良よし子
会計年度任用職員の移行の対象にもなり得るという話だったわけですけれども、総務省のこの会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル第二版の方を読みますと、その中に、会計年度任用の職は、会計年度ごとにその職の必要性が吟味される新たに設置された職と位置づけられるべきものである等の話が書かれているわけですけれども、厚労省はこの間、この婦人相談員の業務というのは、高い専門性と切れ目のない継続的な相談支援を行うことが求められていると様々な場面で答弁されていると思うわけです。
ということは、切れ目のない継続的な相談支援を行うことが求められている婦人相談員の業務というのは、会計年度ごとにその職が吟味されるべき新たに設置された職と位置付けられる職ではないと、会計年度任用職に当たる職には当てはまらないんじゃないかと私思うんですけれども、総務大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(石田真敏君)
この任用形態については、厚労省が所管をされます売春防止法の一部改正によりまして、平成二十九年度より婦人相談員は非常勤とする規定が削除されているところでございます。
また、その任用に当たっては、職務内容、勤務形態等に応じまして、任期の定めのない常勤職員やあるいは会計年度任用職員等のうちいずれが適当か、基本的には各地方公共団体において適切に判断されるべきものと考えておりまして、婦人相談員の任用形態の在り方につきましては厚労省において十分御検討いただくべき問題だと考えております。
吉良よし子
厚労省でもこの職の位置付け等についてこの間も議論されているし、これからも議論されると聞いてはいるんですが、やはり現場では、この会計年度任用職員になることで雇い止め若しくは解雇されるのではないかという不安が広がっているわけなんです。
しかし、この婦人相談員というのは、そういう会計年度ごとに雇い止め可能な仕事ではないはずなんですね。何しろ相談に来るのは、DV被害を始め、様々な事情からあらゆる意味で傷つき苦しんでいる女性なわけです。場合によっては人間不信に陥っている場合だってあるわけで、そうした女性に寄り添ってお話を聞いて、その心を開いて信頼関係を築いて、初めて必要な支援につなげていくことができると、それが婦人相談員の役割なわけですけど、それが一会計年度ごと、場合によっては一年とか三年、五年などの短い期間で雇い止めとか解雇とかになってしまって、次々とその対応する相談員が替わってしまうということになれば、もうそのたびに信頼関係をつくり直さなければならない事態になってしまうと。場合によっては、それがきっかけになって相談が必要な女性が相談するのをやめてしまうとか、そういう危険もあるわけです。事は人の命にも関わる重大な事案に関わる相談なわけですから、自治体任せで雇い止めを放置するとか雇い止め可能にしてしまうというのはやはり問題じゃないかと私思うんですね。
実際、婦人相談員の皆さんからは、専門職として位置付けてほしいんだと、継続的、安定的に相談支援が行えるよう、原則異動や兼務のない、任期の定めもない専門職として位置付けてほしいんだという声を聞いているわけです。
ですから、総務大臣、是非、この婦人相談員について、重要な役割だと先ほども答弁あったわけですから、各自治体で会計年度任用職員へ移行するというのをただ容認するということではなくて、それを止めていく、せめて今従事している婦人相談員の皆さんが雇い止め、解雇などされないように周知徹底すべきかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。
国務大臣(石田真敏君)
いろいろ御議論いただきまして、私どもももう先ほど答弁申し上げましたように、婦人相談員の仕事の重要性ということについては認識をしておるわけでございまして、今日までも厚生労働省においては婦人相談員の国庫補助基準額を順次引き上げる等の処遇改善を図ってこられているわけでございまして、先ほど来の議論の任用の形態等につきましても、やはりまずは厚労省の方で御検討いただいて、我々総務省としてはその上で対応させていただくということになるわけであります。
吉良よし子
まずは厚労省厚労省とおっしゃいますけれども、やはり会計年度任用職員等雇い止めが可能な状態にしてしまうと、各自治体での本当に雇い止め、解雇というのが実際起きてしまう危険があるわけです。
是非とも、総務大臣の方からもその婦人相談員の役割の重要性について各自治体に対して徹底していただきたいと思うんですが、その点もう一度いかがでしょう。
国務大臣(石田真敏君)
この婦人相談員さんの活動、地方にとって先ほど来申し上げているように非常に重要な役割を果たしていただいているわけでありますけれども、一方で、この問題につきまして、総務省の所管外であります。ですから、まずは所管されている厚労省の方できちっと検討していただくということが、これは行政の成り立ちの上から基本的なことだと思っておりますので、御理解を賜りたいと思います。
吉良よし子
所管外とおっしゃいますけれども、設置するのは各自治体なわけです。だから、自治体のことを所管する総務大臣として、やはりそういう財政的な面も含めてきちんと自治体が適切に婦人相談員を継続して雇用し続けられるように対応をお願いしているということなんで、是非それは前向きに受け止めていただきたいと思います。
その上で、一言言っておきますけれども、任期の定めのない常勤にするという議論もあるとも伺っておりますけれども、繰り返しますけど、婦人相談員の皆さん、単なる常勤化求めているわけじゃなくて、常勤となっても異動が繰り返されてしまえば、先ほども言ったように相談が断ち切られてしまう問題はやっぱり出てきてしまうわけですから、その専門性を認め、原則異動なく雇い止めのない専門職としての位置付けを求めていらっしゃるということを繰り返し申し上げておきたいと思います。
その上で、最後に処遇改善についてもお聞きしておきたいと思います。時間なくなってきましたけれども、お配りした資料も御覧いただきたいと思います。
先ほど大臣からも御紹介ありましたとおり、厚労省では、処遇改善ということで、現在の手当の上限、十九万一千八百円に引き上げられたわけです。それは、この役割の重要性に鑑みた処遇改善だと思うわけですけれども、じゃ、実際はどうなのかというところでいくと、この全国婦人相談員連絡協議会の調べによると、二〇一八年四月の時点で十九万円以上の給料をもらっている相談員というのは全体の三割にとどまっているわけです。
こう見ると、いや、単に勤続年数高い方はちゃんと一定の処遇受けているのかなと思われる方もいるかもしれないんですけど、そうじゃなくて、要するに非常勤の方が多いわけですから、もう二十年働いている相談員であってもずっと給料が上がらないというのは往々にしてあるわけです。二十年働いている相談員と今年入った新人が同じ給料ということもある。むしろ地域の格差が問題で、この分布というのは、つまりは地域間の格差がこれだけあるんだということで是非御覧いただきたいと思うわけですけれども、この皆さん、本当にこれだけでは、婦人相談員の給料だけでは生活できないので、もうダブルワークもしなきゃいけないなんという事態もあると聞いているわけなんです。
やはりこれをこのまま放置していくわけにはいかないと、処遇改善がちゃんとされるようにしなければならないと思うわけですけれども、総務大臣、やはり処遇改善へ向けて各自治体でも取り組むべきという御認識あるかどうかということ、それから、厚労省にはこうした実態の調査、しっかりしていただきたいと思うので、その点について、最後それぞれ、大臣と厚労省からお答えをいただきたいと思います。
国務大臣(石田真敏君)
先ほど少し述べさせていただきましたけれども、この婦人相談員の方々の処遇改善につきましては、厚労省の方におきまして国庫補助基準額を順次引き上げてこられているわけでございまして、その国庫補助基準額の残り半分については総務省として交付税で措置をさせていただいているわけでありまして、先ほど来私の方から申し上げておりますのは、まず全体について厚労省の方で御決定をいただくと、その残りの部分について総務省としてカバーさせていただくということですので、先ほど来御質問いただいておりますけれども、我々としては婦人相談員さんの職務の重要性は認識をいたしておりますけれども、基本的には、所管の厚労省において全体像についてまず御議論いただくということが重要であろうというふうに考えておるわけであります。
政府参考人(藤原朋子君)
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、婦人相談員、高い専門性、そして切れ目のない継続的な相談支援を行うということで重要というふうに認識をしておりまして、これまでも婦人相談員の手当に関する国庫補助基準額を平成二十九年度、三十年度と改善を図ってまいりました。委員お話あったとおり、現在は月額最大で十九万千八百円ということでございます。
この効果でございますけれども、実際この引上げの効果がどうであったのかということについて、この国庫補助基準額の引上げによって手当額の増につながったかどうか、あるいは勤務実態とか資格の有無とか、そういった全体についても含めまして、今年度、自治体に対する実態調査を行っていきたいというふうに考えております。
吉良よし子
是非、処遇改善に向けて、総務省そして厚労省、連携して取り組んでいただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。