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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第198通常国会

大学等修学支援法案 反対討論

議事録

吉良よし子

私は、日本共産党を代表し、大学等における修学の支援に関する法律案に反対の討論を行います。
 本法案に反対する第一の理由は、修学支援の財源に消費税一〇%への増税分を充てると法案で明記をしていることです。
 本法案は、真に支援が必要な低所得者世帯、一部の学生を対象に学費の減免、給付型奨学金の支給を行うものですが、この財源を前提にするならば、その支援対象者を拡大するとき、更なる消費税増税が押し付けられる懸念が生まれます。経済的理由により修学が困難な低所得者世帯の学生を支援するとしながら、低所得世帯ほど負担の重い消費税をその財源とすることは許されません。何よりも、消費税は、支援の対象となる学生にも対象とならない学生にも重い負担となってしまいます。
 私大教連の調査では、家賃を除いた一日当たりの学生の生活費は僅か六百七十七円です。参考人からは、今日は一日、大学で一円も使っていませんという学生と日々接していますので、そこまで大変なんだということから出発しないと駄目なんじゃないでしょうかとの問いかけも出されました。ここに消費税増税を押し付けるなんて、とんでもない暴挙です。見かけ倒しの高等教育無償化を口実に、消費税増税という重い負担を国民に押し付けることはやめるべきです。
 本法案に反対する第二の理由は、支援対象とする大学、個人、それぞれに厳しい要件を設けることにより、学生の教育の機会均等を阻むことになるからです。
 本来、修学支援とは、それぞれの学生が自ら選んだ大学でお金の心配なく学ぶことができるよう支援することです。それなのに、本法案では、支援対象とする大学等に対し機関要件を設け、政府の方針に従わない大学等を選別し、支援対象から排除しています。
 この機関要件を設ける理由について、文科省は、社会で自立し活躍するには大学等での勉学が職業等に結び付くことが必要などと言いますが、委員会での参考人質疑では、こうした実学重視の機関要件に対し、既に、日本は諸外国と比べれば極めて学部構成は実学に偏っている、ヨーロッパやアメリカと比較してはるかに実学部門が大きいという特徴を持っているのに、なおかつそれを言うというのは、ちょっと国際比較から考えてバランスを欠いているとの指摘もあったところです。
 また、文科省は、一、負債が資産を上回っている、二、三年連続赤字決算、三、三年連続収容定員が八割に満たない、この三つに当てはまる大学は経営に問題があるとして、支援の対象から外すとしています。三つの条件全てに当てはまる大学は現時点で十法人程度だと言いますが、この条件に一つないし二つ当てはまる大学は百から二百程度存在することが質疑で明らかになりました。このままでは、今後支援対象から除外される大学が更に拡大しかねません。
 参考人からは、定員が埋まっていないことイコールその大学の質がなっていないとか、あるいはその努力が不足しているというふうにイコールで結ぶことはできない、大学の立地であるとか、そこでの人口規模とか、あるいはこの間の社会の変化とかいうことが影響しているとの指摘もあったとおり、現在、経営が厳しい私立大学などの多くが地方の中小規模の大学です。それらの大学を修学支援の対象から外したら、更に学生が集まらなくなり、定員割れがますます進み、大学の再編、淘汰が加速しかねません。地域社会で奮闘している地方の中小規模大学を苦境に立たせ、大都市圏と地方の教育格差を更に拡大させることを見過ごすわけにはいきません。
 さらに、学生個人に対する成績要件も問題です。
 本法案では、進学後の学生の成績等の状況に応じて警告を出す、支給を打ち切ることもできるとしています。しかし、本法案で支援対象となっている非課税世帯の学生であっても、私学であれば学費は全額免除にはなりません。この学生たちが残りの学費の負担を賄うためにアルバイトをし、どうしても出席日数が足らない、学業成績が基準に達しないなどの事情は十分に起こり得ることです。しかも、成績評価で下位四分の一といった、学生本人が努力しても必ずしも乗り越えられない相対的な順位付けまで指標にしており、本人の努力の有無にかかわらず、一定の数の学生が途中で支給を打ち切られる可能性も否定できません。
 こうして対象となる大学等を狭め、学生個人にもハードルを課すことで、学生の大学選択の自由を奪い、進学機会を狭めてしまうような要件は付けるべきではありません。
 本法案に反対する第三の理由は、本法案が高等教育の無償化に資するとは到底言えないからです。
 文部科学大臣は、質疑の中で、本法案により学費は下がらないと公言した上、各大学が消費税増税等を理由にして学費の値上げを行うことを否定しませんでした。
 この間、安倍政権は、国民に政策内容を分かりやすく伝える観点から高等教育の無償化という表現を用いていると言いますが、高等教育無償化という表現は、学費の値下げをしないこの法案の説明にふさわしくありません。
 大臣自身、法案の内容を踏まえて、法案本文には無償化という表現を用いていないともおっしゃったのですから、この法案が高等教育無償化であるなどという間違った説明をするべきではありません。
 文部科学大臣は、中間所得世帯の支援の必要性についての質問に対し、低所得世帯以外は奨学金の拡充により進学機会が開かれているなどと答えています。しかし、大臣は、中間所得層も含め、今も多くの学生が利用するローン型の奨学金が将来の重い負担になっている事実を認識されていないのでしょうか。
 諸外国の貸与奨学金制度の場合、二割あるいは三割ぐらいのデフォルトをつくっている。つまり、一定の延滞とか貸倒れがあることをあらかじめ組み込んだ制度設計にしています。ところが、我が国の貸与奨学金の返還率、回収率は実に九割となっている。その背景には、回収率を上げろという政府の掛け声に基づく機構の無理な回収があるんです。借りたものは返せという圧力、少しでも延滞したらブラックリストに登録されるなどのペナルティー、こうした圧力の下、どんなに低賃金でも生活が苦しくても、無理をして、頑張って頑張って奨学金の返済をしているこの若者の現状にこそ目を向けるべきではないでしょうか。
 学生や若者への支援をするというならば、将来の重い負担となってしまうローン型の奨学金をせめて無利子のみにすることが必要です。今、奨学金返済に苦しんでいる皆さんの救済策として、猶予期間の延長や延滞金の廃止なども必要です。そして、何より、全ての学生の学費そのものの値下げにこそ踏み出すべきではないでしょうか。
 私たち日本共産党は、国民の教育費負担をこれ以上増やさない、高等教育予算の抜本的な拡充へ、真の高等教育無償化を目指して、皆さんと力を合わせ頑張り抜く決意を申し述べて、討論を終わります。