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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第198通常国会

奨学金、無理な回収も/参院文科委参考人質疑

要約

国民の声届ける論戦
 「高等教育無償化」を掲げる大学等修学支援法案についての参考人質疑が25日、参院文教科学委員会で行われました。
 大内裕和中京大教授は「高等教育無償化の法案とは呼べない」と述べ、岩重佳治奨学金問題対策全国会議事務局長・弁護士は「逆進性のある消費税でまかなうというのは矛盾だ」とし、「中間層の問題が取り残されている。貸与奨学金の返還制度に手がつけられていない」と発言しました。
 吉良よし子議員は、学費値上げについて質問。村田治関西学院大学長は今後も「当然のことながら学費を上げざるを得ない」と答えました。
 吉良氏は、法案で支援の対象となる大学の要件が設定され、職業に直結した勉学、実学を重視していることについて質問。大内氏は、「日本は諸外国と比べれば実学に偏っている。国際比較から考えてバランスを欠いている」として、定員割れ大学を支援の対象から外すことについても「大学の質とは関係ない」と述べました。
 吉良氏は、貸与奨学金の回収率が9割を超えていることについて質問。岩重氏は「無理な回収や無理な返済をしているのではないか」と述べ、諸外国の貸与奨学金制度では2~3割の延滞を見込んでいると紹介。日本の回収率の高さは「耐える強さに乗っかって甘えている」と述べました。

しんぶん赤旗 2019年05月01日付より抜粋

議事録

吉良よし子

日本共産党の吉良よし子です。
 今日は三人の参考人の皆様、本当にありがとうございます。
 先ほど来、本法案の財源について議論になっております消費税増税についてですが、この消費税増税というのは、やはり学生の皆さんにも、そして大学の経営にも大きな影響を与えるものだと考えております。先日の委員会では、消費税増税に伴って大学の経費が掛かることで、結局は大学の学費を値上げせざるを得ない状況もあり得るんじゃないかという話も出てきているんですが、その点について、村田参考人、その消費税増税による大学経営への影響、学費への反映どうなのかというところを聞きたいのが一点。
 それから、大内参考人、そして岩重参考人には、学生、また若者へのこの消費税増税の影響、特にその生活実態に照らしての影響について、是非お話しいただければと思います。

参考人(関西学院大学学長 村田治君)

ありがとうございました。
 まず、消費税増税につきましては、消費税増税だから学費をという考えは持ってございません。
 ただ、先ほども少し申し上げましたように、今教育の質が問われておりまして、欧米の大学と比べまして、特に国立大学と私立大学比べた場合に一番重要なポイントはいわゆるST比、学生教員比率というようなものがございまして、これが大きな教育の質を見る一つの客観的な指標となってございます。
 当然、これを改善するためには教員一人当たりの学生数を減らしていかないと、当然一人の先生が見る学生数が少なくなればなるほどいい教育ができるわけです。当然、一方で、全体の支出というのはある程度決まっておりますので、そうなりますと、この教育の質を改善していくためには、私立大学の場合は九割が学費で賄ってございますので、当然のことながら学費を上げざるを得ない、上げていかざるを得ないと、こういう状況にあると御理解いただければと思います。
 消費税云々よりも、むしろそれが大きいと考えてございます。

参考人(中京大学国際教養学部教授 大内裕和君)

先ほど述べましたように、一日に使えるお金が六百七十七円まで来ているわけですから、ちょっと逼迫した状況にもうなっているということですから、そこに消費税が加わりますと大変だというふうに考えます。六百七十七円と言いましたが、今日は一日、大学で一円も使っていませんという学生と日々接していますので、そこまで大変なんだということから出発しないと駄目なんじゃないでしょうか。
 ですから、ここでの消費税値上げは、学生生活に与える影響は大きいと思います。

参考人(奨学金問題対策全国会議事務局長 弁護士 岩重佳治君)

本当に学生さん大変なんですよね。みんなおなかすかせているんですね、成長するべき時期に。それから、やっぱり仕送りができないということで、遠くから三時間掛けて通っているという学生さんもいらっしゃるんですよね。そういう中で消費税の負担が増えるということは、学生さんの生活に対する負担がかなり厳しくなるということは確かにあると思います。

吉良よし子

ありがとうございます。
 やはり、学生を支援するという目的のこの法案で消費税を財源にすることの矛盾というのがよく分かったと思いますし、また、大学の質を向上するためにも大学への予算を増やすということがまず真っ先にやるべきことなのだなというお話がよく分かったと思います。
 次に、機関要件についても伺いたいのですが、これ、大内参考人に伺いたいと思うんです。
 やはり、機関要件を課す中で、収容定員割れしている大学等を支援対象から外すということが挙げられているわけですが、収容定員割れしている経営が厳しい私立大学の多くは、地方の中小規模の大学だと思うんです。それを対象から外してしまうと、まさに学生が集まらず定員割れ更に加速するのではないかと、地方で奮闘している中小規模大学を更に苦境に立たせる、今以上に大都市圏と地方の教育格差が拡大しかねないのではないかと思うのですが、その点についてどうかという点が一点と、もう一点、やはり、こういう機関要件を課す理由について、社会で自立し活躍するには大学等での勉学が職業等に結び付くことが必要であるというふうにされているわけですけど、こうした職業に直結した勉学、実学を重視するような機関要件を課すというのは大学の教育の在り方としてどう思うか。その二点、お伺いできればと思います。

参考人(大内裕和君)

両方ともとても大事な問題だと思います。
 定員割れの問題というのは、これは大学の研究、教育の水準と無関係とは言いませんけれども、しかし、大学の研究や教育の水準と定員が埋まる埋まらないが直結しているかというと、そんなことはないんです。それは、大学の立地であるとか、そこでの人口規模とか、あるいはこの間の社会の変化とかということが影響しているわけで、定員が埋まっていないことイコールその大学自体の質がなっていないとか、あるいはその努力が不足しているというふうにイコールで結ぶことはできないですね。
 実際に、これは明らかに、人口の点からいっても、また進学率の点からいっても、都市圏と地方には差がある。しかも、今言われたような形での定員割れの大学に対する厳しい措置がとられますと、都市と地方との格差は大学が持っている経済効果も含めて拡大するでしょうし、また、先ほど述べたように仕送り困難な状況ですから、とても自宅から通うという状況は強まっていますので、そういう高等教育機関が少ないところでなおかつそういう措置がとられれば、地方の学生たちの進学機会が制約されるという問題を持っていると考えます。
 二つ目の実学についてですけれども、これは、先ほど村田参考人の方からも学部による違いがあるという話が出ましたが、本当にそうでありまして、実学と結び付きやすい学問とそうでない学問とがあって、しかもその両方によって大学というのは成り立っているんですね。
 特に指摘したいのは、実は日本は諸外国と比べれば極めて学部構成は実学に偏っているわけです。東京大学でこの間、女性学生の比率が低いということがメディアで報道されていますが、あれは東京大学の問題というよりも、東京大学で最大の学生数を持っている学部が女性比率が少ない工学部であるということが影響しているんですね。これは、工学部になぜ女性が行かないかということはまた別の問題ですけれども、これはもう統計的に、日本の最も技術や実学と近い工学部というのは女性比率が低い。七つの帝国大学でも、東大と京大はやや文理のバランスが取れていますが、他の五つの帝国大学は、定員も予算も圧倒的に理科系、しかも最大は工学部という、そういう学部構成になっているんですよ。それは、もうそもそも日本が近代国家をつくったときから大学の中に工学部を入れていて、ヨーロッパよりもはるかに実学重視の構造をつくっているわけですね。
 でも、世界的には大学というのは実学と虚学というものの両方によって成り立っていて、例えばアメリカのマサチューセッツ工科大学というのは、工科大学を名のっていますが、当然大学内に極めて虚学、優秀な人文学部門を持っているんですね。それが大学なんですよ。
 だから、日本の大学が実学にすごく弱いことが大学の問題点であるのであれば、そのようなことはまだ分かるんですけれども、ヨーロッパやアメリカと比較してはるかに実学部門が大きいという特徴を持っているのに、なおかつそれを言うというのは、ちょっと国際比較から考えてバランスを欠いているというふうに考えます。

吉良よし子

大変重要な御意見いただいたと思っております。ありがとうございます。
 それで、最後になると思うんですけれども、岩重参考人に伺いたいと思います。
 先ほど来、この奨学金の返済というのが中間層に対する重い負担になっているというお話が出ておりますし、私もこの間、質疑でこの問題取り上げてまいりましたけれども、ただ一方で、この奨学金の返還、回収率は全体としては九割を超えているから、そんな言うほど大変な事態にはなっていないんじゃないかという意見も散見されるわけです。いや、しかし、実際には本当に大変な思いして返しているという話を私はたくさん聞いているんですけど、この回収率九割という数字をどう見るべきか、岩重参考人からお話しいただければと思います。

参考人(岩重佳治君)

極めて不思議に高い回収率ですよね。
 奨学金がほかの借金とどこが違うか、皆さんどうお考えになりますでしょうか。例えば、私が一億円の家を買おうと思うと、通らないんですね。私の所得証明出したら、無理だということで銀行で断られるわけです。つまり、返還能力を考えて貸すというのが普通なんですけれども、奨学金はそうはいかないですよね。将来の仕事や収入が分からないで借りるので、いつでも返還困難に陥るリスクがあるわけです。
 それなのに、なぜこの高い回収率が実現されているかと考えると、無理な回収や無理な返済をしているのではないかというふうに考えることができると思います。実際、いろんな国で貸与型奨学金は二割あるいは三割ぐらいのデフォルト、つまり延滞とか貸倒れを制度に組み込んで制度ができているんですね。私たちの国だけが高い回収率なんです。これも問題点があるのではないかと。その背景には、先ほど申し上げたような返還困難な人に対して、だって、年収が三十万の人も許さないわけだから、そうなってくる中で返しているということがありますよね。
 中央労福協が昨年アンケート調査を実施したんですけど、返済がかなり苦しいとか苦しかった、少し苦しい、苦しかった、これ非正規で五八・七%、正規でも四〇・六%もの方が苦しいと言っているわけですね。それから、この奨学金の返還が人生に与えた影響ということでは、仕事や就職先が二六・六%、結婚三四・八%、出産二七・五%、子育て三〇・一%、貯蓄に至っては六一・六%。それから、ここに入っていませんけど、恐らく親元から独立できないんですね。そういうようなことをしながら返しているということを御理解いただきたいと思います。
 実は、学生さんのグループでこの奨学金の問題に取り組んでいるグループが、学生さんの気持ちを表しているようなこういう言葉があるんですけど、こういうふうに言っているんですね。耐える強さを変える力にというのは彼らの運動のキャッチフレーズなんです。つまり、耐える強さが大き過ぎるんですよね。
 みんな頑張っているんです。頑張っている中で返している。私の依頼者も、もういいでしょうと言って救済制度を示すんですけど、借りたものは返すのが当たり前だと言って、頑張って頑張って返しているんですね。その気持ちを和らげて救済手段に乗っけるのは大変なんです。
 この今の制度というのは、一言で言えば、この耐える強さというのに乗っかって甘えているからこの高い回収率が達成されているというふうに私は認識をしています。

吉良よし子

貴重な御意見ありがとうございました。終わります。