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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第198通常国会

偽りの〝無償化〟法案/学費値下げなし/参院文科委

要約

日本共産党の吉良よし子議員は23日の参院文教科学委員会で、大学の学費を値下げしない政府の法案は〝偽り〟の無償化だと批判し、値上げまで容認する政府の姿勢をただしました。
 吉良氏は、準非課税世帯の学生は、学費の3分の2または3分の1の補助にとどまり、私立大学の場合は非課税世帯であっても、ほとんどの学生が全額免除にならないと指摘しました。柴山昌彦文科相は、法案に「無償化という表現を用いていない」と認めました。
 吉良氏は、政府が狙う消費税10%への引き上げに伴う学費値上げを容認するのかと質問しました。伯井美徳高等教育局長は「増税による経費の高騰を十分説明して大学が定めていくもの」と値上げを否定しませんでした。
 吉良氏は、大学が授業料を値上げした場合に、法案の対象になる非課税世帯への支援を増額するのかとただしました。柴山氏は「大学で適切に対応する」と答弁。吉良氏は「結局、大学任せだ。学費を上げれば支援対象となる学生の負担も増える」と批判しました。

しんぶん赤旗2019年04月24日付より抜粋

議事録

吉良よし子

日本共産党の吉良よし子です。
 では、早速ですが、大臣は先日の本会議で、私が今回の法律案で高い学費は少しでも値下げされますかと伺った際、授業料の値下げを行うのではないと明確に答弁をされました。その一方で、今回の政策について閣議決定等では高等教育無償化と表現していることについて、衆議院での議論では、国民に政策内容を伝える観点からこうした表現を用いていると答弁をされているわけです。
 これ、この無償化という表現は、本当にこの法案の政策内容を正確に伝える表現と言えるのでしょうか。学費を値下げするわけでもない、一部の学生の授業料負担の軽減であると。それでどうして無償化という表現を使って国民に説明するのか、お答えください。

国務大臣(文部科学大臣 柴山昌彦君)

閣議決定などにおける今お話のあった高等教育の無償化という表現は、真に支援が必要な低所得者世帯の学生に対する授業料減免制度の創設及び給付型奨学金の拡充を内容としているんですけれども、国民に政策内容を分かりやすく伝える観点から高等教育の無償化という表現を用いているものであります。
 ちなみに、本法律案の題名については、支援内容を端的に示す一般的な題名である大学等における修学の支援に関する法律とするなど、内容面を捉えて無償化という表現を用いておりません。

吉良よし子

無償化という表現はやはり誤解を招くと思うんですね。だから、法案から無償化という表現を削除したんだとしか言えないと思うんですけれども、ちなみに、本法案、無償化と言うけれども、本当に授業料を払わなくていい学生というのはごく一部にとどまるわけですよ。国立大学に通う非課税世帯の学生というのは標準額全額補助が行われると言いますけれども、準非課税世帯の学生は三分の二又は三分の一補助にとどまりますから、一定額の授業料、学費を学生自身が負担しなければならないわけです。さらに、私立大学の場合、授業料は平均で約九十万円とされているわけですけど、本法案では、国立大の標準額に私立大学の平均授業料を踏まえた額と国立大学の標準額との差額の二分の一を加算した額までを減免ということで約七十万円が上限だとされていて、つまり、平均額と照らし合わせても二十万円差額が出ると。私学に通う学生の場合、非課税世帯の学生であってもほとんどの学生が全額免除にはならないということになるわけです。それなのに無償化という言葉を使うというのは、本当に許されないと思うんです。
 もう一点確認したいんですけれども、本会議では、国際人権規約の無償教育の漸進的な導入について問うたときに、本法案が高等教育の漸進的無償化の趣旨にかなうものと認識されているとお答えされているわけですけれども、この漸進的無償化というのはやはり段階的に学費を値下げして無償を目指していくことだと思うんです。なのに、授業料の値下げをしないこの法案のどこをもってその漸進的無償化の趣旨にかなうとおっしゃるのか、お答えいただきたい。

国務大臣(柴山昌彦君)

国際人権規約において無償教育の具体的な方法については特段の定めをしておりませんで、その範囲や方法を含め具体的にどのような方法を取るかについては加盟国に委ねられております。
 文部科学省としては、財政や進学率などその時々の状況を総合的に判断しながら、具体的には給付型奨学金制度の創設を始め奨学金制度を充実させるなど、教育費負担の軽減にこれまでも努めてまいりました。
 今回の法案は少子化対策が目的ではあるんですけれども、真に支援が必要な学生に対して確実に授業料が減免されるよう大学等を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金を支給するものでありますので、中長期的に見て無償教育という手段をまさに漸進的に導入する方向に沿って努力していく方針は維持され、かつ実際の施策も中長期的に見てその方向性に沿ったものになっているという意味で無償教育の漸進的導入の趣旨にかなうと我々としては認識をしております。

吉良よし子

中長期的に見てその方向性が漸進的無償化にかなうというお話だったわけですけれども、中長期的に見て、つまり結果として、本法案も含めて結果として支援の対象者が増えるから無償化に向かって進んでいると言えるんじゃないですかという御答弁だと思うんですけれども、でも、本当に、じゃ、今後も無償化に向けて進むのかというと、そこに対しての御答弁はないわけですよ。
 本法案の対象外となる残された学生への支援について、この間質問しているわけですけれども、それについて言うと、進学機会が開かれているからと言って、今後その対象者を拡大するとは大臣おっしゃらなかったわけですね、慎重に議論すると言う。今後、確実にその対象を広げるという道筋も示さないままで漸進的無償化の趣旨にかなうというのも、やっぱり私は詭弁だと言わざるを得ないと思うんです。しかも、政府は今授業料の値下げ進めない、学費値下げを進めないどころか、学費の値上げ自体も容認しているんじゃないかと私指摘したいと思うんです。
 この間、各大学の学費の値上げについて大臣は、合理的範囲を超えたもの、法案の趣旨に反することのないよう周知に努めると。午前中もその旨の答弁があったわけですけれども、その一方で、消費税増税に伴う便乗値上げに関して、衆議院の論戦の中で答弁をされている中では、実際の支出増を反映し、当該値上げが合理的範囲にとどまる場合には法案の趣旨に反する値上げには該当しないと答弁をされているわけです。
 これ、どういうことなのでしょうか。つまりは、消費税増税に伴う学費の値上げはあり得るというお考えなのですか。大臣、お答えください。

国務大臣(柴山昌彦君)

整理をさせていただきますと、大学の学費は教職員や施設整備といった学校運営等に要する経費に充てられるわけで、基本的には各大学がそれぞれの教育研究環境を勘案しながら定めるべきものですけれども、あくまで適切に定めるべきものというように認識をしております。
 ですから、学費の値上げが行われる目的に照らして妥当であるかどうか、一義的には各大学においてその説明責任をしっかりと果たしていくことが重要であるというふうに考えておりまして、まさしくこの消費税率の引上げが今申し上げたような教育研究環境にどのように影響するのかということも含めて、各大学がしっかりと説明責任を果たした上でどうするかという施策を一定の上限の範囲内で行われるべきものだというように考えております。
 このような制度の趣旨を踏まえて、今回の支援措置の趣旨に反すると認められる値上げ、例えば質の向上を伴わない学費の値上げなどは適切ではないと考えておりますので、文部科学省としては、そういうことも含めて各大学に適切な説明責任を果たすことの要請及び制度の趣旨の周知に努めていきたいと考えております。

吉良よし子

つまり、否定はされないわけですよね。消費税増税に伴う学費の値上げはあり得ると、それは容認するということなんでしょうか、大臣。

国務大臣(柴山昌彦君)

繰り返しになりますけれども、いろいろ御質問いただいた中で便乗値上げという御指摘をいただいたと思うんですけれども、我々としては便乗値上げを容認するつもりは毛頭ありません。

吉良よし子

便乗値上げは容認しないけれども、消費税増税に伴って経費が掛かるからと説明責任さえ果たせば学費の値上げはあり得るということですか。

国務大臣(柴山昌彦君)

同じ答弁を何度も繰り返すようで大変申し訳ないんですけれども、我々としては便乗値上げを容認するつもりはないということで御理解をいただきたいと思います。

吉良よし子

便乗値上げは許さないというのはよく分かったんです。でも、先ほどの合理的範囲を超えたもの、法案の趣旨に反することがないように周知に努めるというわけですけど、つまりは、合理的範囲の中であれば値上げは認めるということですよね。いかがですか。

政府参考人(文部科学省高等教育局長 伯井美徳君)

大学の学費は教職員、施設設備といった学校運営に要する経費に充てられるものというふうに承知しておりまして、基本的には各大学がそれぞれの教育研究環境を勘案しながら、先ほど大臣言いました説明責任を果たして、合理的理由があれば適切に設定していくべきものというふうに考えております。

吉良よし子

合理的な範囲、合理的な説明があれば値上げができるということだということだと思うんですけど、その合理的な範囲を超えたものは駄目だとおっしゃるんですけど、じゃ、合理的な範囲ってどこなんですか。

政府参考人(伯井美徳君)

それこそ各大学が、教育の質の向上、あるいは消費増税を理由とした学費の値上げについても、消費増税による様々な経費の向上ということを十分説明して適切に定めていくというふうに考えております。

吉良よし子

だから、十分に説明できる、できさえすれば値上げを容認するというのが文科省の立場なんですよ。
 実際、法人化以降、国立大学の授業料というのは標準額とされているわけです。標準額の二〇%増までを上限にして授業料設定することを大学の判断として認めていると。値下げのために何もしないだけではなくて、むしろ授業料値上げも容認しているというのが今の文科省の立場なんですよ。そして、消費税増税に伴って経費が掛かるという理由によって学費を値上げすること自体も否定をしない。とんでもない話だと私思うんです。
 こうした学費の値上げを容認していくとどうなるか。今、国立大学でいえば、東京工業大学、標準額の一八%増の六十三万五千四百円、東京芸術大学は上限いっぱい、二〇%増の六十四万二千九百六十円と標準額を超える授業料を設定しているわけなんですけれども、そうなってくると、本法案の支援対象者にも私影響が出てくると言わざるを得ないと思うんです。
 確認したいんですけど、こうした標準額を超える授業料が設定された大学での減免というのは、その分、国としての補助増やすのですか。お答えください。

国務大臣(柴山昌彦君)

国立大学の授業料については、国において標準額を示しつつ、一二〇%を上限として、今委員が御指摘のとおり、各大学が個別の授業料設定を決定することが少なくとも制度の上ではできる仕組みとなっております。
 文部科学省としては、国立大学が標準額を超える授業料を設定する場合には、その授業料によって学生に対する教育が充実することに当然なること、また、授業料の値上げによって真に支援が必要な学生が学ぶ機会を逸することがないように支援することが重要だと考えておりまして、今後、標準額を超える授業料をもし各大学が設定する場合にこうした視点を踏まえて適切な対応を行うこと、それから丁寧な説明をしてもらうこと、これが重要だと思っております。
 もとより、文部科学省として、今回の法案に従った適切な支援も併せて行ってまいります。

吉良よし子

適切な対応というのは、それは大学に対して言っていることですよね。国としてはどうなのかと聞いているんです。
 本法案の支援対象者、非課税世帯の学生について標準額を超える授業料を設定した大学に通った場合、国として全額免除するんですか。

政府参考人(伯井美徳君)

国立大学の授業料につきましては、国の標準額の一二〇%を上限として各大学が個別の授業料設定を決定することができる仕組みというのは今大臣が申し上げたとおりでございますが、東京工業大学、御指摘のあった東京工大、それから東京芸術大学において標準額を超える授業料設定をしているということでございます。
 これらの大学におきましては、支援が必要な学生が学ぶ機会を逸することがないよう、それぞれ独自の財源を活用して授業料減免対象者に対しては標準額を上回る額を含めて減免を実施するということとしておりますので、新制度においてもこれら各大学において適切な対応が図られるというふうに考えております。

吉良よし子

私、今挙げられた大学について直接事情もお聞きしました。直接聞いて、実際、個別に対応するということも聞いております。けれども、つまりは、それは大学独自の取組なわけです。国としてはそれに対する補助をするということではないということですよね。
 今後、このほかの大学でも消費税増税に伴って授業料を上げざるを得ない状況になったと、しかし独自の財源がないような国立大学の場合、適切な減免措置がとれない大学も出てくるかもしれないということですよね。それは容認するということですか。

政府参考人(伯井美徳君)

授業料設定というのは、先ほど来申し上げていますように、その標準額、標準額自体は近年据え置いているものの、それの一二〇%を上限として各大学がその教育の質の向上と併せて独自に説明し、決定すると。その場合、支援が必要な学生の学ぶ機会が逸することのないような減免措置の継続ということを両大学においては実施しておりますので、そうした対応を図っているということでございます。
 各大学における授業料改定と運営費交付金というのは現状においては直接影響しない、授業料改定をしたからといって運営費交付金を下げるということはしない仕組みでございます。

吉良よし子

下げられたらもちろん困りますけどね、運営費交付金。けれども、必要に応じて運営費交付金を増額するとも言えないわけでしょう。結局、大学任せで、それに対する財源も付けるとも言えないわけじゃないですか。
 ちなみに、じゃ、それ国立だけの問題じゃない、私立の方の問題もあるんです。私立大学の方の制度で見てもどうなるか。
 私立大学の学費も、この間、五年連続で平均額値上がりしているわけです。更に今後値上がりしていくこともあり得るわけですけど、私立大学の授業料の平均額がどんどん今後上昇した場合に、同様に国としての減免額というのは上限増やしていくおつもりはあるんですか、大臣。

国務大臣(柴山昌彦君)

先ほど委員から御説明をいただいたとおり、私立大学の授業料減免については、国立大学の授業料標準額に加えて私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図ることとしております。これによって私立大学の学生の負担軽減がより図られるということになるわけなんですけれども、その私立大学の授業料設定の裁量性ということを考えた場合には、やはり国立大学標準額と私立大学の平均授業料を踏まえた額との差額の二分の一までの加算ということにしているわけでありまして、今後私立大学の授業料平均額が上昇した場合にどうするかという御質問だと思いますけれども、そのたびごとに授業料減免の上限額を見直すということではなくて、授業料が変動する背景となる社会経済や学生の生活費の状況など様々な要素を勘案しつつ、必要に応じてタイムリーに上限額の設定について検討を今後とも続けていくということを考えております。

吉良よし子

つまり、そのたびに対応するわけではないということですよね。毎年、平均額の上昇に合わせて減免額の上限も上げていくということではないということだったと思うんです。
 つまりは、私立にしても国立にしても、今後授業料がどんどん値上がりしていった場合、本法案の対象者であったとしても、授業料負担が今後生じていく、増えていく可能性は否定できないということになるんじゃないですか。いかがですか。

国務大臣(柴山昌彦君)

ちょっと整理をさせていただきたいんですけれども、既存の国立大学におけるそのプラスアルファをどうするかという議論は、これはちょっとおいておいて、そこはちょっとおいておいて、今委員が御指摘になった授業料の引上げということに関してだけ言うと、今の制度で大半の私立大学等については大幅な底上げがされるわけです、今回の法律の導入についてですね。それによって学生の負担が一旦大幅に減るということになるわけですから、そこはやはり学びの場の大きな確保になるというように考えております。

吉良よし子

だから、そもそもその対象者というのは一部なんですよ。そこがそもそも問題なんですけれども、授業料が値上がりしていったら、もう全ての学生の負担増になるのはもちろんのこと、その支援の対象となっている一部の学生についても負担が増えてしまうということになってしまえば、もう意味がないじゃないですかということを申し上げているんです。
 各大学に対応を求めるといっても、その財政措置がなければ大学だって対応はできないわけですよ。だから、そういう財政的な措置もしないまま、値上げも容認して、これで無償化だなんということは絶対に言えないですし、これで支援が強化されているとも到底言えないですし、やはり本当に少子化対策とか学費無償化だと言うんだったら、全ての大学生の学費を値下げする、その方向にかじを切るべきだということを申し上げて、この質問を終わります。