loading...

吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第198通常国会

大学等修学支援法案 代表質問

議事録

吉良よし子

私は、日本共産党を代表して、大学等修学支援法案について文部科学大臣に質問いたします。
 進路を考えるのに、お金のことを真っ先に考えなければならない、お金がないから大学は無理だねって親から言われた、高い学費を下げてほしい、これらは、現役学生中心の団体、高等教育無償化プロジェクト、FREEの皆さんの集めた実態調査に寄せられた生の声です。現在、国立大学の初年度納入金は約八十一万円、私立大学は平均で約百三十三万円。高過ぎる日本の学費は若者の夢や希望を阻む大きな壁になっています。
 ここで、文部科学大臣に伺います。今回の法律案で、高い学費は少しでも値下げされるのでしょうか、お答えください。
 総理は、この間、全ての世代において、理想の子供数を持たない理由は、子育てや教育にお金が掛かり過ぎることが最大の理由とされていると答弁をされています。文科省の調査では、幼稚園三歳から高校三年までの十五年間で掛かる費用は、公立に通い続けた場合で五百四十万円です。さらに、大学入学から卒業時までに掛かる費用は、日本政策金融公庫の調査によると、平均で七百十六万円。一番お金が掛かるのが大学の学費です。それなのに、この高過ぎる学費は一向に値下げされません。むしろ、上がり続けているのが実態です。私立大学の学費は五年連続値上がりです。国立大学でもついに学費を値上げする大学が出てきました。
 文部科学大臣に伺います。子育てや教育にお金が掛かり過ぎることが少子化の原因であり、少子化対策が本法案の目的だというならば、大学授業料のこれ以上の値上げを許さないと、今ここではっきり明言すべきではありませんか。
 二〇一二年九月、学生たちや父母、教員の皆さんの運動や国会での度重なる論戦により、国際人権規約の無償教育の漸進的な導入についての留保が撤回されました。今こそ、国際的な約束であるこの人権規約の精神に立ち、学費の負担そのものを軽減し、将来的な無償化を目指すべきです。大臣の答弁を求めます。
 本法案には、どこにも学費を値下げするとは書いていません。真に支援が必要な低所得者世帯、つまり、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生への支援を行うとして、対象の学生に対し、学費の減免と給付型奨学金の支給を行うといいます。
 その対象者の数は、現状の進学率が維持されるならば約四十二万人にとどまるという推計値が、先日の予算委員会の大臣答弁で明らかになりました。現在、大学、短大、高専、専門学校に通う全ての学生数は約三百五十万人です。四十二万人とはその一二%程度、全体の一割にすぎません。もちろん、低所得者世帯への修学支援を大いに進め、その進学率を引き上げることは重要です。一方で、九割の学生は支援が受けられず、今のままの高い学費の負担が続いてしまうということは見過ごせません。
 大臣、あなたは、現在の高い学費が、一部の学生だけではなく、全ての学生や保護者の重い負担となっているという認識はないのでしょうか。この支援の対象者、今後増やすおつもりはありますか。残された九割の学生への支援をどう拡充するおつもりか、お聞かせください。
 本法案で学生に課されるのは、経済的な条件だけではありません。特に優れた者という成績要件も課されるため、対象は更に限定されます。加えて、本法案では機関要件まで設定され、修学支援の対象となる大学も限定していることも見過ごせません。
 大臣、こうした様々な要件を課すことにより支援が受けられる対象をどんどん絞っていくならば、結局、非課税世帯の子供たちの進学率は伸びないのではありませんか。特に、機関要件については、学生の進学先の選択を事実上奪うことになりませんか。
 文科省は、機関要件を設ける理由について、社会で自立し活躍するには大学等での勉学が職業等に結び付くことが必要であるためなどとしています。しかし、大学には職業に直結しない学問もたくさんあります。そういう学問は必要ないということですか、大臣、お答えください。
 機関要件の具体例として、収容定員割れしている大学等を支援対象から外すことも挙げられています。しかし、経営が厳しい私立大学などの多くが地方の中小規模の大学です。それらの大学を修学支援の対象から外したら、学生が集まらず、定員割れがますます進んでしまう懸念があります。そうなれば、地域社会で奮闘している地方の中小規模大学を苦境に立たせ、今以上に大都市圏と地方の教育格差が拡大するかもしれません。
 大臣、この要件は、地方に暮らす若者の進学環境をより一段と悪化させてしまうと思いませんか。こうした大学を対象から外すのではなく、地方の中小大学にこそ手厚い支援をすべきなのではありませんか。
 仮に大学運営そのものに問題があったとしても、その大学を受験した学生には何の責任もありません。修学支援を人質に、大学運営の問題の責任を学生に負わせるべきではありません。この機関要件の削除を強く求めます。
 今回の支援の財源について、消費税一〇%への増税分を充てると法案で明記をしていることは重大な問題です。この財源を前提にするならば、その支援対象者を拡大するときに、また更なる消費税増税が押し付けられる懸念だって生まれます。何よりも、消費税は、支援の対象となる学生にも、対象とならない学生にも重い負担となってしまいます。
 東京私大教連が先日発表した二〇一八年の私立大学新入生の家計負担調査によれば、東京を始め首都圏で学ぶ私立大学生の家庭からの仕送り額は月八万三千百円で、一九八五年の調査開始以来、過去最低となりました。家賃を除いた一日当たりの生活費は僅か六百七十七円です。ここに消費税増税を押し付けるなんてとんでもない暴挙です。消費税増税を理由にして学費を更に値上げする大学だって出てくるかもしれません。
 大臣に伺います。学生の支援のための財源を、なぜ学生の重い負担となる消費税増税に限定するのですか。見かけ倒しの高等教育無償化を口実に、消費税増税という重い負担を国民に押し付けることはやめるべきではありませんか。
 今も多くの学生が利用するローン型の奨学金は、将来の重い負担になっています。奨学金は借りたら怖いと、少なくない学生が、本当は必要なのに奨学金を借り控え、代わりにアルバイトを増やしています。冒頭紹介した学生団体、FREEの調査では、九一%の学生がアルバイトに従事しており、そのうちの六三%の学生がその収入を生活費に充てていると答えています。ほとんどの学生たちは、生活のために、睡眠時間や学習時間を削り、講義を休んでまでバイトに入っているんです。
 この学生たちの生活苦を解消するためには、全ての学生の学費そのものを値下げすることは欠かせません。また、給付奨学金の拡充とともに、将来の重い負担となってしまうローン型の奨学金をせめて無利子のみにすること、今、奨学金返済に苦しんでいる皆さんの救済策の拡充だって必要です。こうした政策を進め、国民の教育費負担をこれ以上増やさないためには、国の高等教育予算の抜本的な拡充こそが必要です。
 このことを文科大臣に強く求め、私の質問を終わります。