留学生不明者 精査を 文科相 「把握努める」 東京福祉大問題
要約
東京福祉大学で約700人の外国人留学生が所在不明となっている問題で日本共産党の吉良よし子議員は22日の参院予算委員会で同大学が多くの非正規の留学生を受け入れたことを指摘し、「留学生の夢をつぶさぬよう、国は不十分な受け入れ体制を改めよ」と迫りました。
吉良氏は、この5年で同大学が留学生を14・75倍と激増させた背景に非正規留学生を多く受け入れたことを指摘。柴山昌彦文科相は非正規留学生の受け入れに上限がないことを認めました。上限規制などの検討を求める吉良氏に、柴山文科相は「今後検討したい」と応じました。
吉良氏は、東京福祉大学から多数の「所在不明」をうかがわせる報告を文部科学省が見落としたことを追及。
同大学は「退学者名簿」で文科省に「『所在確認中』として報告」していたと文書で説明しています。柴山文科相は「所在不明者という認識はなかった」とのべました。
17年度に文科省に全国の大学などから報告された留学生の退学者は2607人、除籍者2232人、所在不明者は11人となっています。
さらに吉良氏は全国に749校9万人が通う日本語学校での退学除籍者数を質問。所管する法務省は「集計していない」と答弁しました。
吉良氏が「退学、除籍とされた中にも所在不明がいないか、全ての教育機関で精査すべきだ」と述べたのにたいし、柴山文科相は「ご指摘もっとも。今後は退学、除籍の理由とともに的確に実態把握できるよう努める」と答弁しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日は、報道もあります東京福祉大学で一年間におよそ七百人もの留学生が所在不明となっている問題について伺いたいと思います。
この件、二十日になってようやく大学側が謝罪文をホームページ上で公表したわけですけれども、報道機関の取材に対しては、国策に沿っている、受入れは感謝されているなどと言っているようなわけです。この間、政府は留学生三十万人計画を掲げ、二〇一八年で二十九万八千九百八十人とほぼ達成と、大学側はこの国策に協力しているから問題ないと言わんばかりのコメントなわけですが、それでいいのかと。留学生三十万人計画を掲げた日本全体の留学生の受入れ体制そのものが今問われていると思うわけです。
ここで、大臣、文科大臣に伺いますが、東京福祉大学に在籍する留学生、二〇一八年で五千百三十三人、その八割の四千二百八人は研究生として受け入れられています。この研究生とは何なのか、お答えください。
国務大臣(文部科学大臣 柴山昌彦君)
研究生ということなんですけれども、大学で学習する者のうち学位が授与されないいわゆる非正規の学生について、法令上の定義はありません。
なお、大学設置基準においては、研究生を含めた科目等履修生その他の学生以外の者の受入れに係る諸規定が置かれております。
吉良よし子
非正規の学生だと。じゃ、この学生に対しては受入れ定員に上限などあるのでしょうか。
国務大臣(柴山昌彦君)
この非正規の留学生について、法令上受入れの人数の上限は規定されておりません。
吉良よし子
受入れ上限ないと。
この間、正規の学生については大学に厳格な定員管理を求めているわけです。一方で、この非正規の学生については何の制限もない青天井と。これが、東京福祉大学が留学生をこの五年で十四・七五倍に激増させ、大量の行方不明者を出した土壌になっていると思うわけですが、この上限規制、必要だと思いませんか。
国務大臣(柴山昌彦君)
私は、法令上受入れの人数の上限は規定されないというふうに申し上げましたけれども、大学設置基準においては、科目等履修生その他の学生以外の者を相当数受け入れる場合においては、教育に支障のないように専任教員並びに校地及び校舎の面積を増加することなどが規定をされております。ということで、各大学においては、研究生などの非正規の留学生を受け入れる場合にも、こういった規定に基づき適切に対応していただく必要があります。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕
留学生の受入れ規模が適正かどうかは、今の大学設置基準等に照らし、個々のケースにより個別に判断されるべきものであり、まずは東京福祉大学の研究生の状況についてしっかりと調査、確認を進めたいというように考えております。
吉良よし子
ということは、東京福祉大学は適正だということですか。
国務大臣(柴山昌彦君)
繰り返しになりますよう、本来、教育に支障のないように専任教員並びに校地、校舎の面積を処置するということが大学設置基準において規定されていることから、東京福祉大学のケースがどのようなものであったかということについて、しっかりと実地調査を含め確認をしたいと考えております。
吉良よし子
所在不明とされた学生からは、期待した授業内容じゃない、全然勉強できなかったなどのコメントが寄せられているという報道があるわけですよ。期待される教育内容ができていないと。
やっぱり、こういう意味では上限規制、絶対必要だと思うんですが、いかがですか。検討ぐらいしませんか。
国務大臣(柴山昌彦君)
調査結果を踏まえて、今後どのような規制等について必要かということも検討したいというように考えております。
吉良よし子
検討は必要だと思うわけです。
ここで、法務大臣にも伺いたい。
留学生の受皿というのは、大学等だけではなく、法務省が独自に告示を出した日本語教育機関、いわゆる日本語学校も受皿になっているわけですが、この日本語教育機関、現時点でどれだけあり、何人通っているのか、お答えください。
国務大臣(法務大臣 山下貴司君)
告示された教育機関は、平成三十一年三月二十日時点で七百四十九校でございます。ここに通う、在籍する留学生について、法務省としては統計を有していないんですが、独立行政法人日本学生支援機構が実施した外国人留学生在籍状況調査によると、若干時期がずれますが、平成三十年五月一日現在の日本語教育機関に在籍する留学生数は九万七十九人であると承知しております。
吉良よし子
二十九万のうちの九万人、多くの受皿になっているというわけですけれども、じゃ、これらの機関はどうなのかと。
報道によると、バイトができるなどとうたって、出稼ぎ留学生の受皿、不法就労の温床となっていたり、教育の質の低下を指摘されている機関もあるというわけですが、こうした機関への規制、どうなっているのでしょうか。
国務大臣(山下貴司君)
これまでの取組について御紹介いたしますと、平成二十八年七月二十二日付けで日本語教育機関の告示基準を策定し日本語教育機関の適正化を図るとともに、平成三十年七月には一年間の授業期間について三十五週にわたることを規定し、そしてこの基準の見直しを行い、日本語教育機関の一層の適正化を図ったところであります。
さらに、昨年末に関係閣僚会議で了承された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策を踏まえ、日本語教育機関の告示基準を改正し告示からの抹消基準を厳格化するとともに、同告示基準適合性に係る定期的な点検及び地方入国管理局に対する報告等について日本語教育機関に義務付けることなどを検討しているところでございます。
今後、速やかに日本語教育機関の適正化を図ってまいりたいと考えております。
吉良よし子
まあ一定強化をしているということですが、確認します。その抹消基準があるということですが、それに基づいた抹消件数というのは何件なのか。
国務大臣(山下貴司君)
これは、二十八年七月二十二日付けで策定された告示基準、現在やっておりますので、これまでにこの基準に基づいて告示から抹消された日本語教育機関は存在しません。ですので、今、更なる見直しについて総合的対応策に基づいて検討しているというところでございます。
吉良よし子
現時点ではまだないと。果たしてそれが、この規制の強化が、悪質な事業者やいわゆる留学生を食い物にしているそのやり方を淘汰するに至っているかどうかはまだ不明だということであります。いずれにしても、勉強したいと夢を持って来日している留学生を食い物にさせない、受け入れる体制に対する規制強化、欠かせないということは指摘したいと思います。
その上で、東京福祉大の件について、文科省の対応が余りに遅いとか不十分という指摘がこの間相次いでいるわけです。
ここで私も指摘したいんですけれども、まず、今年二月六日付けで東京福祉大学から文科省に出された回答書なるものがあります。その回答書の六番の中身、指定したところを御紹介いただければと思います。
政府参考人(文部科学省高等教育局長 伯井美徳君)
お答え申し上げます。
御指摘の学校法人から提出のあった回答書のうち、項目六の記載内容を読み上げさせていただきます。
平成二十八年度の除籍者は二百六十四名、内訳は、帰国者二、ビザの変更等三、所在不明者二百五十九、他大学合格者を含む退学者は百二十名です。退学者の内訳は、他大学進学三十五、就職等により在留資格変更三十八、帰国三十六、在留期間満了五、その他六。退学者名簿における措置内容欄で所在確認中として報告しておりますのは、上記のうち、二百五十九名となっております。
平成二十九年度の除籍者は四百九十三名、内訳は、帰国者五、ビザの変更等四、所在不明者四百八十四、他大学進学を含む退学者は二百二十八名で、退学者の内訳は、進学二十二、結婚や就職等による在留資格変更四十三、帰国六十、在留期間満了九十一、その他十二となっております。退学者名簿における措置内容欄で所在確認中として報告しておりますのは、上記のうち、四百八十六名となっており、決して千名以上ではありませんと記載されております。
吉良よし子
千名以上かどうかというのはあれですけれども、お配りした資料を見ていただきたい。注目していただきたいのは下線部なんです。退学者名簿における措置内容欄で所在確認中として報告しているとある。この退学者名簿というのが資料二の方なんですけれども、これは文科省に提出、定期的に提出されている資料です。
東京福祉大学から提出されたその資料の措置内容の欄にそうした所在確認中という記述は実際あったのかどうか、大臣、お答えください。
国務大臣(柴山昌彦君)
この外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等についてにある退学者名簿に、御指摘のとおり措置内容を記載する欄はあります。
吉良よし子
いや、措置内容の欄に所在確認中という記述はあったのか。
国務大臣(柴山昌彦君)
御指摘のとおり、ここの欄に所在確認中という記載はありました。
吉良よし子
あったわけなんです。では、それはカウントされたのでしょうか。
国務大臣(柴山昌彦君)
ちょっとこれ説明が必要だと思います。
事由の別、具体的には退学者等名簿に、退学者、除籍者、所在不明者の記載項目、この事由の別の欄のほかに、今問題となっている措置内容という欄が御覧いただいているとおり設けられているんですけれども、この東京福祉大学からの報告においては、事由の別の欄で除籍と記載した上で措置内容欄に所在確認中という記載が見られるものがありました。
文部科学省においては、本来確認すべき事項であるこの事由の別の記載に着目して今まで集計をしてきたところでありまして、このため、今、所在確認中という措置内容の欄についての集計は行っていないんですが、ただ、これ非常に特殊でありまして、東京福祉大学以外の大学では、この措置内容の欄においては、例えば法務省入国管理局へ報告ですとか帰国指導を実施など、具体的な内容についての記載をする例がほとんどというか、それがほぼ全てであります。東京福祉大学のように、除籍者と位置付けた上で措置欄に所在確認中と記載する事例はほかのところでは確認できておりません。
吉良よし子
あったのに見ていなかったわけですよね。ここは、東京福祉大については職員からの訴えもあったわけですよ。なのに、この措置内容欄見ていなかったというのはあり得ないと思うんですが、いかがですか。
国務大臣(柴山昌彦君)
そう御指摘をいただける部分ももっともな面もあります。
ただ、事由の別の欄で既に除籍とされていたことから、これ、先ほど山下大臣からも答弁があったように、所在不明者であるという認識はなかったわけです。
吉良よし子
いや、でも、所在確認中は所在不明者と同義だと思うわけです。結局、こういうのを見過ごしていたということになると、いや、ほかに見過ごしはないのかという疑念が湧いてくるわけです。
確認したいんですけど、先ほどの措置欄で退学、除籍、所在不明とあるわけですけど、その総数というのは現在で幾らになっているのか、直近、お答えください。
政府参考人(伯井美徳君)
二〇一七年度に文部科学省に大学等から報告のあった退学者、除籍者、所在不明者の総数でございますが、それぞれ、退学者二千六百七人、除籍者二千二百三十二人、所在不明者十一人、合計四千八百五十人となっております。
吉良よし子
東京福祉大でいえば二十九年度にもう四百八十六件所在不明があったわけで、所在不明が十一名なわけがないわけです。ということは、退学や除籍の扱いの中にも所在不明がいるかもしれないという疑念が湧くわけです。
あわせて、法務大臣にも聞いておきたいと思います。日本語教育機関から法務省に報告のあった留学生の退学、除籍、その総件数、この一年、幾らでしょうか。
政府参考人(法務省入国管理局長 佐々木聖子君)
法務省におきましては、各種の規則によりまして、日本語教育機関について、留学生が退学したときは地方入国管理局に対して報告することを義務付けておりましたり、教育機関につきまして、所在が不明になってから一定期間経過したところでなお所在が不明な場合にも入国管理局に届け出るように努めるということになっています。
私ども、これらの届出を受けて、個々の留学生のその在留状況の把握に努めて、個別の在留審査、在留資格取消し手続に活用しているものでございますけれども、総数として集計してはおりません。
吉良よし子
集計していないというので、それで本当に問題の有無、全体像、正確な数字を把握していると言えるのかどうかというのはやはり疑念があるわけです。
やはりその総数の把握と併せて、退学、除籍とされた中にも行方不明者が含まれていないかどうか、改めて全ての教育機関、検査、精査するべきだと思いますが、両大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(柴山昌彦君)
今回の一連の全体像が徐々に明るみになってくる中で、今おっしゃるような御指摘はごもっともであります。
今後は、定期報告の実施方法を改め、退学、除籍等の理由も提出を求めるなど、より的確に実態を把握できるようにしたいと考えております。
国務大臣(山下貴司君)
日本語教育機関に関しましても、今後、告示基準の適合性に関する定期的な点検、報告に係る規定や、教育の質を確保するために日本語の習得度に係る規定などの新設を検討しているところでありまして、委員御指摘の点も含めて速やかに見直し作業を行い、適正化を図っていきたいと考えております。
吉良よし子
速やかにということでしたので是非方法を改めていただきたいんですけど、今回の問題、在籍管理の問題だと言われているわけですけれども、この間では、文科省も法務省も、様々な報告求める一方で、それを中身をちゃんと活用したり精査できていなかった、管理は全て教育任せだったということなわけですよ。
結局、行方不明者の皆さん、その下で期待した勉強ができなかったということで所在不明となってしまったような方々がいるわけです。教職員の皆さんからは、留学生を対象とするもうけプラン、やめさせてほしいんだと切実な声が上がっているわけなんです。なのに、そういう留学生を食い物にしたり、また教職員まで使い潰すような悪質なやり方が適切に取り締まれていないというのは本当にゆゆしき問題で、留学生三十万人と誇るべき状態では今はないと。
留学生の夢を潰さないよう、国の不十分な受入れ体制改めるよう強く求めて、私の質疑を終わります。