予算増で中小企業の可能性生かせ 脱炭素巡り主張 参院調査会
要約
参院資源エネルギー・持続可能社会調査会は16日に「資源エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和」をテーマに質疑を行いました。日本共産党の吉良よし子議員は、地球規模の気候危機打開のために日本の脱炭素化を積極的に進めることが不可欠だとし、中小企業が役割を発揮できるよう政府の支援を抜本的に増やすべきだと主張しました。
吉良氏は、脱炭素化で中小企業の可能性を生かす取り組みを支援すべきだと強調。政府調査では55万社の中小企業が取引先などから脱炭素化への協力要請を受けているのに対し「脱炭素にかかわる政府の支援制度の利用実績は、ものづくり補助金採択が443件、相談窓口の相談件数は237件と圧倒的に支援が足りていない」と指摘しました。
さらに、政府が国際競争力強化のためと称してラピダスなどの半導体企業に2030年度までに10兆円以上の公的支援を行うことを決めた一方で、25年度の中小企業対策費(経済産業省計上分)は1080億円にすぎないと批判し転換を迫りました。大串正樹経産副大臣は「企業の理解増進を図り、GX推進への対策をすすめる」と答弁するにとどまりました。
吉良氏は「脱炭素化の取り組み加速、事業発展応援のためにも、中小企業が可能性と役割を発揮できるよう予算と支援を抜本的に増やすべきだ」と主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
二〇二四年の世界平均気温がパリ協定で気温上昇を抑える目標とされる一・五度水準を単年で初めて超えたとされまして、地球規模での気候危機打開への一刻の猶予もない状況だと思っております。やはり、そういう中で、日本の脱炭素化、もっと積極的に推進していくことが不可欠だと思うわけですが、その脱炭素化を進める上で、やはり産業界全体、とりわけ大企業の社会的責任というのは大きいと思うわけですが、その認識があるかどうか、経産副大臣、まずお答えください。
副大臣(経済産業副大臣 大串正樹君)
GX実現に向けましては、企業規模を問わず、産業界全体で脱炭素に取り組むことが重要であると認識をしております。中でも、足下の排出量が多い企業については、排出削減に取り組むことによる効果が大きく、御指摘のとおり、大きな役割を果たせると考えております。
こうした企業の脱炭素化には、製造プロセスにおける排出削減のための設備投資であったり、脱炭素を実現する上での革新的な技術開発を進めることが必要でございます。そのため、GX移行債を活用した投資支援策やグリーンイノベーション基金の下で革新的な技術開発や多排出産業の構造転換に向けた設備投資支援等を複数年度にわたって大胆に実施しております。
引き続き、多排出産業を含めたあらゆる主体の取組を促しながら、日本全体でのGX実現に取り組んでまいりたいと考えております。
吉良よし子
産業界全体、そして排出量の大きい大企業の社会的責任は大きいという御答弁だったかと思います。
以前、国会の調査で訪問したアイスランドでは、企業に対しても脱炭素の目標若しくは計画の提出を求めるなど、企業を巻き込んだ取組を進めていたわけで、やはりそうやって企業を巻き込みながら脱炭素を進めていくということは本当に大事だし、とりわけその大企業の責任というのは重いと思っておるわけです。
と同時に、私、今注目したいのは、やはり中小企業の可能性と役割についてなんです。
本調査会の参考人質疑においても、参考人の皆さんから、洋上風力発電など地域中小企業の技術力を活用した脱炭素、再生エネルギーの普及に取り組む取組があり、その中で、エネルギーの地産地消、地域新電力開発による雇用の創出など、様々地域経済の好循環を生み出している事例が紹介され、本当に地域社会の一員として脱炭素の役割を、中小企業が重要な役割を発揮しているということを感じているわけですけれども、全企業の数の中で中小企業というのは九九・七%を占めていると。そういう中小企業・小規模事業者の意欲とポテンシャル、脱炭素に向けた意欲とポテンシャルを生かしていく政策、支援というのはもっと必要だと思っているわけですが、これについて、経産副大臣、取組いかがでしょうか。
副大臣(大串正樹君)
産業競争力の強化と、そしてカーボンニュートラルの実現を同時に達成するためには、大企業のみならず、御指摘の中小企業も含めたサプライチェーン全体でGXの取組を支える環境整備が不可欠であると考えております。このため、例えばGXに資する革新的な製品、サービスの開発に必要な設備投資等も支援するものづくり補助金や、GXを含めた中小企業の新たな事業への挑戦を支援する新事業進出補助金などの支援策を講じているところであります。
他方で、脱炭素化に向けて何をしたらよいか分からないという声を始め、情報の不足の問題があるというのも承知をしております。そこで、こうした支援策がより効果的に中小企業に届くように、中小企業のGXの取組に関する支援策をまとめたパンフレットによる周知、広報の実施、中小機構における相談窓口の体制整備などを通じて、中小企業も含めたGXに向けた取組をしっかりと後押ししてまいります。
吉良よし子
ものづくり補助金の活用であったり、情報提供、相談窓口などを設置しているということでした。
一方、政府の調査によると、中小企業がサプライチェーン、取引先などから脱炭素への協力要請を受ける割合というのがこの間増えていると。二〇二二年には一五・四%、五十五万社程度がその要請を受けていると、中小企業の中で受けているとされているわけですが、その割合というのは二〇二〇年と比べても倍増しているような状況だということなんです。それに対して、先ほどの経産省での支援策というのはどの程度届いているのかということが疑問になるわけなんですけれども、先ほど御紹介のあったものづくり補助金等の利用実績、若しくは相談窓口の利用実績というのは一体現状どのくらいになっているのか、政府参考人、お答えいただければと思います。
政府参考人(中小企業庁経営支援部長 岡田智裕君)
お答え申し上げます。
ものづくり補助金では、直近の公募回までの総採択件数二千七十件のうち、GXに関する案件を含む製品・サービス高付加価値化枠、成長分野進出類型の採択件数につきましては四百四十三件でございます。
また、中小機構の相談窓口において、カーボンニュートラル、脱炭素に関する相談につきましては、令和六年度では二百三十七件の相談を受け付けております。
吉良よし子
ものづくりの方で四百四十三件、相談件数というのが二百三十七件ということで、サプライチェーンから要請を受けているのは五十五万社だと言われている中で余りに少な過ぎるんじゃないのかと、支援が行き渡っていないんじゃないかと思うわけですね。
実際、取組実績見てみても、その要請を受けた中で取り組まなきゃいけないけど、実際に取り組めている中小業者、中小企業というのは二割程度にとどまっているという話もあるわけで、やはりこれではせっかくの中小企業のポテンシャル、生かし切れないんじゃないかと思うわけです。
一方で、政府、国際市場において競争力のある製品の国産化を目指すラピダスなど、一握りの大企業には法律まで作って支援を行うということを今しているわけです。ラピダスに関して言うと、二〇三〇年までに十兆円と。経産省は二五年度にラピダスに対して八千二十五億円の追加支援を決定したということで、これまでに決定したものと合わせれば、ラピダス一社への支援というのは、これまでだけで一兆七千二百二十五億円に膨らむと。本日参議院で審議入りしたラピダス支援法案、情報処理促進法では更に一千億円出資するという計画なわけです。
一方、令和七年度の中小企業対策費当初予算というのを見てみると、全部合わせて一千八十億円と。支援する規模が余りに違い過ぎるんじゃないのかと思うんです。中小企業への予算も支援も圧倒的に足りていないと。ましてや、もう脱炭素というところになると本当に手が届いていないという状況で、やっぱりこれもう抜本的に転換していかなきゃいけないんじゃないですかと。
中小企業の技術力を生かした脱炭素化の取組、事業発展、もっともっと応援していくためにも、この中小企業への予算、支援政策、抜本的に増やしていくべきじゃないかと思いますが、経産副大臣、いかがでしょうか。
副大臣(大串正樹君)
GXの実現に関しましては、日本全体の温室効果ガスの排出量の約二割程度を占める中小企業を含めて産業全体の取組が重要であることはお話をしたとおりでございますが、御指摘の中小企業においても、その技術力を生かした脱炭素に資する商品、サービスの提供に加えて、自社の事業そのものの脱炭素化に取り組んでもらうことも必要不可欠だと考えております。サプライチェーン全体での脱炭素の取組が求められる中、中小企業も自社のエネルギー消費量や排出量の削減に取り組むことで、エネルギーコスト削減や新たな市場の獲得にもつながる可能性があるといったメリットもございます。
このため、経済産業省では、省エネの専門家がアドバイスを行う省エネ診断の支援や中小機構による排出削減計画等の策定支援を行っております。また、省エネ設備の更新を支援する省エネ補助金については昨年より三年で七千億円規模の支援を行うとしておるほか、カーボンニュートラル投資促進税制の中小企業向けの措置内容を拡充するなど各種の施策を講じてきているところでもございます。
今後とも、中小企業がGXに取り組むメリットの理解増進を図りつつ、中小企業のGXの取組を推進するために更に必要な対策を講じてまいります。
吉良よし子
脱炭素に中小企業が取り組むメリットがあるということであれば、やはり脱炭素、そして中小企業そのものへの予算、支援、もう本当に抜本的に増やしていかなきゃいけないんだと、中小企業が脱炭素に向けて役割、可能性、そのポテンシャルを大いに発揮できるように、予算を抜本的に増加すること、支援を抜本的に増やすよう強く求めまして、質問を終わりたいと思います。
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
二〇二四年の世界平均気温はパリ協定で気温上昇を抑える目標とされる一・五度水準を単年で初めて超えたとされ、地球規模での気候危機打開は一刻の猶予もありません。
一方、政府が掲げた第七次エネルギー基本計画は、原発の最大限活用を明記し、原発の再稼働、新増設にまで言及しています。福島第一原発事故以来、政府自身が掲げてきた原発依存度の低減を投げ捨てることは許されません。今なお福島第一原発の事故は収束していません。
能登半島地震では志賀原発で変圧器の火災が起こり、住民の同意のないまま再稼働へと進む柏崎刈羽原発ではトラブルが続発し、福島第一原発では汚染水かぶりや作業員がやけどを負う人身事故が繰り返されています。東海第二原発では、三年間で十一回も敷地内での火災を起こしていたことが分かりました。
原発に安全性の担保などありません。地震、津波大国である日本で、一日も早く原発ゼロを実現しなければなりません。原発の最大限活用と石炭火力発電にしがみつきながら、再エネ最優先の原則を削除し再エネ導入に逆行するエネルギー政策を転換し、再生可能エネルギーの普及こそ目指すべきです。
また、二〇三五年までに二〇一三年度比で六〇%削減という日本の温室効果ガス削減目標は、気候危機対策の要である一・五度目標と整合していないばかりか、先進国、大排出国としての責任を果たすものになっていません。
日本共産党は、昨年十二月、温室効果ガス排出削減目標を七五から八〇%にするという積極的な目標にすべきと政府に申し入れました。その実現に力を尽くします。
CO2削減、脱炭素を進めるに当たり、排出絶対量の多い大企業が責任を果たすべきなのは言うまでもありませんが、全企業の九九・七%を占める中小企業の可能性を最大限生かすべきです。
本調査会においても、エネルギーの地産地消、地域新電力の開発、運営や雇用の創出など、地域経済の好循環を生み出す取組に中小企業が創意工夫と技術力を生かして役割を発揮しているというお話が参考人からるる語られました。一方で、脱炭素に関わる政府の中小企業政策は、中小企業の可能性に応えるものになっていません。中小企業の脱炭素化への取組と事業発展を応援するためにも、予算と支援策を抜本的に強化すべきです。
あわせて、第七次エネルギー基本計画や温室効果ガス排出削減目標の策定に際し、若い世代の意見が反映されていないことは重大です。政府に対し積極的な気候危機対策を求め声を上げてきた若者からは、気候変動対策の意思決定プロセスに私たちの声が届かない、NDCも結局、経団連の求める目標値になった、声を聞いてもらうためには経団連に入るしかないのかと、憤りと絶望の声を上げていました。
二月十九日の本調査会の参考人質疑では、環境問題というのは、基本的には将来の子供たちに影響してくるという意味で、子供たちの意見を取り入れるというのはとても大事、若者たちの声をできるだけ地域の施策、国の方針に反映できる機会は増えるべき、子供の権利をきちんと守っていくことが成熟した民主主義をつくるなど、気候変動など政策策定プロセスに子供、若者の参画を保障することについて、全ての参考人から共感と重要性を示す意見が述べられました。
気候危機対策は子供たちの権利に関わる問題です。子供たちの声に応えることは政治の責任です。気候危機による最大の被害、影響を受ける子供たち、若者たちの声をエネルギー政策や気候変動対策の政策決定プロセスに反映させるべきということ、強く訴えて、意見表明を終わります。