「核抑止」正面からただす 参院予算委 核廃絶が最大の安全保障 核禁条約批准求める
要約
日本共産党の吉良よし子議員は27日の参院予算委員会で、党を代表して参加した核兵器禁止条約第3回締約国会議を踏まえ、石破茂首相がしがみつく「核抑止」ではなく核廃絶こそが最大の安全保障だとして、被爆者の願いにこたえ条約を批准するよう迫りました。
吉良氏は、被爆80年となり、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が昨年ノーベル平和賞を受賞するもと今回も会議不参加の日本政府に対する、被爆者のサーロー節子さんの「本当に情けない」との発言などを示して追及しました。
被爆者の期待に「応えられなかったことは事実」と認めた首相に対し吉良氏は、胎内被爆者である日本被団協の濱住治郎さんの「原爆は本人の未来を奪い、家族をも苦しめる『悪魔の兵器』だ」などの声を示し、「核使用が非人道的な結末をもたらす認識はあるか」とただしました。
首相が「その認識は共有する」と答えたのに対し、吉良氏は「であれば、いかなる状況の下でも核兵器の使用は許さないと表明せよ」と追及。ところが首相は明言を拒否しました。
吉良氏は「明言できないのは、いざというときには核を使用することを前提にした『核抑止』論にしがみついているからだ」と批判。「いざというときには、広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすこともためらわないという『核抑止』論は核の非人道性を批判することと根本的に矛盾する」と追及すると、首相は「矛盾とは思わない」と言うだけで、どう矛盾していないかは言えませんでした。
吉良氏は、同会議の政治宣言が、核兵器は「核抑止」に賛同・反対にかかわらず「すべての国家の安全保障、ひいては国家の存立を脅かす」と指摘していることを引用し、「核兵器の安全保障上の脅威を取り除く最大の保障は『核抑止』ではなく核廃絶しかない」と述べ、「核兵器禁止条約を今すぐ批准せよ」と強く要求しました。
(詳報)
日本共産党の吉良よし子議員は27日の参院予算委員会で、自身が参加した国連本部で開催された核兵器禁止条約の第3回締約国会議を踏まえ、石破茂首相が固執する「核抑止」論を批判し、「核兵器の脅威を取り除く最大の保障は核兵器の廃絶しかない」と迫りました。
吉良氏は締約国会議について、採択された政治宣言で「核兵器禁止条約は激動の時代の中での希望の光である」と確認され、核兵器廃絶を目指す「揺るぎない決意」も示された重要な会議だったと強調。日本政府が会議に参加せず被爆者から失望を招いたことについて石破茂首相の見解をただしました。石破首相は「期待に応えられなかったのは事実だ」と認めました。
「悪魔の兵器」だ
吉良氏は、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の濱住治郎氏が「母親の胎内で被爆した胎内被爆者」であり、会議で「体内被爆者は生まれる前から被爆者という烙印(らくいん)が押されている」「原爆は本人の未来を奪い、家族をも苦しめる『悪魔の兵器』だ」と訴えたことを紹介。石破首相に「核兵器の使用が非人道的な結果をもたらすものだとの認識はあるか」とただしました。石破首相は「その認識は共有する」と答弁しました。
吉良氏は「核兵器の非人道性を認めるというのであれば、いかなる状況のもとでも核兵器の使用は許さないと日本政府として表明すべきだ」と迫りました。石破首相は「核を使おうとし、軍事的に有用と考える勢力から国民を守ることもわれわれの責務」などと答弁。“いかなる状況のもとでも核使用を認めない”と明言するのを避けました。
吉良氏は、首相が核使用を認めないと明言しないのは「核抑止」論に立っているからだと指摘。「核抑止」論とはいざという時には核使用を前提にし、広島・長崎のような非人道的な惨禍を引き起こすこともためらわない理論だと批判しました。この「核抑止」論を主張することと、核兵器の非人道性を批判することは根本的に矛盾すると強調し、「矛盾するという認識はあるか」と追及しました。石破首相は「(矛盾すると)思わない」と強弁し、どう矛盾していないかは語りませんでした。吉良氏は「そうやって『核抑止』にしがみついている姿勢が問題だ」と批判しました。
吉良氏は、第3回締結国会議の政治宣言が「核兵器は、核兵器を保有しているか、『核抑止』に賛同しているか強く反対しているかにかかわらず、すべての国家の安全保障、ひいては国家の存立を脅かすものである」としていると指摘。「つまり、核兵器は、人道的に許されないだけでなく、万が一、核兵器が使われれば、その危険は国境を越え、地球規模で広がり、すべての国家の安全保障、国家の存立を脅かすものだ」と強調しました。
吉良氏が、核兵器が全ての国家の安全保障にとって脅威であることは「核抑止」に賛同しているか反対しているかにかかわらずあまりにも明らかだと追及。石破首相は「それは否定しない」と言いつつ、「拡大抑止に安全保障の一部を委ねている」と強弁しました。
地球全体に被害
吉良氏は「『核抑止』の対抗が緊張を高め、誤りや誤算も含め、万が一、核兵器が使われれば、わが国を含む北東アジア、地球全体が破滅的な被害を受ける。核兵器の安全保障上の脅威を取り除く最大の保障は『核抑止』ではなく、核兵器廃絶しかないのではないか」と迫りました。
石破首相は「核を実際に持っている、あるいはその可能性が非常に高い国があり、脅威として存在をしている」などと答弁。吉良氏は「『核抑止』とはすべての人の生存を脅かす核のリスクの存在そのものを前提にした議論だ。『核抑止』であったとしてもミスはありうる。破綻しないという保証はどこにもない。核拡散、エスカレートが拡大していく懸念もある」と反論。「唯一の戦争被爆国である日本が『核抑止』論に固執し、核兵器禁止条約を批准しない、議論に参加すらしないのはあまりにも恥ずべきだ。今すぐ核兵器禁止条約を批准することを強く求める」と迫りました。
それでもなお「核保有国も参加するNPT(核不拡散条約)で、いかに核軍縮をすすめるかに注力する。『核抑止』論は今でも有用な議論だと思っている」などと述べる石破首相に対し、吉良氏は「『核抑止』論にこだわりつづけたままでは核廃絶にならない」と改めて強調。「被爆者の期待に応えられていないと認めたのなら、核兵器禁止条約を批准すべきだ」と求めました。
議事録(未定稿)
※こちらの議事録は速報・未定稿版となります
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。私は、三月三日から行われた、ニューヨーク国連本部で行われた、核兵器禁止条約の第三回締約国会議に参加をしてまいりました。
今年ちょうど被爆八十年、そして昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞した直後の会議でしたから、日本被団協の皆さんとともに日本から参加した国会議員も、中満泉国連事務次長など、参加者の皆さんから大変歓迎を受けました。私は、日本共産党を代表して締約国会議の議長に会議成功に向けた要請文手渡すとともに、被爆者を含む多くの日本の皆さんが条約批准そして核兵器廃絶を願っているということを、開催された国会議員会議でスピーチもしてまいりました。最終日に採択された政治宣言では、核兵器禁止条約は激動の時代の中での希望の光であるということが確認され、核兵器廃絶を目指す揺るぎない決意も示された重要な会議でありました。
しかし、この重要な会議に日本政府はまたしても参加をしませんでした。現地では、様々な方からこの日本政府の対応にがっかりしたと声が上がりました。被爆八十年、日本被団協のノーベル平和賞受賞というこの機会に参加しないなんて、日本政府は機を逃したという声も聞きましたし、カナダ在住の被爆者、サーロー節子さんも会議に参加されていましたけれども、どこの政府よりもこの問題を熟知している日本が出てこないのは本当に情けないと語っていらっしゃいます。
総理、サーローさん始めとする被爆者のこの期待に日本政府が応えられなかったと、こういう認識はありますか。
○内閣総理大臣(石破茂君) そういう方々の御期待に応えられなかったことは事実として私は認めなければいけないと思っています。
○吉良よし子君 期待に応えられなかったということをお認めになったと。
いや、これ本当に大問題で、深刻な問題だと思っていて、被爆者の皆さん、締約国会議では本当に歓迎受けていたんですね。日本被団協のノーベル平和賞の受賞については、会議でスピーチする皆さんが口々に祝福のメッセージを送る、日本被団協の浜住治郎さん、会議冒頭のハイレベルセッションで発言したとき、それまで拍手一つ起きない厳粛な国連の会議場が、傍聴席も含めて大きな拍手に沸いたと。本当に私この場にいて感動したわけですけれども、浜住さんは母親の胎内で被爆をした胎内被爆者です。スピーチの中では、体内被爆者は生まれる前から被爆者という烙印が押されていますと、原爆は本人の未来を奪い、家族をも苦しめる悪魔の兵器ですと訴えました。
総理は、この核兵器の非人道性、認めますか。つまり、核兵器の使用が非人道的な結末をもたらすものだという認識があるかどうか、お答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君) その認識は私も共有するものでございます。
○吉良よし子君 一言で答えられたわけですけれども、核兵器の使用が非人道的な結末をもたらすとお認めになるとお答えになったわけです。
であるならば、当然、いかなる状況の下でも核兵器の使用というのは認められないはずなんです。いかなる状況の下でも核兵器の使用は許さない、このこと、日本政府の意思として表明してください。
○内閣総理大臣(石破茂君) 核兵器の非人道性を否定する人なんか私は見たことがない、そんな人がいるはずがない。それは、あの記録を見れば、私も小学校六年のとき、まだ白黒のテレビでしたがね、アメリカから公開された広島の核投下の後のフィルムを見て、本当に物すごい衝撃を受けたことはよく覚えています。そしてまた、平和記念館にも極力行くようにいたしております。あの非人道性を認めないなんという人を私は見たことがない。
しかしながら、それと同時に、そうであらばこそ、それを使おうということ、それをまた軍事的に有用であると判断をする、そういうような勢力がないと私は思わないし、実際その人たちは何を考えているか知らないが、我が国の周りにはそういうような状況がいっぱいあるわけですね。
私どもとして、そういうものから国民を守っていくということも我々の責務であって、核兵器がない方がいい、それを目指さなければならないということと、我が国が決して核攻撃の被害を受けないということも併せて考えていかねばならない。核の廃絶、そして核のない世界というものを望むのはみんな一緒です。
同時に、我々はいかにして核戦争がない世の中をつくるかということも現実的に考えていかねばならない、それが責任ある政治というものだと私は思います。
○吉良よし子君 いや、明言されないわけですね。
非人道性、核兵器の非人道性を否定しない人はいないんだと、だから国民を守るんだとおっしゃると。
だとするならば、いかなる状況の下でも核兵器の使用は許さないと、日本政府としてちゃんと表明するべきではないか、はっきりとお答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君) 私どもは、核兵器の使用を許しますなぞと言ったことは一度もない。そんなことは許されるはずがない、私たちはそう思っています。
しかしながら、では、全ての核を持っている人、あるいはそれがテロリストであれ、テロ集団であれ、九・一一の教訓というのはそういうものだったと私は思います、その人たちも同じように考えているかといえば、それはそうではない。そうではない人たちが核を持ったときにどうやって国民を守るかということを考えるのが責任ある政府というものだと私は思います。
○吉良よし子君 全く答えていないんですね。
核兵器の使用を許さないとも言わないと、許しますと言っていないって言いますけれども、聞いているのは、いかなる状況の下でも使用は許されないと明言すべきじゃないかということなんです。はっきりお答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君) 実際にそういうものを手にした人たちがそう思うかどうかは分かりません。そう思わないという勢力もそれはあるんでしょう。
私どもがそう言ったとして、ああ、そうなんだねと、じゃ、我々も使うのやめようねと、そういうような期待というものに、私は国民の生命、財産を懸けるということはできません。
○吉良よし子君 何度質問しても、いかなる状況の下でも核兵器を使用してはならないということを明言されない。言えないってことなんじゃないですか。
明言できないのはなぜなのか。それは総理、そして政府が核抑止論に立っているからですよ。この核抑止論というのは、いざというときには核兵器を使用する、これを前提にした議論なんです。いざというときにも使わないということでは抑止にならないから、その使うことが前提になる。いざというときには、つまり、広島、長崎のような非人道的な惨禍を引き起こすこともためらわない、そういう議論が核抑止論なわけですね。
この核抑止論を主張することと、核兵器の非人道性を批判する、否定することとは、根本的に矛盾するのではありませんか。その根本的に矛盾するという認識、持っていますか。
○内閣総理大臣(石破茂君) この議論は、本当に矛盾がなくして解き明かすというのは難しいと私は思っている。だけども、ためらうということだって抑止力の一つなのではないですか。
それだけ非人道的であらばこそ、それをためらうのであり、相互確証破壊の理論というのはそういう面もあったと思いますが、お互いが撃ち合ったらばお互いが滅びるどころか地球全体が滅びるということで、相互確証破壊の理論というものはあったはずでございます。
そこにおいて、それをためらう、それが残虐であり非人道的であらばこそ、それをためらうということも私は等閑視すべきだと思っておりません。
○吉良よし子君 いや、もう一度ちゃんとお答えいただきたいと思うんですね。
非人道的な、核兵器の非人道性を批判するんだとおっしゃるならば、核兵器の使用を前提とした核抑止論とは根本的に矛盾すると思うのかどうか、その点についてちゃんとお答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君) 思いません。
○吉良よし子君 矛盾だと思っていないと。
いや、いかなる状況の下でも核兵器の使用は認められないともお答えにならないし、そして、非人道性を言いながらも、核抑止、いざというときには核兵器を使うということを否定されないと。そうやって核抑止にしがみついているその姿勢が、私は問題だということを申し上げたいと思うんです。
パネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)
第三回締約国会議では、この最後の政治宣言でこう強調しているんです。核兵器は、核兵器を保有しているか、核抑止に賛同しているか強く反対しているかにかかわらず、全ての国家の安全保障、ひいては国家の存立を脅かすと。つまり、核兵器は人道的に許されないだけじゃないんです。万一核兵器が使われれば、その危険は国境を越えて地球規模で広がって、全ての国家の安全保障、国家の存立を脅かすものなんだと。
そういう核兵器が全ての国家の安全保障にとっての脅威である、これは核抑止に賛同しているかどうかにかかわらず余りにも明らかと思いますが、総理、そういうお立場ですか。お答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君) それを私は否定をいたしません。
核抑止論というものに私どもは、相互確証破壊の理論もございますが、拡大抑止というものに私どもは安全保障の一部を委ねております。それがそうであるということが核の使用を認めるのだという、それはかなり論理的に飛躍をしていませんか。
つまり、そういうことがあってはならないのだということが抑止力の本質なのであって、それを使うことを、全面的にといったかどうか知りませんが、許容しているということとは全く論理的に結び付きません。
○吉良よし子君 全く話が通らないと思うんですね。
核兵器が全ての国家の安全保障にとっての脅威であるということをお認めになると。つまり、核抑止というのは、その対抗自体が緊張を高め、そして誤りや誤算も含めて万一核兵器が使われれば、我が国を含む北東アジア、地球全体が破滅的な被害を被ると。これをお認めになるというのであれば、その脅威を取り除く、核兵器の安全保障上の脅威を取り除く最大の保障は、核抑止ではなくて核兵器の廃絶しかないのではありませんか。総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それは目指していきたいと思います。
ただ、核を実際に持っている、あるいはその可能性が非常に高いという、どことは申しませんが、我が国の周りにあるわけですね。実際にそれは脅威として存在をしているわけで、今委員がおっしゃるようなそういう思いを、その国の指導者、ましてや我が国とはかなり形態の異なる意思決定のシステムを持っているそういう国家において、委員がおっしゃるようなそういう気持ちを彼らも共有をするかといえば、それはそうではない可能性も私は否定できない。そういうものに私は国の独立と国民の生命、財産を懸けるということはいたしません。
○吉良よし子君 それは核兵器の脅威をお認めになるという態度ではないと思うんです。
核抑止というのは全ての人の生存を脅かす核のリスクの存在そのものを前提にした議論だということ、締約国会議の中でも最終宣言の中でも言われているわけです。
そうした全ての国家の安全保障の脅威を取り除くためには、核兵器を保有し続ける核抑止論ではその脅威は取り除けないと、それは自明の理なわけですよ。核抑止であったとしても、ミスだってあり得るわけです。そして、破綻しないという保障はどこにもないわけです。さらには、核拡散、エスカレーションが拡大していく懸念もあるわけです。確実に核兵器を廃絶していくと、そのためには、やはり核抑止を乗り越えて、核兵器禁止条約に批准をして全ての核兵器をなくしていくと、その立場に政府が立たなければならないんだと。
日本被団協がノーベル平和賞を受けて、被爆、戦後八十年受けた今、唯一の戦争被爆国である日本が、この核抑止論に固執し続けて核兵器禁止条約に批准しない、議論に参加すらしない、これは余りにも恥ずべきものであり、今すぐ核兵器禁止条約に批准をすること強く求めるものですが、いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) ですから、核保有国も参加しているNPTにおいて、いかにして核軍縮を進めるかということに我が国は注力をし、その成果を得てきているわけでございます。
NPTを否定するということの立場に私は立ちません。いかにして核軍縮を進めていくかということについて私どもは努力をしていかなければならないし、もう一度申し上げておきますが、私は核のない世界は理想だと思います。と同時に、核戦争のない世界というものをつくっていくことも政治の責任であって、そのために核抑止論というのは私は今でも有用な理論だと思っております。
○吉良よし子君 核抑止論にこだわり続けるままでは核兵器廃絶にはなりません。
被爆者の期待に応えられないと冒頭お認めになりました。期待に応えるためには条約に批准することこそが必要だと申し上げて、質問を終わります。