残業代払い教員増やせ 参院本会議 給特法改定案
要約
公立学校の教職員を残業代支払い制度の対象外のままとする教員給与特別措置法(給特法)改定案が21日の参院本会議で審議入りし、日本共産党の吉良よし子議員は、長時間労働を根本から是正させるため時間外勤務を「労働時間」と認め、残業代を払い、抜本的な教員の増員を求めました。
吉良氏は、基本給の4%とされている教職調整額を2026年1月から1%ずづ、6年かけて10%に引き上げても、現行の残業代がない「働かせ放題」の枠組みは変わらないと指摘。衆院での5党による修正でもその枠組みは温存され、「むしろ引き上がった分だけ働けと、長時間労働が固定化、助長されるのではないか」と迫りました。
吉良氏は「必要なのは残業代未払い制度の見直しだ」として、国立や私立学校にある教員への残業代支払い制度を公立学校の教員にも適用するべきだと強調。教職調整額を引き上げる財源として、特別支援学校や支援学級の教員賃金に上乗せされていた調整額などの手当の見直し・削減を行うことについて「障害のある子どもたちの教育の充実に背を向ける姿勢の表れだ」と批判しました。
吉良氏は、業務を行う時間外勤務を労働時間として位置づけるべきだと指摘。正確な労働実態を把握するため、「勤務実態調査」の継続を求めました。
また、法案で、教育委員会に業務量管理・健康確保措置実施計画の策定を義務付けることについて、持ち帰り残業の増加を招くとして「1人あたりの業務量の削減と抜本的な教員定数の増員なしに危機的な長時間労働はなくならない」と強調しました。
石破茂首相は「残業代が支給されても教員のやりがいや負担はなくならない」と突き放す答弁でした。
吉良氏は、教育に大切なのは教職員の共同だと強調。改定案で創設する「主務教諭」は共同を困難にすると批判しました。
議事録(未定稿)
※こちらの議事録は速報・未定稿版となります
日本共産党の吉良よし子です。私は、会派を代表し、公立教員給与特別措置法改定案について、総理に質問をします。
学校の教員の忙しさが止まりません。
私たち教員は毎日心をすり減らして命を削って子供たちのために働いています。この四月に転勤した小学校では三十人の中学年の担任を一人でしています、支援員さんも学生ボランティアさんもいません、一人一人を大切にしてあげたいんですけど本当に限界があるんです。朝の四時には目が覚めて持ち帰った大量の学級事務を毎日必死でこなしています。日曜日に休日出勤したら九人も仕事しに職場に先生たちが来ていました、一体、国はいつまで私たち教員の使命感とか情熱に甘えて長時間労働に目をつぶり続けるのでしょうか、いいかげんにしてほしい。学校現場の教員の皆さんから悲鳴のような訴えが上がっています。
果たして、今回の法案は、この現場からの悲鳴に応えるものになっているのか、教員の長時間労働を根本から是正するものになっているのか、総理の認識をお答えください。
本法案は、教員の処遇改善として、現行、基本給の四%とされている教職調整額を来年から毎年一%ずつ、六年掛けて一〇%に引き上げるものです。
しかし、調整額を上げるだけでは、現行の残業代を支払わない、働かせ放題の枠組みは変わりません。衆議院での五党による修正でもその枠組みは温存されたままになっていますが、働かせ放題の枠組みを温存し、調整額だけ上げることで、むしろ給与の上がった分働いてと長時間労働が固定化され、更に助長されるのではありませんか。
必要なのは、残業代不払という制度そのものの見直しです。
残業代制度は、長時間労働を抑え、人間らしく働くための世界共通のルールです。それなのに、教職調整額の支給と引換えに、公立学校教員を労働基準法の残業代制度の適用から外したことは余りにも不合理です。既に国立学校や私立学校の教員には残業代を支払う制度はあります。残業代を支払わず、コスト意識ゼロで教員の仕事を次々に増やし、長時間勤務を蔓延させてきたことを反省し、公立学校の教員にも働いた分の残業代を支払う制度を適用すべきではありませんか。お答えください。
さらに、今回の調整額の引上げが本当に処遇改善と言えるのかも疑問です。
教職調整額を六年掛けて一%ずつ引き上げる一方で、特別支援学校、特別支援学級の教員の給料に上乗せされていた調整額の引下げなど、他の教員手当の見直し、削減も行うもので、全体として給与の増額は僅かなものになりかねません。
特別支援学校、支援学級を直接担当している教員の皆さんは、障害に応じた様々な専門知識を基に、まさに命懸けで日々の教育活動に携わっています。その調整額を引き下げることは、障害のある子供たちの教育の充実に背を向け、責任を果たそうとしない政府の姿勢の表れそのものではありませんか。特別支援学校や支援学級の調整額引下げなど、他の手当の引下げは改めるべきではありませんか。
本法案では、新たに主務教諭を創設し、職務と責任に見合った処遇にするといいます。衆議院でも頑張っている先生を評価せよということがしきりに議論されていましたが、現場はみんなが頑張っている、競争させなければ頑張らないという思い込みはやめてほしいと教員の皆さんが訴えています。
学校現場、子供たちの教育にとって大切なのは、同僚性が発揮される教職員の共同です。人事評価や管理を一層強化し、学校現場の階層化を進めることではありません。教員の同僚性を壊し、共同を困難にする新たな職、主務教諭の創設はやめるべきではありませんか。
何より、教員の長時間労働の実態を、国が正確に把握し続けるべきです。衆議院の五党による修正で、教員の勤務の状況について調査を行う旨規定されましたが、それは勤務実態調査を継続するということですか。
教育委員会による在校等時間の把握では、現場の実態から余りに乖離をしています。今や当たり前のように発生している持ち帰り残業や、休憩時間がどれだけ取れているかの把握ができていません。教員の労働実態の正確な把握を続けるためには、国として勤務実態調査を引き続き継続的に行うべきではありませんか。
そもそも文科省は、公立学校の教員の時間外勤務を労働時間と認めていません。衆議院では、公立学校教員の時間外勤務について、労働基準法上の労働時間には該当しないと繰り返されました。こうした文科省の答弁に、心がえぐられるよう、憤りも感じますと、現場教員から怒りの声が上がっています。労働基準法にも給特法にもなかった在校等時間などというおよそ理解ができない時間管理などではなく、教員が業務として行っている時間外勤務は労働時間と位置付けるべきではないですか。
本法案で、教育委員会に業務量管理・健康確保措置実施計画の策定を義務付け、時間短縮の目に見える成果を求めるといいますが、これはむしろ、校長ら管理職による退勤の強要や時短ハラスメント、教職員の持ち帰り業務の増加を招くことになりませんか。結果として、把握も管理もされない残業が増えるなど、長時間労働の実態を隠す行為を助長することになりませんか。お答えください。
深刻な長時間労働をなくすためには、一人当たりの業務量を削減し、抜本的に教員を増やすことこそが必要です。
勤務実態調査で明らかになったのは、授業をするだけで勤務時間のほとんどが終わってしまうということです。小学校では、一日五こま、六こまが当たり前です。一日に六こまの授業を行い、休憩時間を法律どおりに取れば、授業準備などに充てられる時間は定時の退勤までに僅かしか残りません。持ちこま数を一日四こま以下に削減すれば、授業と休憩等で四時間、残り四時間を授業準備その他の校務に充てる、一日八時間労働が可能になります。定数を増やすことにもつながります。
衆議院での修正では、政府の取り組むべき措置として、教員一人当たりの担当する授業時数の削減と、義務標準法の教職員定数の標準の改定が明記されました。それはつまり、教員一人当たりの授業の持ちこま数の上限を設け、加配での増員ではなく、義務標準法での算出比率である、乗ずる数の改善など、基礎定数により教員定数を抜本的に増員するということですか。
あわせて、今や、教員にも子供たちにも負担となっている年間授業時数そのものも減らしていくべきではないですか。第七次で止まってしまっている定数改善計画を復活させて、教員定数を計画をもって改善すべきではありませんか。お答えください。
時間外勤務を労働時間と認め、公立教員にも残業代を支払うこと、抜本的に教員定数を増員することなしに危機的な教員の長時間労働はなくせないということを申し上げ、質問を終わります。