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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2025年・第217回通常国会

教員残業3割減は粉飾 文科省試算 法案前提に誤り 撤回求める

要約

日本共産党の吉良よし子議員は24日の参院文教科学委員会で、公立小中学校の「働き方改革」によって教員の残業時間が2016年調査から22年調査までに3割も減ったとの文部科学省の試算のごまかしを明らかにし、試算の撤回を迫りました。

吉良氏は、文科省が試算した残業時間3割減を政府が成果として強調し、今国会に提出した教員給与特別措置法(給特法)改定案で、長時間労働の解消をこれまでの取り組みの延長で行う前提としていると指摘。現場の実感・実態と乖離(かいり)していると批判しました。

 吉良氏が3割減の計算方法をただすと、文科省の望月禎初等中等教育局長は、22年と16年とでは休憩時間の計算方法が異なると答弁。22年の推計では同年調査で独自に調べた休憩時間(20分)を差し引いて計算した一方、16年の推計では差し引いていないと認めました。

 吉良氏は「22年の残業時間を短く見せる粉飾だ」とし、比較可能な計算方法で通常期(10、11月期)の残業時間を示すよう要求。望月氏は、22年が1カ月約56時間、16年が約70時間(いずれも小学校)と答弁しました。

吉良氏は、残業時間は2割減にとどまるうえ、22年は新型コロナの影響で学校行事や部活動が大きく制限されていたため、残業時間が短くなった可能性があると指摘。さらに、06年調査と比べると22年の小学校教員の残業時間が1・6倍に伸びていることも示し、「文科省のまやかしの数字を前提にして法案の議論はできない」と訴えました。阿部俊子文科相は「試算し直すことは考えていない」と拒否しました。

しんぶん赤旗2025年3月25日付より抜粋

議事録

吉良よし子

日本共産党の吉良よし子です。
 今日は、教員の働き方について伺っていきたいと思います。
 教員の長時間労働を是正することが喫緊の課題であるということはこの間ずっと議論されていますし、また今国会には給特法の改正案が提出されているところであります。
 私はこの間、長時間労働の是正のためには、そのブレーキになる残業代制度を導入すること、そして教員定数を改善することこそ必要だということは求めてきたところですが、この国会に提出された法案には、そうした長時間労働を減らす新たな策、抜本的な転換というのは何もないと、政府、文科省はこれまでの取組を加速していくという立場になっているわけです。しかし、そういう、これまでの取組を加速という文科省の立場が今問われていると私は思うわけです。
 この法案の前提となっているのが中教審答申になるわけですが、その中教審答申では、この間の取組の成果の一つとして、令和四年、二〇二二年度の勤務実態調査で、時間外在校等時間、つまり残業時間が減ったということを挙げているわけです。そして、推計値のため参考としての比較である点には留意が必要としつつ、月当たりの残業時間がその前の勤務実態調査、二〇一六年時点と比べて減っている、六年間で約三割減少したということが言われているわけです。
 お配りした資料を御覧ください。
 文科省の示した中教審答申の考え方という資料には、わざわざグラフまで示して三割減だと、こう矢印示して強調して、で、しかもこのまま進めばおのずと残業時間がその三割減のペースで進んでいくんだと、残業時間が減っていくんだというような矢印も書かれているわけですが、しかしこの三割減というのは現場の実感からは程遠いということが指摘されているわけです。
 例えば、元中教審の会長であった小川正人東大名誉教授らのグループの調査によりますと、小学校でも中学校でも在校等時間は変わらない、若しくは増えたと答えた方が合わせて約六割に上ると。残業減ったという実感などないというのが現場の感覚だと思うわけです。
 ここで、文科省のこの推計の中身について私、確認していきたいと思うんですけれども、二〇二二年の小学校で約四十一時間、中学校で約五十八時間というのはどのような数字を用いてどのような計算を行って試算したものなのか、簡潔にお答えください。

政府参考人(文部科学省初等中等教育局長望月禎君)

お答えいたします。
 御指摘の教師の年間を通した平均の時間外在校等時間の推計に当たりましては、十月、十一月調査の結果からこれを通常期としまして、八月の調査、いわゆる夏季休業、この結果からこれを休業期、のこの月当たりの時間外在校等時間を算出をした上で、通常期が年間十か月ある、そして休業期が年間二か月あると仮定して算出をしているところでございます。
 そして、通常期及び休業期の月当たりの時間外在校等時間の推計に当たりましては、平日、土日それぞれの一日当たりの在校等時間から所定の勤務時間、いわゆる平日は七時間四十五分でございますけれども、これと休憩時間、そして調査の回答に要した時間を減じた上で、この当該時間については平日は二十日間、土日は八日間を乗じて算出しております。
 なお、休憩時間につきましては、令和四年度の教員勤務実態調査から、新たに一分単位の出勤時刻から退勤時刻内に取得した休憩時間を新たに調査してございまして、当該その休憩時間を減じているところでございます。

吉良よし子

御説明いただいたわけですけれども、いろいろ複雑な計算をされているということが分かったかと思うんですけれども、要するに、二〇二二年の勤務実態調査では、十月と十一月期という通常期と八月の休業期というのを分けて調査をしていて、それを計算をしたわけだということなんですけど、御説明聞いていると、八月は休業期だということで、その八月期の残業時間を年間で二か月分あるんだと推計して試算をしていると。
 八月というのは、子供たち夏休みで、先生の勤務時間が最も短い月だと私も思うわけですね。文科省の調査でも、計算した結果、その八月の残業時間というのは四十八分だと推計をされていると。それを年に二か月あるんだということで、この月当たりの残業時間を計算されているということなんですけど、こんな、月の残業時間が四十八分となるような、そういう月は八月以外にほかにあるんですか。

政府参考人(望月禎君)

これ、八月調査の結果を休業期として、年間二か月分を仮定して試算していることにつきましては、夏季休業期間、これは七月の終わりぐらいから夏休み、いわゆる子供たちの夏休みが始まるところもありますけれども、この夏季休業期間を四週間程度、そして年末年始の休業期間を二週間程度、そして年度末から年度初めにかけての休業期間を二週間程度と大体見込みまして二か月と試算しているところでございます。

吉良よし子

休業期、夏休みと冬休みと春休みということだと思うんですけれども、いや、それこそ今、春休み、春の休業期なわけですけど、今、年度替わりで、学校の残業時間むしろ最も長い月で、もう先生方、年度替わりの、新しい年度への準備で本当に毎日忙しい日々を送っているわけで、それが八月と同様の残業時間で済むというような計算をするというのは、私はあり得ないと思うんですね。それを二か月分も計上するというのは、この残業の実態をわざと短く見せる意図があるのではないかという疑念を免れ得ないと私思うんです。
 もう一点確認したいと思うんです。
 先ほど、二〇二二年の勤務実態調査で、休憩時間についてを独自に調べたと、その分をということでお話がありましたけど、もう一回確認をしたいと思います。この二〇二二年の勤務実態調査で休憩時間調査した、その際に、この二〇二二年の月の残業時間の推計をする際、この休憩時間は差し引いたということでよろしいですか。

政府参考人(望月禎君)

お答えいたします。
 教員勤務実態調査を踏まえました在校等時間の算出に当たりましては、三十分単位で最も中心的な業務を一つだけ選ぶという調査方法を取ってございます。
 このため、三十分単位で、その時間に主に休憩している場合には休憩時間として把握することができますけれども、正確な休憩時間を把握することが難しいという課題がございました。このため、より精度の高い調査にして、しっかり、教員、教師の方々が休憩時間を取っているかどうかということについて正確に把握するために、令和四年度の調査から、休憩時間につきましては、新たに一分単位で出勤時刻から退勤時刻内に取得した休憩時間を調査をしてございまして、令和四年度教員勤務実態調査を踏まえた年間を通じた平均の時間外在校等時間の推計に当たりましてはその休憩時間を減じていると、ダブルカウントはしていないというところでございます。

吉良よし子

勤務実態調査で休憩時間調査をされるということ自体は私も否定するものじゃないわけですね。
 ただ、この比較をする上で、推計値、一か月当たりの残業時間を推計するに当たって、この休憩時間を差し引いているという御答弁だったわけです。一方です。二〇一六年度、この比較対象になっている二〇一六年度の勤務実態調査ではどうかというと、この休憩時間の調査というのはしていないはずなんですね。
 今回の推計において、この二〇一六年度の一か月分の残業時間を推計するに当たって休憩時間は計上したんですか、いかがでしょう。

政府参考人(望月禎君)

ちょっと繰り返しになりますけれども、平成二十八年度の教員勤務実態調査では、三十分単位で最も中心的な業務を、これ令和四年度もそうしていますけれども、一つだけ選ぶ方法、これを基に把握した休憩時間を減じて、年間を通じた平均、年間を通じた平均の時間外在校等時間を推計をしてございます。
 その平成二十八年度の教員勤務実態調査では、一分単位の出勤時刻から退勤時刻内に取得した休憩時間というものは、これは別途の形では調査をしていなかったため、年間を通じた平均の時間外在校等時間の推計に当たりましては当該休憩時間を減じていなかったというところでございます。

吉良よし子

何か長々説明されたので、もう一回端的に答えてください。
 つまり、二〇一六年度の一月当たりの残業時間を推計するに当たって、二〇一六年の分では休憩時間は差し引いていないと、それでよろしいですか。

政府参考人(望月禎君)

一分単位の出勤時刻から退勤時刻内に取得した休憩時間というのは調査していませんから、それは減じておりません。

吉良よし子

調査していないから減じていないと。
 一方で、二〇一六年は休憩時間を差し引いていなくて、そして二〇二二年の方は休憩時間を差し引いた時間にしていると。これ、不公平なやり方じゃないですか。二〇二二年の方が短くなる、二〇二二年を短くして、二〇一六年を長く見せる。より残業時間が減ったように見せる粉飾決算と言われても仕方がないような推計の仕方をしているんじゃないのかと。
 これではまともな比較ではないんじゃないかと思うんですけど、大臣、いかがですか。この不誠実でいびつな、推計に推計重ねた試算で法案の前提として三割減などというのは余りに誇大だと思いませんか。大臣、いかがでしょう。

国務大臣 文部科学大臣 あべ俊子君)

吉良委員が本当に美しいお顔で怒っているのも大変よく分かるのですが、今、実は私どもは、可能な限り実態に近いものになるように、その時点で把握できるデータを基に可能な範囲で推計をさせていただいております。
 こうした中で、令和四年度の教員勤務実態調査の結果を基に、推計におきましては、三十分単位で最も中心的な業務を一つだけ選ぶ調査方法により把握した休憩時間だけでは正確に把握できない、一分単位で把握した出勤時間から退勤時間内に取得した休憩時間について調査を行わせていただきまして、その結果を踏まえて推計を行ったものでございまして、現時点で把握しているデータで可能な範囲で推計させていただきました。

吉良よし子

可能な範囲で推計されたと言いますけど、いや、ちゃんと正確に比べる、比較するというのであれば、先ほど申し上げたような、その八月を勝手に二か月分計上するとか、若しくは休憩時間を入れたり入れなかったりするとか、そういう不正なやり方をせずに、比較対象として公正に、データのある十月、十一月期だけを休憩時間含めずに比べると、それがやっぱり正確、正直なやり方だと私は思うわけです。
 確認をしたいと思うんですけれども、二〇二二年度調査と二〇一六年度調査から休憩時間を差し引かず、十月期、十一月期だけを用いて一か月当たりの時間外在校等時間試算すれば、どうなりますか。

政府参考人(望月禎君)

あくまで教師の月当たりの時間外在校等時間については、そのときの最も正確なものになるように調査を取っていまして、年間を通した推計で、結果であるということを前提とした上で、吉良委員の御指摘を踏まえ、御質問を踏まえまして、十月、十一月の調査結果のみを用いて推計すれば、これは年間を通した状況という、夏季休業とか冬季休業入っておりませんので年間を通した状況を表すことになりませんが、平成二十八年度について、三十分単位で最も中心的な業務を一つだけ選ぶ調査方法により把握した休憩時間を減じて推計すると、小学校で約七十時間、中学校で約九十四時間となり、さらに、令和四年度につきまして、仮に令和四年度から新たに把握した、一分単位で把握した出勤時刻から退勤時刻内に取得した休憩時間ではなく、三十分単位で最も中心的な業務を一つだけ選ぶ調査方法により把握した休憩時間を減じると仮定した場合には、小学校は約五十六時間、中学校は約七十五時間となるところでございます。

吉良よし子

先ほど、その十月、十一月期だけで御答弁いただいたわけです。
 小学校で見れば、二〇一六年で七十時間、で、二〇二二年になっても五十五時間、まあ五十六時間ということなんですけれども、二〇一六年より二〇二二年の残業時間が少ないのは事実ですよ。
 しかし、これで計算すれば三割減にはならないんです。この数字で比べてみても二割減。文科省の言う三割減は、実態を反映した数字とは到底言えないんですよ。
 二〇二二年といえば、ましてやコロナ感染症の影響が続いて、例えば学校の行事とか部活動など大きく制限されていて、より時間が減る場面があった。十月、十一月期って特にそういう行事のある月ですからね。そういう時期なわけですよ。
 だから、やっぱりそういった実態、三割減などと言えないのは明らかですし、あわせて、この教員の長時間勤務の実態比べてみるというのであれば、その教員の長時間労働の実態が数字として初めて明らかにされた二〇〇六年度の勤務実態調査との比較も必要だと思うんですが、この二〇〇六年度の勤務実態調査でも、十月期で見ると、残業時間として報告されているのは、小学校で三十五時間四十四分、中学校で五十六時間十二分。一方、先ほどあったとおり、二〇二二年度は小学校で五十六時間、中学校で七十五時間。むしろ二〇〇六年と比べれば、二〇二二年は残業時間増えている。
 だから、単純に減り続けていますねなんという、そういう話ではないんですよ。あくまで一つの試算、推計だとおっしゃいますけど、改めて、こんな三割減なんという主張は直ちに改めるべきではありませんか。大臣、いかがですか。

国務大臣(あべ俊子君)

まずは、やはり先生方の働き方はこのままではいけないということは、多分委員とは同じ意見なんだというふうに思っております。
 今回の数字がちょっと違うのではないかという御意見をずっといただいているわけでございますが、私ども、先ほども申し上げましたように、可能な限り実態に近いものにさせていただきまして、その時点で把握しているデータを基に可能な範囲で推計をいたしました。
 また、繰り返しになりますが、令和四年の教員の勤務実態においては、一分単位で把握した出勤時間から退勤時間内に取得した休憩時間を調査することにしたので、平成二十八年の調査の結果を基にした推計とは推計の方法が異なるという点、また教師の年間を含めた月当たりの時間外在校等の時間についてあくまで推計であるという点含め、丁寧に説明してまいりたいというふうに考えているところでございますが、文科省としては、いずれにしても、平日、土日とともに全ての職種で在校等時間が減少はしているけれども、依然として時間外在校等の時間が長い教師も多い状況を課題として捉えておりまして、働き方改革の更なる加速化に向けて取組を進めていくというこれからの対策をしっかり議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

吉良よし子

これからの対策をしっかり議論していきたいとおっしゃったんですけど、その前提が間違っているよということを私、お示ししているところなんです、指摘しているところなんです。
 しかも、今回、三割減という誇大な数字を掲げただけじゃないんですよ。お配りした資料を見ていただいたとおり、この三割減がそのまま続いていくことを前提にして、この学校における働き方改革をそのまま進めるっておっしゃっているんです。それじゃ駄目でしょうって言っているんです。
 二割減にしかなっていないし、二〇〇六年と比べたらむしろ増えている状態からどう変えていくかという抜本的な転換が求められている中で、こんなまやかしの数字で、誇大な粉飾決算とも言えるような三割減ということを、言葉だけを使って、働き方改革をまともに議論ができると私は到底思えないわけです。
 いよいよ法案審議が衆議院でも始まろうとしているわけですが、法案審議始める前に、この時間外在校等時間、残業時間についてちゃんと改めて比較可能な試算、数字出し直すべきではありませんか。もう一度、大臣、いかがですか。

国務大臣(あべ俊子君)

 委員がおっしゃる御指摘踏まえてしっかりと今も考えてみましたが、今、本当に、今いる教師の働き方をどうしていくかという、これからが大切なので、新たな推計を行う予定はございません。

吉良よし子

いや、これからの議論をするために前提が大事だということを言っているわけで、その前提の数字が間違っているということを指摘させていただいています。
 委員長、この正確な数字の提出を委員会に提出していただくよう求めるものです。

委員長(堂故茂君)

後刻理事会で協議させていただきます。

吉良よし子

このようないいかげんな推計に推計を重ねた数字で教員の働き方改革、前に進めるとは到底思えませんし、法案の審議もまともにできるとは思えないわけです。
 改めて、多少の処遇改善などではなく、労働時間に見合った残業代払うこと、教員増やすことこそが必要だということを申し上げて、質問を終わります。