2025年・第217回通常国会
教員長時間労働減らぬ 給特法改定案可決 反対討論
要約
公立学校の教員に残業代不支給制度を温存する教員給与特別措置法(給特法)改定案の採決が10日、参院文教科学委員会で行われ、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の賛成多数で可決されました。日本共産党、れいわ新選組などが反対しました。
改定案は、教職調整額を引き上げつつ、残業代の不支給を継続するものです。
日本共産党の吉良よし子議員は反対討論で、教員の長時間労働は深刻だと指摘。阿部俊子文科相が「時間外在校等時間は必ずしもゼロにはならない」と答弁したことに「国ぐるみの違法労働隠しだ」など、現場で怒りの声が上がっていると述べ、残業代制度の適用や教員の基礎定数増などを求め「政府や文科省の責任で教員の長時間労働をなくすべきだ」と主張しました。
吉良氏は質疑で、石破茂首相の「教員の時間外勤務は労働時間に当たらない」と述べたことに教員から失望の声があふれているとして「長時間労働の是正は教員個人の裁量で解決できる問題ではない。時間外勤務を労働と認めない限り減らせない」と主張。改定案は、文科省が定めた「目に見える」時間外在校等時間を削り、「目に見えない」持ち帰り残業が増えるだけだと強調しました。
「文科省は、勤務実態調査も、基礎定数の改善も残業代支給もせず、教員の長時間労働を見直すために何をするのか」と質問。阿部文科相は、業務量の管理などを教育委員会に義務づけ、フォローアップしていくと答弁しました。
吉良氏は、文科省は何もしないのと同じだと批判し「教育委員会や校長に責任を押し付ける。最も無責任なのは文科省だ」強調しました。
議事録(未定稿)
※こちらの議事録は速報・未定稿版となります
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。今回の法案質疑では、この間も繰り返し申し上げていますが、長時間労働、教員の長時間労働を解消できるかどうか、もっと言うと、長時間になっている教員の時間外の残業を労働と認めて、減らせるかということが問われているわけです。
しかし、先日、今日もですけれども、繰り返し、政府、そして総理も、この時間外の教員の勤務について超勤四項目以外の業務には時間外勤務を命じない、よって労働基準法の労働時間には当たらないと答弁をされていると。この答弁にはもう教員の皆さんからも失望の声が寄せられているわけです。命じないから労働ではないなんてむちゃくちゃを総理も言っているとか、終わりだ、首相がこれを言ってしまっては私たちの労働環境は変わらない、先生の仕事を何だと思っているんだ、私たちやりがい搾取されているなどの声です。
改めて大臣に伺いますが、時間外在校等時間は労働時間ではないというのであれば、この超勤四項目以外の時間外の業務というのは教員が全て勝手にやっていると、本来はやらなくてもいい業務だと、そういうことなんですか。
○国務大臣(あべ俊子君) 私どもは、この給特法でございますが、所定の時間、勤務時間外に校長がいわゆる超勤四項目以外の業務について時間外勤務命令を出すことはできない仕組みとなっていることから、教師の皆さんが、所定の勤務時間外に勤務時間外、時間外勤務命令によらず業務を行う時間におきましては労働基準法上の労働時間には当たらないと整理されているものを申し上げているのでございまして、目の前の子供たちのために所定の勤務時間外に教師の皆さんが行っている業務が、委員御指摘の本来やらなくてよい業務であるなどと申し上げているわけでは決してございません。
給特法の仕組みの中におきましては、学校教育活動に関する業務を行っているものというふうに考えているところでございます。
○吉良よし子君 やらなくていい業務じゃないとは言っていないとおっしゃっていますけど、労働じゃないと繰り返しおっしゃっているんですよね、時間外勤務は労働じゃないと。こういう答弁を繰り返しているから、もう現場の皆さん本当にやる気なくしているわけですよ。授業準備をし、成績処理に追われ、保護者が仕事で電話に出られないというから学校で待機させられ面談対応、生徒のトラブル対応も全部全部労働ではないと、じゃ、もう全部やめていいですよねとか、研究授業もプール指導もスポーツテストの準備からテストの丸付けまで、何にも回らなくなるけど全てほっぽり出して帰れということかなとか、一国の総理が仕事じゃないと言うなら放置して帰ろう、やってられないと、次々声が上がっているんですよ。
文科省が、時間外勤務は労働じゃない、労働時間じゃないなんて言うから、本当にこの現場の皆さんやる気をそがれているんだと、それで本当に学校回らなくなってもいいというんですか。改めて、ちゃんと時間外の勤務も労働時間だと認めなきゃいけないんじゃないですか。もう一度、大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君) 給特法でございますが、所定の勤務時間外に校長等がいわゆる超勤四項目以外の業務についての時間外勤務命令を出すことができない仕組みとなっておりまして、この仕組みの下におきましては、所定の勤務時間外に時間外勤務命令によらず業務を行う時間は労働基準法上の労働時間には当たらないと整理されていると考えているところでございます。
○吉良よし子君 何度言っても撤回をされないと。教員の皆さんからは、これは国家ぐるみの違法労働隠しにほかならないじゃないかという声まで上がっているわけです。
こういう勤務時間外、時間外の勤務、時間外の勤務を労働時間と認めないという整理をし続ける限り、学校現場の長時間労働を減らす、なくすことなどできないんだということを強く申し上げたいと思うんです。
あわせて、持ち帰り残業についても伺いたいと。
これも先ほども答弁ありましたけど、本来、持ち帰り残業、持ち帰り業務は行わないことが原則だという答弁、これ大臣繰り返されているわけですけど、じゃ、持ち帰り残業も教員が勝手にやっていることかといえば、そうじゃないはずなんですよ。実態としては、授業準備など教員として必要な業務だから持ち帰ってでもやらざるを得ない実態があるわけですよね。特に現場から聞こえてくるのは、ノー残業デーなどで早く退勤しなければならない日に結局仕事を持ち帰らざるを得なくなっているという声なんですね。だから、勤務実態調査では、時間外在校等時間は前回より減ったわけですけれども、持ち帰り残業というのは増えていると。
本法案は、教育委員会に計画を立てさせて、文部科学省が定めた時間外在校等時間の上限目標の達成に向けて、目に見える成果というのを教育委員会、学校に求めるものになっているわけですけれども、こういう目に見える成果を求める中で、教育委員会の間で、若しくは学校間で時短競争が激化すると。そういう激化する中で、結果、見える部分の時間外在校等時間を削る、見えない残業、持ち帰り、結果として増えるだけになると思いませんか。大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(あべ俊子君) 今回の法案におきましては、教育委員会にこの業務量の管理と健康確保措置実施計画の策定とこの実施状況の公表を義務付けているところでございますが、これは全ての教育委員会におきまして学校における働き方改革を着実に進めるための制度化を図るものでございます。
したがって、教育委員会、また学校は適切に現状を把握していきながら、また業務、環境整備等の状況を検証、改善していくことがまさにその役割でございまして、改革の目的を見失うことがあってはならないというふうに私ども考えておりまして、その点につきましては丁寧に周知をしてまいりたいというふうに思っております。
また、公表を義務付けていくということで、公表された数字がその地域にとって自ら、また周囲の記録、実態と懸け離れていると感じる場合などに関してはこの疑問の声が上がることにもつながるため、こうしたチェック機能にもつながる面があると私どもは考えております。
○吉良よし子君 業務量の管理、公表の義務付けと言いますけど、聞きますけど、持ち帰り残業はその義務付けの範囲に入るんですか、入らないんですか。いかがですか。
○政府参考人(望月禎君) 持ち帰りについて、持ち帰りと、まあ持ち帰りというのは基本的には行わない、行うべきものでないということで指導をしていくということでございますので、そこは今回の業務量管理の計画の中での公表の義務というものではございません。
○吉良よし子君 義務の対象じゃないと。だから、公表の義務の対象じゃないものはやっぱり見えるものではないですから、見えないところへ隠されていく、隠されていくと。で、見えるところだけ減らしていくと。それでは本質的な改革には全然ならないんだと。
改めて、そういう見えない残業をなくすためにも、ちゃんと国として勤務実態調査を継続して持ち帰り残業も把握していく、それやるべきではないですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君) 教師の勤務状況に関しましてでございますが、国としても継続的にフォローアップしていくことはまさに重要だというふうに考えております。
過去に行いました教員の勤務実態調査でございますが、学校現場に負担の大きい調査であったことに加えまして、一部の教師の一部の期間に限定した調査になってしまいました。一方、近年の教育委員会におきましては客観的な方法による教師の在校等時間のこの把握が徹底されてきたことを私ども踏まえておりまして、今後は、学校現場に追加の調査負担を生じさせることはなく、全国の教育委員会が時間外等、時間外在校等の時間の状況を調査することで教師のこの勤務状況を把握していくことにしているところでございまして、今後の調査につきましても、調査に関わる学校現場の負担、また従前の調査にも留意をしていきながら、適切な内容や方法を検討してまいりたいというふうに思っております。
○吉良よし子君 勤務実態調査、継続するとおっしゃらないんですよね。都道府県委員会、教育委員会等の調査が客観的になっているとおっしゃっていますけど、先ほど確認したとおり、持ち帰り残業は把握をされないんですよ。義務ではないんですよ。
先日、私指摘しましたけど、休憩時間に至っては一律四十五分、取れていなくても勝手に引いていく、そういうふうな管理をしているような教育委員会ほとんどですよ。
現場の負担、勤務実態調査が現場の負担だというのであれば、休憩時間について雑談の時間を一分単位で計らせるみたいな、そんな面倒なやり方を改めればいいじゃないですか。都道府県や市町村任せじゃなくて、国の責任として継続的に勤務実態調査をやらなきゃいけないのに、それすらやらない、絶対にやると言わない、あり得ないと思うんですよ。
それだけじゃないですよ。持ちこま数の削減、必要だと文科省おっしゃいますけれども、そのために標準授業時数を減らすとも言わない。一日一人四こま、これ基準にしましょう、上限にしましょうということも言わずに、乗ずる数を見直すとも絶対に言わないですね、必要があればとしか言わない。で、基礎定数じゃなくて加配ばかり増やしていって、結果、各学校に一人ずつ確実に教員を配置するということすらできていない、やることもしない。そして時間外残業を労働と認めず、残業代も支給しないと。計画策定、見える化、全て都道府県教育委員会任せ、学校任せ。
文科省は教員の長時間労働の是正のために一体文科省として何をするのかと、何もしないんじゃないですか、大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君) 学校における働き方改革でございますが、今回の法案で、全ての自治体、国の指針に則しまして働き方改革のための計画を策定し、その実施状況も併せて公表するなど、自治体、学校、地域、保護者が協力をし合いながらこの働き方改革を推進する仕組みを構築することになっております。
学校、教師が担う業務の三分類の更なる徹底と校務DXの加速と、さらには保護者対応に関わる行政の支援体制の構築に対する支援、好事例の横展開などを通じまして自治体の取組の伴走支援を私どもしっかり行ってまいります。また、教職員定数の改善、支援スタッフの充実などによりまして学校の指導、運営体制の充実もしっかりと推進してまいります。
文部科学省におきましては、引き続き、こうした取組を通じまして教育委員会が実施する取組を支援していくとともに、この調査によりまして働き方改革の進み方を毎年度しっかりとフォローアップしてまいります。
○吉良よし子君 働き方改革のフォローアップをしていくんだと、それだけですよね。
計画策定求めると言うけど、それも全部全ての自治体に押し付けているだけですから、三分類見直したとしても全然話にならないんだということは広田参考人からも指摘がありましたし、やっぱりそれ、文科省がやることでもないんですね、現場に押し付けているんですね。
文科省、何もしないんですよ。時間外は労働時間じゃないから、教員が勝手にやっていることだから、だから残業代も支払わないでいいんだと。基礎定数だって、乗ずる数を見直して、増やすとは絶対に言わないんだと、そうやって現場の責任、教員が勝手に時間外労働やっているんだと、そうやって放り投げて自ら長時間労働を是正するということを全くやってこなかったのが文科省であり、それを是正する気がないのが今回の法案であり、そんな状態でこのままこの法案を採決するなんというのはあり得ないんだと、徹底審議引き続き求め、私は質問を終わります。
○吉良よし子君 私は、日本共産党を代表して、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
教員の長時間労働は深刻で、小中学校の教員は平均で連日十一時間半働き、休憩はほとんど取れず、土日の出勤、持ち帰り残業まであります。精神性疾患による病休者は増加の一途で、過労死も起きています。SNSには毎日のように、もう限界、もう辞めたい、教員は未来が見えないと、教員の皆さんからの悲鳴が上がっています。この危機的な学校現場、教員の長時間労働の是正は待ったなしです。
ところが、文科大臣は、時間外在校等時間について、必ずしもゼロにはならないと、とんでもない答弁を繰り返しました。時間外在校等時間には自主的な残業が含まれるからと言いますが、現場の教員から、好きで在校していると思いますか、みんな帰りたいよ、これは国家ぐるみの違法労働隠しじゃないかと怒りの声が上がっていることを直視すべきです。
本法案では、給特法の残業代不支給には手を付けず、教職調整額を現行の四%から一〇%に引き上げると言いますが、今の教員の労働時間に全く見合わないばかりか、いわゆる働かせ放題の仕組みを温存し、長時間労働を助長し、固定化するおそれがあります。
しかも、特別支援教育に携わる教員への給料の調整額を引き下げ、学級担任手当の対象外にすることは余りに理不尽です。これに反対する署名は、二か月足らずで二万二千筆を超えました。特別支援教育の特殊性や重要性を理解しない差別的な対応はすぐに撤回すべきです。
また、主務教諭の新設は、参考人が、何の益もなく、むしろその弊害の方が大きいと述べられたように、教員の間に階層化と分断を生み、教員同士が対等な立場で協働することを困難にするおそれがある上、業務負担の増大も懸念されるため、到底容認できません。
なお、衆議院での修正については、義務標準法の改定や教員一人当たりの授業時数の削減について言及するなど評価できる部分もあるものの、原案を踏襲し、残業代不支給の働かせ放題を温存する上、管理職による教員の業務管理の規定など、これまで以上に時短ハラスメントや持ち帰り残業を増長させるおそれもあり、反対します。
文科省は、給特法で教員を残業代制度の適用除外にし、コスト意識ゼロで人を増やさず業務だけどんどん増やし長時間勤務を蔓延させてきたことを反省し、時間外労働を労働時間と認め、公立学校教員にも残業代制度を適用すべきです。そして、一日四こまを基本に乗ずる数を見直し、教員の基礎定数を増やすべきです。勤務実態調査の継続すらやると言わず、計画策定、見える化を現場に押し付けるのは余りに無責任です。
政府、文科省こそが教員の長時間労働をなくす責任を果たすべきであると申し上げ、討論といたします。