公立校教員に残業代を/「定額働かせ放題」巡り
要約
日本共産党の吉良よし子議員は19日の参院文教科学委員会で、国立大学付属学校の教員への残業代支給が長時間勤務の改善につながっているとして、教員への残業代支給と定数の改善を求めました。
教員の働き方をめぐっては財務、文部科学両省がそれぞれ方向性を示していますが、いずれも教職調整額の引き上げにとどまっており、残業代を支払わない「定額働かせ放題」の仕組みは変わりません。文科省は公立学校の教員に残業代を支給しないのは「定期的に学校をまたいだ人事異動が存在する」からだなどと、国立大学付属学校などには人事異動がないかのような説明をしてきました。
吉良氏が国立大付属学校の多くが公立学校と人事交流しているのではとただすと、文科省の茂里毅総合教育政策局長は「人事交流が行われている例が多々ある」と認めました。
吉良氏は、残業代を支払うようになった国立大学付属学校で「月50時間を超えていた残業が、いまは月30時間になった」「さまざまな会議が短くなった」「部活の先生の負担を減らすようになり、部活指導員が増えている」などの教員の声からも長時間労働の改善に効果があるのは明らかだとして、残業代の支給を求めました。
「教職調整額という仕組みは合理性を有している」と繰り返し背を向けた阿部俊子文科相に吉良氏は、長時間労働の改善には残業代の支払いと抜本的な増員が欠かせないと主張しました。
議事録
吉良よし子
次に教員の働き方、残業代の問題についても私も伺っていきたいと思うわけです。
先ほど来、この委員会でも教員の働き方の問題ということが議論をされているわけですけど、今年夏に中教審答申が出され、その中教審の中身というのは、教員の働き方や処遇に関して、残業代を支払わないまま調整額を引き上げる、定額働かせ放題と言われるような状態を温存するという方向性が示されたわけです。
それを踏まえて、文科省は、残業代を払うというやり方ではなく、基本給の一端を担う調整額というのを一三%に引き上げるという概算要求を出したと。それに対して財務省が、調整額を一三%ではなく一〇%を目指して段階的に引き上げるという案を示した上で、その後、残業代を支給する方向性も示しているということが言われているわけなんですけれども。
初めに、財務省の方に先に伺っておきたいと思うんですけれども、これ財務省の案では、この調整額の引上げが終わった後に所定外の勤務時間に見合う手当への移行を検討というふうに書いてあるわけですけれども、それというのはつまり、この財務省案を採用していくとするならば、残業代支給の制度を導入することを確約すると、必ず残業代を払うと、そういうことを示したということなんですか。
政府参考人(財務省主計局次長中山光輝君)
先日の財政制度等審議会の建議におきましては、教職調整額につきまして、一〇%を目指して段階的に引き上げつつ、時間外在校等時間が月二十時間に達する際に教員ごとの所定外の勤務時間に見合う手当に移行することを検討することが考えられるとされたところでございます。
こうした建議の内容も踏まえまして、教員の働き方改革や給与の在り方について、予算編成過程において文部科学省と丁寧に調整を進めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
いや、私が聞いているのは、引き上げ方とか様々議論がある、最後にその残業代の支給ということをすると、約束をするということなんですか。
政府参考人(財務省主計局次長中山光輝君)
繰り返しになりますが、建議において提言いただいておりますのは、一〇%を目指して段階的に引き上げつつ、時間外在校等時間が月二十時間に達する際に教員ごとの所定外の勤務時間に見合う手当に移行することを検討するということがされたところでございまして、文部科学省と予算編成過程においてしっかり調整を進めていきたいと考えております。
吉良よし子
同じ答弁を繰り返されたわけですけど、要するに確約はされないんですね、検討すると、そして文科省と相談をすると。だから、決して、財務省案を採用するということがあり得るのか分かりませんけれども、その残業代払うことを明言しているわけでは決してないというところが問題で、じゃ、文科省と相談した暁には残業代を支払うのかというと、そういうことは文科省は一切言っていないわけですよね。
私、これが本当に問題だと思っていて、中教審では、この残業代を教員に払うということについて、教師の職務の特殊性を踏まえるとなじまないということを言っているわけです。しかし、公立学校以外、つまり国立や私立の学校で働く教員にはもう既に残業代が支払われているわけです。ガイドラインなどで、残業と認められる業務とか、その残業する場合の手続というのを事前に定めながら、ちゃんともう今支払っている。だから、教員に残業代が支払えないなんてことはあり得ないということはもう既に明らかだと思うんですね。
しかし、中教審は、いや、国立や私立は公立校と違うんだと。非公務員だとか、より公立の方が多様性の高い児童集団への対応になるから無理だとか、さらに、公立は学校をまたいだ人事異動があることをもって残業代が払えないという説明をしていて、私、これ全く理解ができないんですけれども、確認をしたいと思うんです。
国立大学附属校で公立学校と人事交流を行っていない学校というのはあるのかと。大半の国立大附属の学校が教員の人事交流行っているのではありませんか。
政府参考人(文部科学省総合教育政策局長 茂里毅君)
お答えいたします。
国立大学附属学校の教員につきましては、公立学校の教員と人事交流が行われている例が多々あることは承知してございます。大学関係者からは、人事交流を行っている学校は多く、約七割という声もございます。
吉良よし子
約七割というようなお話もあったわけですけど、それもそのはずで、この間、文科省は、通知なども出しながら、国立大附属学校で教員人事が固定化しているところについては地域の教育委員会との間で教員人事交流を行うことを積極的に検討するようにということなども言っていて、そういう中で、公立学校の教員の方が国立大附属に行くなんていうことも含めて学校をまたいだ人事異動というのはやっているんです。
だから、それをもって、何か、いや、公立にしか異動がないから残業代が払えないというような言い分なんていうのはもう絶対に通用しないと思いますし、公務員か公務員じゃないかということでも、教員以外の公務員にも残業代は払われていることを思えば残業代を払わない理由にはならないですし、公立の方がより多様性のある児童集団に臨機応変に対応する必要があるというのであれば、なおさらそれに見合う手当、働いた分の残業代支給というのは私は必要だと思うわけで、大臣、改めて、こうした現場の実態踏まえれば、公立校の教員にだけ残業代を支払わないという理由というのはもはやないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
国務大臣(文部科学大臣 あべ俊子君)
委員御指摘の点でございますが、中教審の答申におきましては、社会的、経済的背景が異なる地域、学校への異動があった場合等の対応等を差異の一例として挙げているというふうに承知をしているところでございます。
特に公立学校におきましては、通学区域内に居住する多様な子供たちを受け入れている、教育の機会を保障する役割を担っているところでございまして、国立、私立学校に対しまして相対的に多様性の高い児童生徒集団となっている現状がございます。
また、公立学校の教師は、地方公務員の公務として職務を遂行することとされておりまして、加えて、勤務条件は条例で定めることとされているといった公的な性質が強い職務であると考えているところでございまして、文部科学省としては、こうした理由を教職の調整額と、支給とするという仕組みは合理性を有しているというふうに考えております。
吉良よし子
いや、だから、私が先ほどこれは理由になりませんでしたよねと言ったことを繰り返し御説明になられたんじゃないかなと思うんですけれども、石破首相はできない理由ではなくどうすればできるかを議論したいということをよくおっしゃっていたと思うんですけれども、大臣、今お話しされているのはできない理由ばっかりだと思うんですね。もうそれじゃ話にならないんだということを私、指摘したいと思うんです。
何より、この残業代を支給するようになった国立大附属の学校では、確実に教員の長時間労働が改善されているという声を聞いているということを紹介したいと思うんですよ。残業代を払い始めたら、その前の月の残業は五十時間を超えていたと、それが今は月三十時間程度になったとか、以前は十九時まで会議が続くのが当たり前だったが、様々な会議が短くなったという声もあります。また、部活の先生の負担を減らすということになって、休養日も取れるようになったと、そのための部活指導員も増員されたんだという声も上がっていると。それこそ公立校との人事交流もあるわけで、公立校から来た先生は、いや、本当にその労働時間は短いし残業代も支払われるし、公立に戻りたくないという声が出ているなんていう声も聞くわけですね。
いずれにしても、残業代を支給してこそ教員の長時間労働を改善できる、短縮できる。これは国立大附属の実践例を見れば明らかであり、その効果は認めるべきではありませんか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(文部科学大臣 あべ俊子君)
委員に御指摘をいろいろいただいているところでございますが、中教審の答申におきましては、時間外勤務手当ではなく、この勤務時間の内外を包括的に評価するものとして教職調整額を支給するという仕組みは合理性を有しているとされているところでございまして、一方で、教師の時間外在校等時間の縮減を確実に進めることはまさに重要でございまして、そのためには、学校における働き方改革の更なる加速化、また学校の指導、運営体制の充実を一体的、総合的に進めることが必要でございまして、具体的には、学校教師が担う業務に関わる三分類に基づく業務の更なる厳選、また見直し、授業時間数の見直し、校務DXの加速化、また長時間勤務を縮減するメカニズムの構築に向けまして、自治体ごとの在校時間の公表の制度化などに取り組んでまいります。同時に、学校の指導、運営体制の充実に関しましては、教師の持ち時間数の軽減に資する小学校の教科担任制の拡大などの教職員定数の改善のため、令和七年度概算要求に関しては必要な経費を要求しているところでございます。
文科省としては、教師を取り巻く環境整備に向け、総合的な対策をしっかりと進めてまいります。
以上です。
吉良よし子
いや、お答えになっていないので、もう一回ちゃんと聞きますね。国立大附属校で残業代を支払うようになったら長時間労働が改善された、短縮されたと、そういう実績がありますよと。やはり残業代を払うということが働き方改革に資すると、そういう御認識はありませんかと聞いています。
国務大臣(文部科学大臣 あべ俊子君)
時間外勤務手当ではなく教職調整額を支給するという仕組みは合理性を有しています。
吉良よし子
調整額って何度もおっしゃいますけど、調整額というのは残業代ではないですね、基本給の一部というのが文科省の扱いですよね。それを今回引き上げる、そういう概算要求を出したという話ではないんですか、大臣。いかがですか。調整額は残業代なんですか。
国務大臣(文部科学大臣 あべ俊子君)
委員御指摘の点につきましては、しっかりと受け止めさせていただきます。
また、先ほど申し上げましたように、時間外手当ではなく教職調整額を支給するという仕組みは合理性を有しているというふうにされているところでございます。
吉良よし子
調整額というのは基本給扱いなんですよね。それとは別に、働いた時間分の残業代分をちゃんと支給するべきだというお話をしているわけです。残業代をちゃんと払うようになれば、働いた分の給与が先生方もらえるだけではなくて、やはり残業代を支払う必要がないようにということで、業務改善だって学校現場で進みやすくなって、必要な部分、部活指導員であるとかの増員などにもつながっているという話なんですね。
そういう意味では、教員の採用、定員を増やすというインセンティブにもなるでしょうし、やはり、教員の長時間労働を改善するというのであれば、残業代を支払う、そして人員を抜本的に増やす、もうこれは欠かせないんだと、そういう改革こそ進めるべきであり、やはりそういう姿勢がない文科省案、そして財務省案も残業代を払うと確約されないという点ではやはり問題があるということを私指摘させていただいて、質問を終わります。