夜間中学でも充実を 日本語教育推進法案成立
要約
日本共産党の吉良よし子議員は20日の参院文教科学委員会で、日本語教育推進法案について質疑し、夜間中学での日本語教育の充実を求めました。同法案は全会一致で可決・成立しました。
吉良氏は、同法案は日本語教育の機会を最大限確保し、教育水準の維持向上を図るものだとし、「多くの外国籍、外国につながりをもつ人が通う夜間中学での機会確保、水準の維持向上も必要だ」と指摘。法案提出者の馳浩議員(自民党)は「夜間中学での日本語教育も本法案の対象だ」と答えました。
吉良氏は、文科省によれば夜間中学は全国に33校しかないと述べ、全都道府県での開設を求めました。柴山昌彦文部科学相は、日本語教育の担い手としての夜間中学の重要性を認め、「設置は9都府県・27市区にとどまる。全都道府県に少なくとも一つは設置されるよう促進している」と答弁しました。
吉良氏は、夜間中学では教科教育に加え、日本語の習熟度別にきめ細かい対応が必要な一方、教員が不足している実態を紹介し、「専任教員の増員がまったなしだ」と主張。柴山文科相は「習熟度別授業のために加配を活用できる」と答えるにとどまりました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本法案は、国内外の多様な文化を尊重しながら暮らしていく上で欠くことのできない日本語教育の推進を行っていこうとするものであり、我が党は賛成するものですが、その上で、以下、法案に関わって質問したいと思います。
まず、提案者に伺いたいと思います。
本法案は、日本に居住する児童生徒を含む外国人に対し、その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育の機会を最大限確保し、その水準の維持向上を図ろうとするものだと。その立場に立てば、多くの外国籍あるいは外国につながりを持つ人が通っている夜間中学において日本語教育の機会を最大限確保することや、夜間中学で行われる日本語教育の水準の維持向上もまた必要と考えるわけですが、提案者のお考えを伺いたいと思います。
提案者 衆議院議員(馳浩君)
お答えいたします。
夜間中学においても日本語教育の機会の確保や水準の維持向上が必要であることは、委員御指摘のとおりであります。
本法律案では、第十二条第一項において、外国人等である幼児、児童、生徒等に対する日本語教育の充実を図るために必要な施策を講ずることとしており、ここには、まさに国籍、学齢を問わず、夜間中学に通う生徒も対象に含まれるものと考えております。加えて、第三章第三節においては、広く日本語教育の水準の維持向上等を図るために必要な施策について定めており、夜間中学における日本語教育についても、当然にその対象として想定されております。
また、平成二十八年に制定された教育機会確保法では、その基本理念において、国籍等に関わりなく、能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その教育水準の維持向上が図られるようにすることが定められており、本法律案と教育機会確保法とが相まって、夜間中学における日本語教育の機会の確保と水準の維持向上が図られることが期待されております。
具体的に申し上げれば、夜間中学において日本語教育をしっかりと行っているということの周知、広報の必要性、また日本語教育をするための教職員の配置や専門的な研修、更に申し上げれば、日本語教育を推進するための教材の開発、配布、提供などが検討されるべきと提案者として考えております。
吉良よし子
日本語教育の推進のためには、夜間中学の役割は本当に重要だというお話だったと思います。
その上で、文科省の調べによりますと、全国の夜間中学の数というのは現在三十一校と。今年から二校が新たに開校というわけですけれども、やはり文科大臣、本法案に基づいて、この夜間中学の全都道府県での開設、そしてその夜間中学での日本語教育の充実、図っていくことはますます重要になっていると考えますが、その点、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 柴山昌彦君)
委員が御指摘のとおり、夜間中学に通う生徒の八割、約八割は外国人となっておりまして、この夜間中学が、我が国、本国において義務教育を修了できなかった方々などに対して教育を受ける機会を実質的に保障する重要な役割を果たしております。
文部科学省といたしましては、第三期教育振興基本計画などを踏まえ、全ての都道府県に少なくとも一つは夜間中学が設置されるように促進をしているところであります。今委員から御紹介をいただいたとおり、今年四月には川口市と松戸市に新たに開校し、複数の自治体においても設置に向けた検討が具体化しておりますけれども、現時点においては、全国九都府県二十七市区、三十三校の設置にとどまっております。
それから、いわゆる教育機会確保法の第十五条では、就学機会の提供等に係る事務について連絡調整等を行う協議会を組織することになっておりますけれども、今年の五月時点で本条に基づき都道府県知事や市町村長などをメンバーとする協議会は一つも組織されておりません。ちなみに、これに類する検討組織は十七道府県において設置されているということであります。
こういった状況を踏まえて、この教育機会確保法の附則に基づき、施行後三年以内の法の施行状況について検討する夜間中学に関する有識者会議が先月開催されました。そちらで、人口規模や都市機能に鑑み、全ての指定都市における夜間中学の設置の促進、あるいは夜間中学への日本語教師などの外部人材の活用、協議会の設置の促進などの考え方が示されました。
文部科学省では、この有識者会議での検討結果を踏まえて、引き続き、夜間中学の設置促進、教育活動の充実に向けた取組を進めていきたいと考えております。
吉良よし子
大臣から詳しい現状の御報告もありました。また、全都道府県含めて開設進めていくという御答弁もありましたので、是非その立場で進めていただきたいと思います。
また、提案者から先ほど、夜間中学での日本語教育の充実ということでいえば、教員の配置も大事であるというお話もありました。
全国夜間中学研究会が調べた結果によれば、教員の配置状況については、現状、かなりばらつきがあると。東京の場合は、全学年で四十名とか百名の生徒がいることから、専任と兼任教員合わせて十名前後配置されているのに対して、東京以外の場合は専任教員の配置が三名から四名程度にとどまっているというのが現状だと聞いています。
生徒の人数状況だけで見れば手厚いかもしれないというふうに聞こえるかもしれないんですが、しかし、例えば全校生徒二十一名で七割超えが外国籍の生徒で占められているというある夜間中学の例を聞きますと、教科の授業を進めるためには、教員数の関係で二から四クラスをつくるのが精いっぱいであると。ところが、日本語の理解度によっては一クラスの中で複数の教材を準備しないと教科の授業そのものが進められないということもあると。必要に応じて個別指導も実施しているし、そのほか体育、技術・家庭科、美術などは合同の授業、全員そろってやるしかないなどの実情があるわけでして、夜間中学の教員、本務である教科教育に併せて日本語教育や生徒たちの生活支援、また、そのほか本務の教科以外の教科の指導も含めてやらなければならない現状にあると。
この一人一人にきめ細かい対応をしなければならない現状や教育内容を踏まえれば、この夜間中学の専任教員の増員というのも待ったなしだと思うわけですが、文科大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 柴山昌彦君)
特別の教育課程を編成して日本語指導を行ったり、地域の日本語教師と連携したりという取組を、夜間中学、行っております。文部科学省といたしましては、夜間中学に携わる教職員等を対象とした日本語指導に関する研修会を開催をいたしました。今年度も引き続きこうした研修会を開催する予定であります。
そして、今人材の充実ということについて御指摘をいただきました。公立の夜間学級、いわゆる夜間中学が置かれる中学校において、習熟度別授業など生徒の学習指導等のために加配を活用するということが可能であります。
具体的には、基礎定数と別に児童生徒支援加配、これについて、任命権者である都道府県・指定都市教育委員会の判断によって、夜間学級が置かれる中学校が習熟度別授業などを行う際に加配教員を置くということで活用されます。そして、この加配定数とは別に基礎定数についても、夜間学級を分校に開設する場合には、本校に夜間学級を開設するよりも多くの教職員定数が算定されるという場合もあり得ます。
さらに、教員定数の活用に加えて、日本語指導補助者や母語支援員を始めとする専門人材の配置を促進するなどして、夜間中学における日本語指導の充実に向けた取組を進めていきたいと考えております。
吉良よし子
是非、専任教員の増員ということも強く求めて、本法案の成立を機に進めていただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。