教科書価格問題について
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日は、教科書の価格について伺いたいと思います。
小中学校の教科書は、憲法二十六条の具現化として無償供与されることになっています。国が小中学校の教科書を購入して全ての児童生徒に供与するという仕組みで、そして、その価格というのは市場価格ではなくて国の定める公定価格となっているわけです。
当然この無償供与は維持されるべきと思いますし、同時に、価格についてはやはり適正価格、つまり、子供たちの教育に重要な役割を担っている教育活動の中心的な教材としての教科書を質、量ともに充実したものにするとともに、安定的に供給するために適正な価格であるということが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
お答え申し上げます。
義務教育で使用する教科書の価格については、教科書無償措置法によりまして、これ児童生徒に無償給与を行うために国費で負担するものであること、それから、教科書発行者が教科書を安定的に供給する必要があることなどを勘案いたしまして、適正な価格を維持することが重要であると考えております。
このため、前年度の価格をベースにいたしまして、毎年度、ごめんなさい、前年度の定価ですね、定価をベースにいたしまして、毎年度、物価の変動等を勘案し、文部科学大臣が定価の最高額を告示をしているところでございます。
今後とも、教科書が持ちます高い公共性を踏まえまして、適正な教科書価格となりますよう、しっかりと努めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
適正な価格を維持すると、また物価の変動等も勘案するという話でしたけれども、昨今、急激な物価高騰が続いているわけです。
学校給食の値上げについてはそれを抑えるための交付金というのが出されるなど対応されているところですが、教科書の方はどうなのか。今年度、二〇二三年度予算では、この義務教育教科書購入費についてはこの物価高騰を加味して引上げがされたのか、数字お答えください、局長。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
令和五年度予算における義務教育教科書購入費につきましては、一・四%の定価改定を行い、前年度比三億一千八百万円増の四百六十三億五千六百万円を計上したところでございます。
吉良よし子
僅か一・四%の増だと。この現在の物価高騰に見合う引上げになっているのかというところが疑問なわけです。
教科書は当然多くの紙を使うわけですが、この用紙代の高騰というのがかなり言われていると。この今回の教科書の価格、国が算定する際には、昨年夏の時点で用紙代確認したということですが、その時点でも七・六%上昇していると聞いているわけですが、それと一・四%、見合わないのではありませんか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
令和五年度の使用教科書の定価改定におきましては、物価高騰の状況を踏まえ、一般社団法人教科書協会から提出された紙代等の物価動向に関するデータを基に一・四%の定価改定を行ったところでございます。
引き続き、物価動向についても注視をしつつ、今後の教科書価格について検討してまいりたいと考えております。
吉良よし子
いや、その教科書協会が七・六%用紙代だけで上昇していると言っていたはずなんですね。
しかも、教科書というのは普通の用紙じゃないんですよ。薄くてめくりやすい、裏写りしにくい上に破れにくいなど、普通紙よりも特殊な上質な用紙を使っていることが多いわけで、もう既にその当時から時間もたっていて、用紙によっては一五%から二〇%又は三〇%もアップしたというのを、実態も聞いているわけです。やっぱり見合っていないと思うわけです。
最近では、さらに、この用紙の問題だけじゃなくてデジタル化も進んでいると。例えば、QRコードを掲載する教科書というのも増えてきたわけですけど、こうしたQRコードの掲載などデジタル化に対応するためのコストの増というのも先ほどの一・四%の中に含まれると、そういうことなんですか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
義務教育諸学校で使用する教科書におきましては、学習上の参考に供するために真に必要である場合に、図書中にウェブページのアドレス又は二次元コードその他のこれに代わるものを掲載することができると、こうなっているわけでございます。
この二次元コードの掲載は、教科書定価を踏まえつつ、各教科書発行者の責任において、教科書作成の過程に係る創意工夫の中で行われるものであると承知をしており、現時点の価格算定においてこれらの経費を直接考慮するものではございません。
また、先ほど紙の経費ということがあったわけでございますけれども、令和五年度教科書の定価改定率の検討に当たりましては、今般の物価上昇に伴う教科書コストへの影響を適切に算定するため、材料費や印刷費等の教科書原価に直接影響する経費の上昇率について教科書協会から発行者の実態を丁寧にヒアリングをした上で、そのデータを踏まえ決定をしたところでございます。
吉良よし子
QRコード等の考慮はしていないんだという話だったんですけど、つまり、そういう対応も含めて一・四%の中に入っているという話だと思うんですけど。
創意工夫って言いますけど、今やICT化ということで教科書のICT化なんというのも進んでいるわけで、これもう企業やっているわけですよ。それ、QRコードを載せないと教科書として成り立たないぐらいの状況なわけですよね。しかも、QRコードなんというのはただ載せればいいわけじゃなくて、必ずその先のコンテンツが要るわけで、そのコンテンツの作成や維持管理には大変な労力も掛かるし費用も掛かっているわけで、これ本当に発行会社の持ち出しになって大きな負担になっているわけです。
先ほど来、計算していますと言うけれども、用紙代だけじゃないですよ。この間、印刷や製本、編集までの製作費用に加え、子供たちに届くまでの輸送費、ガソリン代とか電気代だとか、もう教科書発行に様々な費用が掛かっていて、それが全部物価高騰で大きな打撃を受けているというわけで、やはりそれを支える価格が必要だと思うわけです。
紙の値上げでいっても、この一年の中で三回も値上がりをしたと。今後も値上がる可能性もあるわけで、大臣、せめてこの現状の紙の値上げ分、これをそのまま反映したような価格の引上げ、物価高騰の緊急対策として行うべきではありませんか。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
しっかりと適正にやっていると認識をしております。
吉良よし子
やっているじゃなく、せめて今後ちゃんと適切に考えていくとか、そのぐらいのこと言えないんですか。やっているから、もうこれ以上は対策しないと、そういうことなんですか。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
前年度の定価をベースにいたしまして、毎年度、物価の変動等を勘案して定価の最高値をこれ決めているわけでございますので、そこのところはしっかり毎年度対応してまいりたいと考えております。
吉良よし子
毎年度対応するのは当然なんですけれどもね、それじゃ間に合わないよということを申し上げているということなんです。
先ほど来、前年度の定価をベースにしながら、その時々の物価の状況を見て勘案をしていると、価格については考えているというお話があったんですけれども、やはり問題は、この物価高騰だけじゃなくて、そもそも教科書の価格そのものが安過ぎる問題もあるんだと思うんです。
実際に使用されている教科書を持ってきました。(資料提示)二〇二〇年発行の理科と生活科です。こちらが生活科、そしてこれが理科になるわけですけれども、この東京書籍出版、「どきどき わくわく あたらしい せいかつ 上」、「あしたへ ジャンプ 新しい 生活 下」、そして「新しい理科 3」、それぞれの価格、それぞれお答えください。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
お答えいたします。
御指摘の教科書の令和二年度における価格につきましては、「どきどき わくわく あたらしい せいかつ」の上、これは九百二十二円でございます。「あしたへ ジャンプ 新しい 生活 下」、九百七円でございます。「新しい理科 3」、六百五十七円となっているところでございます。
吉良よし子
つまり、こちらが九百二十二円、こちらが六百五十七円。どこが違うのか。大きさもほとんど同じです。ページ数も、何だったらこちらの理科の方が多いぐらいです。中を見ても、同じようなカラー、写真やイラストを使った構成となっています。なのに、こちらは九百円と、こちらは六百円。こんなの、二百五十円以上の差があるわけですけど、なぜこんなに価格が違うのか。なぜ理科の方が安くて生活の方が高いのでしょうか。局長、いかがですか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
各教科の教科書の価格につきましては、それぞれの教科の創設に際し必要なコスト等を踏まえて価格が決定され、その後の物価変動等を考慮し、毎年度、価格の改定が行われた結果、現在の価格に設定をされているものと承知をしております。
吉良よし子
それぞれ価格、原価を計算したんだという話だったんですけど、じゃ、聞きますけれども、この生活科、これはいつ原価計算をされたのでしょうか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
生活科の教科書につきましては、平成四年度に生活科が新設をされた際に参考にすべき教科書定価がなかったため、当時、一般社団法人教科書協会が策定していた「体様のめやす」における判型、ページ数、用紙、配色等を参照し、原価計算により定価を決定したところでございます。
吉良よし子
平成四年、一九九二年から教科化されるその直前にこの原価計算をしたということですね。
では、一方この理科、理科についての原価計算というのはいつやられたんですか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
理科についてでございますけれども、数十年前のことになるということで正確にお答えすることが難しいところがございますけれども、教科書の発行に関する臨時措置法が制定をされ、検定教科書制度が始まった頃に原価計算を行ったものと思われるところでございます。
吉良よし子
つまり、検定教科書制度が始まった戦後直後、一九四八年か五〇年か、そのぐらいの頃に原価計算されて、以降、価格、それに上積みをしているっていう、そういう話なんですね。つまり、この価格の差というのは原価計算をした時期の差なんじゃないのかと。
六十年前、七十年前の教科書というのは、今のようなこんなカラーじゃないわけです。二色刷りが基本なんです。それがカラー化して、しかも、大きさも小さいものだったのが大判化していってページ数も増えていっていると。なのに、この理科はその六十年以上前の原価に積み増してきた価格で、一方、生活科はその当時、今から三十年前ではありますが、その当時のそのカラーであるとか、その当時の最新の原価が反映されたわけで、その結果、ほぼ同じ作りの理科と生活科であっても、この九一年に原価計算をした生活科の方がもう二百五十円も高いということになっているんじゃないのかと。しかも、その生活科の原価計算した当時からもう既に三十年たっているわけですけれども。
もう一つ聞きます。じゃ、生活科が教科化された後に、二〇一八年に新たに教科化されたのが小中学校の道徳です。さらに、二〇二〇年に教科化された小学校の英語もありますが、この道徳と小学校英語の教科書については原価計算行ったんですか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫君)
小中学校特別の教科道徳と、小学校英語の教科書の価格につきましては、原価計算を行っておりません。
特別の教科道徳については国語など主要科目の平均ページ単価、小学校英語については中学校英語の平均ページ単価に基づき価格を設定したところでございます。
吉良よし子
原価計算やっていないということなんですけれども、この道徳と英語の教科書も持ってきました。こちらです。この道徳について言うと、東京書籍の場合は、これ三百八十四円という定価です。で、これが英語ですけど、こちらは二百七十七円という定価なんです。先ほどの生活の教科書と比べても、大きさもほぼ同じでカラーです。ページ数は多少少ないかもしれませんけど、それにしても余りに差があり過ぎるんじゃないんでしょうか。これでいいのかと。
このお配りした資料も見ていただきたいんですけれども、この二百七十七円というと週刊誌よりもはるかに安い価格ですし、何だったら朝刊とか夕刊とか新聞代にほぼ近いような価格設定になってしまっているわけです。
この教科書の大判化とかカラー化はいろいろ進めてあるわけですけど、特にページ数の増なんというのは、大判化とかページ数の増なんというのは教科書会社が勝手にやっていることじゃないんですね。二〇一〇年度の改訂学習指導要領、学習指導要領の改訂で、例えば掲載が必要な情報が増えて、結果として大判化またページ数の増が進んでいるということも聞いているわけです。
参考までに持ってまいりました。二〇一〇年度の学習指導要領改訂前、二〇〇五年の教科書、理科です。これが現在は、十年たったらこれだけ変わって、ページ数も全く変わってしまっているという状況ですが。この価格、二〇〇五年の教科書の価格は五百七十八円で、こちらの教科書は六百五十七円で、たったの七十九円しか上がっていないという状況なんです。
大臣、やはり今、改めてこの全ての教科書の、教科の教科書の原価計算、ちゃんと行うべきではありませんか。いかがですか。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
教科書を安定的に供給するために、これ適正な価格を設定するということは大変重要だと思っております。
そういうことも考えて、今後も、毎年度、物価の変動等も踏まえまして、適正な教科書価格となりますよう努めてまいりたいと思っております。
吉良よし子
いや、そうではなくて、原価計算をちゃんとしなきゃいけないんじゃないんですかと、これを言っているんですけれども。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
各教科書発行者によりまして製造の過程ですとか仕入れの実態が様々異なるということは承知をしておりますし、また、実際に掛かった経費の積み上げによります原価計算により単一の定価を決定することというのはちょっと困難かなというふうには思っております。
吉良よし子
いや、様々な会社があって様々な形で発行しているのは、別に六十年前も同じですよね。それでもちゃんと原価計算をしたわけですし、三十年前、生活科であっても原価計算をしたわけですよ。やはり、改めてこの原価計算ちゃんとやって、適正な価格にしていかなければならないんじゃないですか。こんな安い価格だと発行部数確保しなければペイしないわけですよ。だから、発行部数の少ない教科書会社、どんどん淘汰されてしまうということになってしまうわけで、やはりそういう淘汰を防ぐ、いや、細々であったとしても教科書発行を続けられる、子供たちがその教科書を、多様な学びの選択肢をちゃんと維持していく、そのためにも適正な価格、やっぱりしていくべきなんですよ。やっぱり原価計算ちゃんとやり直して適正な価格にしていくべきではありませんか。大臣、もう一度お願いします。
国務大臣(文部科学大臣 永岡桂子君)
これまでも、製造コストを価格に反映するために、毎年度の定価をベースに原価の増減状況というものを教科書発行者の損益計算書を用いまして分析することで対応してきておりまして、引き続きまして適正なこれ教科書の価格となりますように努めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
必要なのは、損益計算書を見ることじゃなくて、やはり実際にこういう教科書を作るためにどれだけのコストが掛かっているのかということを徹底的に調べることなんですよ。
私、この教科書を作っている皆さんのお話を、労働者の皆さんの話聞きました。もう皆さん、子供たちの教育を支える仕事なんだと誇りを持ってこの教科書を作っていらっしゃるわけです。しかし、価格が安過ぎて、それによって給料も上がらないんだと、生活が成り立たないんだと、もうもしかしたらこの会社も潰れてしまうかもしれないんだと、そういう深刻な状況の中で働いているという話も聞いているわけです。
国が価格設定に責任を持つ公定価格制度である以上、やはり教科書を作っている皆さんのやりがいを搾取するような価格設定を許していてはならないと思うわけです。質の高い多様な教科書をちゃんと子供たちに届け続けられるよう、原価計算をきちんとして、適正な価格設定するよう重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。