【学校教育法改定案】専攻科「支援の対象」と答弁。専門学校、看護学校への支援充実、高等教育の無償化を。
要約
日本共産党の吉良よし子議員は6日の参院文教科学委員会で、学校教育法改定案に関し、専門学校、看護学校への支援充実とともに高等教育の無償化をすすめるよう求めました。
改定案は、一定の要件を備えた専門学校に専攻科を置くことができるようにするもの。文部科学省は、3年制の看護学校に1年制の助産師養成課程を専攻科として置くなどの例を挙げています。
吉良氏は、看護学校関係者から専攻科の設置は新たな学校をつくるほどの負担を伴うとの声を紹介し、支援について質問。厚生労働省の宮本直樹審議官は「財政支援の対象となる」と答えました。
吉良氏は、専門学校は家計400万円未満の低所得者の学生が多い一方で、修学支援新制度の対象となる専門学校が8割を下回る状況にあると認めさせた上で、学生とは関係のない学校の経営状態などの機関要件があるため支援が受けられない学生が出てくるとして、機関要件の撤廃を要求。盛山正仁文科相は「機関要件は必要だ」と強弁しました。
吉良氏は、専門学校生の学びを支援する責任は文部科学省にあるとして、専門学校も含め高等教育の無償化をすすめるべきだと主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本法案の対象となる専修学校、専門学校は、先ほど来話ありますとおり、高校卒業後の進学先として一六%を占め、県によっては二〇%を超えるなど、高校卒業後の進学機会としても欠かせないし、また、看護師や介護士などエッセンシャルワーカーの養成始め実践的な職業教育機関として欠かせない存在になっていると思っております。
私、ちょうど先日、日本アニメフィルム文化連盟、NAFCAの皆さんと懇談する機会がありました。この皆さんからは、現在、アニメ現場でアニメーターの不足が深刻化していると、そういう状況が訴えられました。一方、じゃ、現在のアニメ関連の専門学校での養成について言うと、残念ながら、そのアニメ業界、アニメ作成現場が要求するレベルの技術に到達しないような場合が少なくなくあるんだという指摘があったわけです。
アニメの専門学校でよくある授業の中身というのは、学生自身が自分が描いたキャラクターを動かせるようにしていく授業だということなんですけれども、実際の現場では、自分の描いた絵じゃなくて他人が作ったキャラクターの絵を動かしていくという必要があるわけで、それにはまた別の技術が要るんだとか、また、アニメ作成の作業工程の全体像やそれに伴う専門用語なども理解していく必要があるんだが、そうした知識というのが専門学校に行っても必ずしも身に付くとは限らない状況もあるんだという話も伺ったわけです。
現在、NAFCAでは、そうした実情を踏まえて、専門学校でも使えるような教科書とか教材の作成、若しくは検定をつくるということなども進めながら、アニメーターの育成、業界内の技術の水準の向上を目指しているというお話を伺ったわけなんですけれども、大臣、やはりこの専修学校、専門学校での職業教育を進めていく上では、それぞれの職業の現場、業界の皆さんと連携をしてその教育内容を充実させていくこと、これ重要だと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(文部科学大臣 盛山正仁君)
吉良先生おっしゃるとおりだと思います。
やはり、さっきから何度も言っていますが、社会がどんどん変わっておりますので、その変化に対応した、あるいは即応した、もうその即戦力になるような人材、そういうものをどう育てていくのか。また、その専門学校というのは、やはり、これまでも言っているように実践的な職業教育機関でございますので、そういう点で、いろんな企業であり、あるいはその新しい分野というんですかね、そういうようなものとよく連携をしながらその教育の内容についても見直していく必要がある。あるいは、場合によったら、その学部というか学科というか、そういうものを、要らないところは、人気がなくなっているところ、ニーズがなくなっているところは統合その他をし、また新しいものをつくっていく、こういう必要があると思っております。
平成二十六年度からは、企業等と密接に連携して、最新の実務に即した実践的かつ専門的な職業教育に取り組むものを職業実践専門課程として認定しております。令和五年三月現在、千九十三校、三千百六十五の学科を認定しております。
今後とも、こういう施策を通じて、専門学校において社会の変化や産業界のニーズに対応した教育の充実が図られるよう、それぞれの分野との連携を促してまいりたいと考えます。
吉良よし子
御紹介しましたNAFCAのように、それぞれの現場、業界の皆さんの実態に即してその技術向上、水準向上に向けた取組があるということは私も大事だと思いますし、そうした現場の実情と連携しながら、その実践的な職業教育の充実、是非進めていただきたいなということを言っておきたいと思います。
さて、今回の法改正では、専修学校に専攻科というのを置くことができるというのが大きなポイントだと。この間も議論があったわけですけれども、文科省はその例示として、先ほど来あるとおり、三年制の看護学校に一年制の助産師養成課程を専攻科として置くことなどを例示、示しているわけです。
これに関わって、私、現場、看護学校の皆さんのお話を聞いたんです。看護学校、まあ経営側なんですけれども、の皆さんによると、助産師を目指す学生にとってはそういうふうな専攻科つくるというのはいいかもしれない、けれども、学校側から見れば、もう一個新しい学校を持つようなもので、これ、専攻科つくること自体が経営的打撃になるんだという話なんです。
つまり、助産師の専攻科ということでいえば、助産師資格を持つ教員を新たにちゃんと配置をしていかなくてはならないとか、出産に特化した実習設備や備品用意する必要があるとか、さらには、助産師の資格取得には十例以上の出産に立ち合うことが要件になっているわけで、そもそもお産の数が減ってくる中で、そうした実習施設の確保、連携というのも困難で大変なんだというお話があったわけです。
基本的にこの看護師養成というのは厚労省の所管だと思うんですけれども、厚労省に伺います。こうした三年制の看護学校、専門学校がこの助産師養成の専攻科というのを新たに設置するとした場合に、それに対する補助というのはあるのでしょうか。
政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官 宮本直樹君)
お答え申し上げます。
現在、看護師養成所が助産師養成所の新設を行う場合は、都道府県において地域医療介護確保総合基金を活用した財政支援を行っていただいていると承知しております。
先生お尋ねのいわゆる三年制の看護学校が助産師養成の専攻科を設置することは、看護師養成所が助産師養成所を新設することと同様と評価できると認識しておりまして、こうした場合についても地域医療介護総合確保基金を活用した財政支援を行っていただけるものと考えております。
吉良よし子
要するに、都道府県の事業として補助を出す仕組みがあるということだったと思うんです。
ただ、やっぱりこれ都道府県の事業になるわけですから、やはり都道府県の判断でその事業がないような県もあるかもしれませんし、補助の額についても国の方が基準額を示していると承知していますが、その拘束力がないため、その額というのは都道府県によって変わり得るし、その補助を出す条件というのもまた違ってくると思うわけです。
そうした条件が違う中で、本当に全てのところで、専攻科を置こうと思ったときに、その専門学校がその専攻科を置けるのだろうかというところ、そこをきちんと補助していく必要があるんじゃないかという問題意識があるわけですね。
文科大臣、やはり今回の法案で、もちろん看護学科だけじゃないと思うんですけれども、専攻科を置くことができるようにするというのであれば、やはり新たにそうした専攻科を置く、置きたいと思ったときの支援についても踏み込んで検討していくべきと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(盛山正仁君)
先ほどからお話ししておりますとおり、社会情勢の変化、そしてそれに対応するリスキリング、リカレント教育に対するニーズ、こういったものに対応できるよう、今般の改正案で専攻科に係る規定を創設するということにしたところでございます。
他方、専攻科を設置するかどうかは各専門学校の経営判断ということになります。専攻科の設置そのものについて文部科学省が直接支援をするということは現在のところ考えておりませんが、所轄庁でございます都道府県が専門学校に対する経常費等の支援を行っている場合には専攻科の支援を行うことも十分に考えられますので、文部科学省としては、都道府県等に対して専攻科の趣旨や意義についての周知に努めたいと考えています。
吉良よし子
大臣おっしゃるとおり、もちろん専攻科を必ず置けというものではないというのは承知しているところですが、しかし、今回こういう、できるということになったことで、専攻科を置けない、置かないということによって逆にその専門学校自体が淘汰されてしまうんじゃないかという不安を持っているような学校もあるわけで、やっぱりそこの不安に応える、都道府県に周知を徹底するということでしたけれども、声に応えていただきたいということを重ねて申し上げたいと思うんです。
というのも、現在、専門学校、まあ全体もそうですけど、先ほどの看護学校の事例でいくと、看護学校でも多くが定員を充足できない事態が増えているということも伺っているわけです。その背景にあるのは、当然、人口減少というものがあるわけですけど、その人口減少が進んでいるだけでなく、近年、四年制の大学が百人規模などの定員で看護学部を次々と設置していくと、そういう中で、従来の看護学校、専修学校、専門学校の定員が集まらなくなっているというお話なんですね。
大阪のある看護学校の場合、五十年の歴史があるような学校なんですけど、その四十名の定員、基本的には埋まっていたのが、昨年は一般入試の時点で受験者が定員の四割で、最終的にどうにか五割を超える二十二名しか集まらなかったとか、岡山の方では、学生の確保が難しくて、県北、県南の看護学校が一校ずつ閉鎖を余儀なくされたと、そういう事例があると聞いているんです。全国的にも看護学校の受験者というのが減っている傾向があるそうで、大学全入時代と言われる中、そもそも看護師目指す子も少なくなってきて、なり手が減るんじゃないかと危機感を持っているという現場の声も聞いたわけです。
こうした看護師のなり手が減少するのではないかという現場の危機感を、厚労省、認識しているのでしょうかと。そしてまた、こうした人口減少が進んでいるとはいえ、四年制大学とはまた違って、少人数で一人一人に寄り添いながら三年で看護師養成ができる看護学校、専門学校ならではの役割、存在意義というのは引き続き重要なんじゃないかと思いますが、その認識についてお答えください。
政府参考人(宮本直樹君)
お答え申し上げます。
令和五年度現在で看護師養成校三年課程は全国に五百四十三校ございますが、令和五年の大学等も含めた看護師学校養成所の卒業生約五・九万人のうち、この看護師養成所三年課程の卒業生は約二・四万人というふうになっておりまして、地域医療を支える看護師の人材確保に大きく貢献していただいているものと認識しております。
必要な看護師を確保し、地域医療提供体制を維持するということは非常に重要なことだと認識しておりまして、このためには、様々な課程で看護を学ぶ学生を確保していくことが重要であるというふうに考えております。
厚生労働省といたしましては、引き続き質の高い看護師の養成が着実に実施されますよう必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
吉良よし子
看護師の中で専修学校、専門学校出身者というのが大きな割合を占めているということで、やはりそうした看護学校をしっかり支えていただきたいと思うんですが、この専修学校、専門学校での看護師養成ということでいうと、やっぱり三年でその資格が取得できて働ける、それはやっぱり学生にとっていっても、授業料という面でもやっぱり三年で済むというところは本当に大きいところだと思うんです。ただ、それでも、本当にその専門学校等に通う学生にとってはその授業料自体の負担というのは重いのは間違いなく、やはり専門学校も含めた高等教育の無償化というのも大事な課題だと思うんですね。
先ほどの看護学校の皆さんが、昨年全国四十二都道府県の看護学生に向けて実施したアンケート調査を拝見しましたら、千二百十四人の学生の回答者のうち七五・七%の学生が何らかの奨学金を受けていると回答しました。それでも生活に足りず、七一%がアルバイトをしていて、そのうち三割は深夜バイトをしているんだというんですね。看護学校の場合、実習期間はアルバイト禁止のところが多く、その期間に収入が減るということもあり、その実習期間中にもうほぼ水だけで生活していると言っている学生などもいたそうで、やっぱりこれ深刻な事態だと思うんです。
高等教育局長に伺いたいんですけど、こうした専門学校生、修学支援新制度受けられると思うんですけど、その利用状況、対象校、受給者数というのはどうなっているのでしょうか。
政府参考人(文部科学省高等教育局長 池田貴城君)
お答え申し上げます。
高等教育の修学支援新制度の対象となる専門学校の数でございますが、令和五年十二月時点で二千三十六校でございます。この専門学校の在籍者数のうち新制度の利用者は、これは少しずれますが、令和四年度実績で七万四千八百八十六人、全専門学校生のうち一二・九%であると承知しております。
吉良よし子
一二・九%というのはやはり四年制大学よりは高い割合なのかなと思うんですけれども、一方で、その対象となっている学校の数二千三十六校とありましたけど、募集停止している学校を除いた専修学校全体の数というのは二千五百九十二校だと承知しているわけですが、とすると、学校で修学支援制度が受けられる対象校となっているのは全体の七八%程度、八割を切っている状態なんですね。これだと、先ほどの専門学校、とりわけ看護学校だけではない専門学生の二九%が所得四百万円未満世帯という、本当に低所得者が多い学生の中ではちょっとカバーし切れていないんじゃないかと。
この八割にとどまるという理由は様々あると。そもそも手挙げられないということもあると聞いているんですけれども、その一つに、私、機関要件というのがあるんじゃないかと。経営状態若しくは収容定員が五割未満の場合は対象から外れるということで、専門学校にもその機関要件が課されているわけですけれども、やっぱりこの機関要件で支援が必要な学生が支援を受けられないということはあってはならないんじゃないかと。
改めて、大臣、この修学支援制度の機関要件はなくしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(盛山正仁君)
高等教育の修学支援新制度においては、支援を受けた学生が大学等でしっかりと学んだ上で、その勉学が職業に結び付くことにより、社会で自立し活躍することを目的とするものであります。こういう考えに基づきまして、学問の追求と実践的教育のバランスの取れた質の高い教育を実施する大学等を対象機関とするために機関要件を求めております。
ということで、文部科学省としては、今後ともこの機関要件というものは必要であると考えております。
吉良よし子
必要だと言いますけれども、とりわけ専門学校というのは、先ほど言ったように、定員充足がなかなか厳しい事態に陥っているわけで、しかし、そこに通っている学生がいる以上、その学生を支援するというのは文科省の責任なわけですから、やっぱり機関要件はなくすべきだということを、専門学校も含めて高等教育の無償化進めるべきだということ申し上げて、質問を終わります。