大学学費上げ中止を 「東大生は9割反対」
要約
日本共産党の吉良よし子議員は4日の参院文教科学委員会で、大学学費の値上げをやめるよう求めました。
吉良氏は、3月の中央教育審議会で私学との公平な競争確保のためとの理由で国公立大の学費を150万円にすべきだとの議論があったと認めさせた上で、国立大の学費値上げは、1970年代から私学との格差の是正が理由の一つだったが、それでも格差は埋まっていないと指摘。盛山正仁文部科学相は「私学との格差が理由で決めているわけではない」と否定しました。
吉良氏は、東大でも学費の約10万円引き上げを検討しているが、学生自治会のアンケートで9割の学生が反対するなど、反対の声が大きく広がっており、学生は大学との対話を求めていると指摘。盛山文科相は「どういうやり方をするのかは大学側でご判断されること」とし、学生の声に応えようとはしませんでした。
吉良氏は多くの人が平等に教育を受けられる機会をつくってほしいとの学生の声に大学も文科省も向き合うべきだと主張。国公私立、全ての大学の学費を値下げすべきだとして、運営費交付金、私学助成を増やすよう求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
私も、まずは千葉科学大学の問題に関わって、文科省による地方の私立大学政策について確認をしていきたいと思います。
先週の視察の中でも強調された事実ですが、現在、定員割れとなっている私立大学というのは五三%に上ると。その多くが地方の小規模大学なのは明らかです。同時に、そうした地方の小規模の私立大学というのがその地域の数少ない高等教育機関としての役割を果たしている場合も少なくないと。千葉科学大ですら、銚子市にとっては欠かせない大学であって、撤退はできれば避けたいという旨が市長からも訴えがあったわけです。
大臣にまず伺いたいと思います。まず、基本的な考え方として、この少なくない地方の中小規模の私立大学が存続の危機にあること、それにより地域から大学がなくなってしまうことは放置してはおけない課題であると、そういう認識はありますか。
国務大臣(文部科学大臣 盛山正仁君)
それはもちろんでございます。急速な少子化ということで、特にその地方ですね、あるいは地域というんでしょうか、そういうところでの私立大学を取り巻く環境が一層厳しくなっている、経営状況が厳しくなっているということは承知しております。
他方、その、今先生おっしゃったように、地方の私立大学は、所在する地域において、教育という点だけではなく、そのいろんな役割を担っております。地域の若者の教育機会の確保だけではなく、地域産業の活性化、こういった役割も担っておりますので、地域社会と連携を図りながらその役割を果たしていくことが重要であると考えております。
そういうことで、昨年の九月に、繰り返しになりますけど、私から中央教育審議会に諮問を行いまして、現在、地域における高等教育へのアクセス確保といった観点も含め、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について御議論いただいているところでございます。
吉良よし子
地方の私立大、危機には陥っているものの、その地域で重要な役割を果たしている場合もあるし、そのアクセス確保は重要だという御認識だという話だったと思います。
ただ、この定員割れとなっている私立大学、本当、個々には様々な理由があると思うんですね。千葉科学大のように学長自身が見通しが甘かったと認めるような場合もあれば、そうでない場合もあると思うんです。
ただ、その大学に通っている学生がいる以上、この定員割れしたということだけをもってその大学が淘汰されていいとは思えないし、定員割れした大学であったとしても、そこに通っている学生の学びを保障する責任、これは文科省にあると思うんです。先ほどの答弁でもそのような御認識、大臣お話しされたんじゃないのかなと思っているんですけれども。ただ、実態を見てみると、文科省、現在、定員割れとなれば国庫助成を減額すると、五割を切れば不交付という対応、ちょっと冷たい対応を続けているんじゃないのかと思うわけですけれども。
大臣、こういうこの国庫助成の減額、若しくは不交付の措置というのは、定員割れとなった私学というのはもう淘汰されても仕方がないと、そういう立場だということなのですか。
国務大臣(盛山正仁君)
先ほどから申し上げているとおり、地方の大学というのはいろんなその役割があります。学校での教育だけではない、その地域にとって大事な、その重要な施設というんですかね、組織であるということでございますので、そういう点で、定員割れだけをもって淘汰されていいと、そういうようなことを考えているわけではありません。
ただ、一般論として言いますと、やはりその各大学にはやはりその運営どういうふうにしていくのか、こういうことはそれぞれの学校法人で責任を持っていただかないといけないわけでございますので、野方図な計画を立てて運営をするという、そういうことをされては困るということから、一定のルールを作って、こういったものでなければ助成をするわけにはいきませんよと、こう申し上げているわけでございます。
ただ、その上で、その地域においてどのようにして、その経営難に陥っているというんでしょうか、定員割れがして大変厳しい状況にある大学をどうしていくのか、それはそれでまた個別具体の案件として地域の方も含めて御検討いただきたいと、こういうことでございます。
吉良よし子
淘汰されていいと考えているわけではないとおっしゃっていたと、おっしゃったわけですけれども、事実としては定員割れしたら即、国庫助成減額という措置になっていくわけで、やはりそれはその淘汰されてもいいんだ、じゃないかというふうに思われても仕方がない対応だと思うんですね。
当然、もちろん運営について責任を持つ必要があるというのは当然です。それこそ、千葉科学大学について言えば、もうその見通しの甘さというのは重大だということはこの間の視察でも明らかになったところだと思うんです。開学後六年目から学生数が収容定員を充足できないという状況が続いていると、このことについて認識を私伺ったところ、東学長自身が見通しが甘かったに尽きると回答したわけで、これは重大ですし、現在、公立化の議論の中で、後で設置した看護学部については銚子市に必要なんだと、ただ開学当初からあった危機管理学部とか薬学部はもう、ちょっともう要らないんじゃないかという議論も出てきているということも開学当初の見通しの甘さというのを示す事実だと私は思うんです。
ただ、この見通しの甘さということでは、文科省の側の責任も免れないんじゃないのかと。この千葉科学大学のみならず、次々と薬学部の設置認可を行って競争を激化させてしまったということ、また千葉科学大学のそのものの認可についても、薬学部、危機管理学部というのがその地元の銚子市のニーズにマッチしているのかということもちゃんと確認しないまま設置認可したのではないかと、見通しが甘かったのではないかと言わざるを得ないと思うんです。
千葉科学大学だけではありません。全国で五三%の私学が定員充足できていない事態が起きているというのは、文科省が次々と私学の設置認可を行ってきたことと表裏一体、その責任があるんじゃないかということを私言いたいと思うんですけど、大臣、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
大学の設置等については、政府の総合規制改革会議の答申を踏まえまして、平成十五年施行の学校教育法等の改正により、審査基準等の準則主義化や大学の量的な抑制方針を原則撤廃をしたというところがございます。
その上で、大学の設置認可審査においては、大学設置基準等への適合性や十分な学生確保の見通しを有していることなどを審査し、その時点その時点で個別の申請に応じて認可をしてきたところでございます。そして、設置認可後、大学の適切な運営を担保するため、第三者評価である認証評価制度等の仕組みも整えております。
他方、吉良先生御指摘のように、少子化の急速な進展、そしてそのほかのいろいろな状況があろうかと思いますが、定員未充足の大学が増加している、あるいはそういったことを理由にして経営悪化傾向のある大学があるということで、我々としましても、文部科学省としてもきめ細かな指導、助言、これを必要に応じて実施してきたところでございますが、それでも現在の状況になっているということは事実であります。そんなことを含め、昨年の九月、中教審に諮問をしたところでありますので、こういった議論も踏まえて大学改革にしっかり取り組んでいきたいと考えています。
吉良よし子
いろいろおっしゃったんですけど、その時点その時点で認可をしてきてたのが文科省なわけですよね。設置認可を次々と行いながら、定員充足できなくなった時点で切り捨てていくんだと、国庫助成は減額していくんだというのは、やはり文科省として、学びの保障をするべき文科省としては無責任な対応じゃないかなということは言っておきたいと思いますし、開学当初の見通しの甘さというのは学園側にも当然ありましたけれども、それは学部について指定をしなかった銚子市の側、若しくはその設置認可について厳正に審査しなかった文科省も同じじゃないかということは指摘をしておきたいところです。そして、見通しの甘さということでいうと、この千葉科学大を公立化さえすれば、学生も増え、経営難も脱するかのような学園側のシミュレーションも甘いと言わざるを得ないと思うわけです。
学園側は、学生が増える理由として、学費が国立大並みに下がるということを挙げているわけですが、これも私、疑問なんですね。銚子市が設置した検討会の議論を見てみると、国立大の授業料が弾力化されていて、二割増まで可能になってきていると。だから、必ずしもその国立大と同じ学費にしなくてもいいんじゃないかと、そういう議論が出てきているわけです。
文科省に確認したいんですけれども、公立大学の授業料について、これ何らかの基準があるのでしょうか。国立大学と同じとか一二〇%までというような上限があるのか、例えば国立大の標準額の一三〇%となるような授業料を設定するなんということは理論上可能なのですか。
政府参考人(文部科学省高等教育局長 池田貴城君)
お答え申し上げます。
国立大学につきましては、今、吉良委員おっしゃったような授業料標準額という仕組みが設けられておりますが、公立大学については設立団体である地方公共団体から財政負担を伴い運営されるものであり、その授業料についても当該大学及び設立団体の責任において適切に定めるべきものと認識しております。
吉良よし子
つまり、標準額を大きく超えて一三〇%とかの授業料も設定可能ということですか。
政府参考人(池田貴城君)
公立大学につきましては、そもそもそういった標準額という仕組みがございませんので、国立の授業料や近隣の私学の授業料なども含めて公立大学として適切に設定いただくものでございます。
吉良よし子
つまり、自由に決められるということだと思うんです。つまり、千葉科学大についてはもう授業料どうなるか、もちろんこれからの議論だと思うんですけれども、たとえ公立化をしたとしても、今の国立大の標準額より高く授業料を設定するという場合もあり得るということですよね。なおかつ、学園側の資料を読むと、授業料が引き下がるということを前提にして、学生向けの奨学制度を廃止する旨の記述もあったわけで、これでは学生に新たな負担が生じる可能性も否定できないわけで、そうした学生に新たな負担を課すようなことはあってはならないんだということを強く申し上げておきたいと思います。
続いて、これに関わって、この国立大学の学費、授業料そのものについても質問していきたいと思うんですけれども、先ほど来、大臣が中教審とおっしゃっていますけど、現在、中教審大学分科会特別部会で高等教育の在り方の検討を行っているわけです。その中で、慶應義塾の伊藤塾長が、国公立大学の学費を年間百五十万円程度にと主張したと報道がありました。
SNSでは、この発言を受けて、年間百五十万円の授業料を払えるような家庭はそんなにないとか、教育の機会均等が壊れてしまうとか、私立大が授業料を下げればいいんじゃないかとかいった批判が次々と出てきているわけですけれども、文科省、この伊藤塾長の発言というのはあったというのは事実なんですか。
政府参考人(池田貴城君)
お答え申し上げます。
三月二十七日に開催されました高等教育の在り方に関する特別部会、これ中教審の下の特別部会でございますが、ここで委員のお一人である慶應義塾長の伊藤委員から、国立大学の授業料を百五十万円程度にすべきという趣旨の問題提起がございました。これ、あくまで問題提起でございますので、これを踏まえ、今後、授業料の在り方も含めて、高等教育の負担の在り方について議論を深めていくものだと思っております。
吉良よし子
問題提起はあったんだと、事実だったということですけど、これは中教審そのものの結論じゃないということですけれども、こうやって大幅な学費の値上げの議論がこれ中教審でされているというのは、私は大問題だと思うわけです。
ちなみに、この伊藤氏が当日配付した資料というのを私も拝見をいたしました。この授業料百五十万円ということを言ったという背景には、国公立、私立大学間の公平な競争環境を整えるためだと、そのためにこの授業料百五十万というのが必要じゃないかという主張だったというふうに書いてあるわけですけど、つまり、国公立と比べて私立の授業料が高いんだと、公平な競争のためにはその差を埋める必要があるから、国公立の授業料を引き上げろという御主張だったかと思うわけです。
この百五十万円という額は別として、こうした国立と私立の授業料の差を埋めるために国立の学費を値上げしろ、こういう議論というのは決して新しい議論ではなく、古くは一九七〇年代から二〇〇〇年代、法人化されて以降も、国立大学の授業料又は標準額を引き上げるたびに、政府、その理由として、私学との格差の是正ということを言ってきたと思うんです。
しかし、お配りした資料を御覧いただきたいと思うんですけど、国立大学の学費、授業料、引き上げ続けているわけですけど、引き上げても全くその私立との格差というのは是正されていないと。むしろ、この差が広がり続けているというのが現状だと。
大臣、国立大学の学費の値上げでは私立との授業料の格差埋まらない、これはもう事実なのではないですか。
国務大臣(盛山正仁君)
その慶應の伊藤塾長の発言を私直接伺ったわけではありませんですけれど、我々、国立大学の授業料の標準額を決めているわけでありますが、平成十七年度以降改定を行っておりません。それ以前の改定に当たっては、物価指数の上昇や私立大学の授業料の水準、あるいは大学教育を受ける者と受けない者との公平性の観点など、様々な社会経済情勢等を総合的に勘案してきております。
いずれにせよ、文部科学省としては、経済的に困難な学生に対しては、高等教育の修学支援制度も含めた総合的な支援を行うなど、引き続き教育を受ける機会の拡充に取り組んでまいるつもりでありますし、その私立大学との格差云々ということで国立大学の授業料のこの標準額を決めているところではないということでございます。
吉良よし子
格差是正が理由じゃないとおっしゃいますが、二〇〇五年、標準額が引き上げられた際、当時の谷垣財務大臣は、私学と国立の格差を埋める必要があるから標準額を引き上げるんだと、そう答弁されたと議事録にありますのでね、やっぱりこれは理由の一つだったのは間違いないですし、しかし、そのために国立大学の授業料引き上げた、標準額を引き上げたとしても、私学との授業料の格差は全く是正されていないんだと、これは事実なんだということは指摘したいと思うんです。
私学が授業料を引き上げたのはなぜかといえば、国からの私学助成が足りないからだと思うんですね。それこそ、先ほどの伊藤塾長ですら、国立に比べ私学への公費投入が少ないということも指摘されているわけです。さらに、標準額もそのまま据え置いているんだと、この間、と言っていますけれども、ここ数年、国立大学でもこの標準額、一二〇%まで学費を引き上げる大学というのは相次いで出てきているわけです。
ついにこの間、東大までもが学費を約十万円引き上げることを検討しているというわけです。それを受けて、東大の学内では学生から反対の声が大きく広がっています。東大駒場キャンパスの一、二年生全員が加入する教養学部学生自治会執行部が実施した学生への緊急アンケートでは、二千二百九十七人が回答し、そのうち九割以上が値上げに反対、どちらかといえば反対と回答したと聞くわけですけど、大臣、こうした学生の声を聞かないまま学費の値上げを上から押し付けるようなことはあってはならないと思いますが、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
古い話ではございますが、私が入学した年も授業料が実は三倍に上がるというような年でございまして、大変な大騒動がありましたことを思い出すわけでございます。
それで、東京大学は、現在検討している授業料の改定につきまして学生と対話する機会を設けるということを予定していると承知しておりますので、引き続き適切な御対応がなされるのではないかと期待しております。
吉良よし子
適切に対話の場を設けると聞いているとおっしゃっていますけど、東京大学の学長、六月中にオンラインで意見交換すると言っているんですね。しかし、先ほどの自治会執行部、学生側が求めているのは対面での対話なんです。自治会執行部、総長対話で学生と学長が直接対面すること、そして、学生、学長間の継続的な交渉を求めたにもかかわらず、学長側はいずれも認めないと文書で通知したと。これ、適切な対話と言えないんじゃないですか。
国務大臣(盛山正仁君)
それは、どういうやり方をするのかは大学側で御判断されることではないかと思います。
吉良よし子
あくまで大学側だと冷たい対応なんですけれども、学生にちゃんと真正面から向き合う姿勢というのが大学側には求められていると思うし、それを促すのは文科省の役割だと、少なくともその役割だと思うんです。
何より、学生の九割がこの値上げに反対しているという事実は重大なんですよ。様々この学生の実態について報道がありますけど、例えば、両親が働けなくなって大学の学費免除の申請を行ったある東大生は、今も週に三日から五日、十時間から十五時間働いていて、生活費、学費の貯金に回しているけれども、もし学費が十万円上げられたらその分仕事増やさなくちゃいけないと、今ですら厳しいのに、これ以上仕事を増やすと成績が維持できなくて学費免除も受けられないと、不安を語っている記事を読みました。また、言語学者を目指している東大生が、もうこの値上げで、この言語学者への道諦めるしかないのかなという気持ちになりましたと語った記事も読みました。
大学本位の改革ではなく、学生目線で、限りなく多くの人が平等に教育を受けられる機会をつくってほしい、この学生の声に大学側もそして文科省も私、向き合うべきだと思うんです。大臣、東大のみならず、国公私立、全ての大学の学費、値上げじゃなくて値下げすべきだと、そのために運営費交付金、私学助成、増やすべきではありませんか。いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
文部科学省としては、各大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施できるよう、基盤的経費の確保に努めるとともに、経済的に困難な学生に対する高等教育の修学支援制度も含めた総合的な支援を行うなど、引き続き教育を受ける機会の拡充に取り組んでまいりたいということで、様々な方法があるんじゃないかと思います。授業料だけの問題ではない、トータルとしてその学びというものに、そのハードルを高くしないように、下げるように、そういうような方策を私たちは検討していきたいと考えています。
吉良よし子
学びのハードル下げるようにと言っていますけれども、負担軽減と言っていますけど、先日質問したように、文科省やっているのは三人産まないと支援しないと、もう無償にもならない、そういう政策ですからね、線引きですからね、これでは学生全ての負担軽減にはなりませんし、先ほど紹介したような学生の実態も全然改善されないわけですよ。やっぱり教育の機会均等、憲法二十六条保障するためには教育予算の抜本的な拡充こそが必要なんだということ強く申し上げまして、質問を終わります。