事故くり返す東電 再稼働の適格性ない
要約
参議院資源エネルギー・持続可能社会調査会は5月29日、原子力問題について質疑を行い、日本共産党から吉良よし子議員が質問しました。東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)の燃料装荷を4月に始めるなど再稼働の準備を進めているが、福島第1原発の廃炉作業でもトラブルが続いている東電に地元住民からも反対や不信の声が出ているとして、再稼働を認めるべきではないと主張しました。
吉良氏は、東電が昨年以来、福島第1原発の廃炉作業のなかで重大な事故を繰り返しているにもかかわらず、昨年12月に原子力規制委員会が東電の再稼働に向けた「適格性」を認めたと指摘。特に今年4月24日に福島第1原発で作業員が2度やけどを負ったケーブル損傷の人災事故の背景には、東電の指示不足があったとして、責任を追及しました。東電の山口裕之副社長は「指示不足はあった」と認めざるを得ませんでした。
さらに吉良氏は、東電が昨年10月にも福島第1原発で作業員が汚染水をかぶる重大事故を起こしたものの、規制委員会は「軽微な違反」だとして見過ごしたと批判。山中伸介規制委員長は「技術的能力を覆す事故ではなかった」として、東電の責任を認めませんでした。
吉良氏は「重大な事故・トラブルを繰り返している東電に、柏崎刈羽原発を再稼働する適格性などない」と主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に関わって、東京電力の適格性について伺っていきたいと思います。
政府は三月に、新潟県などに柏崎刈羽原発の再稼働に関する地元合意というのを要請し、また東京電力もこの四月から柏崎刈羽原発で核燃料の装填を始め、再稼働に向けた動きが進んでいると承知をしております。
しかし一方、地元では、この動きについて異を唱える声が広がっていると思うんです。
新潟県原発市民検証委員会が、能登半島の地震の直後、一月十三日に行った緊急アンケートではすることができないという声も七〇・二六%に上りました。
また、新潟日報社が四月に行った全ての新潟県議会議員宛てに行ったアンケートでは、議長を除く県議五十二人中二十八人、五三・八%、半数超えが再稼働を認めないと回答、認めると回答した県議は三人だけと。さらに、政府による再稼働の地元同意の要請について、県議の八六%、四十五人が早過ぎると回答しているわけです。
今、再稼働なんてとんでもないというのが地元、住民の圧倒的多数の声だと思うわけですが、東京電力、こうした地元の再稼働反対、早過ぎるという声、認識されていますか。
参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君)
東京電力ホールディングスの山口でございます。
当社、福島第一原子力発電所の事故によりまして、今もなお地域の皆様、広く社会の皆様に多大なる御心配、御負担をお掛けしていますことを心より深くおわびを申し上げます。
お答えを申し上げます。
当社は、県民の皆様への説明会やコミュニケーションブースを通しまして、新潟県の皆様の様々な声は認識してございます。
柏崎刈羽原子力発電所七号機におきましては、現在、設備の健全性の確認を進めているところでございまして、現時点で再稼働の時期について言及できる段階にはありませんが、当社といたしましては、今後も発電所の状況や取組につきまして新潟県の皆様に丁寧に御説明をしてまいりたいと、そのように考えてございます。
吉良よし子
様々な声とおっしゃいましたけど、そうじゃなくて、やっぱり再稼働反対だと、再稼働は早過ぎるんだと、この反対の声が圧倒的多数だということだと思うんです。これだけ地元から反発の声が上がっているにもかかわらず、四月十五日から核燃料の装填が開始されたわけです。
地元の合意がないのになぜ核燃料の装填ができるのか、再稼働を急いでいるということではないですか。東京電力、お願いします。
参考人(山口裕之君)
お答え申し上げます。
燃料の装荷につきましては、安全最優先のプラント運営に資するための安全確認のプロセスの一環として行っているものでございまして、現在、柏崎刈羽原子力発電所七号機では、原子炉の蓋を閉め、密閉状態でないとできない使用前事業者検査を含めた健全性確認を実施してございます。検査を進める中で、何かあれば立ち止まり、一つ一つの工程を着実に進めているところでございます。
繰り返しになりますけれども、現時点で再稼働の時期について言及できる現段階にはございませんが、当社といたしましては、今後も発電所の状況や取組について新潟県の皆様に丁寧に御説明をしてまいりたいと考えてございます。
吉良よし子
あくまでも使用前の検査だとおっしゃるわけですけれども、この燃料の装填、装荷というのは、再稼働に向けた動きなのは間違いないと思うわけです。
これ、なぜできるのかというと、規制委員会が適格性判断をしたと、それを受けての燃料の装填だということだと思うんですけど、そもそも、この東電、先ほど来トラブル続きという指摘もあるわけですけど、この原発を動かす適格性があるのかというところ、厳しく問われる状態だと思うんです。
この間の適格性判断に関わる経過というのを確認していきますと、二〇一七年、規制委員会が、東京電力の原子力検査区分を第一区分、事業者の自律的な改善が認める状態だとして、原発の運転も可能だと適格性判断をしていたわけです。しかし、その後、二〇二〇年九月に柏崎刈羽原発でのIDカード不正使用が発生、翌年、二〇二一年一月には核物質防護設備の一部機能喪失が発覚するなど、トラブルが続発したのを受けて、この二〇二一年三月に規制委員会が、この東京電力の検査区分を第四区分、事業者が行う安全活動に長期間にわたる又は重大な劣化がある状態だということに変更し、さらに同年四月に燃料集合体の移動を禁止したと、事実上の運転禁止措置をしたわけです。
それが、昨年末、二〇二三年の十二月に、規制委員会の適格性判断の再確認で第四区分が第一区分に戻り、そして燃料集合体の移動も可能になったということだと、それでこの四月に装填が始まったということだと思うんですけど、規制委員長、これはつまり、東京電力は原発を運転するのに何の問題もない、適格性があると判断したということですか。
政府特別補佐人(原子力規制委員会委員長 山中伸介君)
お答えをいたします。
そもそもでございますけれども、原子力規制委員会は原子力発電所の再稼働の是非についてお答えする立場にはございません。
昨年十二月二十七日の原子力規制委員会で了承いたしました核物質防護の追加検査の結果、検査区分を四から一に戻すという、そういう判断をいたしました。
加えまして、委員御指摘の適格性判断の再確認につきましては、東京電力が、柏崎刈羽原子力発電所の運転主体としての適格性の観点から、原子炉等規制法によって求められている、原子炉を設置し、その運転を適確に遂行するに足る技術的能力を有しているということについて、改めて再確認したものでございます。
吉良よし子
要するに、原発を運転する資格があるんだと判断したんだという、そういうことだと思うんです。
しかし、何度も言いますが、この東京電力にその適格性があるとは思えないんです。というのは、先ほどの柏崎刈羽のトラブルが続いただけじゃなくて、もうこの間、東京電力福島第一原発の方でもトラブルが相次いでいるのが東京電力の実態なわけです。
昨年、その十二月のこの適格性の判断、再確認の結論を出す前、二〇二三年の十月二十五日には、福島第一原発の汚染水の処理設備で洗浄していた作業員にその放射性物質含む廃液が掛かってしまうと、そういう事故が起きたわけです。さらに、今年に入って二月七日には、高温焼却炉建屋東側壁面において確認された第二セシウム吸着装置、サリーからの汚染水漏えいもありました。また、二月二十二日には、増設雑固体廃棄物焼却処理施設で火災騒動というのも起きていると。
これだけトラブルが続いた上に、先月四月二十四日には、福島第一原発内で掘削作業中にケーブルが損傷して、作業員が右頬部と右腕に二度熱傷のやけどを負うという人身事故を起こす、そういう事故まで起きているという状態なんです。
一番直近のこの四月の事故について伺っていきたいと思うんですけど、この二度熱傷のやけどというと、皮膚の表面だけじゃない真皮にまで至る深いやけどだということなんです。つまり、場合によっては命に関わる深刻な結果招きかねない重大な人身事故が起きたということだと思うんですけれども、東電、そして規制委員長それぞれに伺いたいんですけど、この四月の事故、重大な事故だと、そういう認識はありますか。
参考人(山口裕之君)
お答えを申し上げます。
先生御指摘のとおり、火花、アークが飛び散りましてやけどを負ったものでありまして、感電するおそれもあった事象だというふうに捉えてございまして、大変重く受け止めてございます。
政府特別補佐人(山中伸介君)
作業員が大きなけがをされたという、非常に大きな事故であったというふうに思っております。
吉良よし子
感電のおそれもあったと、非常に大きな事故だったと、そういう御認識だと思うんですけれども、じゃ、この事故、どういう事故だったのかということで資料を配付いたしました。御覧ください。
これ、構内配電線の埋設管路の補修ということで、表面のコンクリートを剥がす、いわゆるはつり作業というのをしていた協力企業の作業員が事故に遭ったわけですけれども、東電の指示書、要領書に従って、この図にありますとおり、砕石というのがあるんですけど、砕石が出るまで掘るということでドリルで掘っていたんですけれども、それが、この事故を起こした該当箇所を見ると、この砕石がなかったと。それに気付かないまま、そのままドリルで掘り進めてしまって、その結果、その下にある高圧の、六千九百ボルトの高圧線ケーブルを損傷するということになって作業員が負傷、そして電源まで落ちたという、そういうものなんですね。
東電にこの経過について確認をしたいんですけど、先ほど言ったように、東電のこの要領書、指示書というのがこの作業に当たってあったということですけど、その指示書において、コンクリート、どれだけの深さまで掘削するのかと、そういう深さの指示というのはしていたのか。例えば、掘る場所に砕石がないということなどを確認をしていたのか、ケーブル損傷した場合のリスクについてちゃんと注意喚起、徹底していたのか、その指示が十分だったのかどうか、お答えください。
参考人(山口裕之君)
お答えを申し上げます。
当社は、今回の舗装面の表層を剥がす作業においても、充電部に近接した作業として安全に作業が行われるように防護措置がとられているか、具体的な注意喚起事項、深さなどを抽出して注意喚起を徹底するよう元請企業に対して指示すべきであったというふうに考えてございます。
吉良よし子
指示すべきであったということは、指示できていなかったということでよろしいですか。
参考人(山口裕之君)
具体的な注意喚起が不足したというふうに考えてございます。
吉良よし子
指示できていなかったということなんですよね。つまり、東電の責任というのは重大だと思うんですよ。
ちなみに、この事故について、四月二十六日、特定原子力施設監視・評価検討会で伴信彦委員が取り上げて、ケーブル損傷して電源落ちましたってどれくらい深刻か、人間の手術でいったら、えらい皮下脂肪の厚い患者さんだと漫然と切り進めていったら動脈切っていましたと、出血多量で死んじゃいましたと、そんな話ですよと、厳しく指摘しているんですよ。
これ、東電の指示どおりにやった結果だということでは、この事故を起こした責任、東電にもあると思うんですけど、いかがですか。東電。
参考人(山口裕之君)
お答え申し上げます。
廃炉の実施主体といたしまして作業環境を適切に維持管理する責任がある当社といたしまして、繰り返しますけれども、大変重く受けているところでございます。
福島第一原子力発電所では、発電所で行われる作業の安全性につきまして、現在、防護の妥当性を点検する作業点検、こちらを実施してございまして、廃炉作業の安全性向上に向けた改善を継続的に図ってまいりたいと考えてございます。
吉良よし子
今作業点検しているという話なんですけど、私、遅いと思うんですよ。
先ほどの伴委員はその検討会の中で指摘されているんですけど、手順書に沿ってやった結果、こういうことが起きてしまいました、全部一緒ですよ、それって、このことは、昨年十月の体表面汚染事案が起きたときに、計画段階のリスク抽出ちゃんとやってください、それが今後作業を安全に行う肝になると指摘していますと、その後これだけ続いているって、これどうしたらいいですかと言っているわけです。
十月の事案というのは、作業員が汚染水をかぶったという、そういう事故なわけですけど、あの十月の事故のときに伴氏の言うような厳しい対応、対策ちゃんと取っていたら、少なくとも今回、四月の事故というのは防げたと、そういう認識はありますか。
参考人(山口裕之君)
お答え申し上げます。
十月の事象を踏まえまして、アノラックというかっぱを着ていなかったという、そういう状況でございましたので、そういった防護に関する点検はすべからくやってきたつもりでございますけれども、先生御指摘のとおり、今、全体の今作業安全の確認を行っておりますが、全体としての確認が、やるべきであったというふうに考えてございます。
吉良よし子
作業員が防護服着ていなかったって、そういう問題じゃないんですね、汚染水かぶり事故というのは。東電の指示書どおりに、ホースをちゃんと固定していなかった、それが原因でホースが暴れて汚染水をかぶっちゃったと、そういう問題なので、これ、伴委員が指摘しているとおり、やはり東電の指示の問題もあるということなんです。だから、やっぱり十月の時点でちゃんとやっていればという話なわけですよね。
これは東電だけの問題ではないんです。規制委員長にも確認したいと思います。
十月のこの汚染水かぶりの事故について、規制委員会は軽微な違反というふうに判断をしているわけです。なぜ軽微と言えるんですか。これも人身事故だと思うんですけれども、重大事故じゃないんですか。
政府特別補佐人(山中伸介君)
お答えいたします。
昨年十月に発生いたしました増設ALPSにおけます身体汚染の事案につきましては、保安検査の結果を受けまして、二月二十一日の規制委員会において、被曝した作業員の実効線量及び皮膚の等価線量が法令で定める限度を超えていなかったことなどから、軽微な実施計画違反に該当すると判断をいたしました。
一方、当該作業で扱っている物質の放射能濃度を考えますと、従業員に対する放射線安全について重大な違反になるおそれがあったものと認識しております。当該洗浄作業における再発防止策の確実な実施、同様の作業への水平展開、東京電力社員の意識改善への取組等については、引き続き保安検査の中で確認してまいる所存でございます。
吉良よし子
規制委員長おっしゃったように、規制委員会としても、重大な違反になるおそれがあった、そういう事故だったということはおっしゃっているんです。しかし、結論としては軽微な違反としか言っていないわけですね。その軽微というふうに断定した、判断したということが東電の対応を甘くした。四月の事故にもつながったのは、その後のトラブルにもつながっているということになるんじゃないかということを私は指摘しておきたいと思うんです。
もう一点、規制委員長に確認しておきたいんですけど、先ほどの柏崎刈羽を運転するに当たっての東京電力の適格性判断の再確認、これ、その十月の事故の後、十二月に結論を出したわけですけど、その十月に起きたこの福島第一原発の汚染水かぶり事故について、その対応についても考慮し判断したその結果ということでよろしいんですか。
政府特別補佐人(山中伸介君)
原子力規制委員会は、昨年十二月二十七日、東京電力に対する原子炉設置者としての適格性に係る判断の再確認の結論を出すに当たりまして、適格性判断の再確認に係る原子力規制庁による確認結果、現地調査、東京電力社長との意見交換を踏まえて判断を行ったところでございます。
その際に、判断材料の一つとして、適格性判断の再確認に係る原子力規制庁による確認結果においては、昨年十月二十五日に発生いたしました東京電力福島第一原子力発電所での増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染事象にも言及がなされたものと承知しております。
いずれにいたしましても、東京電力には、福島第一原子力発電所の廃炉に向けて引き続き緊張感を持って取り組んでいただくことを求めるとともに、原子力規制委員会としては、東京電力の取組を引き続き厳正に監視、指導してまいります。
吉良よし子
十月の事故に関しても言及なされた結果の適格性の判断なのかというのは、私、愕然とするわけですよ。
結局、規制委員会が、この汚染水かぶり事故について、重大な違反になるおそれがあったとしながらも軽微な違反だと、そういうふうにして見過ごしたんだと、そして適格性判断の再確認でも特に問題視をしなかった。そうしたことが今回の、その後のトラブルにもつながっているし、今回、四月には、本当に、規制委員長、東電も言うように、重大な事案を起こしたということだと思うんです。伴委員が安全の肝だと指摘しているリスク抽出も安全性の管理もできていなかった、その東電に対して適格性ありって規制委員会がお墨付きを与えた。やっぱりこれは本当に重大だと言わざるを得ないんです。
こういうトラブル続き、事故続きの東京電力には、やっぱり私は、柏崎刈羽原発を再稼働する適格性なんてないと思うんですけど、改めてそのことを審査し直すべきじゃないですか。規制委員長、いかがでしょう。
政府特別補佐人(山中伸介君)
平成二十九年十二月に、東京電力柏崎刈羽原子力発電所六、七号機の新規制基準適合性に関わる設置変更許可を行うに当たって、東京電力は福島第一原子力発電所事故を起こした当事者であることを踏まえまして、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の運転主体としての適格性を技術的能力に関わる審査の一環として通常より丁寧に審査を行いました。
その結果として、技術的能力に関わるその結論を覆す事項が確認されなかったことから、東京電力について、柏崎刈羽原子力発電所の運転主体としての適格性の観点から、原子炉を設置し、その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はないと判断したものでございます。
今回、昨年十二月二十七日の段階で改めて適格性について検査を行い、現地調査を行い、その上で東京電力社長との対話も行った上で、適格性についての判断を覆す必要はないという結論に至ったわけでございます。
会長(宮沢洋一君)
そろそろおまとめください。
吉良よし子
結論を覆す事態がないと御判断されたということですけど、私はそうは考えないんです。
十月の事故の後、それを無視して適格性を認めたのみならず、その後もトラブル続きなのにこの結論を見直そうとも言わない規制委員長、余りにも東電に対して甘いと言わざるを得ないんです。
福島第一原発の事故を起こした東電に対しての適格性の判断、もう厳しく審査するべきであるということを申し上げて、質問を終わります。