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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2024年・第213通常国会

【子ども子育て支援法改定案】子育てより軍事か  岸田首相を追及

要約

 少子化対策の財源となる支援金制度などを創設する子ども・子育て支援法改定案が17日の参院本会議で審議入りしました。日本共産党の吉良よし子議員は「アメリカ言いなりで倍増させた軍事費を見直し、武器の爆買いをやめ、子育て支援や社会保障の充実にあてるべきだ」と迫りました。
 吉良氏は、支援金の財源に関わって、政府が社会保障以外の財源は「防衛力強化のための財源」と明言していることを挙げ、「子ども・子育て支援よりも軍事優先ということか」と追及。岸田文雄首相は「防衛力と子ども・子育てのどちらかが優先されるものではない」と釈明しました。
 吉良氏は、政府は支援金の「実質的な負担はない」と説明しているが、「法案により年1兆円の支援金が医療保険料に上乗せされ全国民から徴収される」として、「逆進性のある医療保険から財源を持ってくるのは全くの筋違いだ」と批判。さらに、低所得者が多い国民健康保険の方が、他の被用者保険に比べ支援金の負担が重くなると強調し、「支援金制度は社会保障の所得再配分機能を弱め、格差と貧困に悪影響を及ぼすものだ」と告発しました。
 就労要件を問わず3歳未満児の保育所等が利用できる「こども誰でも通園制度」について、吉良氏は、子どもが保育園という新しい環境に慣れるための「ならし保育」の時間も取れないと指摘しつつ、「保育所における死亡事故の発生は0~2歳児、預け始めの時期が最も多い。子どもの安全は保障されるのか」と追及。岸田首相は「毎日、異なる子どもを預かるなど通常保育と比べ一定程度、困難や負担がある」と認めました

しんぶん赤旗2024年5月18日付けより抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 私は、会派を代表し、子ども・子育て支援法改正案について総理に質問いたします。
 本法案は、こども未来戦略の加速化プランに盛り込まれた施策を着実に実行するために、子ども・子育て支援金制度を創設し、その財源を子供から高齢者まで全国民を支える社会保障予算の活用、抑制で確保するとしています。
 しかし、なぜ社会保障のみが財源の対象なのでしょうか。衆議院で政府は、社会保障以外の財源は防衛力強化のための財源と明言しました。それはつまり、子ども・子育て支援よりも軍事優先ということではありませんか。
 子供、子育てを国を挙げて取り組むというのであれば、アメリカ言いなりで倍増させた軍事費を見直して、武器の爆買いをやめ、その分を子育て支援や社会保障の充実に充てるべきではありませんか。
   〔副議長退席、議長着席〕
 総理は、子ども・子育て支援金により実質的な負担はないと言いますが、本法案によって年一兆円の支援金が医療保険に上乗せされ、全国民から徴収されます。
 医療保険料には上限があり、一定所得を超えると、所得が大きくなるほど負担が低くなる逆進性があることは明らかです。逆進性のある医療保険から子ども・子育て支援の財源を持ってくることは全くの筋違いではありませんか。
 所得が同じでも、入っている保険によって支援金の負担が変わることも不公平です。
 とりわけ、低所得者が多い国民健康保険の方が、他の被用者保険に比べ支援金の負担が重くなります。政府は、低所得者の負担軽減のために国保や高齢者医療制度に公費を投入すると言いますが、こども家庭庁の試算では、公費を投入しても国保の負担が被用者保険の負担より高くなっています。低所得者の多い国保の方が支援金の負担が重くなることを認めますか。今回の支援金が社会保障の所得再分配機能を弱め、格差と貧困に悪影響を及ぼすのではありませんか。
 衆議院で財務省は、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という従来の社会保障の構造を転換する必要があると答弁しましたが、実際はどうでしょうか。
 主要先進国の中で我が国は最も高齢化が進んでいますが、同じ高齢化率で比較したときに、社会保障支出は対GDP比で我が国は平均より下回っており、高齢者への給付が手厚いとは言えません。一方、家族関係支出と教育への支出は先進国の中で最低レベルです。高齢者中心などではなく、子供にお金を掛けなさ過ぎたことこそが問題なのではありませんか。
 今回の法案は、子供関係以外の社会保障予算について、二〇二三年から二〇二八年までの六年間で保険料と公費支出分合わせて二・一兆円も削減することとしています。これは過去九年間の削減実績を踏まえた目標といいますが、この九年間で生活保護基準の引下げ、要支援一、二の介護保険給付外し、要介護一、二の特養からの排除などが行われ、社会的弱者ほど深刻な影響をもたらされています。二年目に当たる今年度も、訪問介護事業所を廃業に追い込みかねない報酬引下げも行われました。さらに、今後四年、これらと同程度の影響をもたらす社会保障改悪を毎年進めようというのですか。
 高齢者や社会的弱者の生活は、当事者だけでなく、子や孫、親戚など現役世代の家族が支えています。社会保障費の削減により、むしろ介護離職やヤングケアラーなどの問題が更に深刻化するのではありませんか。
 政府は、子ども・子育て支援について社会連帯の精神を強調しますが、高齢者向けの支出を削って子供関係の支出を増やすこのやり方そのものが社会連帯を壊し、世代間の分断と対立をあおるものではありませんか。世代間の対立をあおるのではなく、高齢者も、子供、若者、現役世代も、そして子供を産んでも産まなくても、全ての人の暮らしを支える政治こそ目指すべきです。
 三歳未満の未就園児が全て保育施設を利用できるようにし、ワンオペ育児などで孤立した子育てをしている家庭を支援するという理念は重要です。私の周りでも、持病を持つ母親が通院のために子供の一時預かりを利用する、利用しようとするたび、毎回二百回以上電話を掛けないとつながらない、予約が取れないという声を聞いています。
 従来、政府は、こうした一時預かりを利用できない状況や、ふだんはその保育所を利用していない子供を預かる施設側の困難さなどの課題を改善し、利用を促進しようとしていましたが、今回の法案で課題は解消されるのでしょうか。
 幼い子供にとってみれば、いつも一緒にいる親と離れること、初めての場所で初めての大人に預けられることに当然ストレスや緊張が強いられます。だからこそ、多くの通常の保育では、慣らし保育を始め、保育園、保育士が時間を掛けて子供や親との信頼関係を築きながら保育が行われています。
 一方、政府の進めるこども誰でも通園制度の試行事業では、利用する園、月、曜日や時間を固定せず利用する自由利用方式を採用できることになっており、一時間ごとに事業者を替えることも可能です。
 衆議院では、居住地を離れて全国どこでも、直前まで空きがあればアプリで予約ができるようにすると答弁がありましたが、それでは子供が保育園という新しい環境や人に慣れるための慣らし保育の時間すら取れません。まだ言葉もうまく話せない、睡眠や食事のタイミングなど生活パターンも違い、個性ある子供たちを慣らし保育もなく新たに預かることは、施設側にとっても非常に負担の掛かる難しい保育となります。
 こども誰でも通園制度、とりわけ自由利用方式は、子供にとっても施設にとっても通常保育とは異なる困難や負担があるという認識が総理にありますか。
 政府の重大事故防止有識者会議によると、保育所における死亡事故の発生は、ゼロから二歳児、預け始めの時期が最も多くなっています。この最も死亡事故が多い条件で常に子供を受け入れることになるこども誰でも通園制度、自由利用方式の保育で子供の安全は保障されるのでしょうか。
 さらに、保育の質と安全を保障する前提となる人員配置基準も、保育士が半分でよいとされました。通常の保育より難しい保育が保育士側に求められるにもかかわらず、なぜ人員配置は低い水準でよいと考えたのでしょうか。
 衆議院で加藤大臣は、保育士以外の人材の活用も含めと答弁されましたが、保育士以外の更なる活用など、保育従事者の基準の更なる引下げもあり得るのでしょうか。緩い基準で安易な事業者参入のおそれはないのでしょうか。
 こども誰でも通園というのであれば、親がどれだけ働いているかなどで対象を絞る保育の必要性の要件を見直して、文字どおり、全ての子供たちに質の確保された保育を保障できるようにすべきではありませんか。
 今の日本は、若い世代が子供を産み育てることも結婚することも本当に困難で、選べない社会になっています。この社会を根本から変えることこそ求められています。若者、子育て世代の経済的負担を抜本的に軽減し、所得を増やし、ジェンダー不平等を解消する。そして、全ての子供たちがストレスのない安心、安全な環境で自由に遊び、自由に学び、成長できる権利を保障することこそが政治の責任であるということを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 吉良よし子議員の御質問にお答えいたします。
 子育て政策と防衛力強化の関係についてお尋ねがありました。
 防衛力の抜本的強化のための財源確保に当たっては、防衛関係費が非社会保障関係費であることを踏まえ、社会保障関係費以外の経費を対象として歳出改革を行うこととしております。
 他方、子ども・子育て政策を抜本的に強化する加速化プランの財源確保のための歳出改革については、社会保障関係費を対象とすることとしておりますが、このような歳出改革を財源として子ども・子育て政策を強化することは、全世代型社会保障の構築に資することとなり、適切なものであると考えております。
 防衛力の抜本的強化と子ども・子育て政策の抜本的強化、どちらかが優先されるというものではなく、共に必要な予算をしっかりと措置するための財源確保に取り組んでまいります。
 そして、医療保険料と合わせて子ども・子育て支援金を拠出いただくことについてお尋ねがありました。
 支援金制度は、社会連帯の理念を基盤に子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組みです。急速な少子化、人口減少に歯止めを掛けることが医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤にとっても重要な受益となることから、医療保険者に医療保険料と合わせて徴収していただくこととしたものであります。
 その上で、サラリーマン世帯が加入する被用者保険と、被用者保険に加入しない方々が加入する国民健康保険とでは、加入者の就業形態や収入の状況が異なる中で賦課の方法も異なっており、一概に比較できるものではありません。国民健康保険の支援金の拠出額については、加入者一人当たりと一世帯当たりの平均月額のいずれも公費の投入額が大きいことから、被用者保険に比べ低い額となります。
 支援金は、負担能力に応じた拠出をお願いしつつ、子育て世帯への経済的支援の充実等に充てるものであり、適切に所得を再分配する仕組みと考えており、格差と貧困に悪影響を及ぼすとの指摘は当たりません。
 我が国の社会保障の構造についてお尋ねがありました。
 高齢化率と比べれば給付が手厚いとは言えないとの御指摘については、我が国の社会保障は負担よりも給付を先行させてきたために、全体として中福祉低負担との指摘もあり、そのような給付水準の中では給付が高齢者中心であると言えます。本格的な少子高齢化が進む中、全世代がひとしく恩恵を受け、公平に支え合う全世代型社会保障に転換していくための改革に引き続き取り組む必要があります。
 そうした観点からも子ども・子育て政策の強化は重要であり、今般の加速化プランによる三・六兆円にも及ぶ政策の強化により、我が国の子供一人当たりの家族関係支出はGDP比でOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進することとなります。
 そして、社会保障分野の歳出改革についてお尋ねがありました。
 歳出改革の具体的な内容については、昨年末閣議決定した改革工程において、窓口負担の見直し、医療提供体制の効率化、介護分野におけるICTの活用など幅広いメニューが列挙されていますが、これらは一義的には社会保障の持続可能性を高める観点から記載されたものです。
 これらのメニューの中から実際に取組を検討、実施するに当たっては、全世代型社会保障の理念に基づき、世代間の対立に陥ることなく、むしろそれぞれの人生のステージにおいて必要な保障がバランスよく提供されるよう、見直しによって生ずる影響を考慮しながら、丁寧に検討をしてまいります。
 本法案による一時預かり事業の課題解消についてお尋ねがありました。
 一時預かり事業は自治体の裁量が大きい事業であるのに対し、こども誰でも通園制度は、給付制度とすることで一定の権利性が生じるとともに、全ての自治体で実施することで制度利用のアクセスを向上させる意義があります。
 また、こども誰でも通園制度の実施に当たっては、保育現場の業務の負担の軽減のため、慣れるのに時間が掛かる子供への対応として、親子通園も可能とするほか、受入れ施設が子供のアレルギー等の情報を円滑に把握できるような仕組みの構築を進めてまいります。
 そして、こども誰でも通園制度における子供の安全についてお尋ねがありました。
 こども誰でも通園制度における自由利用方式は、毎日異なる子供を預かるなど、通常保育と比べ一定程度困難や負担があると認識をしております。制度の実施に当たっては、子供の安全が確保されることが大前提であり、この考え方を徹底してまいります。
 人員配置基準については、試行的事業において一時預かり事業と同様の基準で実施していますが、保育士以外の人材の活用も含め、更なる検討を行うこととしております。そして、実施主体である市町村による認可の下、受入れ体制が整っている施設において実施することとしており、安易な事業者の参入を認めることは考えておりません。
 そして、保育の必要性の要件の見直しについてお尋ねがありました。
 現行の教育・保育給付について、一部の自治体では待機児童も残る中、保育の必要性の要件を見直すこと自体は困難であると考えております。このような状況の下、本法案でお示ししているこども誰でも通園制度の創設を行いつつ、幼児教育、保育の質の向上についても、今後とも、保育士等の処遇改善や職員配置基準の改善などに取り組んでいくことが適切な対応であると考えております。(拍手)