通学定期負担軽減を 子育て支援として大事
要約
日本共産党の吉良よし子議員は16日の参院国土交通委員会で、鉄道、バスなどの公共交通の子ども料金の負担軽減を求めました。
吉良氏は、文部科学省調査でも高校生の通学定期代の負担が大きいとして、高校生、中学生の通学定期代の負担軽減に踏み出すよう要求。斉藤鉄夫国土交通相は「学生が公共交通機関を使用して通学する際の経済的な負担を軽くしていくことは必要な取り組みの一つだ」と答えました。
吉良氏は、公共交通料金が、未就学児は無料、12歳未満が半額なのは省令の鉄道運輸規程が根拠だと指摘。規程の料金、年齢設定は最低基準であり、割引の上乗せは各社の判断でできるかと質問。国交省の村田茂樹鉄道局長は「規定よりも低廉なものとすることを妨げるものではない」と答えました。
吉良氏は、規定は82年前の戦前の省令のままだと指摘。子どもの権利条約などでは18歳未満が子どもだとして、時代遅れの規定の見直しを求めました。
斉藤国交相は料金制度が「一般社会でも根付き、定着している」として「改正する状況にない」としました。
吉良氏は、小田急が子ども運賃を引き下げ、カナダ・トロントやイギリス・ロンドンは無料や半額にしていると紹介。中学生、高校生も子どもとして半額、無償にすることは子ども・子育て支援としても、移動の権利などの子どもの権利を保障する上でも大事な取り組みだと強調しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、鉄道、バスなどの公共交通の子供料金の負担軽減について伺いたいと思うんです。
現在、どこの鉄道、バスであっても大体、六歳未満の未就学児は無料、十二歳未満、小学生の子は大人の半額、十二歳以上は大人料金というふうになっているわけです。しかし、十二歳以上の中高生、小学生よりも行動範囲も広がるわけで、その中高生にとって交通費の負担というのは決して軽くはないと思うわけです。特に、高校生の多くは、学校に通う際、電車、バスを利用して通学をしているわけですが、その通学の費用負担というのが家計に重くのしかかっている実態があるわけです。
資料を御覧いただければと思います。
文科省、令和三年度、二〇二一年の子供の学習費調査によれば、公立高校の学校教育費、学校に通う、学ぶために必要な経費なわけですけど、の支出のうち一番大きな金額占めるのが通学関係費九万一千百六十九円。私立の場合は、一番大きな金額占めるのは授業料になっていますが、二番目がやっぱり通学関係費で十二万九千百五十五円となっていると。
多くは通学定期を利用していて、その定期代というのは通常の運賃とか通勤定期なんかよりは安く設定されていると思うんです。それでもこれだけの負担になっていて、高校生を持つ家庭への大きな負担になっているのは明らかだと思うわけです。
現在、政府は挙げて、子ども・子育て支援を進めるんだと、加速化プランでも教育費の負担軽減ということを掲げているわけですが、高校生の学校教育費の家計負担の状況、これ考えれば、この通学費用、定期代の値下げ進めるというのは、若しくは無償を目指すということを進めるというのは、本当に大きな負担軽減になると私は思うわけです。
大臣、是非、国交省としても子ども・子育て支援進めていくんだと、それこそこの高校生、中学生の通学定期代の負担軽減に踏み出す、こういうこと必要だと思うんですけど、いかがでしょうか。
国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君)
子ども・子育て支援の観点から、高校生を始めとする学生が公共交通機関を使用して通学する際の経済的な負担を軽くしていくことは必要な取組の一つであると認識しております。
公共交通機関の運賃は、基本的には交通事業者の経営判断によって設定されておりますが、現状におきましても、例えば東京都内の大手鉄道事業者における通学定期券の割引率はおおむね七割から八割程度で設定されておりまして、相当程度割引されているところでございます。
いずれにいたしましても、今後とも、利用者にとって利用しやすい運賃が設定されるよう、適切に対応してまいりたいと思います。
吉良よし子
一応八割引き、七割、八割引きになっているんだという話がありました。けれども、実態として、先ほど御紹介したとおり、家計には重い負担になっているわけで、実際には、この定期代の金額を見て、やっぱりこれは無理だと、鉄道とかバスとかも利用すると本当かなりの金額になるのでもう片道一時間自転車通学を子供にお願いしているとか、若しくは、交通費負担を考えるともうやっぱり最寄りの学校を選ぶしかないんだとか、その進路選択の自由を狭めるような事態も起きているという声もあるわけで、やはり通常料金、通勤定期より安いから問題ないということではないわけで、国交省として子ども・子育て支援に踏み出すんだと、通学定期の負担軽減に踏み出すんだということを是非検討していただきたいと思うんです。
そもそも、この子供の公共交通料金、先ほど申し上げたとおり、未就学児が無料で十二歳未満が半額とされているのはなぜかといえば、これ、国交省の鉄道運輸規程が根拠になっている。だから、やっぱりこの値下げというところでいくと国交省も責任があるということだと思うんですけど、この鉄道運輸規程というのは、昭和十七年、一九四二年の鉄道省令なんですね、で出された鉄道運輸規程なんですけど、つまり八十二年前、戦前の省令で定められたものなんです。
その第十条の一項で、「鉄道ハ旅客ノ同伴スル六年未満ノ小児ヲ旅客一人ニ付少クトモ一人迄無賃ヲ以テ運送スベシ」と。第三項で、「鉄道ハ十二年未満ノ小児ヲ」「大人ノ運賃ノ半額ヲ以テ運送スベシ」としているわけです。
相当古い、戦前の規程になるわけですけれども、この鉄道運輸規程で十二年未満の小児が半額、いわゆる小児運賃だとしているわけですが、国交省に確認をいたします。この運輸規程において小児と出てくるわけですが、これは何なのか、国交省において小児をどう定義付けているのか、お答えください。
政府参考人( 国土交通省鉄道局長 村田茂樹君)
お答え申し上げます。
一般的に小児という言葉の意味といたしましては、広辞苑によりますと、小さな子供、幼児とされておりまして、明確に年齢で定義付けされておりませんけれども、鉄道運輸規程におきましては、半額運賃又は無賃の対象となる旅客を明確化する観点から、鉄道運輸規程第十条におきまして、今委員御指摘のように年齢を規定しているところでございます。
吉良よし子
いや、だから、国交省として定義付けしていないと、広辞苑を引かれてちょっとびっくりしたんですけれども、国交省としての定義は、小児の定義はないということだと思うんですね。
先ほど、じゃ、年齢、これ、鉄道運輸規程ではその小児の年齢が十二年未満となっているわけですけど、じゃ、その十二年未満、十二歳未満としているのはなぜなのかということも聞きたいわけです。
いや、今や子供といえば未成年、つまりおよそ高校生、十八歳までを示すというのが一般的だと思うんですけど、この鉄道運輸規程ではなぜ十二歳未満という年齢で区切ったのか、当初どういう議論があったのか。いかがですか。
政府参考人(村田茂樹君)
お答え申し上げます。
これはかなり経緯のある議論であるというふうに考えておりまして、我が国の鉄道が明治五年に開業しておりますけれども、その以来ずっとこの十二歳未満の子供を小さい子供といたしまして大人の半額運賃とする制度がなっておりまして、現在に至るまでこれが一般社会でも根付いており、定着をしているというふうな認識をしておりまして、その後定められました鉄道運輸規程におきましてもそのように制度化されているものであると考えております。
吉良よし子
明治五年に開通して以来、鉄道会社がそう定めたから、十二歳未満と定めたから、運輸規程でも、鉄道運輸規程でもそのようにしているということで、経緯とおっしゃいますけど、要するに明確なそのなぜということについての御回答ではないと思うんですね。言わば各社が決めたからという程度の根拠だということだと思うんですけれども。
それでは、運賃の方はどうなのかと。小児運賃自身は大人の運賃の半額というふうに鉄道運輸規程では定めているわけですけど、例えば、鉄道会社が小児運賃の金額設定を半額以下に下げること、又は小児運賃を無償にするということはできるのでしょうか。あわせて、その年齢についても、各鉄道会社で十二歳を十八歳にとかいうふうに引き上げることも可能なのか、お答えいただければと思います。
政府参考人(村田茂樹君)
お答え申し上げます。
鉄道の実際の旅客運賃につきましては、鉄道事業者は、鉄道事業法に基づき、運賃の上限について、国土交通大臣の認可を受け、その上限の範囲内で届出により実際に適用する運賃を定めているところでございます。
このため、今委員御指摘の、十二歳未満の小児運賃について半額以下とすることでありますとか、また十八歳未満の方の運賃を半額にするということは、鉄道事業者の経営判断により、届出によりまして実施できるということになっております。
吉良よし子
鉄道会社が判断すればできるということだと思うんです。
つまり、この鉄道運輸規程というのの料金設定、若しくは年齢設定というのは最低基準であって、その上乗せは各社の判断でできるということでよろしいですか。再度お願いします。
政府参考人(村田茂樹君)
鉄道運輸規程の各規定につきましては、鉄道事業者が旅客の便益を増進するなどのために遵守すべき事項を定めたものであり、鉄道事業者が運賃を鉄道運輸規程の規定よりも低廉なものとすることを妨げるものではないと考えております。
吉良よし子
要するに、やっぱり各社の判断だということだということだと思うんです。これ本当に大事なことだと思うんです。
事実、小田急電鉄は、二〇二二年三月から、この首都圏で小児用のICカード利用時の子供運賃を小田急線内一律五十円に引き下げたという事例もあるわけです。
ただ、一社が値下げしたとしても全体の負担軽減とはならないわけで、やっぱり全ての子育て世代の負担軽減ということでいえば、この鉄道運輸規程そのものを改めていくべきじゃないかと思うんです。何より八十二年前、戦前の規程いまだにそのままということはやっぱり私はおかしいし改めたいと、改めていくべきだと思うんですけれども、とりわけ、子供の年齢について言えば、我が国が三十年前から批准している子どもの権利条約は、児童とは十八歳未満の全ての者とあります。
児童福祉法では、児童とは満十八歳に満たない者と定義しているわけで、やはり大臣、この時代遅れの鉄道運輸規程、もう変えていく、小児を子供に変え、また年齢についても十八歳基準にしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
我が国の鉄道開業以来、十二歳未満の子供を小さい子供として大人の半額運賃とする制度となっておりますが、これが一般社会でも根付き、定着していると認識しております。
各鉄道事業者は、この規程を前提の一つとしつつ各社ごとの運賃体系を定めているため、御指摘のように、規程の改正により一律に小児運賃の年齢を引き上げることは、事業者の定める運賃体系全体に大きく影響を及ぼすことから、慎重に検討すべきと考えております。なお、先ほど局長が答弁したとおり、十八歳未満の運賃を半額にすることは鉄道事業者の経営判断により実施できることとなっております。
これらを踏まえ、現時点では、鉄道運輸規程の十二年未満の小児の規定を改正する状況には必ずしもないのではないかと、このように考えております。
吉良よし子
慎重に判断と、非常に後ろ向きな御答弁だったと思うんですけれども、十二歳未満が小児というのは根付き、定着しているというふうにもおっしゃいました。
でも、本当にそうなのかと。小田急が子供運賃を引き下げたところ、子育て世帯からは、あっ、その手があったかと、そういう歓迎の声が上がったと聞いているわけです。やっぱりここが負担軽減されると本当に助かるよねというのは多くの認識なんです。更に言うと、海外見てみますと、公共交通の子供料金の年齢設定、カナダのトロントでいえば十二歳までが無料で十九歳までは割引と、イギリスのロンドンでは十歳までが無料で十七歳まで半額と、そういうふうな事例というのが既にあるわけです。
やっぱり公共交通の料金を中学生、高校生も子供として半額にする、あるいは無償にしていくということは、子ども・子育て支援としても、そしてやっぱり子供たちの移動する権利、子供の権利を保障していく上でも大変大事な取組だと思うわけで、既に子供料金値下げしている企業も、鉄道会社もあるわけですから、そうした取組を各社に広げる。何だったら、子供料金の対象年齢を引き上げることも、是非国交省として広げていくべきじゃないかと思うんです。
子供の交通料金の値下げ、負担軽減へイニシアチブ是非発揮していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
繰り返しになりますが、子ども・子育て支援の観点から、子育て世帯の経済的な負担を軽くしていくことは必要な取組の一つであると認識しております。
我が国の鉄道開業以来、十二歳未満の子供を小児として半額運賃とする制度が一般社会に根付き、定着していると認識しております。また、交通事業者の経営判断により対象年齢の引上げや割引率の設定ができることとなっており、一律に小児運賃の年齢の引上げや割引率の拡大を図ることは事業者の定める運賃体系全体に大きく影響を及ぼすことから、慎重に検討すべきと考えております。
いずれにいたしましても、今後とも利用者にとって利用しやすい運賃が設定されるよう、適切に対応してまいりたいと思います。
吉良よし子
負担軽減は必要だとおっしゃるのであれば、やはり鉄道運輸規程の見直しを含め、子供料金設定、やはり新たな、今の時代に合わせて見直していくべきじゃないかという検討を是非進めていただきたいと思うんですよ。
これは、やっぱり先ほど来言っているように、負担軽減だけではなくて、子供の権利保障、移動の権利の保障だと思うんです。それを保障することにより、子供たちが遠方で様々な活動や体験をする機会、これを保障することにもつながるわけで、是非国交省としてそういう取組こそ進めていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。