次期エネルギー基本計画策定 子ども・若者の参画を
要約
参院資源エネルギー・持続可能社会調査会は15日、「資源エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和に向けた論点」をテーマに質疑と意見交換を行いました。日本共産党の吉良よし子議員は、原発推進と石炭火力に固執する日本のエネルギー政策を転換するよう求めるとともに、次期エネルギー基本計画の策定に若者や子どもを参画させるべきだと求めました。
吉良氏は、2023年に国連子どもの権利委員会が気候変動や環境課題の政策立案などへの子どもたちの意見は正当に重視されるべきだとする「一般的意見26号」を出したと紹介。前年の「子どもパブコメ2022」には日本の子どもからも「もっと対策をしてリスクがある子どもたちを救って」「僕たちの意見をもっと聞いてほしい」などの声が上がっているとして、政策策定プロセスに若者、子どもの声を反映するよう要求しました。
吉良氏は「次期エネルギー基本計画を議論する有識者会議に若者を入れてください」という署名運動が取り組まれているとして、エネルギー基本計画の策定の会議に若者、子どもが参画できる場をつくるよう要求。岩田和親経済産業副大臣は「年齢のみに着目した(委員の)選定は行っていない」と答えました。
吉良氏は「気候危機による被害、影響を最も受けるのは若い世代や子どもたちだ。政策決定プロセスに参画させるべきだ」と主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、エネルギー政策や環境政策に関して、子供や若者の意見表明、政策策定プロセスへの参画について伺いたいと思うんです。
国連子どもの権利委員会は、二〇二三年の八月、昨年ですが、気候変動に焦点を当てた子供の権利と環境に関する一般的意見二十六号というのを公表し、子供たちの生活を根本的に形作る重要かつ長期的な環境課題に対処するための措置の立案及び実施において、子供たちの意見が積極的に求められ、かつ正当に重視されるべきであるとし、各国政府に対しても、立法、政策、規則、プロジェクト及び活動に関する環境関連の意思決定プロセスで子供たちの声を反映させる仕組みを設けるようにということを求めているわけです。
これ、この一般的意見の二十六号を策定するに当たって、国連の子どもの権利委員会は、百二十一か国、一万六千三百三十一人の世界中の子供たちの協力を得たんだとしており、昨年、あっ、その一年前の二〇二二年には、日本の子供たち千五百人を含む世界七千四百十六人の子供、若者による子どもパブコメ二〇二二というのも公表しているわけです。
このパブコメに出されている日本の子供たちの声としては、もっと対策をしてリスクがある子供たちを救ってほしい、僕たちの意見をもっと聞いてほしい、十一歳です、僕たちはいずれ大人になります、そのときに環境問題と向き合うためにも今のうちから環境問題についてよく知っておくことが将来役に立つと僕は考えています、十二歳、などが紹介されていて、日本においても、この気候危機を自らの問題と捉え、関心持ち、解決に向けて一緒に考え行動したいという、そういう子供たちの声があるということが分かるわけです。
やっぱりこういう子供たち、若い世代の声に政府がしっかり向き合うことが必要だと思うわけですが、経産省、環境省はこのエネルギー政策や環境政策の立案、策定に当たってこうした世代の声を聞いているのか。経産副大臣、環境副大臣に伺いたいんです。こうした気候危機対策に関心を持つ子供や若者の意見を政策に反映することについてどうお考えか、それぞれお聞かせください。
経済産業副大臣(岩田和親君)
お答えいたします。
御指摘の環境問題、気候変動対策を始めとして、国の政策は、若い世代も含めて幅広い世代の様々な御意見を傾聴しながら政策を立案していくことが大変重要であると考えております。
例えば、昨年二月に閣議決定しましたGX実現に向けた基本方針においては、パブリックコメントを募集し、若い世代を含めて幅広く意見を募りながら策定をし、その後のGX政策の礎となりました。
また、職員にも若い世代は多いわけですが、世代を超えて闊達な議論が行われていると承知をしておりますし、また、日々の業務の中でもできる限り現場に出て問題意識を把握するよう努めていると認識しております。
引き続き、経済産業省に根付いてきた現場主義の下、若者を始めとした国民の声を直接聞きながら政策立案に生かしていきたいと考えております。
環境副大臣(八木哲也君)
気候変動対策の検討プロセスにおきまして、若者を始めとする様々な方の声に耳を傾けなければいけないということは御指摘のとおりでございます。
例えば、二〇二一年に閣議決定されました地球温暖化対策計画の検討の際には、気候変動に関する多様な分野の有識者などに審議会の構成員として参加いただきました。気候変動に関心を有する若者の団体からヒアリングを行うなど、透明性のある形で、若者を含む様々な意見を広く伺ったところでございます。
今後の地球温暖化対策計画の見直しプロセスにおきましても、過去の事例も参照しながら、年齢層、性別、専門分野などのバランスに留意しつつ、若手事業者や有識者の参画やヒアリングの実施など、多様な方々から意見を伺うことを考えております。
以上でございます。
会長(宮沢洋一君)
吉良さんの質問は若者ということではなくて子供の意見ということだったわけですけれども、その点についてのお答えはないわけですか、お二人とも。
環境副大臣(八木哲也君)
ちょっとこれ私見が入りますが、実は三週間ほど前に私自身のところにも、環境省の方にも若者、特に大学生、高校三年生、そして卒業された層の年代等々十名ほどがお見えになりまして、意見交換をさせていただき、大変参考になったという事実がありまして、そういう意見を多数聞くということは大事だと私は思っています。
会長(宮沢洋一君)
岩田さん、子供について何かあるんですね。(発言する者あり)
吉良さん、次の質問の方がよさそうですから。
吉良よし子
会長、ありがとうございます。
若い世代、子供も含めて声を聞くことは大事だし、傾けなくてはいけないと。まあ子供についてはまだまだこれからということですが、それぞれ様々工夫はされているということでした。
特に環境省については審議会の構成員とか団体のヒアリングやっているということですが、経産省はまだパブコメ止まりかなというふうに伺ったんですけれども、経産省に伺いたいと思うんですが、この間、エネルギー基本計画案作成する際の、策定する際の主要会議体である基本政策分科会、この委員の年齢構成というのはどうなっているのか。若い世代、特に二十代、十代の委員がいるのかどうか、端的にお答えください。
政府参考人(資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官 山田仁君)
本日時点のその基本政策分科会の委員には、十代、二十代の委員は存在しておりません。
吉良よし子
十代、二十代はまだ存在をしていないということなんですね。
本調査会に参考人として来てくださった平田仁子氏が代表を務めるクライメート・インテグレートの調べによりますと、この第六次、第七次の策定に、エネルギー基本計画策定に関わる基本政策分科会の年代構成、六十代が一番多くて四二%、次いで七十代が三三%、五十代が二一%で、その他不明ということだとなっているわけですけれども、圧倒的に年齢層が高くなってしまっているわけです。
しかし、気候危機による被害、影響を受けるのはやっぱり若い世代、そしてこれから生まれてくる将来世代なわけで、この地球沸騰とまで言われるような気候危機に直面している今、それを回避するための政策策定プロセスにそうした若い世代を参加させるということはもう必須、必要だと思うわけです。
事実、もう既に、この地球沸騰化の危機、次期エネルギー基本計画を議論する有識者会議に若者を入れてください、気候市民会議を開催してくださいというオンライン署名の取組なども始まっておりますし、四月三十日には国会内でもその院内集会も開催され、若者たちが声を上げているわけですけれども、経産副大臣、是非、次のエネルギー基本計画の策定に関わるプロセスに是非この若者、子供を参画させる場をつくっていただきたい、できればその有識者会議に参加するようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
経済産業副大臣(岩田和親君)
委員の選定に関しましては、エネルギー政策を進めていく上で必要となる学識経験者や専門家にバランスよく参画をしていただく観点から行っております。このため、年齢のみに着目した選定は行っていないというのが現状でございますが、若者を含む様々な立場の方の意見を聞きながら施策を検討することは重要であると、このように認識をしております。
エネルギー基本計画の策定に際しては、パブリックコメントの実施による様々な意見の取り込み、審議会の検討過程における様々な立場の団体へのヒアリングの実施、審議会と並行して、ホームページで常時広く意見を受け付ける意見箱の設置、全国各地での説明会、意見交換会の開催などを行っていく予定です。加えて、既に、若者団体の皆さんと経産省職員によるエネルギー政策に関する意見交換会、これを複数回実施をさせていただいているところでもあり、今後もこれを実施していく予定です。
引き続き、若者を含みます様々な意見をしっかりと伺いながら議論を進めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
年齢のみでその委員の選定はしないんだというお話でしたけれども、やはりこの気候危機の問題に関して言うと、やはり年齢というのは非常に重要なファクターなんだと。先ほども言いましたとおり、気候危機による一番の影響、被害を受けるのが若い世代、子供たちなわけですから、若い世代、子供も含めてしっかり意見を聞く場を設けていただきたいですし、やはり、そのエネルギー基本計画、政策の策定プロセスに正式にこの若者、子供たちを参画させていくべきだということを強く申し上げまして、質問を終わります。
〈意見表明〉
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
日本のエネルギーをめぐる脆弱性の根本には、原発推進と石炭火力維持に固執し、国産エネルギーである再生可能エネルギーの開発、普及促進を後回しにしてきたことがあります。そして、これらは脱炭素、持続可能社会の実現にも逆行する流れです。
政府は、昨年のGX基本方針で脱炭素電源として原発を位置付け、原発回帰の姿勢を明らかにしました。
一方、本調査会で二月二十一日に、クライメート・インテグレートの平田仁子参考人は、これから脱炭素を進める上では、気候変動に取り組む環境団体は明確に、このCO2だけの問題ではない、環境負荷、リスクのある原子力は選ばないとし、コストそして技術の安定性という点からも原発は脱炭素の選択肢にならないと明言されました。能登半島の地震により志賀原発で様々なトラブルが続発したことを踏まえても、原発がエネルギーの安定供給にも脱炭素にも寄与しないのは明らかです。
また、平田参考人は、日本の気候政策が各国と比較して最下位クラスである理由として、G7の合意では、石炭火力は最大の問題だから全廃しようと日本も含めて合意をしているわけですけれども、まだ全廃に踏み込めていない数少ない先進国が日本だからだとも述べられました。
GX基本方針では、水素、アンモニアと化石燃料の混焼発電にも投資するとしており、結局、原発とともに石炭火力の延命になってしまいます。日本は、COP25以来、四回連続化石賞を受賞していますが、今こそ原発推進、石炭火力維持を見直し、再生可能エネルギーを最大限に進めていく方向にかじを切るべきです。
二月七日の調査会で会長から報告があったとおり、私は昨年九月の参議院の重要事項調査第三班の一員としてアイスランドとドイツを訪問しました。アイスランドは再生可能エネルギー、ほぼ一〇〇%を実現し、ドイツは昨年四月に脱原発を実現して以降、再生可能エネルギーを増やし続け、その比率は昨年時点で約四割、今年に入って五割を超えたと聞いています。
これらの国々の取組を見れば、政治的決断により再生可能エネルギーの普及拡大が可能だということは明らかです。また、再生可能エネルギーの普及拡大といったとき、環境破壊型ではない、地域共生型、地域と住民の力に依拠した活用を進めてこそ大規模な普及が可能になります。
四月十七日の参考人質疑では、産総研の石村和彦参考人は、再生可能エネルギー自身が非常に分散型の電源であり、各地方、地域の発展に寄与できる可能性がある電源だということは言えるともおっしゃいました。こうした再生可能エネルギーの可能性も最大限追求すべきです。
一方、これだけ気候危機の問題が叫ばれ、脱炭素、持続可能な社会づくりが課題となっているときに、東京都の神宮外苑の再開発のように、樹木をどんどん伐採し、巨大なビルを林立させる再開発が都市部を中心に進められていることは問題です。特に、都市部で問題となっているヒートアイランド現象を軽減するためには、今都市部にある樹木を守ることが必要です。行き過ぎた再開発をどんどん進めるのではなく、樹木の大量伐採に歯止めを掛け、持続可能な町づくりこそ進めるべきです。
最後に、気候危機による影響を受ける最大の被害者は今の若者たち、これから生まれてくる将来世代です。日本でも若い世代が気候危機について声を上げ、行動しています。次期エネルギー基本計画を議論する有識者会議に若者を入れてください、気候市民会議を開催してくださいと署名を集めています。
こうした声に応え、気候危機の打開と持続可能な社会づくりのために行動している若者、子供たち、市民の意見を日本のエネルギー政策、環境政策に積極的に反映することも強く求め、意見といたします。