【質疑・修正提案】物流運転手 待遇改善を。営業区域制復活を要求
要約
物流の「2024年問題」への対応として、荷主や物流事業者への規制を盛り込んだ「流通業務総合効率化法」「貨物自動車運送事業法」両改正案が25日の参院国土交通委員会で採決され、日本共産党と自民、公明、立民、維新、国民の賛成多数で可決されました。れいわは反対。日本共産党の吉良よし子議員が提出した修正案は否決されました。
吉良氏は質疑で「トラックドライバーに責任や犠牲を負わせる議論や施策は許されない」「確実に待遇改善につなげる必要がある」と強調。改正案の目的規定や基本理念で「物資の流通の効率化」が強調される一方、労働者の待遇改善に直接つながる記載がないと指摘し、「効率化のために、労働者が犠牲になっても構わないという趣旨ではないな」と確かめました。斉藤鉄夫国交相は「より短い時間働き、より高い賃金を得てもらい、トラックドライバーの待遇改善を図る趣旨だ」と答えました。
吉良氏は「仕事と生活の両立が可能な業界にすることが重要だ」として、発着地のいずれかを営業区域内とする営業区域制の復活を要求。高速道路での「安易なスピードアップ策」を見直し、労働時間の短縮が賃下げにつながらないよう「標準的運賃」を「最低運賃」にする必要があると訴えました。
さらに吉良氏は、トラック運転手の休憩場所について、1日に改定された厚生労働省の改善基準告示で、休憩所にサービスエリアの他、コンビニや給油所、道の駅も含まれると記されているものの、周知されていないと指摘。斉藤氏は「厚労省とも連携し、無用なトラブルを防止するためにも、関係業界に対して必要な普及啓発活動、周知を徹底していく」と述べました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
四月一日から、物流部門のトラックドライバーにやっと罰則を伴う時間外労働規制が始まりました。そして、不十分ではありますが、改善基準告示も改定されて、勤務間インターバル規制も強化されます。トラックドライバーの命と健康を守るためには当然の規制だと思うわけです。
ところが、これが輸送能力不足、物が運べなくなるという物流二〇二四年問題として強調されているわけです。
これについて、トラックドライバーの中には自分たちが責められている気がするという声が上がっていることについて、先日の参考人質疑でも私質問したところ、成田参考人からは、二〇二四年問題という、この問題というのがすごく我々も違和感があるとあり、足立参考人からは、二〇二四年問題、やっぱり労働時間等を短くして、やっぱり働きがいのあるトラック産業をつくるのかという問題だというふうに思っておりますとの話がありました。
大臣、そういう意味では、今回の法案、やっぱりトラックドライバーに責任や犠牲を負わせるような議論や施策は許されないし、確実に労働者の待遇改善につなげていく必要があると思いますが、いかがですか。
国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君)
トラックドライバーは国民生活や経済活動を支えるエッセンシャルワーカーであり、適正な労働時間と適正な賃金、この二つが両立する環境を整備することが重要で、今回はそれを目指した法案です。荷主や物流事業者に対し、物流の効率化、多重下請構造の是正、適正運賃収受に資する取組を義務付けるなど、トラックドライバーの処遇改善に資する規制的措置を導入するものでございます。
また、即効性のある設備投資の支援やトラックGメンによる悪質な荷主の是正指導等あらゆる施策を組み合わせて、そのトラックドライバーの処遇改善を行って、取り組んでまいります。
吉良よし子
荷主などに規制的措置をとっていって処遇改善に向けてつなげていくんだと、そういう話だったかと思います。
私、トラックドライバーの待遇改善といったとき、まず、ドライバーが、ほかの産業の労働者同様、朝に家を出て予定どおり帰宅できる働き方の保障をしていくということ、必要になってくると思うんです。でも、実際には、長距離トラックドライバーの多くは、出発する営業所で荷物を積んで、出発してから帰宅がいつになるか分からないというのが当たり前の状況で、このままでこの先トラックドライバーになりたいと思っている人が増えるのかという疑問があるわけです。
衆議院の参考人質疑でも、首藤若菜参考人から、一回トラックに乗ったらもう五日、六日帰ってこれないという働き方こそ変えていかないといけないんじゃないかと思っていますという指摘もありました。
どの職種でも人手不足が言われる中で、若者も女性もトラックドライバーになりたいと思ってもらうためには、この一旦出たらなかなか帰ってこれない、その働き方にメスを入れる必要があるのではないかと。いつ帰れるか分からない働き方ではなくて、着実に帰ってこれるようにする、できるならば日帰りで帰れるとか、若しくは産休、育休も取れるとか、ワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の両立が可能となる業界にしていくことが必要と思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
トラックドライバーの働き方というのは非常に特殊性もございます。しかしながら、ワーク・ライフ・バランスを目指して、確保できるよう、魅力ある職場としていくようにしていかなくてはなりません。今回の法案はその第一歩だと、このように思っております。
その上で、長距離での輸送需要に対して、日帰りも可能となる中継輸送の促進など、実態に応じた様々な取組を支援することで、ドライバーのワーク・ライフ・バランスも確保しつつ、物流産業が適正な労働時間と適正な賃金の両立する魅力ある産業となるよう、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
私の地元の広島では、ちょうど福岡と大阪の間にあるということなんでしょうか、中継施設ができまして、そこで運転手が交代をして、また、荷物そのものは長距離輸送されるわけですが、ドライバーはまたその日のうちに帰っていくというような運用もこれからされるようになってまいります。そういう施策をしっかり進めていきたいと思います。
吉良よし子
ワーク・ライフ・バランス大事だというお話ありましたし、日帰りの取組もというお話もありました。
私は、このドライバーが着実に帰れるようにするためには、やはり営業区域制の復活が私必要だと思うんです。先ほども申し上げましたけど、今、出発して最初の行き先行っても、そこから次どこへ行くのか分からないということが多いわけです。いつ帰れるのかも分からなくて、百四十四時間、つまり六日間の範囲内に出発した営業所に戻りさえすればいい、だから帰ってこれない働き方になっていると思うわけです。
一方、このトラックの発着地のいずれかが営業区域内でなければならないという営業区域制が復活すれば、出発地から一旦どの地域へ出たとしても次は営業区内に戻ってこられると。足立参考人も参考人質疑の中で、ドライバー自身も仕事の内容を含め帰れるんだということが前提で行けるとそのメリットを語っていたわけですが、今回はこの営業区域制には触れられていないわけですが、やっぱり復活なぜさせないのか、いかがですか。
政府参考人(国土交通省物流・自動車局長 鶴田浩久君)
営業区域規制は、平成十五年の貨物自動車運送事業法の改正により廃止をされたものでございます。その際の理由は、現代の輸送需要に対応した運送サービスの提供ですとか、帰り荷の確保による積載率の向上など、輸送の効率化を図るためということでございました。現在、この輸送の効率化の必要性はむしろ高まっているというふうに考えられます。
また、この平成十五年の法改正時には、併せまして、安全面を担保するために民間の適正化事業実施機関の権限を強化する、また運行時間に関する規制を導入する、さらに違反事業者への罰則を強化するといった改正を行ったところでございます。その後、事業用トラックの事故件数は大幅に減少してきているところでございます。
営業区域規制を復活させない理由は今申し上げたようなことでございますけれども、その上で、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、トラックドライバーの健康と安全を確保しながら物流を持続的に成長させるということで、長距離の輸送需要に対して中継輸送を進めるといったような、この実態に応じた様々な取組を支援、促進してまいりたいというふうに考えております。
吉良よし子
要するに、積載率の向上とか効率化のために営業区域制を復活はできないんだと、そういうお話だったと思うんです。つまり、ドライバーが確実に元の営業区域に戻れるようにすることよりも効率的に荷物を運ぶことの方が大事というようにも聞こえるわけですけれども、やはりそれではなかなか、行って帰れる、まあ様々取組進められているということですけど、行って帰ってこれるというところには遠いのかなと。やっぱり営業区域制は私は復活すべきだと思っていると、是非それを進めていただきたいということを強調しておきたいと思います。
ちなみに、本法案、この効率化に関わって言うと、目的規定に、運転者の運送及び荷役等の効率化に関し講ずべき措置等を定めることにより、物資の流通の効率化を図ることを追加、また基本理念にも、物資の流通の効率化のための取組は、将来にわたって必要な物資が必要なときに確実に運送されることを旨とすることを追加すると。つまり、効率化、効率化、効率化ということを目的にもそして基本理念にも入れていくわけですけれども、一方で、労働者の待遇改善に直接つながるような目的規定とか基本理念の改定はない状態なんですね。
これ、大臣、確認したいと思うんですけど、これというのは、この物流効率化のために労働者が犠牲になっても構わないとか、そういう趣旨ではないということでよろしいですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
全くございません。トラックドライバーがゆっくり休める待遇改善をするために物流を効率化させていこうという趣旨でございます。
より短い時間働いて、より高い賃金が得られるようにして、トラックドライバーにはその間ゆっくり休んでもらう、そのためには物流の効率化、すなわち輸送一回当たりの荷待ち・荷役時間を減らし、貨物量を増やすことが必要だと、こういう趣旨でございます。
吉良よし子
ゆっくり休めるようにするための効率化だということなんですけど、もちろんそれは大事なんですけど、逆に効率化だからといって、とにかくどんどん行ってねみたいなことでドライバーの働き方が強化されるようなことはあってはならないと思うんですね。
そういう意味では、この効率化に関わってもう一点確認しておきたいのが高速道路の制限速度の問題です。
時速八十キロから九十キロに引き上げた、この点について聞きたいんですけれども、大臣は衆議院の本会議で、安全を大前提として最高速度を引き上げることは物流の効率化に資すると答弁をされました。つまり、この制限速度の引上げも効率化のためだということだと思うんですけれども、またさらに、昨年十二月、警察庁の有識者検討会の提言でもこの時速の引上げについてありまして、更なる速度規制の緩和に対する社会的要請等があり、また、九十キロメートル毎時よりも高い速度に対応した車両が開発されるなどの状況の変化が生じた場合には、将来的に百キロメートル毎時等への最高速度の引上げを検討する可能性は排除されるものではないと、更なる速度の引上げの可能性まで触れられているわけです。
これ、大臣、制限速度の引上げ、効率化のため、今回の法案も効率化が必要だということなんですけど、将来的に百キロへの最高時速、最高速度の引上げの可能性を排除しないと、これは大臣も同じ認識なのでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
速度規制を所管するのは警察庁でございまして、国土交通大臣としては何とも申し上げられませんけれども、国土交通省としても、この提言を踏まえ、将来における状況に応じて適切に対応してまいりたいと思いますが、先ほど来申し上げているように、トラックドライバーの健康と安全を守るというのが今回の一番大きな眼目ですので、その趣旨に照らして考えていかなければならないと思います。
吉良よし子
状況に応じて適切にということで、否定をされなかったというのはちょっとびっくりなんですけれども、ただ、健康と安全が第一だというお話もあったわけです。
ただ、やっぱりこの制限速度を引き上げたら、その健康や安全が、ドライバーの、脅かされるんじゃないかという問題もあると思うんです。
先日の参考人質疑でも、足立参考人から、もう既にこの四月から制限速度が上がっているわけですけど、全体の高速道路、大型トラックが走っているところでの高速道路でのスピード感はやっぱりアップをしています、当然、ドライバーに対する重圧感が厳しくなっているというふうに思っていますという訴えもあったわけです。トラックを追い越す車両もあるわけで、その車両の速度は要するに百キロを超えるようなパターンがあるわけですから、そういうことで全体が上がっていると、そこでの重圧感ということなんですね。
さらに、制限速度を上げることによって、事業者側もトラックドライバーがその分早く到着するということを前提にスケジュールを組んでいくということも考えられるわけで、それ自体もトラックドライバーにとっては大きなプレッシャーになり得ると、負担の増大になるんじゃないかと考えられるわけです。
一方で、この高速道路の制限速度を時速十キロ分引き上げたからといって、じゃ、どれだけ物流の時間短縮、効率化につながるのか、これ検証されていないんじゃないかと思うんですね。数百キロの長距離運転してもほんの数分だけの短縮なんかだとすると、少しばかり荷物が早く届くメリットよりも、そういう全体の速度が上がって事故の危険が上がるようなデメリット、その負担の増大ということの方が大きくなるんじゃないかという、そういう危惧もあるわけですけれども、大臣、やっぱりこの制限速度を引き上げることのメリット、デメリット、これについてしっかり検証すること大事だと思うんですけど、いかがですか。
政府参考人(鶴田浩久君)
交通安全の確保を大前提として最高速度を引き上げる、これは物流の効率化に資する一方で、走行速度が高くなることでトラック運転手の緊張度、疲労度が増加する懸念があると、これらは警察庁の有識者検討会の提言の中でも指摘されているというふうに承知をしてございます。
国土交通省としましては、トラック運転手に過度な負担が掛からないように、適切な運行管理、これに向けて、荷主や物流事業者とも連携して取り組んでいきたいと思っております。
さらに、御指摘もありました点に関しまして、物流事業を所管する立場から、制限速度引上げの前後における実態の変化も注視してまいりたいというふうに考えております。
吉良よし子
過度な負担にならないようにと、また、制限速度の引上げ前後の変化についてもよく注視していただけるということで、是非しっかり見ていただきたいと。安易なスピードアップ策によって高速道路の安全確保ができなくなってはならないということを厳しく指摘しておいて、次に移りたいと思います。
トラックドライバーの労働条件ということでいえば、労働時間の短縮が賃下げにつながらないようにすると、これもやっぱり重要な問題だと思うんです。
建交労の御協力で、あるドライバーの方の今年三月の給与明細というのを見せていただいたんですけれども、休日出勤二日を含めて二十一日出勤、月の労働時間が二百五十時間、うち時間外労働は八十二時間以上ということで、これがもし常態化していたら、国の基準、過労死ライン超えの労働ということになるわけですが、これだけ働いていても月給はやっと三十八万円台と、しかもその給与の大部分が残業代など基本給以外の部分だと。だから、このまま労働時間が減らされると、残業代が減って賃下げに直結するんだという話になるわけですね。これをやっぱり阻止するには、残業代などの賞与ではなくて、固定給そのものを引き上げる必要性があると思うんですよ。
参考人質疑では、足立参考人から、基本給十万円台前半というのはざらで、ひどい場合は九万円というケースもあるとのお話もありました。また、建交労の御紹介によると、基本給五万円という方もいるというお話も聞いたんですね。これ、固定給が低過ぎるから、つまり十八歳、四十歳と年齢の違うドライバーを比較してもその月収がさほど変わらないという話も聞いているわけで、やはり、大臣、この労働時間の短縮による賃下げを防ぐ、またドライバーの労働条件を改善していくためには、この基本給部分、固定給そのものを引き上げていく、引き上げられるように国交省としてもしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
今回、この法律の、法案の目的は、まさに適正な賃金、そして適正な労働時間、そういう環境をつくり出すことでございます。基本的に、民間経済活動の中で、その適正な賃金が払われるような原資となるその適正運賃を収受できる環境をつくるということが日本の経済体制の中では求められていくものなのではないかと、このように思っております。
そのために、今、標準的運賃というものについて今回引き上げた、また新しい運賃項目等も設定をした、またトラックGメンなどでございます。また、実運送体制管理簿による運送体制の可視化、契約の書面化等を行っております。
これらを通じて賃上げの原資となる適正運賃を収受できる環境の整備を進めていくということが、長い目で見れば日本の経済体制の中でトラックドライバーの待遇を改善していくことにつながると考えております。
吉良よし子
時間短縮が賃下げにつながらないようにというのがこの法案の趣旨だということだったと思うんですけれども、やっぱり固定給そのものの引き上げる必要性についても是非認識をしていただきたいと思うんですね。これ、参考人質疑でも、先日の、三人の参考人の皆さんのそれぞれがその必要性について触れられていたわけで、やはり固定給引き上げられるようにということを国交省としても推進していただきたいというのは重ねてお願いしたいと思うんです。
その上で、じゃ、その賃上げに、適正賃金につなげるためにということでの標準的運賃引き上げるということで、これは重要だと思うんです。ただ、これ強制力はないものだと思うんです。
ここで確認をしたいんですけれども、この標準的運賃、これを下回る運賃での契約というのは認められるということでよろしいですか。
政府参考人(鶴田浩久君)
標準的運賃は、平成三十年の議員立法による貨物自動車運送事業法の改正によって導入された制度でございます。その内容は、賃上げの原資ともなります適正運賃収受が必要ということで、その荷主に対する交渉力が弱いトラック事業者の参考指標として導入されたものでございます。
この性格に鑑みまして、御質問のありました標準的運賃を下回る運賃で契約が結ばれることがあるかといえば、あり得ます。しかしながら、実運送事業者が適正運賃を収受できるように進めていくということが必要であるというふうに考えております。
吉良よし子
標準的運賃、当然、私も必要だと思うんですよね。ただ、残念ながら、この参考指標として導入をされたから下回ることは残念ながらあり得るんだと、そういう御答弁だったと思うんです。
事実、標準的運賃すらまともに収受できていないケースもある、多いということは聞いているわけです。だから、私、やっぱりこの標準的運賃、これ最低運賃としていくべきじゃないかということを申し上げたいと思うんです。
衆議院で大臣は、これについて、トラック事業の取引は多種多様などと述べ、下限に張り付くおそれもあるから慎重な検討が必要と述べられたと思うんですけれども、例えば帰りの運賃も確保した適正な水準の運賃を最低運賃として確保することができるならば、仮にそれが下限に張り付いたとしても、その下限を下回るということはないと。下回ってはいけないという規制ができて、ドライバーの賃上げにつながる大きな意味があると思うんですけれども、大臣、この標準的運賃、この際、最低運賃化すべきではありませんか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
最低運賃の設定につきましては様々な御意見がございます。トラック事業者からもいろいろな意見を伺っております。例えば、先ほど衆議院での答弁を引いていただきましたけれども、荷主に対する交渉力が弱い現状を踏まえれば、荷主から最低運賃での運送を強要されるおそれや、高い水準の運賃を収受できている事業者にまで悪影響が及び運賃が下方修正されるおそれがあると、こういった懸念の声が上がっております。
そういうことで、我々は、この標準的運賃という考え方でこの運賃を適正なものに引き上げていきたいと思っておりますが、制度開始以来、この制度の活用率、そして実際に収受できた運賃の水準が年々向上してきております。この標準的運賃という考え方で進めていきたいと思います。
吉良よし子
標準的運賃をやっぱり私は最低運賃化していただきたいと思うんですよね。交渉力が弱いドライバーの方が、からこそ、そういう意味では、標準のままだと下回るということで契約をのまざるを得ない事態がやっぱりどうしても起きるわけで、最低賃金化するということは本当に重要だと思いますし、是非それは検討していただきたいと思うんです。
そもそも、なぜこのトラックドライバーに運賃が適正に支払われないのか、なぜ賃金が上がらないのかと。やっぱりそれは、先ほど来あるとおり、一九九〇年の物流二法以降の規制緩和が原因だと言わざるを得ないと思うんです。
衆議院でも首藤参考人が、一九九〇年、二〇〇三年の規制緩和を受けて賃金水準は一貫して低下をしてきたと述べているわけです。参議院では足立参考人が、これまでの規制緩和路線によって運送事業への新規参入の拡大や運賃の自由化が招く激しい過当競争による運賃ダンピングが常態化したと述べているわけです。
やっぱりこの間の規制緩和路線こそがこのトラック事業者の賃金水準の引下げ、運賃ダンピングの原因になってきたと思うんですけど、大臣、そういう認識はありますか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
一九九〇年、平成二年のこの物流二法の改正、規制緩和によりまして、事業者数が増加したことなどにより競争が激しくなり、事業運営が厳しくなった事業者もある、これは事実でございます。一方、新規参入が容易になるとともに、営業の自由度も高まり、輸送サービスの水準の向上や多様化が図られた、これも事実でございます。
今、時代が大きく、この物流をめぐる状況が変わっております。そういう状況に迅速に対応していくその自由度、そのための法改正だったという意味もございます。
その中で、しかし、今回、その荷主に対する交渉力が弱いことや多重下請構造等により、必ずしも実運送を行うトラック事業者が適正運賃を収受できず、トラックドライバーが十分な賃金を得られていないという課題があるという認識の下に今回の法案を出させていただきました。
吉良よし子
あくまでも、この規制緩和そのものが賃金水準の低下につながったという認識ではないと、メリット、デメリット、それぞれがあったよねという御答弁だったと思うんです。
これ、衆議院以来ずっと繰り返される答弁なんですけど、ただ、メリットとして大臣が語られた、新規参入が容易になったとか営業の自由度が高まったみたいな、そういう話というのは単純なメリットなのかと。むしろ、そうやって新規参入が増えていったと、それこそが運賃ダンピングの要因だし、その賃金水準の引下げにもつながっているんじゃないかということを申し上げているわけで、やっぱりそうした因果関係についての調査ちゃんとやって、その上で必要な対策措置につなげていくということが私やっぱり必要だと思うわけです。
ちなみに、昨年十二月に公表された標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会の提言では、最後のところに、この標準的な運賃と実際の契約額との関係や改定された運賃を原資とするトラックドライバーの賃上げの状況など、実態の把握に努めると述べているわけで、やっぱりこのトラックドライバーの賃金が上がらない実態、その要因についても含めて調査、検証しっかりとやっていくべきだと思いますが、いかがですか。
政府参考人(鶴田浩久君)
トラックドライバーの処遇改善を図るためということで、標準的運賃の活用拡大、それからトラックGメンによる是正指導の徹底、さらにこの法案による措置の導入、これらによって賃上げの原資となる適正運賃を収受できる環境を整備するということにしてございます。
これらの施策の効果につきましては、既存の調査等も活用して検証を行いながら、実運送事業者の適正運賃収受とトラックドライバーの賃上げに向けてしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
吉良よし子
検証していただけるということだったので、もう是非しっかり検証していただいて、確実な賃上げにつなげていただきたいと思うんです。
この運賃の引上げ、適正化、賃上げのためには、先ほど来ありますとおり、多重下請構造の是正、これも欠かせないわけです。これもやっぱり規制緩和のもたらした問題だと思うんですね。物流二法が施行された一九九〇年には約四万だった物流の事業者数というのが六・三万事業者に、一・五倍に増えたわけですよ。しかも、その事業者の五五%がトラック十台以下の小規模事業者というわけで、やっぱりこの規制緩和で深刻化した多重下請構造というのが、帰ってこれない働き方を助長したり、運賃の中抜きなどの問題引き起こしているのは間違いないわけで、やっぱりこの是正、待ったなしだと思うんですね。
参考人質疑でも、この多重下請の是正に、皆さんがその必要性触れられているわけです。馬渡参考人は、この下請次数を二次までに制限することや、下請手数料を運賃に上乗せして収受できるよう荷主さんと交渉を進める、契約を書面化することのルール化ということも提唱をされているわけですが、今回の法案でも多重下請構造を是正するための措置というものは一定盛り込まれているわけですが、こうしたもう既に始まっている業界での前向きの取組をもっと後押ししていく、それこそ、先ほどあったような下請二次までに制限することなどを含めて、この多重下請構造を是正、解消していくための取組、更に進めていくべきと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
まさにその考え方、つまり、過度な下請構造に今ある、これを是正していかなくてはいけないという認識の下に今回のこの法案を出させていただきました。
この法案におきましては、その是正する方法として、我が国における現在の物流の実態を踏まえ、現実に即した形で多重下請構造を是正していくという考え方でございます。
一定の下請の禁止措置を盛り込むのではなく、元請事業者に対して実運送体制管理簿の作成義務や下請行為の適正化の努力義務を課すことなどによりまして、漸進的に多重下請構造の是正を図ることと、こういう考え方でございます。
吉良よし子
あくまでも現実に即した形でということなんですけれども、今回、おっしゃったように、元請トラック事業者に義務付けられる実運送体制管理簿、これ、こうやって見える化していく、透明化していくというのは当然必要なことだと私も思うんですけれども、やっぱりこれだけでいいのかと。何次請けなのかということを書くとかぐらいなわけですから、それだとこの実態というのがやっぱり見える化としてはまだ足りないんじゃないかという問題意識があるわけです。
そういう意味では、手数料、実際に取られた手数料も明記するとか、また、取次ぎだけの水屋の存在も分かるように記載をしていくとか、更に詳細にその実態を可視化する、これ私やっぱり必要だと思うんですけれども、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
実運送体制管理簿に下請手数料などを記載する場合、その金額を把握した荷主が発注額を引き下げたり、実運送事業者に安値で直接発注したりすることなどによりまして、全体の運賃水準の低下につながる懸念もあり、慎重な検討が必要であると考えております。
また、水屋の話ですが、マッチングサイトの運営事業者など、いわゆる取次事業者については、取り次がれた契約の発注者側がこの法案により下請行為の適正化に係る努力義務等が課される対象となるほか、トラックGメンによる是正指導の対象となります。
いずれにいたしましても、この法案に基づく運送体制の可視化や契約内容の明確化を前提として、荷主と元請事業者との運賃交渉やトラックGメンによる是正指導等を通じて不合理な中抜きの排除に取り組んでまいりたいと思います。
吉良よし子
いろいろおっしゃって、やるとはおっしゃらないんですけれども、実際に、例えば逆に値下げにつながる懸念もあるみたいなお話もありましたけど、でも、だからこその標準的運賃の設定なんじゃないのかと。いや、もっと、私からすればそれを最低運賃にしたらいいんじゃないかと思うわけですけれども、そういうことも合わせ技でやりながら多重下請構造を是正していくという、その姿勢が必要なんじゃないのかと、大事なんじゃないのかということは強く申し上げたいと思うわけですし、様々負担も増えるんじゃないかというような話もあったかと思うんですけど、やっぱり多重下請解消のためと言えば業者もドライバーも多分協力すると思うんですよね。やっぱりそういうことで、政府主導で多重下請はもう解消するんだと、そういう強い姿勢を示していただきたいということを強く訴えておきたいと思います。
そして、先ほど、そうした様々な問題を解消するためにトラックGメンを活用するんだということがありました。
おっしゃるように、このトラック事業者、労働者の労働環境を守るために役割期待されているのがトラックGメンだと思うんですけれども、これ、トラック事業者に対して不適切な取引を強いる荷主や元請の情報を収集して、悪質な荷主や元請に改善を促して、是正措置の要請や勧告までするということをしているわけで、一月二十六日には二社についての勧告、社名公表がされていると。更に取組進めるために、プッシュ型での働きかけなどもするんだというお話も聞いているわけですけど、これだけの役割が期待されているトラックGメンが全国百六十二名体制、午前中もありましたけど、それで足りるんですかというところはやはり疑問なわけなんですね。
現在の物流事業者は、先ほども申し上げましたが、六・三万事業者なんですよ。この全ての事業者の実態を調査し、把握し、是正を図る、必要に応じてというのには、百六十二名というのではまだまだ足りないんじゃないかと思うわけで、やっぱり期待される役割をトラックGメンがちゃんと果たせるようにするために、国交省の職員で体制強化すべきと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
トラックGメンにつきましては、想定される電話調査や訪問調査、荷主へのパトロール、悪質な荷主等の是正指導などの件数や頻度に基づきまして、必要な人数として見込んだ百六十二名を昨年七月に設置したところでございます。
このトラックGメンは、全国の運輸局及び運輸支局にも設置して、昨年末の集中監視月間などに成果を上げており、今後とも積極的に活動することとしております。
また、この法案におきまして、運送契約の書面化を盛り込むとともに、国が指定した適正化機関が悪質な荷主等の情報を国土交通大臣に認知する、通知する規定を新設することにより、トラックGメンの情報収集能力を強化することとしております。
トラックGメンとそれに協力していただくいろいろな機関との連携で、この百六十二名が核となってしっかりと成果を上げていきたいと思います。
吉良よし子
いろいろ機能強化される、それは大事なんですけど、やっぱりそれをちゃんと役割果たせるようにするためにも、百六十二名核になってと言いますが、それ、核そのものを増やしていく必要性があるんだということを強調しておきたいと思うんです。
あと、時間少ないんですが、一点だけ、休憩所に関しても伺っておきたいんです。
四月一日に改定された厚労省の改善告示の、改善基準告示のQアンドAでは、このトラックドライバーの休憩場所として、コンビニエンスストアやガスステーションも含まれるみたいなことが書かれていると。しかし、これ、厚労省はそうした業者や関係者に周知していないという話があるんですね。
とすると、私有地であるコンビニの駐車場などに休憩目的で長時間駐停車されたら、業務妨害だみたいなことでトラブルになったり警察に通報が行ったりとか、そういうトラブルにならないのかという不安の声が上がっているわけで、大臣、やっぱりこういう不安を払拭していく、トラブル起きないようにということでは、厚労省任せにせず国交省としてちゃんと対応すべきと思いますが、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
厚生労働省で定める改善基準告示におきまして、連続運転時間を四時間以内とすることの例外として、サービスエリア又はパーキングエリア等に駐停車できないことにより、やむを得ず四時間を超える場合、四時間三十分まで延長が可能とされております。
この場合のサービスエリア又はパーキングエリア等が何を指すかについては、厚生労働省が示したQアンドAにおいて、高速道路、一般道を問わず、コンビニエンスストア、ガスステーション、道の駅も含まれると示されていると承知しております。
この点、厚労省とも連携しまして、無用なトラブルを防止するためにも、関係業界に対して必要な普及啓発活動、また周知を徹底していきたいと思っておりますし、また、ドライバーが安心して休憩できるトラックステーションですね、シャワーとか睡眠も取れる、そういうものの整備もしっかりやっていきたいと思います。
吉良よし子
是非周知をお願いしたいのと、本当にトラックドライバーが安心して休める場所の確保、是非よろしくお願いしたいと思います。
以上で終わります。
〈修正提案〉
吉良よし子
私は、日本共産党を代表し、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
修正案の趣旨及び概要について御説明申し上げます。
五年間猶予されていた自動車運転者への時間外労働の上限規制が本年四月から始まり、物流の二〇二四年問題への対応として、政府は流通業務総合効率化法及び貨物自動車運送事業法の一部改正案を提出しました。
トラック運送事業は、一九九〇年の物流二法の施行による需給調整規制の廃止、二〇〇三年の貨物自動車運送事業法の改定による営業区域規制の廃止等、大幅な規制緩和により新規参入が相次ぎ、事業者数は一・五倍に増え、過当競争による運賃の低下、長時間労働という劣悪な状態に置かれてきました。トラック運送事業の危機を招いた原因は、政府の規制緩和路線にあることは明白です。
政府案は、荷主、物流事業者への荷待ち・荷役時間削減のための取組、元請事業者への実運送体制管理簿作成の義務付けや運送契約締結時の書面による交付等の義務付けなどを盛り込んでおり、一歩前進と言えます。
しかし、トラック運転者は、全産業平均に比べ、長時間労働、低賃金で、過労死が最も多い職種であり、その改善のための取組としては不十分です。過労死を一日も早くなくすとともに、トラック運転者が人間らしく安心して働き、残業なしでも生活できる賃金が保障される職業となるよう、政治が責任を果たすべきです。
このようなことから、本修正案を提出するものであります。
次に、修正案の内容について御説明申し上げます。
第一に、国土交通大臣は、事業用自動車の運転者の労働条件を改善するとともに、一般貨物自動車運送事業の健全な運営を確保し、及びその担う貨物流通の機能の維持向上を図るため、荷主及び一般貨物自動車運送事業者が締結する運送契約における運送の役務の内容及びその対価等に関する実態の調査を行い、その結果を公表するとともに、必要な施策を策定し、及び実施するものとします。
第二に、荷主は、自己の取引上の地位を不当に利用して、一般貨物自動車運送事業の能率的な経営の下における適正な原価及び適正な利潤を基準として定められる運賃の金額を不当に下回る金額を運賃の額とする運送契約を締結してはならないこととします。また、一般貨物自動車運送事業者と運送契約を締結した荷主がこれに違反した場合において、特に必要があると認めるときは、国土交通大臣は、その荷主に対して必要な勧告をすることができることとし、その勧告に従わないときは、その旨を公表することができること等とします。
第三に、一般貨物自動車運送事業者には営業区域の制限がなくその事業用自動車の運転者に過重な負担が掛かるおそれがあること、競争の激化に伴い輸送の安全性の確保等の重要性が高まっていること等を踏まえ、政府は、この法律の公布後三年をめどとして、一般貨物自動車運送事業の許可について営業区域の制限を再度導入すること、一般貨物自動車運送事業の許可について更新制度を設けること等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとします。
以上が本修正案の趣旨であります。
委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。