スクールカウンセラー拡充を 不登校の子と親の支え
要約
日本共産党の吉良よし子議員は18日の参院文教科学委員会で、スクールカウンセラーの配置拡充、東京都での雇い止めについて質問しました。
吉良氏は、小中学校の不登校が増加しているなか、スクールカウンセラーが不登校の子どもや、その親を支える役割を果たし、頼りにされ、役立っていると指摘。盛山正仁文部科学相は「大変重要な役割を担っている。大変ありがたく、高く評価すべきものだ」と答えました。
幅広い職務や役割を期待されているスクールカウンセラーですが、国の配置事業では1学校あたり週4時間が基本です。吉良氏は、87%のカウンセラーが時間外の無償の残業をしているとの調査結果を示し、配置基準に基づく勤務時間では足らず、ただ働きは深刻だと指摘。配置時間の延長など改善を急ぐよう求めました。
吉良氏は、東京都でのスクールカウンセラーの雇い止めも、補助事業として財政的な負担をしながらスクールカウンセラーの配置を促してきた文科省として見過ごしてはならない問題だと追及。盛山文科相は「残念な状況だなとは思う」と述べつつ「自治体の権限と責任のもと適切に判断されるべきものだ」として、調査することさえ拒否しました。
吉良氏は、配置時間の延長、無法な雇い止めや報酬の引き下げをやめさせることなど専門性のある職務に見合った処遇を求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、スクールカウンセラーについて伺いたいと思います。
先ほど来お話がありますが、現在、小中学校の不登校、これが増加して約三十万人に上っているという、深刻な事態だと思っております。こうした状況の中、重要な役割を果たしているのがスクールカウンセラーだと思うわけです。
先ほどは良い評価と役に立たなかった評価が混在しているというようなお話もあったわけですが、一方で、私自身は不登校になった子供を抱える保護者の皆さんとお話をしたところ、かなりスクールカウンセラーに相談してよかったという声が聞かれたわけです。例えば、もう今はエネルギーチャージの期間なんだとカウンセラーの方に言ってもらえて親も子も救われたんだと、安心して過ごせたんだという声とか、若しくは、子供と一緒に毎週スクールカウンセラーに相談に乗ってもらうことで、また学校や先生にも助言してもらったことで学校に行けるようになりましたという声などなど、スクールカウンセラーが不登校の児童生徒、そしてその親を支える役割を果たしている、本当に頼りにされているし役立っているということが分かったわけですけれども。
文科省の方も、一九九五年から委託事業として、二〇〇一年度からは補助事業としてスクールカウンセラーの配置を進めてきていて、今年度の予算でも全ての公立小中学校二万七千五百校に設置するとともに、そのうち一万校には重点配置も行うんだと聞いているわけです。
ここで、ちょっと通告の順番を変えて、まず先に大臣に伺いたいと思うんですけれども、このスクールカウンセラーが果たしている役割、どのように評価しているのか。先ほど申し上げたとおり、不登校を始めとした様々な困難、課題を抱える児童生徒等の支援に欠かせない重要な、また専門的な役割を果たしていると思いますが、いかがですか。
国務大臣(文部科学大臣 盛山正仁君)
不登校の児童生徒が増加するなど、学校や教師が直面する課題が多様化、複雑化しております。そういう中にありまして、教師とは異なる専門性をお持ちのスクールカウンセラー等が果たす役割は大変重要であると考えております。
そういったことを踏まえまして、文部科学省では、スクールカウンセラーの配置について、全ての公立の小中学校に対して行う基礎配置に加えて、いじめ、不登校対策や虐待対策、貧困対策等の課題に応じた重点配置を一万校に対して行うこととしております。
引き続き、学校における教育相談体制の構築に必要な支援をしていきたいと考えます。
吉良よし子
教師と異なる専門性がある大事な役割を果たしているという御評価でした。
文科省としてもそういう意味では位置付けをしているんだということですから、改めて文科省に確認したいと思うんですけど、このスクールカウンセラーの法令上の位置付け、そして職務内容というのはどういったものですか。
政府参考人(文部科学省初等中等教育局長 矢野和彦君)
お答え申し上げます。
スクールカウンセラーについては、学校教育法の施行規則、これ省令でございますが、スクールカウンセラーは学校における児童生徒の心理に関する支援に従事する職として位置付けられております。
職務内容でございますが、心理に関する高度な専門的知見を有する者として、不登校、いじめや暴力行為等の問題行動、子供の貧困、児童虐待等の早期発見や、学習面、行動面で何らかの困難を示す児童生徒及びその保護者へのカウンセリング、教職員への助言、援助を行うこと等を想定しているところでございます。
吉良よし子
御紹介いただいたわけですけれども、職務内容をもう一回確認しますけど、私いただいた資料でいくと、児童生徒へのカウンセリングや教職員に対する助言、保護者に対する助言等のほかに、ストレスチェックや授業観察等の予防的対応、事件、事故等の緊急対応における児童生徒等の心のケア、これも含まれるということでよろしいですか。
参考人(矢野和彦君)
御指摘のとおりでございます。
吉良よし子
そういう意味では、省令に位置付けられている、法律上には明確に位置付けられてはいないけれども、児童生徒へのカウンセリングのみならず、幅広い職務、役割を期待されているということになるわけで、それを基に各学校に配置をされているということなんですが、もう一点確認したいと思うんです。
全公立小中学校にスクールカウンセラー配置しているということですが、一校当たり週何時間配置できているのでしょうか。
参考人(矢野和彦君)
これ、予算の積算上でございますが、全ての公立小中学校に対して行う、これ、基礎配置として一週間当たり週四時間、加えて、いじめ、不登校対策等の課題に応じた重点配置として八時間の配置が可能となるように補助しております。
吉良よし子
つまり、週四時間が基本なんですね。重点配置でも八時間。
各地で、このスクールカウンセラー、順番待ちになっていると聞くわけですよ。例えばですけど、相談者一人三十分で対応すると換算してみても、週四時間でいえばやっと八人、週八時間できたとしても十六人に対応できるかどうかという状況で、先ほどの主な職務内容でいえばストレスチェックとか授業観察等の予防的対応というのも挙げられているわけですが、恐らく週四時間ではとてもそこまで行かないんじゃないかと思うわけです。
心理職ユニオンの皆さんが二〇二一年九月から十月に行った東京都のスクールカウンセラーの労働実態調査というのがありますが、これによれば、何と八七%のカウンセラーが時間外の無償の残業をしていると。うち九割が残業の調整ができない、つまり、現場としては残業を無償でやらざるを得ない状況で、職場におけるストレスの要因として最も多く選ばれたのがこの時間外の無償労働だと。
これ、ゆゆしき事態だと私思うんですけれども、大臣、やっぱりこのスクールカウンセラーがその役割を果たす時間が足りない、しかもただ働きまで発生しているような事態というのは深刻だと思いますし、更なる配置時間の延長など、改善を急ぎするべきではありませんか。
国務大臣(盛山正仁君)
先ほど局長が御答弁したとおり、スクールカウンセラー等の配置に当たっては、各教育委員会において、地域の実情を踏まえて、学校の状況等に応じた配置がされるべきものであると認識しておりますが、今の吉良先生の御指摘もございましたし、不登校児童生徒が増加している、こういったような状況もございます。そういった状況を踏まえまして、我々、対応を今後とも検討していきたいと考えております。
吉良よし子
対応を検討していただけるということで、是非、重点配置といっても一万校なんですよね。全公立小中学校二万七千五百校、約三万校あるわけですから、うち三分の一程度でようやく八時間なわけですから、これではまだまだ足りないですし、もっと言うならば、残業代などもちゃんと支払えるようにしていくべきなんだということは申し上げたいと思うんです。
一方で、この配置時間の延長、充実、改善ということを求めているわけですが、現場で起きているのがスクールカウンセラーの雇い止めなわけです。
東京都では、この三月、公立学校で働いていた実績あるスクールカウンセラーが二百五十名も一気に雇い止めをされてしまいました。東京都の場合、このスクールカウンセラーは会計年度任用職員として働いていて、都が会計年度任用職員の再任用上限、これを四回と定めたため、それ以降の場合は公募となり、それに応じたベテランのスクールカウンセラーが大量に雇い止めされたという問題なわけです。
これは、一義的には毎年の契約更新が必要になる会計年度任用職員という制度の在り方の問題であるとは思いますし、特にこの再任用を四回までという上限を定めた東京都の対応、その責任も重いと私は言わざるを得ないと思うんですけれども、と同時に、やはりこの補助事業として財政的な負担をしながらスクールカウンセラーの配置を促してきた文科省としても見過ごしてはならない問題ではないかと思うわけです。
文科省のスクールカウンセラー等活用事業に関するQアンドA、このQ3というところを見ますと、もとより、採用に当たっては、公認心理師や臨床心理士も含め、資格を有していることのみをもって判断するのではなく、面接等を通じ、候補者の学校現場での活動実績等についても十分に踏まえた上で、選考していただきたいと考えておりますと書かれているわけですけれども、大臣、一般論で結構です、このスクールカウンセラーとして採用する場合、その実績や経験を無視若しくは軽視しての雇い止めというのは望ましくないと考えますが、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
一般論としてということでございますけど、このQアンドAで書いてあります公認心理師等の資格を有していることのみをもってというのは、まあ何でもそうでしょうけど、その資格があればそれだけでいいかということではないということで、経験もあれば知見もあれば、その人のいろんな対応ぶりもあるでしょう、その応募者の方の内容、そういったものをよく御判断していただいて、そして採否を決めていただくべきであると、そういう観点で、この資格だけで判断することではないですよというふうに述べているものであると認識しております。
吉良よし子
資格だけじゃない、経験等もちゃんと、個別にちゃんとよく判断してほしいということだったと思うんですけれども、実際に東京都で雇い止めを受けた方からは、勤務校の学校長に雇い止めになったと伝えたら、勤務評定をAとしていたと、なのになぜと言われてしまったとか、学校現場での活動実績を十分に踏まえたと、このQアンドAにあるような状況とは言えないという結果があるわけです。これ、文科省のQアンドAの立場と異なると思いませんか。
国務大臣(盛山正仁君)
各自治体における職員の任用等ということでございますので、先ほど吉良先生の方から一般論としてということでお問合せがあり、一般論としてお答えをしたということでございますので、その今回の東京都のケースについてこれ以上のコメントをするということは、私どもの立場ではないということで御理解を賜りたいと思います。
吉良よし子
東京都に丸投げするという状況で、私、それは無責任じゃないかと思うんです。
先日、決算委員会でもこの問題取り上げたんですけれども、この面接、採用の面接においては、落とすことを前提とした圧迫面接があったという訴えがあるんです。一定経験数がある人たちを落とすこと前提にしていたんじゃないのかと。実際、雇い止めに遭った方からも、強烈な圧迫面接を受けてうつになりましたというメールも届きました。心理職ユニオンが今年三月に行ったこの東京都スクールカウンセラー採用状況調査によると、勤続年数がより長いほど、また年齢がより高いほどその雇い止め率が高くなっているという結果もあるわけですよ。
これ、活動実績を十分踏まえた選考だったのかどうか、いや、逆に、その年数が長いとか年齢が高いとかを理由に、その実績を考慮されずの雇い止めだったんじゃないのかどうか、これ実態をやっぱり調査すべきだと思うんです。文科省として、これ実態ちゃんと調査すべきではありませんか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(盛山正仁君)
ちょっと先ほどからの答弁の繰り返しになりますけど、そのスクールカウンセラーの役割は大変重要であるということ、そして、そのためにも、その職務の遂行上必要となる専門性その他いろんな状況を考慮して、十分な能力を持った人、ふさわしい人を任用することが大事であると思います。
他方、その本件の場合につきましては、各自治体の責任と権限のもの、適切に判断されるべきものでございますので、我々文部科学省の方で実態を調査するということは考えておりません。
吉良よし子
いや、現場からは適切じゃなかったという声が上がっているんですよね。
先ほどの心理職ユニオンのアンケートでは、今回の採用結果について納得できないと回答した方が七八・五%に上るんです。正当な判断だったと思うと答えた方はたった六・八%。どう考えても正当とは言えない。たった十五分の面接でこれまでの勤務実績、評価を一切考慮されない審査になったんだと、長年にわたって働いてきたのに理不尽だと、そういう声が上がっているわけです。
ちなみに、先ほどメールをくれた方というのは、私が担当していた子は、スクールカウンセラーが来なくなると聞いた日から荒れて学校に行けなくなったと聞いていると、この無念さは言葉にならないと、そういうこともメールに書いてくださっていました。
まさに、子供や保護者など相談者との信頼関係をベースに支援するというのがスクールカウンセラーの仕事の内容だと思うんですよ。それを踏まえれば、そういう実績、経験のあるスクールカウンセラーを大量に、しかも突然雇い止めするということは、子供たち、現場の子供たちを追い詰めている、そういう問題だと自覚するべきではないですか。これ、重大な問題だと、そういう認識ありませんか。大臣、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
そういうような状況があるというのは我々承知をしておりますし、そして、さっきも言いましたように、あるいは今、吉良先生が御紹介されましたように、スクールカウンセラーの方は大変重要な役割を担っていられて、そしてまた、生徒や、あるいは場合によっては保護者の方々とも深くつながりを持っておられるということを大変有り難く、高く評価すべきものであると、そういうふうには考えておりますが、繰り返しになりますけど、本件につきましてはそれぞれの当該自治体での判断ということでございますので、残念な状況だなとは思いますけれども、ちょっとそれ以上の具体的中身を承知しておりませんので、それ以上我々の方でコメントをすることはできません。
吉良よし子
いや、残念な状況だとおっしゃるわけだったら、やっぱり、でも具体の状況を承知していないというんだったら、やっぱり調査すべきじゃないですか、一体何が起きているのか、もう一度、大臣、調査すべきじゃないか、文科省として調査するとお答えいただきたい。
国務大臣(盛山正仁君)
繰り返しになりますけど、各自治体、各教育委員会で御判断されるという問題でございますので、私どもの方でこれ以上のことはできません。
吉良よし子
これでは問題は是正されないし、本当に現場の子供たちが本当に不幸な状況に陥っているということを申し上げたいと思うんです。
ちなみに、報道によりますと、この東京都で雇い止めに遭ったスクールカウンセラーの皆さん、今、市区町村の応募に殺到している。一方で、その市区町村の応募、自治体によっては雇用ではなく有償ボランティアとして募集しているというところがあると、そういう報道もありました。この有償ボランティアってどういうことかというと、つまり、報酬は払うけれども種々の手当とか交通費の支給はないとか、就労証明書すら交付されないとか、そういう状況で働かされるという事態なわけですけれども、これ文科省のスクールカウンセラーの配置を進める補助事業の場合は、その補助対象経費として期末手当や交通費、これも挙げられていると思うわけです。これ、有償ボランティアとして手当や交通費を支給しないでカウンセラーを配置するというのは想定外の事態なんじゃないですか。局長、いかがですか。
参考人(矢野和彦君)
お答え申し上げます。
文部科学省が実施するスクールカウンセラー等活用事業におきましては、実施要領上、スクールカウンセラーに対して報酬、交通費等を支払うということが要項上可能となっております。
その上で、文部科学省としては、一般的に、安定的な任用の下、適切な人材の確保により児童生徒等、児童生徒への相談対応が行われることが望ましいと考えておりますが、各自治体が個別にスクールカウンセラーを任用するに当たっては、各自治体の権限と責任の下で判断されるべきものと考えております。
吉良よし子
これも各自治体の御判断だということなんですけれども、先ほど残業が無償で行われているよというお話もしたわけですけど、こういう有償ボランティアでの募集なんというのは、もう本当にこのままではスクールカウンセラーの値崩れ、これが進められてしまうんじゃないのかと、こういう懸念の声が上がっているわけです。やっぱり、今のこのスクールカウンセラーの果たしている専門的な役割、そしてニーズの高まりも踏まえれば、その職務に見合った適正な評価を行う、報酬を支払う、そういうことは必要だと思うわけです。そういう意味でも、やはりスクールカウンセラーなど、この学校に関わる職というのを、学校教育法を始め、省令ではなく、法的な位置付け明確にして、値崩れさせない、雇い止めもさせない、配置を安定して行えるようにすべきと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
スクールカウンセラーにつきましては、児童の心理に関する支援に従事する職員として学校教育法施行規則に明記されております。そして、各学校において重要な役割を果たしているものと認識しております。
学校教育を充実していくためには、様々な専門家や教員の業務を支援するスタッフ等との連携、協働を進めることが重要であります。そして、具体的な職員の任用の在り方については、各地域の実情を踏まえ、各教育委員会の権限と責任において判断されるべきものと認識しているところでございます。
今、吉良先生が御指摘されたように、その法律上位置付けをするのか、省令で位置付けをするかということは、それが重要ということ、どう認識するかということはあるんですが、その位置付けが法律か省令かはともかくとして、位置付けがなされておりますので、そのようなスクールカウンセラーを含めました職員の任用、そして効果的な学校運営のための職員の配置、こういったものはそれぞれの各教育委員会の権限と責任の下にありますので、しっかりと適切に進めていただきたいと考えております。
吉良よし子
大臣、いろいろおっしゃいましたけど、これ私が勝手に言っているわけじゃなくて、二〇一五年十二月の中教審で、国は、将来的にはこのスクールカウンセラーを学校教育法等において正規の職員として規定するとともに、教職員定数として算定し、国庫の負担の対象とすることを検討すると、そういうことが言われているわけですね。こういうことを踏まえれば、やはり配置時間を延長すること、無法な雇い止めや報酬の引下げをやめさせること、少なくとも専門性にある職務に見合った配置ができるように国として進めていくべきだということを申し上げまして、質問を終わります。