住宅確保は国の責任 「公営賃貸の供給を」
要約
日本共産党の吉良よし子議員は4日の参院国土交通委員会で、公的賃貸住宅の供給などに関し、国の責任をただしました。
公営住宅は、生活困窮者への住宅確保策の基盤ですが、全国で戸数が減らされています。吉良氏は、人口が集中する東京都で都営住宅の戸数が減少しており、石原都政以来、新規建設が25年間ゼロという方針の転換が必要だと指摘。「国は公営住宅の減少を見過ごしてよいのか」と迫りました。
斉藤鉄夫国交相は「公的賃貸住宅と民間住宅の供給を適切に組み合わせる」と述べるのみでした。
吉良氏は「UR賃貸住宅も、年金のみで生活する入居者が47%に上る中、物価高で家賃値上げが起こっている」と指摘。全国公団住宅自治会協議会から「70歳を過ぎ、病気を抱えて働いている。家賃がいつまで払えるか心配」など、将来不安の声が多数届いたと紹介し、UR賃貸住宅の家賃値上げや団地削減をやめさせ、国の責任で守り抜くよう要求しました。
また、違法な家賃の取り立てが社会問題となっている家賃保証業者について「入居者が保証業者を選択可能にすることや、登録を義務付けるなど、制度の改善が必要だ」と主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今回の法案は、入居者死去の場合の残置物処理など、居住支援の現場で喫緊の課題とされている課題への対応策含むため、反対はいたしません。しかし、住宅困窮者対策としてはまだ極めて不十分な点があり、また課題もあります。
そこで、今日は住宅困窮者対策全般について質問していきたいと思うんです。
本法案の説明資料にもありますが、単身高齢者世帯というのは二〇三〇年には約八百万世帯にまで増えるということが想定され、住宅を必要とする要配慮者の入居ニーズというのは高まっていると、これは間違いないことだと思います。このニーズに応えるためには、本法案の居住サポート住宅、若しくはこれまでやってきた登録住宅などの民間ストックとともに、公営住宅やUR賃貸住宅などの公的賃貸住宅も含め、低所得者などの要配慮者が円滑に入居できる住宅そのものを増やすことが必要だと考えるわけです。
大臣、住宅セーフティーネット促進するためには、公的、民間共に要配慮者が入居しやすい住宅増やしていくと、そういうことでよろしいでしょうか。
国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君)
公営住宅は、住宅セーフティーネットの根幹として、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定を図るために供給するものでございます。国としても、地方公共団体が行う公営住宅の整備に対して社会資本整備総合交付金等により支援しているところでございます。
一方で、民間の賃貸住宅市場には一定の空き家、空き室があり、また、平成二十九年の法改正で導入された住宅確保要配慮者の賃貸住宅への円滑な入居を支援する居住支援法人の指定数は八百を超え、このような取組が全国に広がりつつあるところでございます。
こうしたことから、この法改正では、民間の賃貸住宅を活用して要配慮者が適切なサポートを受けることのできる住宅の制度を創設し、大家さんが貸しやすく要配慮者が入居しやすい、そういう市場環境の整備を図ることとしているところでございます。
公営住宅を始めとした公的賃貸住宅と民間賃貸住宅のそれぞれの役割を踏まえて、適切に組み合わせながら、要配慮者が入居しやすい賃貸住宅の提供を進めてまいります。
吉良よし子
公的、民間併せて住宅増やしていきたいという話だったと思っています。
先ほど大臣もあったとおり、やっぱり住宅セーフティーネットの基盤というのは、私はまずは公営住宅の充実だと考えているわけです。
お配りした資料を見ていただきたいんですが、しかし、その公営住宅というのはこの間ずっと減り続けていると、公営住宅の管理戸数ですね、これが減り続けているのが実態なわけです。とりわけ東京都の場合なんかは、都営住宅のストック、二十三区中心に減らしているわけです。
日本の首都である東京、人口も集中していて、その都営住宅には年間十万人もの入居応募があるにもかかわらず、この戸数が減り続けているため、毎年新たに入居できる方は一万人に満たないと、十倍以上の倍率という大激戦となっている状況があるわけです。
これ、都営住宅というのは単に減っているだけじゃなくて、東京都で石原都政以降二十五年にわたって新規建設ゼロという状況で、この方針転換というのはずっと住民の皆さんから求められ続けているわけですが、この公営住宅の増減については基本的には自治体の判断であると、そういうことは承知しているんですが、ただ、これだけニーズがある中で、このまま減らし続けていっていいのかと。
やっぱり国として、自治体が公営住宅を減らしていくのを黙って見過ごす、これは許されないのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定を確保する住宅セーフティーネットの根幹を成すものであり、その供給は極めて重要でございます。そういう認識です。
地方公共団体においては、人口減少など地域の今後の人口動向や厳しい行財政事情を踏まえつつ、公営住宅のストックの状況等を勘案し、改修や建て替えを含めて適切に公営住宅の整備、管理を行っているものと考えております。
また、この法案は、民間の賃貸住宅市場において賃貸用の空き家が四百万戸を超えている状況を踏まえ、こうした民間賃貸住宅を活用した新たな住まいの供給の仕組みを創設するとともに、大家さんと住宅確保要配慮者の双方が安心して利用できる市場環境の整備により、居住の安定確保と民間の住宅ストックの有効活用のこの両立を図るものとなっております。
公営住宅を始めとした公的賃貸住宅と民間賃貸住宅のそれぞれの役割を踏まえて、適切に組み合わせながら、要配慮者が入居しやすい賃貸住宅の提供を進めてまいります。
吉良よし子
公営住宅がこの住宅セーフティーネットの基盤だと、根幹だと、それはおっしゃるんですけど、やはり増やすとはおっしゃらないと。増やすべきともおっしゃらないし、減らすべきではないともおっしゃらないというのは、やはり私は冷たいと言わざるを得ないと思うんです。
これ、公営住宅だけじゃなくて、もう一つ公的な住宅ということでいうとUR賃貸住宅、これもあると思うんです。これも住宅セーフティーネットの貴重な担い手だと思うんですが、ところが、UR都市機構というのは、二〇〇七年、二〇一三年の二つの閣議決定を理由にして、この間、この管理コスト、こちらも減らし続けているわけです。
二〇一二年の三月末に七十五・五万戸あったUR賃貸住宅が昨年三月には七十・二万戸となって、十年余りで五万戸以上も減らされていると。これ、本当に重大な問題だと思うんです。さらに、このUR賃貸住宅、この家賃というのが市場家賃だということで、物価高騰の中で更に上がっているという現状もあって。
ちょうど昨日、全国公団住宅自治会協議会の皆さんが昨年九月に行った第十三回団地の生活と住まいアンケートというのを届けてくれました。家賃がいつまで払えるか心配です、七十歳過ぎていつまで働けるか、病気を抱えながら働いていますとか、七十五歳の世帯主が介護四、一級障害者になってしまいました、でも家賃は下がりません、大変ですとか、団地削減による移転を心配していますと、人に優しい団地運営をなどの声があるわけです。
このアンケートによると、公団では年金受給世帯が七割に上り、四七・一%は年金だけで生活しているという、まさに低所得の高齢者、この法案の要配慮者に当たる方々がこのURに住んで、高い家賃などで住み続けられなくなるかもしれない不安を抱えていらっしゃるというわけで、やはりこれ何とかしなきゃいけないと。もう家賃値上げとか管理コストの削減やめさせるべきだと思いますし、何よりもUR賃貸住宅を住宅セーフティーネットの担い手だとはっきり位置付けて、国の責任で守り抜くべきだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
UR賃貸住宅は、保証人が不要であり、高齢者や子育て世帯、低所得者など民間賃貸住宅への入居を拒まれやすい立場の方の受皿として住宅セーフティーネットの役割も担っているところです。そのため、住宅セーフティーネット法に基づく基本方針においても、UR賃貸住宅は、住宅確保要配慮者の居住の安定を図る上で重要な役割を担うストックとして住宅セーフティーネットを充実させることが重要、このようにされております。
また、UR賃貸住宅においては、健康寿命サポート住宅などの制度を活用した家賃減額に加えて、居住支援法人等に対し低廉な家賃で空き住戸を貸与し、住まいに困窮する方に入居をしていただいた上で、就業などの自立支援を行うスキームを実施するなどの先導的な取組を行っております。
国土交通省としましては、引き続き、UR賃貸住宅も住宅セーフティーネット機能の一翼を果たしていけるよう、URへも取組を促してまいりたいと思います。
吉良よし子
是非取組を促していただきたいし、やはり民間にこぼれやすい人の受皿だという御認識だったわけですから、つまり、公団に、URに住めなくなればその行き先がなくなってしまう方々が住んでいるということなわけで、やはり住み続けられるUR、公団にするという責任が国にあるんだということを強く申し上げたいと思います。
今回、その民間の活用だと先ほど来おっしゃっているわけです。それで、今回は居住サポート住宅というのを新たにつくるというわけですけれども、そもそも政府は前回、住宅セーフティーネット法改正により、要配慮者の入居を断らない住宅、都道府県が登録する登録住宅制度を開始したと把握していますが、ここで確認をしたいんです。
昨年十月末時点でこの登録住宅、八十八万戸となったと聞いていますが、じゃ、その八十八万戸のうち実際に要配慮者が何人入居できているのか、お答えください。
政府参考人(国土交通省住宅局長 石坂聡君)
セーフティーネット登録住宅の登録は八十万戸以上、八十八万戸ということでございますけれども、住宅確保要配慮者の居住の安定に一定の役割を果たしてきたところでございます。
このセーフティーネット登録住宅でございますけれども、要配慮者であることを理由に入居を拒まない賃貸住宅であることから、大家さんとしては、入居時に実はあえて要配慮者であるということの確認は行ってございません。したがって、その、何でしょう、入居者の方もあえて自分が要配慮者であることの属性を言わない、あるいは知られたくないケースもあるということでございますので、大家さん自体も必ずしもつぶさにその要配慮者であることのですね、この方は要配慮者だ、そうじゃないということをやっているところではございません。
そうしたちょっと事情もございまして、国土交通省としてもその報告を求めることは困難というふうに考えているということで御理解いただければと思っております。
吉良よし子
要するに、分からないということなんですね。で、やはり、八十八万戸登録されている、けれども実際に要配慮者が何人入居できたのか分からないということでは、やはりこの法律の効果、実効性というのは正確に検証できていないんじゃないかと。
やはり大臣、今度この新たに居住サポート住宅は十万戸、十年間でとは言っているわけですけど、先ほどもそれで足りるのかどうかという議論もあったかと思うんですけれども、やはりちゃんとこの法律の効果、課題についてそうした、実際に何人入居したのかも含めて検証して今後に生かすべきと思いますが、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
平成二十九年の住宅セーフティーネット法の改正以降、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅が登録は八十万戸以上に至っておりまして、要配慮者の居住の安定確保に一定の役割を果たしてきたと思っております。
一方、国土交通省、厚生労働省、法務省が合同で開催した住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会においては、幾つか課題が挙げられております。その中で、特に居室内の孤独死や死亡時の残置物処理などの入居後に生じる課題への懸念から、単身高齢者などの入居に不安を持っている大家さんが依然として多くいることが指摘されたところでございます。
このために、今回この法案を準備し、指摘された課題に対応をいたします。大家さんが賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる賃貸住宅市場の環境整備、居住支援法人などが入居中サポートを行う賃貸住宅の供給の推進、住宅と福祉が連携した地域の居住支援体制の強化、このようなことで要配慮者が円滑に住まいを確保できる措置を講じることとしております。
これらの施策をしっかり進めるということをまず行っていきたいと思います。
吉良よし子
施策進めるのも大事ですけど、しっかり検証もしていただきたいということは重ねて申し上げたいと思います。
もう一点、家賃債務保証業者の問題についても伺いたいと思います。
先ほど来、様々あるんですけれども、やはりこの家賃債務保証業者については、昨年三月の当委員会で我が党の田村智子議員が質問したとおり、悪徳業者による被害の訴えが大変多いと。じゃ、今度認定制度を設けるということですが、これで本当にそうした悪質業者は、まあ排除というか、なくしていけるのかということが問題だと思うんですけれども。
そこで、確認したいんです。この今回の認定というのは、基本的には登録業者が申請できるものとしているわけですが、じゃ、その登録事業者、この間の、うち、法令違反などにより登録を取り消された業者というのは幾つあるのか、端的にお答えください。
政府参考人(石坂聡君)
お尋ねのありましたこの取消しの実績でございますけれども、取消しの実績、一件の実績がございます
吉良よし子
一件なんですね。一件だけなんですよ。
私たち、全国借地借家人組合連合会の方には、もう多数の悪質な保証会社からの被害報告というのあるというアンケート結果聞いているんですね。一件では少な過ぎるんですよ。で、しかも、そもそも登録されていない保証業者もたくさんあって、で、家主や不動産会社が特定の保証会社と連携しているとかで、賃借人の方の希望で保証会社を選べないという、そういう問題もあるわけですね。
やはり、大臣認定制度といいますが、やはりその前に、入居者の側が保証業者を選択できるようにすることとか、登録を義務付ける制度づくりとか、悪質な家賃債務保証業者なくしていくため、その改善というのは本当に必要だと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
まず、借り手側が指定できるような制度にすべきではないかという点でございますが、家賃債務保証契約は、大家さん、入居者、保証業者の三者で行う必要がございます。また、保証内容は保証業者ごとに異なることから、入居者が特定の保証業者の利用を希望する場合には、その保証業者の提供する家賃債務保証の内容に大家さんが同意する必要があります。
こうしたことから、今回の法案で創設する認定保証業者制度につきましては、不動産関係者などに対して、認定基準となる保証内容や保証リスク低減策をしっかりと周知するとともに、入居者から認定作業業者の利用を提案された場合は、その利用を検討するよう呼びかけてまいりたいと思います。
このように、今後、関係団体とも連携いたしまして、認定保証業者が広く活用される、要配慮者の方でも家賃債務保証を利用しやすい、そういう市場環境を整備していきたいと思っております。
吉良よし子
やはり家賃保証というのは営利業者、民間事業者任せにしておいてはやっぱりいけないんじゃないかと、国が主体となって福祉行政として家賃保証制度構築する方向に是非向かっていただきたいということも申し上げて、質問を終わります。