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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2024年・第213通常国会

子どもの権利条約 批准30年 権利侵害の実態示し政府の姿勢ただす

要約

 今年は日本政府が子どもの権利条約を批准して30年。日本共産党の吉良よし子議員は1日の参院決算委員会で、今の日本社会では、子どもたちが「権利を持つ主体」として尊重されていない実態を示し、政府の姿勢をただしました。

【性犯罪から子ども守れ】
 吉良氏は、「性犯罪は子どもに対する最悪の人権侵害だ」と強調。岸田文雄首相は「人権を著しく侵害する。断じて許されない」と答弁。吉良氏は、子どもは被害の行為の意味を理解できずに声を上げることもできず、数十年を経て告発する際には、すでに時効となり訴訟に至らない場合が多いのが現状だと指摘しました。
 その上で、故ジャニー喜多川氏から性暴力を受けた当事者らが3月18日に、子ども時に受けた性犯罪の時効撤廃を求めるキャンペーンを開始したことに言及。「子どもへの性犯罪は、急ぎ時効をなくすべきだ」と迫りました。
 岸田首相は「昨年の刑法改正で性犯罪の公訴時効期間が延長されている」「まずは執行状況を見守る」と述べるにとどまりました。
 吉良氏は「子どもへの性犯罪は重大犯罪だと周知する上でも、子ども時の性犯罪の時効は一刻も早く撤廃すべきだ」との当事者の声を紹介し、時効をなくすよう求めました。

【学校での意見表明権を】
 吉良氏は、こども基本法に子どもの権利が書き込まれ、こども大綱には「こども・若者を権利の主体として認識する」と明記した一方で、政府が国連子どもの権利委員会の勧告に対する報告で、学校において校則などについて「意見を表明する権利の対象事項ではない」としていることについて質問。盛山正仁文部科学相は「変わりない」と答弁。さらに、吉良氏は、こども家庭庁がこども基本法の説明資料で提案者の「わがまままで全部聞いてそれを受け止めろということではない」とする答弁を掲載していることについて、「子どもの意見はわがままなのか」と批判しました。
 吉良氏は、文部省通知(1994年5月20日)が子どもの意見表明権を「必ず反映されることまでをも求めているものではない」としていると指摘。「『どうせ言っても意味がない』と意見を言うことをあきらめさせることになる」と批判し、通知を撤回し、学校での「子どもの意見表明権」を認めるよう迫りました。盛山文科相は「通知は意見表明を阻害するものではないので撤回の必要はない」と強弁しました。
 吉良氏は、「『子どもの意見表明権』は、おとなにすべての子どもの意見を聞く義務があるということだが通知はその義務を免責する中身だ。子どもの権利条約に反する。撤回すべきだ」と強調しました。


【子どもの意見尊重 なぜ明記せぬ 「共同親権」で提起】
 吉良氏は、離婚後も父母双方が子どもの親権者となる「共同親権」を導入する民法改定案についても「子どもの意見表明権」など、子どもの意見・意思を尊重するよう求めました。

*詳細は下記より関連記事をご覧ください。

しんぶん赤旗2024年4月2日付けより抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 まず初めに、裏金問題について私も伺いたいと思います。
 自民党は、裏金問題で森喜朗元総理側から水面下で話を聞き取っていて、関与なしと認定した模様だとの報道がされていると、午前中からもその議論あったわけですけど、先ほど来この報道についてはっきり答弁がないので、改めて伺いたいと思います。
 総理、この報道というのは事実ですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 あの報道については承知しております。そして、これまで答弁させていただいているように、党として、これまでのところ、森元総理が今回の案件に直接具体的に関与しているという発言は党として把握をしておりません。
 その上で、今追加の聞き取り調査を行っておりますが、この対象ですとか内容については、この調査の実効性を高める観点から従来から明らかにしておりません。政治責任を明らかにする上で必要な聴取を行うということで、引き続き調査を行っているところであります。

吉良よし子

 森元首相から関与しているという発言がないとおっしゃるだけで、じゃ、実際、何を聞いて、どういう回答があったのかと、そういうところ全く説明がないと、説明責任果たせていないと思うわけです。
 自民党としては今週にも処分をすると報じられているわけですが、もう先ほど来あるとおり、こうした聴取内容が分からないまま処分又は処分なしと言われても国民は納得できません。少なくとも、処分の前にこの聞き取り調査の内容、結果、もう全て明らかにするべきだと思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 それについても先ほど来申し上げております。
 検察の捜査から始まって今日まで、党の調査、国会での政倫審を始めとする弁明など、様々な実態解明に向けての努力が行われてきました。事実の解明、これはもちろん引き続き大事なことでありますが、一方で、関係者は政治家であります。政治家として期待される役割を十分果たしたかどうかなど、政治責任についても党として判断をしなければならないということで、追加の聞き取り調査を現在行っているところであります。そして、その中で新たな事実がもし把握できたならば、政治責任を明らかにする中で、党としても説明を行ってまいりたいと考えています。

吉良よし子

 新たに把握できたことがあればなどと言わずに、もう全てを明らかにしていただきたいんですよ。いや、国民の目に見えない中でのこうした幕引きというのは絶対に許されません。
 森元首相を含む証人喚問、国民に開かれた国会の場で真相を明らかにすべきです。このことを強く申し上げまして、次に、今日は子供の権利について伺いたいと思います。
 今年は、子どもの権利条約批准三十年目の節目の年です。一方で、日本社会には子供の権利が守られているとは思えない問題、まだまだたくさんあると思うんです。その一つが子供に対する性犯罪、性暴力です。
 昨年事実が認められたジャニーズ性加害問題は、デビューなどを夢見る子供たちが半世紀以上にわたってターゲットにされたという性犯罪です。また、痴漢、日本共産党の都議団が実施した痴漢アンケートでは、この痴漢を受けたことがある人の七割が初めて痴漢に遭ったのは十八歳以下の子供のときだったと回答していると。痴漢というのは子供に対する性犯罪という、であるということが明らかになりました。
 また、実の父親からの性暴力、保育士の性犯罪などの告発なども相次いでいるわけですが、総理、この子供への性犯罪、性暴力というのは子供に対する最悪の人権侵害だと思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 私自身も委員の今の御指摘について同感であります。子供への性犯罪、性暴力、これは子供の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、これ断じて許されるものではないと認識をいたします。

吉良よし子

 子供への性犯罪は人権を著しく侵害するものだと、いや、本当、そのとおりだと思うんです。
 特に子供というのは、その性被害に遭ったとしても、その行為の意味がすぐには分からないとか、又は声を上げるということすら思い付かないなど、すぐに告発できないという場合は少なくないわけです。それこそ、被害に遭ってから数十年もたってからようやく被害を告発するという方もいるわけです。しかし、この大人になってからでは時効により訴訟に至らない場合が多いのが現状なんです。だから、時効ノー、こういう声が今上がっています。
 先月、三月十八日、ジャニーズ性加害の被害を告発した飯田恭平さんや大島幸広さん、長渡康二さん、中村一也さん、二本樹顕理さんなど当事者の皆さんと、また、学校での性被害告発して訴えていた石田郁子さんなどが国会に来て、子供の性被害、時効にノーと訴え、そのキャンペーンを開始しました。
 こうした当事者の声に応えて、少なくともこの子供への性犯罪については急ぎ時効をなくすべきと思いますが、総理、いかがですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 性犯罪については、御指摘のように、被害申告の困難性、こういったものを踏まえて、令和五年六月に刑法等の改正を行っています。昨年六月、刑法改正して、公訴時効期間が五年延長され、その際、被害者が十八歳未満である場合については、若年者の特性を踏まえて、性犯罪の公訴時効期間、これ更に延長されています。これ昨年改正したわけでありますから、これ、まずはこの規定が適切に運用されることが重要であると認識をしています。そして、その上で、改正法においては、施行後五年を経過をした場合に速やかに施行、施策の在り方について検討する、このように記されています。
 所管の法務省において、関係省庁と連携し、適切に対応することを考えていかなければならないと認識をしております。

吉良よし子

 刑法改正されたと言いますけれども、決して時効がなくなったわけじゃないんですね。
 その改正時の附帯決議では、子供でなくとも、先ほど総理もおっしゃったとおり、性犯罪を告発するのに心身の負担が大きくて時間が掛かるから、時効撤廃求める声が多いから、この時効についてを要検討だと、そういうことが書かれているわけです。ましてや、子供であればなおさらなわけで、もう一刻も早くこの子供の性犯罪の時効をなくすという決断をすべきなんです。院内集会でも、子供への性犯罪が重大な犯罪と周知する上でもこの時効をなくすべきという声もありました。この声に是非応えていただきたいということ、強く求めたいと思います。
 続いて、この子供の権利侵害というのは性犯罪だけではありません。子供に対する虐待、深刻な社会問題として存在しています。
 昨年、不登校は約三十万人に上りました。いじめ件数も増加し続けています。子供の貧困も深刻で、日本の子供たちの自己肯定感は国際比較で顕著に低く、十代の自殺率というのは過去最高水準となり、下がらない状態です。
 これらは、今の日本の社会の中で子供たちが権利を持つ主体として尊重されていない、むしろ社会の中でその子供たちの意見とか存在が軽視されていることの象徴なのではないかと私は思うわけです。
 ようやく、この間、令和四年度に成立したこども基本法に子供の権利というのが盛り込まれました。そして、基本法に基づき昨年作られたこども大綱には、子供、若者を権利の主体として認識するということが強調され、乳幼児期から生まれながらに権利の主体であること、子供、若者を多様な人格を持った個として尊重し、その権利を保障し、その最善の利益を図ると明記されました。
 ということは、つまり政府は、学校を始めとした子供たちが生活するあらゆる場所、場面で子供たちを権利の主体として扱うようにすると、そういうことでよろしいですか、総理。いかがですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 こども基本法、それからこども大綱について御指摘がありましたが、まず、こども基本法においては、基本理念として、全ての子供について、個人として尊重され、その基本的人権が保障されることや、福祉に係る権利が等しく保障されること、また、年齢及び発達段階に応じて自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会が確保されていること、これが規定されています。
 また、同法に基づき昨年末に閣議決定したこども大綱においては、子供、若者の視点に立って社会が保護すべきところは保護しつつ、子供、若者を権利の主体として、その意見表明と自己決定を年齢や発達段階に応じて尊重し、子供、若者の最善の利益を第一に考えることを政府の子供施策の基本的な方針としています。
 こうしたこども基本法、そしてこども大綱に基づいて、子供、若者が権利の主体であることを社会全体で共有してまいりたいと考えます。

吉良よし子

 社会全体で子供が権利の主体であることを共有していきたいという御答弁でした。しかし、本当にこの子供たち、権利の主体として扱われているのかということが疑念なんです。
 パネル御覧ください。(資料提示)
 これは、日本政府が国連の子どもの権利委員会からの勧告に対して報告した回答なんですけれども、ここでは学校における校則等に対する意見表明権についての政府の考え方が書いてあります。学校においては、校則の制定、カリキュラムの編成等は児童個人に関する事項とは言えず、意見を表明する権利の対象となる事項ではない。
 文科大臣、つまり学校では子供たち、校則などについて意見を表明する権利がない、それが文科省の立場だということですか。

国務大臣(文部科学大臣)盛山 正仁君 

 子供の意見表明につきましては、こども基本法において、全ての子供について、年齢や発達の程度に応じて自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会が確保されていること、国及び地方公共団体は子供施策の策定等に当たって子供等の意見を反映させるために必要な措置を講じることなどと規定されているところです。
 文部科学省としては、令和四年十二月に改定した生徒指導提要において、生徒指導とは児童生徒が自発的、主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことであるとするとともに、例えば校則の見直しを検討する際にはその過程に児童生徒が参画することは教育的な意義を有するとしており、各学校においてこれらを踏まえた取組が行われていると認識しております。

吉良よし子

 いや、正面から答えていただいていないんですね。
 いや、校則について、確かに私、この間取り上げてきて、そういう中で、校則の見直しに関して生徒の意見を聞くのは望ましいとか、学校で校則について意見をするのはいいことだと、歴代文科大臣からの答弁を確認しているわけです。そうした中で、校則を見直し進める学校や教育委員会も増えているわけです。しかし、それは学校での意見表明権を認めているということではなかったと、そういうことなんですか、大臣。はっきり答えてください。

国務大臣(盛山正仁君)

 学校での意見表明権を認めていないというようなことを私申し上げたつもりではありません。
 その……(発言する者あり)特に校則の見直し等において、まあこれはとおっしゃったのはこのことでございましょうけれども、これにつきましては、平成二十九年の当時でございますか、当時の日本政府の報告ということでございますから、ですから、児童の権利条約におきましては児童個人に直接関する事項について児童生徒が意見を表明する権利が認められておりますけれども、校則の制定やカリキュラムの編成などの学校の管理運営、これについては学校の管理運営であるということでその対象ではない。しかしながら、さっき申しましたように、そういうようなものの制定その他に対しましては、校則の見直しその他ということでございますが、その過程に児童生徒が参画することは教育的意義を有するというふうに我々考えているということです。

吉良よし子

 つまり、意見表明権を認めていないということですよね。いや、これ、この見解はこのままだということでよろしいんですか。イエスかノーかではっきりとお答えください。

国務大臣(盛山正仁君)

 現時点では、この当時の、平成二十九年当時の見解、これを変えるということではございません。

吉良よし子

 いや、変わっていないということなんですよ。校則についての、変えようということの教育的意義は認めるけど、それは権利じゃないんだ、これおかしいじゃないですか。
 こども家庭庁、加藤大臣にも伺いたいと思うんです。この子供の意見表明権については、こども基本法についての論戦の中でも、パネル御覧ください、こうした答弁があるんです。子供の意見表明、非常に大事だという前提でと言いながら、しかし、その子供の、ある意味何でもかんでも子供の意見、わがままで全部聞いてそれを受け止めろということではなくて、そう御理解いただければと思いますと。これがこども基本法の政府の説明資料にもわざわざ抜粋されて載せられていると。
 子供の意見はわがままなのですか。だから聞かなくてもいいというのがこども家庭庁の立場なんですか。いかがでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画、孤独・孤立対策))加藤 鮎子君 

 お答えを申し上げます。
 子供の意見が全てわがままと、そういうことを申し上げていることではないと理解をしております。
 こども基本法は、第三条において子供施策の基本理念を定めてございます。そのうち、第三号において、児童の権利に関する条約第十二条の児童の意見の尊重の趣旨を、これを踏まえまして、年齢及び発達の程度に応じて子供の意見を表明する機会と多様な社会的活動に参画する機会が確保されることを規定してございます。また、第四号におきまして、子供自身に直接関係する事項以外の事項であっても、子供の意見がその年齢及び発達の程度に応じて尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることを規定してございます。
 これらの規定は、国や地方公共団体が子供施策を進めるに当たり、当該施策の目的等を踏まえ、子供の年齢や発達の段階、実現可能性などもしっかりと考慮しつつ、子供の最善の利益を実現するという観点から、子供の意見を受け止め、尊重し、施策への反映について判断することを定めたものであると認識をしております。

吉良よし子

 いや、ここにわがままという答弁があって、それをこども家庭庁の資料にわざわざ載せている、このこと自体が私はおかしいと言わざるを得ないんです。
 この間、私、この子供の意見表明権についてこども家庭庁にも文科省にも話聞いてきましたが、最善の利益、最善の利益と先ほど来言いますけれども、最終的にこの意見を反映するとは限らない、そういうこともこども家庭庁もおっしゃっているんです。
 実はこれ、三十年前、日本政府が子供権利条約に批准したときからの立場で、その当時、文部省の通知には、この子供の意見表明権について、必ず反映されるということまでをも求めているものではないとはっきり書いてあるんです。これ、この通知は撤回されていないわけですが、こんなふうに必ず反映されるということではないんだといえば、もうどうせ言っても意味がない、子供たち、意見言うことを諦めさせることになるんじゃありませんか。こんな通知は今すぐ撤回するべきではありませんか。総理、いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 御指摘のこの事務次官通知につきましては、児童の権利条約の公布を踏まえ、児童生徒が意見を表明する権利を有することを始めとした条約の概要を周知した上で、教育に関する留意事項として、児童生徒の意見については年齢や成熟の度合いに応じて考慮されるものであることを周知したものであります。
 具体的には、児童の権利条約において意見を表明する権利があることを前提とした上で、児童生徒の人権を十分に配慮し、一人一人を大切にした教育が行われなければならないこと、学校において児童生徒に権利等を正しく理解させることが重要であること等について周知を行っております。
 文部科学省としては、この事務次官通知は学校での児童生徒の意見を表明する権利を阻害する趣旨のものではないと考えておりまして、撤回の必要はないと認識しております。

吉良よし子

 学校での子供の意見表明を阻害するものではない。いや、阻害するものになっていると思うんです。
 子供の意見表明権というのは、子供が意見を言うのが大人が認めてあげますよ、そういうものなんかじゃないんです。むしろ、大人に対して、全ての子供の意見を聞く義務があるんだと、それを示しているのが子供の意見表明権なんです。その子の成長発達段階によってうまく言語化できないような意見もある。だからこそ、その状況を考慮してその意見、意思をしっかり酌み取る責任が大人の側に、政府の側にあるんだと、それは国連の子どもの権利委員会でも何度も強調されていることなんです。
 なのに、この文科省の通知は、その大人の義務を免責するような中身になっている。子供の意見は聞かなくていい、そういう場合があるんだと、中身になっている。こういう子どもの権利条約の中身に反する通知はすぐに撤回するしかないんだということを言いたいと思うんです。
 事実、こういった対応を取っている中で、学校の中で、子供たちの意見が尊重されない、権利侵害されているという例があります。昨年、東京品川にある私立品川翔英高校の生徒が、東京弁護士会に人権救済申立てを行いました。
 お配りした資料を御覧ください。
 しんぶん赤旗や朝日新聞などでも報道されているものですが、入学前には校則がないとアピールしていた高校が、ドレスコードという事前の説明になかった指定の上着の購入、着用の強制、髪染めを禁止するルールなどを設定して、髪染めをしている生徒に髪染めし直さないと文化祭に出さない、推薦を出さない又は退学を迫るなど、脅しを伴うような厳しい指導を行って、実際に自主退学に追い込まれる生徒も出てきていると、そういうことを告発して生徒の権利保障を求める申立てです。
 総理、一般論として伺います。
 事前に何ら説明もなかった校則、ルールに基づいて退学など脅しを掛けながら指導する。これ、人権侵害だと思いませんか。

委員長(佐藤信秋君)

 まず、文部科学大臣。

国務大臣(盛山正仁君)

 今御指摘の学校の事例については、今おっしゃられた報道を通じて承知しているわけでございますけど、事実関係の詳細を把握しておりませんので一般論として申し上げます。
 学校において、脅しを掛けながら指導するというようなことはあってはならないことでございます。令和四年に改訂した生徒指導提要においても、威圧的、感情的な言動で指導をすることは不適切な指導と捉えられ得る例として示しているところでございます。
 そういうことでありますので、体罰はもちろんのことでございますが、学校教育法が定める懲戒権の範囲を逸脱した不適切な指導は許されないものであり、文部科学省としては、引き続きその趣旨の周知徹底を図り、体罰や不適切な指導の根絶に取り組んでまいりたいと考えています。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 一般論としてということでありますが、一般論として、学校においては、児童生徒の教育上必要があると認められるときに行われる教師等からの指導は、校則の有無にかかわらず、進路等をめぐって脅かしを掛けながら指導することはあってはならない。趣旨としては、今文科大臣からお答えしたとおりであると考えます。

 吉良よし子

 もう脅しを掛けるような生徒指導はあってはならないんですよね。私、声を上げた高校生、保護者の方々からお話聞く機会がありました。驚いたのは、学校側、先生や校長の先生たちと話し合おうとした生徒に対して、学校側が、私学には裁量権があり、子どもの権利条約、基本法、憲法などは関係ないという発言があったとか、校長から、生徒や保護者の声を聞くのは公立がやることという発言があったとか、驚きの発言なんですよね。
 これ、確認しておきます。文科大臣、私立学校であっても当然、憲法、こども基本法、子どもの権利条約は尊重すべきだし、人権侵害は許されないし、校則の見直しに関して生徒や保護者の声を聞くの望ましいというこども大綱や生徒指導提要の考え方、変わりませんよね。

国務大臣(盛山正仁君)

 こども大綱や生徒指導提要におきましては、校則の見直しを行う場合には、その過程に児童生徒や保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいとしております。文部科学省としては、これは国公私立の別を問わず当てはまるということでございます。
 先ほど来先生がおっしゃっておられますように、憲法その他の法令にのっとって行動するというのはもう当然言わずもがなでございますので、引き続き、先ほど来御指摘いただいているようなことにつきましては、その児童生徒の参画することの教育的意義その他を含めまして、周知や情報の発信に努めていきたいと考えます。

吉良よし子

 私立学校であっても、校則の見直し、その過程で声を聞くのは望ましいし、人権侵害は駄目だということなんですね。とすれば、先ほどの品川翔英の事例というのは問題ですし、やっぱり、そういう声を聞かれない事例が今なお学校の現場に存在するということでいえば、学校における子供の意見表明権、ちゃんと真正面から認めるべきだということを強く申し上げたいと思います。
 子供の意見表明権に関わってもう一点、審議中の、審議が始まろうとしている民法改正案、離婚後の共同親権についても伺います。
 この法案には、子供の意見表明の機会を設けること、子供の意見の尊重若しくは考慮という文言が条文にはありません。これ、なぜかと法務省に聞いたところ、いや、法案に子の人格を尊重するとあると、だからその中に意見表明権が含まれるんだとか、若しくは家事事件手続法の六十五条に、子供の意見を配慮し、把握し考慮すると規定しているから、この民法にはその条文は必要ないんだと、そういう御説明を受けました。
 いや、しかし、この家事事件手続法六十五条についてまず伺いたいと思うんですが、子供の意見の把握、考慮ともう現時点であるわけですけど、じゃ、本当に子供の意見、考慮されているのかと。
 令和四年、面会交流に関わって家事審判や家事調停を行った既済件数、また、同じ令和四年に面会交流に関わって子供の意見を聞くなど未成年の子を対象とする調査を行ったその件数を、最高裁、お答えください。

最高裁判所長官代理者(最高裁判所事務総局家庭局長 馬渡直史君)

 お答えいたします。
 まず、お尋ねの既済件数についてですが、令和四年に家事調停事件と家事審判事件とを通じて終局した面会交流の事件数は一万二千七百三十七件でございます。
 また、お尋ねの子に対する調査につきましては、家事事件手続法第六十五条に基づく子の意思の把握は事案に応じた適切な方法により行われ、その方法の一つとして家庭裁判所調査官による調査がございますが、面会交流事件につきまして、令和四年に未成年の子を対象として家庭裁判所調査官に対する調査命令が出された件数は、各裁判所からの情報提供による実情調査の結果に基づく概数として、家事調停事件と家事審判事件とで合計五千六十六件でございます。

吉良よし子

 一万二千件を超える事案があって、単純に比較はできないと言いますが、一方で、子の調査をしたのはその半数以下の五千件にとどまると。離婚前のDV等が認められず面会交流を強いられているという当事者の方からは、面会交流後に子供のおねしょが一週間続いたとか、面会交流後に指の爪がなくなるくらいかむ、子供の自傷行為が止まらなくなっているなどの声があり、面会交流が子供のストレスになっていることが明らかな例もあるわけです。
 日本乳幼児精神保健学会も、こうした面会交流前後の情緒、行動、身体症状を軽視してはならないと訴えるとともに、幼い子供も含めて、子供には意思があり、言語のみならず、そうした子供の行動の異変も含めた全身の言葉を捉えて傾聴し、その意思を酌み取るべきと。離婚後の子供の養育の在り方について、子供の視点に立った慎重な議論をと声明出している。
 こうした子供たちの切実な意見表明、意思表明を尊重できない法案では、子供の最善の利益守れないと思いませんか。総理、いかがですか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)

 お尋ねの子の意見表明権の明文化については、離婚の場面で子に親を選択するよう迫ることになりかねず、かえって子の利益に反する、こういった意見もあるということを承知をしています。
 いずれにせよ、子の意見、意向を適切に考慮すること、これが重要であり、改正法案が成立した暁には、改正法の趣旨が正しく理解されるよう、関係府省庁等をしっかりと連携させ、適切かつ十分な周知、広報のほか、子の利益の確保に向けて、子の意見、意向を適切に把握するために何ができるか検討してまいりたいと考えます。

吉良よし子

 子供の意見の、意思の確認、尊重が必要なのは離婚の場面だけではないんですね。進学とか医療とか様々な場面で、共同親権だというところで様々、親と、父親と母親に両方の手を引っ張られるって、そういう事態になりかねないわけだから、だから本人の意見を尊重しなきゃいけないでしょうと言われているわけです。
 子供には子供の暮らしがあるし、子供の意見を聞いてくれない法律は要らないです。一人親支援団体などが集めた共同親権に関する当事者の子供たちからの声なんです。この声に向き合うならば、子供の意見、意思を聞かないまま親権の在り方を議論するなんというのはあり得ません。
 拙速な審議、採決などは絶対に許されない。子供の権利を本当に尊重できる慎重な議論を強く求めて、質問を終わります。