小笠原 住まい確保を 住み続けられる島に
要約
奄美・小笠原特措法改正案が29日の参院本会議で可決、成立しました。日本共産党は賛成しました。共産党の吉良よし子議員は同日の参院国土交通委員会で、小笠原諸島での出産や介護、住宅の問題について質問しました。
吉良氏は、小笠原では職人不足や資材の高騰で土地があっても家を建てられないと指摘。若者や子育て世帯が安心して住み続けられるよう、都営住宅の増設を含め、住まいの確保を進めるよう求めました。国土交通省は、現在行っている建て替え工事で都営住宅が14戸増えるほか、戸建て用分譲地の整備も進めていると答弁しました。
吉良氏は島内で出産ができず、健康面でも経済面でも妊婦に大きな負担がかかっている現状や、老人ホームがない母島の高齢者から「島で最期を迎えたいがかなわない」という声が出ていることを紹介。本土との格差をなくすという特措法の目的に沿って、環境整備や支援拡充に取り組むよう強く訴えました。
父島や母島には、戦争の歴史を伝える施設がなく、戦争で亡くなった方の遺品や手記などを個人が自宅で保管しています。吉良氏は、戦争を語れる世代の高齢化が進むなかで貴重な資料が失われないよう、施設の整備を国の責任で進めるよう求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本法案は、奄美群島及び小笠原諸島の戦後の事情を踏まえた振興策を継続するためのものであり、我が党も賛成いたします。
本日は、この小笠原諸島について質問したいと思います。
今回の改正では、この目的規定に移住の促進を追加し、その配慮規定を新設するということなんですが、では、小笠原諸島の状況がどうかというと、先ほどもありましたけれども、小笠原の人口、毎年三百人前後が出たり入ったりをしている、流動的で、つまり定住ができていない状況だと聞いています。じゃ、この定住につながらないのはなぜなのかと、その大きな課題が住宅の問題、移住したくても住むところがないという状況があるというのは私も現地の皆さんから伺いました。
本法案では、それを解消するということで、土地利用計画の見直しで住宅用地の確保、推進していくということなんですが、確かにこの宅地の確保は欠かせないんですが、一方、現地の方々の声を聞くと、土地があっても家を建てる職人や資材が入ってこないんだと、資材が高騰していて非常にコストが掛かるという声がありました。家を建てようとしてからもう三年そのまま、建てられないという方もいるということも聞きましたが、そうでなくとも、小笠原では、一九六八年に日本に返還された際に一気に建てたライフライン、学校、保育園等の公共施設の老朽化対策で大規模な建て替えが必要で、そのために職人さんたちも来ているわけですが、その皆さんの住まいの確保も大変で、だから一般の民家の建設までになかなか手が回らないと、そういう話も聞いているわけです。
大臣、こういう人手不足、物価高騰、宅地だけではなく住宅建設そのものがままならないという課題があるということを認識をされていますか。いかがでしょうか。
国土交通大臣(斉藤鉄夫君)
認識をしております。
小笠原村は、日本復帰から五十五年が経過し、各種公共施設の老朽化が進んでおり、建て替えなどの建設工事の需要が高まっております。そのため、担い手確保に当たり、官民で様々な取組が進められていると認識しております。
具体的には、島内の建設事業者において、社員寮の整備など人員確保に向けた取組を進め、体制強化を図っていると、このように聞いております。また、村においても公共施設等総合管理計画を策定し、中長期的な見通しの下で公共施設の更新を進めることで、工事の集中により人手や資機材等の不足が生じないよう平準化に努めていると承知しております。
今後も、島内の住宅建設が滞ることのないよう、国土交通省においても東京都と連携し、必要な支援をしてまいる所存です。
吉良よし子
課題認識されて、対策等も考えていらっしゃるということで、是非それ進めていただきたいんですが、現在、この住まいということでいうと、都営住宅の建て替えを進めているとの話も聞いているわけです。この建て替えで戸数というのは増えるのか、お答えください。
国土交通省国土政策局長(黒田昌義君)
お答え申し上げます。
御指摘の都営住宅につきましては、現在、父島の清瀬アパート、また母島の沖村アパートの老朽化に伴う建て替え工事、これが進められておるところでございます。
新たなこの都営住宅の整備につきまして、父島のこの清瀬アパートにつきましては、現状の三十戸から四十四戸に十四戸増加をするということでございます。
また、母島の沖村アパート、これにつきましては、現状が六十戸なのですが、港からの景観であるとか周辺環境への配慮との関係から、現状と同じ六十戸の整備というようなことが計画をされております。
吉良よし子
母島の方は増えないということですが、父島に関しては十四戸分増えると。これ、本当大事だと思うんです。と同時に、現地の皆さんから訴えがあったのは、特に若い世代、子育て層が住むためのそれに適した部屋の確保が難しいという声ですね。民間アパートの場合はワンルームで月八万から十万円なんですが、それは、収入が少ない若い世代にとってはやっぱり重い負担になると。だから、若い人であっても都営住宅に申し込んで数年にわたって空くのを待っている状況もあるということも聞いているわけです。
小笠原では将来的には人口三千人という目標があるということなんですけれども、若者、子育て世代が小笠原に入ってきたとしても、そういう、子育てしながら生活できる、それに適した住宅がないというのはやはり致命的な問題だと思いますし、都営住宅も含めて低廉な価格で子育てもできるような広さのある住まいの確保、これ是非進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
小笠原村における定住を促進するためには、単身で移住してきた方がその後、家庭を持って子育て世帯となってからも住み続けられるような生活環境を整備することが必要です。
そのため、現在、小笠原村において新たに一戸建て用分譲地の整備が進められていると承知しております。また、都営住宅についても、先ほど局長から答弁がありましたが、父島、母島、それぞれで建て替えが進められており、これに伴い供給される戸数が増加するほか、一戸当たりの面積も広くなる、このように聞いております。
国土交通省としましては、引き続き、東京都や小笠原村と連携して居住環境の充実を図ることで、小笠原村への移住、定住の促進を図ってまいりたいと思います。
吉良よし子
是非、若い世代、ファミリー層が住まいを確保できるように推進していただきたいですし、先ほどお話あった母島の方でも都営住宅の拡充なども是非検討していただきたいということも申し上げたいと思います。
続いて、出産の問題です。
先ほど来も議論ありますけれども、小笠原では二〇〇二年以降、島で出産できないという状況になっていて、定期船の方の乗船制限というものがあるために、妊娠八か月までには島を出る必要があるという状況だと。八か月というとまあ本当に出産直前ということで、その大きなおなかで長距離の移動を強いるのかということがあると思いますし、そうでなくとも、妊娠中というのは切迫流産、切迫早産を始めとした様々な不測の事態もあり得るわけです。そうした危機的な状況になってから本土への移動を始めるというのでは、やはり更に危機を増すというような場合もあり得るわけで、やっぱり母子の命や健康を守るという点でも、先ほど大臣がおっしゃったように、若い世代の移住促進のためにも、本来は島内で、島の中で安心して出産できる環境を整える必要あると思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
島内での出産につきましては、万が一の事態が発生した際に本土への救急搬送が必要となり母親と胎児の救命が困難となる懸念があることや、医療設備、人材確保などの課題があるとお聞きしております。
小笠原村では、産婦人科医師の不足により、先ほど答弁がありましたけれども、平成二十年に島内出産については諦めざるを得ないと判断し、村民の方々の御理解を得た上で、その後は出産支援金の支給や長期の宿泊滞在が可能な病院の紹介など、本土での出産に係る身体、精神、経済的負担を軽減するための支援策の充実を図ってきたものと承知しております。
国土交通省としましては、東京都と連携しながら、産婦人科専門診療を続けている小笠原村診療所の運営費の補助などを通じて、小笠原村の医療体制を引き続き支援してまいりたいと思います。
吉良よし子
残念ながら島での出産諦めざるを得ない状況だという御説明があったわけですが、しかし、やはり島の中で産みたいという要望があるのは間違いないですし、これから若い世代ということなんですよね。
また、その小笠原村が島外で出産する場合の支援金の支給などもやっているということなんですが、その支援金の額というのは四十三万円だと聞いている。しかし、それでは足りないという声があるんですね。
妊娠八か月で例えば島を出たとしても、出産後、一か月健診を終えてから島に戻るということが多数だと。だから、最短で三か月ほど本土で過ごすことになるわけですが、八か月だとやはりぎりぎりだから早めに早めに出ましょうねということを島でも推奨されていると聞いているわけですが、そうした場合に、本土に実家などがあればいいんですけれども、ない場合はマンスリーマンションなどを借りる必要があるわけです、三か月、それ以上の滞在で。
都内のマンスリーマンションの相場というのは十万から十五万円、それで四十三万円の支援ということでいうと、やはりぎりぎり、若しくはもう長期にわたれば足りない、全然足りないという、そういう声も出ているわけで、やはりこの島外での出産支援金、村独自の支援に今なっていますが、国で補助してかさ上げするとかそういうことを進めていくべきではないでしょうか、大臣。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
小笠原村では、島外での出産支援金として、先ほど吉良委員御紹介のありました四十三万円の支給のほか、長期の宿泊滞在が可能な病院の紹介や、島内の診療所における産婦人科専門診療などを行っていると聞いております。また、小笠原村を含めた離島地域に居住する妊婦が健康診断の受診や出産のため島外へ通院、入院する際に自治体が交通費などを支援する場合には特別交付税措置が講じられているところでございます。
国土交通省としても、島内で産婦人科専門診療を実施している診療所の運営費補助などを実施しているところですが、引き続き、診療所の運営主体である小笠原村の意見を伺いながら、村の医療体制を支援してまいりたいと思います。
吉良よし子
是非、支援金のかさ上げ、要するに交通費もあるわけですからね、かさ上げを検討していただきたいと思いますし、やはり、先ほど来の質疑の中でも、結局、若い夫婦が出産を機に島を出るという話もあると、そういう話もあったわけですから、是非、島の中で安心して出産できる環境を整えられるようにということで、国としての支援の拡充、強く求めるものです。
あわせて、出産のみならず、医療や介護が足りないという問題もまだまだあるわけです。
医療でいえば、父島、母島に診療所あるわけですが、母島の場合は医師が一人という状況で、一人でその島内全部診なきゃいけないと。これ、やっぱり大変な状態だと思うんですね。
また、介護についても、小笠原の父島には老人ホームあるんですけれども、母島の方にはそのホームがないと。しかも、父島の方も十床分しかなくて、それがずっと満床状態で、既に入っている方が亡くなったらやっと募集して入れるという状況ということで、例えば母島に住んでいる方が父島の老人ホームに入ったとしても、ただもう、その父島と母島の間が実は五十キロ離れていると、もう片道で二時間だと、だから一回もうそっちに入っちゃったら父島でも母島からお見舞いに行くこともできないと。ましてや、本土や八丈島とかそのほかのところの施設に入った場合、もう島の人たちと会わないまま最期を迎えることになりかねないと。島の中で最期迎えたいけどそれがかなわない、そういう地元の皆さんの声があるわけで、これ受け止めなきゃいけないと思うんです。
そもそもこの法律というのは、本土との格差をなくす、これが目的なわけです。だから、そういう意味では、小笠原諸島の父島であれ母島であれ、どの島に住んでいても本土との格差をなくす、それぞれ格差をなくしていくということは本当に大事ですし、そのために、高齢者の皆さんも安心して住み続けられる、で、住み慣れた島で最期を迎えられるように、その医療や介護、改善必要だと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
小笠原村におきまして、医療体制や高齢者福祉サービスを確実に確保し、その充実を図ることは大変重要であると、そのように認識しております。そのため、国土交通省においては、東京都とも連携し、父島、母島の診療所や有料老人ホーム、地域福祉センターの整備費等について、小笠原諸島振興開発事業で支援を行っております。また、島内の診療所で対応できない救急患者が発生した場合には、小笠原村、東京都、自衛隊、海上保安庁が連携して搬送体制を整えております。
国土交通省としては、引き続き、東京都と連携して、遠隔医療の活用も含めて、小笠原村の医療・福祉サービスの体制整備に取り組んでまいりたいと考えております。
吉良よし子
いろいろ進められているという話ではあるんですが、移住、定住の促進をするんだというときに、やっぱり島で出産もできない、最期を迎えることもできないということでは、やっぱりそれは進まないんだということで、その改善、拡充を強く求めるものです。
最後に一言ですね、もう質問はしませんけれども、この小笠原諸島というのは戦後の歴史があるわけですが、やはり太平洋戦争末期、その時点で父島、母島が空爆を受けた、多くの人が犠牲になった歴史があって、島には数多くの防空ごう、大砲などの戦争の跡が残っていたり、また、戦争で亡くなった方の遺品や手記を自宅で保管している方がいると聞いているんです。ただ、その皆さんが高齢化になっているし、そういう貴重な資料が保管できる施設がないと。やっぱりこれでは歴史を後世に伝えることが難しいと思いますので、そうした貴重な資料、遺品などが紛失しないよう、施設整備など国の責任でも進めていただきたいと、このことも強く申し上げまして、時間になりましたので、取りあえず要望だけ申し上げて、この点については終わりたいと思います。
終わります。