【参考人質疑】技術生かし自然エネ推進 吉良氏質問に大野参考人
要約
日本共産党の吉良よし子議員は7日、参院資源エネルギー・持続可能社会調査会で「エネルギー安全保障の確立に向けた論点」をテーマに参考人質疑を行い、日本での再生可能エネルギー普及の可能性などについて質問しました。
吉良氏は、「日本はエネルギー源のほとんどを輸入に依存している。エネルギーの安全保障というときに、エネルギー自給率の向上は急務。とりわけ、脱炭素、気候危機打開が世界的な課題となる中で、自然エネルギー、再生可能エネルギーの普及拡大は鍵になる」と指摘。日本の風土、気候などの条件に合った再生可能エネルギーの普及拡大の可能性について質問しました。
参考人の公益財団法人自然エネルギー財団の大野輝之常務理事は、「日本は、太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力と全ての自然エネルギー資源に恵まれている。先駆的に技術開発を進め、多様な自然エネルギー発電を使っていく必要がある」と答えました。
吉良氏は、再生可能エネルギー普及を進める障害になっている原発優先の政府の姿勢について質問。大野氏は、日本では原発の供給を固定化し、太陽光がたくさん発電しても、使われずに捨てられてしまう実態を紹介しました。その上で「いかに自然エネルギー発電をフルに活用するかという観点から、原発の運用についても検討していく必要がある」と述べました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日は、三人の参考人の皆様、貴重な御意見を本当にありがとうございます。
私からは大野参考人にお話を伺っていきたいと思うんですけれども、日本のエネルギー自給率は、この間指摘されていますとおり非常に低く、エネルギー源のほとんどを海外からの輸入に依存しているという点から見れば、そのエネルギーの安全保障といったときに、このエネルギーの自給率の向上は本当に急務でありますし、とりわけ、大野参考人御指摘あったように、脱炭素、気候危機打開が世界的な課題となる中で、自然エネルギー、再生可能エネルギーの普及拡大というのは本当に鍵になってくると考えております。
私は、昨年九月に、参議院の重要事項調査第三班の一員としてアイスランドとドイツに訪問してまいりました。このアイスランドでは、再生可能エネルギー、ほぼ一〇〇%実現している国でしたし、ドイツでは昨年四月に脱原発を実現して以降、再生可能エネルギーを約四割に増やしていると。再生可能エネルギーの普及拡大のためには、そうした政府の政治的決断というのが重要であるということを実感した次第です。
一方、日本でいいますと、いや、そうはいっても再生可能エネルギーの適地というのは少ないんであるとか、先ほどの議論の中では、逆に輸入依存になるんじゃないかという指摘などもあったわけですが、実際、私もドイツで風力発電を見てみたときに、本当に大規模な発電機が広大な土地にどんどんと乱立する状況とか見たり、若しくは、洋上風力であっても最大で水深五十五メートルが限度だよというお話なども聞いたわけで、そうすると、確かに広大な平野が少ない、若しくは遠浅の海も少ないような日本でこのような大規模な風力発電プラントというのを展開するというのは技術的な困難も伴うんじゃないのかなということも確かに感じるところはあった次第なんです。
ただ、だからこそ、私は、そういう海外の大型プラントに頼るのではない、先ほど参考人もあったような、国内で、自国での再生、生産能力の増強というか、日本の風土、気候などの条件に即した再エネ技術の開発をしながら再エネの普及拡大を進めていくということが必要なんじゃないかと。そういうことを進めていってこそ、地産地消になるのはもちろん、国内の新たな仕事や雇用の創出などにもつながっていく、そういう可能性にも広がるんじゃないかなということも考えた次第なんですけど、その点について、大野参考人、先ほど太陽光発電の生産能力増強が、自国での、が必要ですねというお話もありましたが、そうした日本の風土に合わせた再生可能エネルギーの普及拡大への可能性、ポテンシャルをどうお考えになるか。そうしたものを進めていく上で必要な政策的支援や現状の課題があるのかという点など、お考えをお聞かせいただければと思います。お願いいたします。
公益財団法人自然エネルギー財団常務理事 大野輝之君
御質問ありがとうございます。
電源を一つのものに頼るのは非常に危険であると、多様な電源が必要だということは間違いないと思います。ただ、ここで見逃しちゃいけないのは、自然エネルギーというのは一つではないということであります。自然エネルギーの中には、太陽光というのもありますし、風力もあります。それから同時に、地熱もございますし、バイオマスもあります。あと、水力もあります。日本は、幸いにこういう全ての自然エネルギー資源に恵まれているということなんですね。
太陽光、風力については先ほど申し上げました。それ以外に、地熱についても、世界第三位の地熱の保有量がございます。水力についても、既に三・一一の前から一〇%の電力供給を水力で行ってまいりまして、非常に日本は急峻な地形でございますので、かつ雨も多いわけでございますので恵まれています。これは、ドイツにはこういう条件はございません。それから、バイオマスについても、国土の相当な部分が山林ということですので、ですから、こういうものを生かして日本にふさわしい自然エネルギーの社会をつくっていくということが必要だと思っています。
ただ一方で、そういういろんなものを使っていくわけなんですが、やっぱり中心になるのは何かといえば、風力発電と太陽光発電であることは間違いないということだと思います。
洋上風力についても、御指摘のように日本は遠浅の海が少ないということでございますが、それでも、風力発電協会の調査によりますと、九十一ギガワット、九十ギガワットぐらいの着床式の風力発電の設置の可能性があるということを言っていますし、それから浮体式につきましても、これは技術開発が非常に進んできております。かつ、その日本の産業との関係でいえば、ここはまさに日本が先駆的に技術開発をして日本のビジネスチャンスにしていく、チャンスもございますので、ここは政府も浮体式の洋上風力開発、技術開発に非常に力を入れていらっしゃるわけですけれども、進めていく必要があるということだと思います。
それから、太陽光発電も、確かに広大な土地をこれから使っていくことは難しいし、いわんや山林を切り開いて自然破壊をするような太陽光発電はあってはいけません。だから、これはもう建物の屋上、インフラ施設の屋上等々ありますし、これも、日本の方が開発されたペロブスカイトですね、この技術開発もございますので、そういういろんな日本発の技術も含めて、多様な自然エネルギー発電を使っていくということがやっぱり必要だろうと思っております。
吉良よし子
日本発も含めて、多様な再生可能エネルギー、技術開発など進めながらやっていく、そういうポテンシャルあるんだというお話、非常に可能性を感じた次第でありますし、そうしたものこそ進めていくべきだということを改めて思いました。
もう一問、大野参考人に伺いたいんですが、今日のエネルギー安全保障の前提として、世界の平均気温上昇を一・五度に抑えると、こういう国際合意があるというお話だったと思うんです。
当然、そのためには、このエネルギーだけではなくて、そもそものCO2をどう削減するか、削減していくということも欠かせないわけですが、私、地元である東京都では、多くの市民も反対しております神宮外苑の再開発のように、大量の樹木を伐採するような再開発というのが次々と進められている問題があるわけです。
ちなみに、この神宮外苑再開発、進められた場合、このCO2排出量というのは年間約四万七千トンとなるんじゃないかと言われておりますし、また、日本共産党の東京都議団の調査では、そのほか都内で進められている大型開発事業でも、例えば、品川駅周辺の二つの事業で七万七千八百トン、大手町の東京トーチタワー一棟だけで四万五千三百トン、帝国ホテルの高層化などの日比谷周辺の開発では八万五千トンのCO2が年間に排出されることになるということで、環境への多大な影響が指摘されているわけです。
大野参考人は、かつて東京都の環境局部長も務められていた経験もあって、CO2削減に御尽力されたと思うんですけれども、一方でCO2削減のために政策を進める、一方でこうした再開発などを進めてCO2がどんどん出てしまうというのは非常に矛盾した政策だと思いますし、持続可能な町づくりとも言えないのではないかと思いますが、こうしたCO2排出削減の観点からの大規模な都心再開発についてどう見ていくべきか、お考えをお聞かせいただければと思います。
参考人(大野輝之君)
今御質問いただいた件についていろんな議論が行われていることは承知をしておりますけれども、持続可能な都市づくりの在り方というのは、やっぱり総合的に考える必要があると考えております。
一方で、そういう意味で大規模なビルの開発などはすべきでないという議論もございますけれども、ビルの更新が進むことによってエネルギー効率化が進み、その中で再生可能エネルギーの利用が進むものもございますので、そういう観点から総合的に緑の保全とエネルギー転換を図っていくということが必要だと考えております。
吉良よし子
ありがとうございます。
最後に、原発についても伺いたいと思います。
先ほども、志賀原発、能登半島の地震で大きなトラブルもあったというような指摘などもあったわけですけれども、やはり志賀原発では、想定を超えた揺れが観測される中で、外部電源が一部使えなくなったり、冷却、絶縁のための油が漏れ出す、また、使用済核燃料プールのポンプが止まって一時的に冷却停止などの重大なトラブルが続いたわけで、また、道路が寸断されるなどの中で、一旦事故がもし起こった場合に避難計画が機能しないんじゃないかと、そういう破綻も明らかになったと。
やはり、原発を動かすことについては、コストが高いだけでなくリスクが高いことも明らかになったと私は考えているわけですが、あわせて、再生可能エネルギーを普及をするという観点から見ても、政府の原発優先の姿勢ということそのものが再生可能エネルギー普及を進める障害になっているとも考えるわけですが、その点も併せて、この原発と再生可能エネルギーとの関係について大野参考人のお考えをお聞かせいただければと思います。
参考人(大野輝之君)
先ほど何回も御答弁申し上げておりますけれども、太陽光、風力という変動電源をいかに安定的に電力供給の安定化に結び付けていくかということを考えますと、自然エネルギー電源で賄えるもの以外の電源については、この追従性と申しますか、その柔軟性が非常に必要だということがございます。フランスなどでは原子力発電についても非常に変動性を持った柔軟な運用をやっているわけですが、なかなか日本ではそういうことを許すような状況になっておりません。
ですから、実際に、今九州のように太陽光発電が非常に増えている地域の需給状況を見ますと、言わば、その原発の安定的に、そういう意味では、もう一定程度のその電源を供給していますので、どうしてもその太陽光がたくさん発電するときには余ってしまって出力抑制をするということになっています。せっかく発電した太陽光発電が使われずに捨てられてしまうというふうな非常に残念な状況も起きていますので、そういう状況も踏まえて、いかに自然エネルギー発電をフルに活用するかという観点から、原発の運用についても検討していく必要があるんじゃなかろうかと、このように考えております。
吉良よし子
ありがとうございました。大変参考になりました。
質問を終わります。