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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2023年・第212臨時国会

国立大学法人法改悪案 大学自治壊す【反対討論】

要約

 大学の自治を破壊する改悪国立大学法人法が13日の参院本会議で、自民、公明、維新、国民民主などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立憲民主、れいわ、参院会派「沖縄の風」は反対しました。

 同法は、もともと大学ファンドの支援を受ける「国際卓越研究大学」が対象だった「運営方針会議」の設置を、政令で指定する大規模な国立大学に広げます。日本共産党の吉良よし子議員は討論で、対象拡大の経過がわかる公文書の提出を野党が求め続けたのに、文部科学省は「残っていない」と繰り返すだけだったと批判し、経過が不透明なままの法案成立は「民主主義を破壊する大問題だ」と主張しました。

 吉良氏は、文科相の承認を経て任命される数人の委員で構成され、大学運営の主要方針の決定権限を持つ運営方針会議の設置が、大学の意思に関係なく強制されることを批判。「大学の自治の基本を壊す異常な法案を認めるわけにはいかない」と強調しました。

 また吉良氏は、政府の審議会メンバーの参考人が、大学に資金を呼び込める人が運営方針会議の委員として望ましいと述べたことをあげ、「政界や財界の求める『稼げる大学』づくりが法案の狙いであることは明白だ」と指摘。「稼ぐため」には授業料の値上げや軍事研究もいとわない大学が出てきかねないとして、大学の自治への介入をやめ、運営費交付金をはじめ基盤的経費を増額するよう求めました。

しんぶん赤旗12月14日付けより抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 私は、会派を代表し、国立大学法人法の一部改正案について、反対の討論を行います。
 初めに、昨日の文教科学委員会で日本共産党、立憲民主党などが審議の継続を求めたにもかかわらず、自民、公明、維新の多数の力で質疑を終局させ、委員会採決を強行したことに強く抗議をいたします。
 参議院の審議の中で、本法案の作成過程が不透明なまま、公文書も残されていなかったことが明らかになりました。
 そもそも、本法案による新たな合議体、運営方針会議の設置は、政府の十兆円ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学の認定を受ける条件とされていました。昨年の国際卓越研究大学法の審議のときも、当時の高等教育局長が、その他の国立大学法人につきましては従来どおりの形で当面はいきたいと答弁していたにもかかわらず、今回、政府はそれ以外の大学にも当てはまると、対象を拡大しました。
 なぜ一年前の国会答弁と全く違う法案が出てきたのか。なぜ合議体設置対象が国際卓越研究大学以外に広がったのか。
 参議院での法案審議が始まって以降、その経過の分かる公文書の提出を野党が求め続けたにもかかわらず、文科省は公文書は残っていないと繰り返すだけ。ようやく出てきたのは、今年五月二十四日に高等教育局が原案を決めたという当時の経過を後で整理した文書と、六月一日に関係大学に内々に説明した際に配付したという資料のみ。原案を決める過程では正式な会議をしていないから公文書は作成していないと言い張りました。そんなことはあり得ません。
 昨年の国会答弁と異なる法案が出てきた過程、その経過が不透明なままの法案を成立させろということ自体が民主主義を破壊する大問題ではありませんか。
 本法案により、学問の自由、大学の自治が危機に瀕しています。
 日本国憲法第二十三条に学問の自由が明記されたのは、戦前の国家権力が学問の自由を侵害したことへの反省があったからです。学問の自由を保障するためには、大学内の構成員が自由に、そして自主的に大学運営に参加できる民主的な仕組みである大学の自治が不可欠です。それなのに、教授会を単なる諮問機関として形骸化させ、学長選考過程でも学内意見を反映させない。学内の構成員が大学運営に参加する仕組みを徹底的に排除し、大学の自治を壊してきたのが歴代自民党政権です。
 その上、本法案で、文部科学大臣の承認を経て任命される数人の委員によって構成される運営方針会議を設置し、その運営方針会議に国立大学法人の中期目標・計画、予算、決算など大学運営の主要方針を決定する権限を与え、事実上の最高意思決定機関とすることになれば、大学の自治がこれまで以上に脅かされるのは火を見るよりも明らかです。
 文科大臣は本会議で、中期目標及び中期計画に関する事項を含む教育研究に関する重要事項については、学内者で構成する教育研究評議会において審議するなどの仕組みは引き続き存置されるため、運営方針会議の設置により大学運営の意思決定から教職員が排除されるとは考えておりませんと答弁していましたが、委員会質疑では、教育研究評議会の議論や決定が運営方針会議において覆されることがあり得ると高等教育局長が答弁。教職員の意思が尊重されないことが明らかになりました。
 しかも、本法案による運営方針会議の設置は、政府が政令指定をする特定国立大学法人には義務付けされ、大学の意思に関係なく強制することになります。このことについて、参考人質疑で北海道大学の光本滋参考人は、従来の国立大学法人制度との関係においても異常なものだと断じています。政令指定をする大学の意見を聞くプロセスもないままに運営方針会議の設置を強制するという、大学の自治の基本を壊す異常な法案を認めるわけにはいきません。
 参考人質疑では、国際卓越研究大学制度について議論する有識者会議の常勤議員である上山隆大参考人は、運営方針会議の委員として望ましい人物像として、大学の財務構造についてちゃんと分析できる人、国際的な競争環境の中に勝っていく、大学の中に資金を呼び込むことができる人が必要だと言いました。
 国際的な競争に勝つ、大学の中に資金を呼び込む、つまり、政界や財界の求める稼げる大学づくりを強力に進めることが本法案の狙いであることは明白です。
 この間、日本の高等教育への公的財政支出は、OECD加盟国平均の半分以下、最下位クラスで、国立大学運営費交付金は法人化以降減らされています。その結果、多くの大学では、研究者の雇用は不安定化し、特に若い研究者の安定したポストの数が減りました。競争的資金が増え、資金獲得のために短期的に成果が見込める研究が優先され、大学は疲弊しています。
 資金が足りず、植物の標本維持や文化財の保護、図書館の資料購入、サッカー場の改修、果てはトイレの改修に至るまでクラウドファンディングで資金調達している国立大学も出てきています。クラウドファンディングの対象にもならないまま学生寮が廃止されたり、保険診療所がなくなったり、学生や教職員のための施設が切り捨てられている実態もあります。
 稼げる大学づくりを強力に進める一方で、稼げない大学は学生の命すら守れない。必要な経費でさえクラウドファンディングに頼るしかなく、それでもお金が集められなければ淘汰されても仕方がないと切り捨てる。これが文科省の大学政策なのでしょうか。
 ましてや、運営方針会議の主導で、稼ぐためと言いながら授業料の値上げもいとわない、軍事研究をもいとわない大学まで出てきかねないことは重大です。
 既に軍事研究の予算が増え続けているアメリカでは、軍事研究に手を出すしかない若手研究者も出てきていると聞きました。しかし、どんなに成果を出しても、軍事研究は機密事項なので、その成果は広く社会に公表されないまま、自分の研究を続けるために軍事分野に携わるしかなくなっている研究者もいると聞いています。このように、稼ぐためと言いながら若者や大学を軍事研究に取り込んでいく動きを認めるわけにはいきません。
 政府は、大学への政治的介入をやめ、学問の自由と大学の自治を守るべきです。運営費交付金を始めとした基盤的経費の増額を強く求めます。
 最後に、今国会で自民党の政治資金パーティーでの裏金疑惑が大問題になっています。昨年十一月のしんぶん赤旗日曜版の報道に端を発し、安倍派にとどまらず、二階派も麻生派も岸田派も、自民党全体に広がる底なしの疑惑となっています。国会閉会後となる明日以降、内閣、党役員人事を行うなどと伝えられていますが、更迭だけで解決する問題ではありません。徹底した事実究明が必要です。岸田総理の任命責任、説明責任も厳しく問われています。
 今や、疑惑まみれで信頼が地に落ち、国民の信のない岸田政権が、学問の自由、大学の自治を破壊する本法案を無理やり押し通す道理はもはやないことを申し上げ、討論を終わります。(拍手)