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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2023年・第212臨時国会

国大法改悪案の経過不透明  採決強行に抗議【質疑・討論】

要約

 大学の自治を破壊する国立大学法人法改悪案は12日の参院文教科学委員会で採決が強行され、自民、公明、維新、国民民主の賛成多数で可決しました。日本共産党、立民、れいわは反対しました。立民、共産などが徹底審議を求めるなか、自民、公明、維新の多数で質疑を打ち切り採決を強行。共産党の吉良よし子議員は討論で、「審議が不十分であるにもかかわらず採決を強行することに強く抗議する」と訴えました。

 同案は、政令で指定する大規模な国立大学に、事実上の最高意思決定機関となる「運営方針会議」(合議体)の設置を義務付けるもの。吉良氏は質疑で、大学ファンドの支援を受ける「国際卓越研究大学」が対象とされていた合議体の設置が、それ以外の大学にも広げられた理由や経過がいまだ明らかではないとして、「経過が不透明なまま審議し成立させること自体が、民主主義を破壊する大問題だ」と主張しました。

 吉良氏は、大学側の意思を確認することなく政府が指定した大学に合議体の設置を強制することは、「大学の自治に反する」と主張。教職員、学生の意見を尊重しない文部科学省の姿勢を批判しました。

 また、学内の教育研究評議会等で審議した中期目標・計画が、合議体の決定で覆されることはないのかと質問。文科省の池田貴城高等教育局長は「教育研究評議会での議論と異なる結論になることはありうる」と明言し、大学の自治への介入を否定しませんでした。

 吉良氏は、大学への予算が削られるなか、数々の大学でサッカー場やトイレ改修までクラウドファンディングに頼らざるを得なくなっていると強調。「お金が集められなければ、淘汰(とうた)し切り捨てる。これが文科省の大学政策なのか」と批判しました。

しんぶん赤旗12月13日付けより抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 初めに、本日、この委員会が委員長職権で開かれた、このことには私も抗議をしたいと思います。というのは、もう先ほど来議論があるとおり、本法案の作成過程、余りにも不透明であり、審議できるような状況ではないからです。
 そこで、経過を私も確認していきたいと思うんですけれども、本法案による運営方針会議、合議体の設置というのは、元々、大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学の認定を受ける条件として示されていたものであります。
 昨年五月十七日、この国際卓越研究大学法の審議の際、当時の高等教育局長は、その他の国立大学法人につきましては、従来どおりの形で当面はいきたいと答弁をしておりました。それなのに、今回、この国際卓越研究大学以外の大学にも当てはまるとして本法案が出されたわけです。
 つまり、昨年の通常国会での国際卓越研究大学法の審議の答弁と本法案の内容は異なっている、変わったということで間違いありませんか。局長、いかがでしょう。

政府参考人(文部科学省高等教育局長 池田貴城君)

 お答え申し上げます。
 今般御審議いただいておりますガバナンスの強化につきましては、国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論が契機となっており、昨年の通常国会の時点では、御指摘のとおり、大学ファンドからの支援を受け、自律的な大学へと成長する大学に限って、経営に係る意思決定機能や執行に係る監督機能の強化のため合議体を設置することが必要という認識でございました。
 その後、具体の法律案を検討する過程の中で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、事業規模が特に大きい大学については運営方針会議の設置を義務付けるとともに、その他の国立大学法人については文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することも可能としたところであり、委員御指摘のとおり、昨年の通常国会での国際卓越研究大学法の審議の答弁とは異なる内容となっております。

吉良よし子

 いや、国会答弁ってそんなに軽いものなのでしょうか。国会答弁から一年で、その答弁と全く違うことをする、国際卓越研究大学以外の大学も対象とするという法案が出てきたこと自体が、私、大問題だと思うんです。
 先ほど来あるとおり、今年六月十六日の閣議決定の内容とも違うわけです。なぜこんな合議体の対象拡大広がったのかと、その理由、経緯、全貌というのはいまだに明らかになっていません。
 この間ずっと文科委員会の理事懇、理事会を通じて、蓮舫筆頭理事を先頭に野党としてその過程を示す公文書を求めてきたわけですが、文科省側からは、そうした公文書は残っていないと、これ繰り返されたわけです。
 ようやく理事懇の中で出てきたのが、今年五月の二十四日に高等教育局として原案を決めたことを後で整理したというペーパー、それから六月一日に関係大学に内々に説明した際に配付した資料というものが出てきたわけですけれども、もうそもそもこれが、衆議院の答弁のときには、七、八月に関係大学に確認をして、その後に決めたという、その答弁とも違っているわけです。
 そういう問題があるわけですけど、改めて、私、文科省に聞きたいのは、この五月二十四日に原案を決めたというペーパーを見ますと、この対象拡大は高等教育局として決めたとあるわけです。つまり、昨年の答弁と違う法案にすることは高等教育局が独自に決めた、そういうことでよろしいですか。

政府参考人(池田貴城君)

 お答え申し上げます。
 決めたということでございますが、当然、高等局内、局長までの案として方針を決めたわけでございまして、それを踏まえて、六月以降、各大学や関係のところに説明をし、文部科学省として方針を決定したのは八月でございますので、ここは、あくまでもある程度の方針を決め、各大学と御理解をいただくよう話を進めたというものでございます。
 仮にここで大きな異論が出て、この仕組みではなかなか難しいということであれば、当然ながらそこで見直すこともあり得たと思っております。

吉良よし子

 いや、ですから、六月一日以降の話は聞いていないんですけれどもね。あくまでも、昨年の答弁があって、その後に対象拡大するということを、その方針を決めた、それは高等教育局が決めたということでよろしいかと言っている。

政府参考人(池田貴城君)

 昨年の答弁、高等教育局長の答弁の後、この法案の具体的に詰めを進めてまいりましたけれども、国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論を契機としつつも、その後、いろいろ検討をしながら、総合科学技術・イノベーション会議やその事務局である内閣府を含め、関係機関とも事務的な相談を重ねてまいりました。

吉良よし子

 関係機関などとも事務的な相談してきたと言いますが、参考人質疑では、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの常勤議員である上山参考人は、CSTIがこのほかの大学に対してもこの合議体を拡大させるべきだというふうに明示的にお話ししたことはございませんと答弁しているわけです。ただ、一方、国立大学はどうあるべきなのかについては、当然ながらブレーンストーミングで話をしましたとも答えているわけです。
 つまり、明示はしていないが暗示はあったということなのでしょうか。高等教育局内で原案を決めたとされる五月二十四日以前に、このCSTIの関係者と合議体の必要な理由が国際卓越研究大学以外に当てはまるかどうかについて意見交換をしたのかどうか、したのであればその回数は何回か、お答えください。

政府参考人(池田貴城君)

 運営方針会議の対象大学の考え方につきましては、先ほど申し上げたように、五月の前の段階でもCSTIの事務局などとは打合せを重ねてまいりました。実は、内閣府やCSTIとの間で、この運営方針会議の設置の対象をどうするかというこの点について、それほど大きな議論になった記憶はございませんけれども、それ以外の点も含め、CSTIや内閣府とは日常業務の一環として担当レベルでは様々な情報共有とか情報交換を行ってきたと、そのように理解しております。

吉良よし子

 つまり意見交換はしていたということなんですけど、じゃ、伺いますが、対象拡大することについて最初に提案したのは文科省の側ですか、それともCSTIの側ですか。

政府参考人(池田貴城君)

 CSTIの提案、報告を受け、文科省でいろいろ整理をしていく上で、なかなか法制的な難しさもこれあり、このような形になって、で、それをCSTIとも相談をしたものと承知しております。

吉良よし子

 分からないんですけど、どちら側から対象拡大すべきと言ったんですか。

政府参考人(池田貴城君)

 法制的になかなか難しいものですから、文科省側から、法制的に難しいことと、対象拡大というよりも、その一定の規模、水準になるところは義務的に置くということは文部科学省側からCSTIに相談をしたものと思います。

吉良よし子

 文科省側からということですけど、では、それを証明できる公文書、やり取りをやった記録、そういった公文書はありますか。

政府参考人(池田貴城君)

 先ほどもお答えしたとおり、それが公文書の形では残っておりませんので、先ほどの大臣の御答弁も踏まえて整理をしたいと思います。

吉良よし子

 結局、そうやっていろいろおっしゃっているわけですけど、一体誰がいつどのようにして言い出して、どのような議論をしてきたのかというのがやっぱり分からないわけですよ。局長の記憶だけでお話をこの間されているわけなんです。これじゃ議論できる状況じゃないわけですよ。だって、もう既に国会答弁と異なるそういう法案が今ここの目の前に出てきているわけですよ。今ここで御答弁されたことも本当かどうかなんて分からないじゃないですか。
 大臣、国会答弁と異なる法案が出てきたその過程、経過が不透明なまま法案を審議して成立させろということ自体が民主主義を破壊する大問題ではありませんか。いかがでしょう。

国務大臣(盛山正仁君)

 先ほどから局長も答弁しておりますように、昨年のその法案あるいは国会答弁と異なる法律案を作って、そしてそれを今回御審議していただいているということはそのとおりでございます。
 しかしながら、先ほど来局長が答弁しておりますように、大学ファンドからの支援を受け、自律的な大学へと成長する大学に限って、経営に係る意思決定機能や執行に関する監督機能強化のために合議体を設置することは必要であるというふうに、当省だけではありませんですけど、関係者と協議をして、そしてこのような案を作って、そしてそれを閣議決定してお出ししているということでございますので、この案でいかがかということで是非御審議、御理解を賜りたいと思います。

吉良よし子

 いや、このままでは理解できないって言っているんです、法案の成立過程が全く不明ですから。
 これ、国会答弁の信頼性の問題でもあるわけですよ。先ほどの質疑の中でも、宮口議員によれば、やっぱり国際卓越研究大学認定の基本方針とも整合性が取れないと、そういうことまで明らかになったわけで、このような全く整合性が取れないような状態のままでこの法案成立なんていうのは絶対にあり得ないんだということを私は強調したいと思うんです。
 あわせて、法案の中身見ていっても問題だらけなわけですよ。
 そもそも、国立大学法人が自主的、自律的に大学運営を行うこと、これは大学の自治を守る上で大前提となることだと思うんです。しかし、本法案により、運営方針会議の設置は政府が政令指定をする五法人に義務付けるということになるわけです。これについて、参考人質疑で光本参考人が、運営方針会議を必ず置く国立大学法人を政府が指定することは、従来の国立大学法人制度との関係においても異常なものですと指摘をされました。
 この国立大学法人法制度における大学の自治という観点から、この大学側の意思を確認することもなく五法人については政令指定でこの運営方針会議の設置を強制する、これは異常なことではありませんか。大臣、いかがですか。

政府参考人(池田貴城君)

 お答え申し上げます。
 先ほど来御答弁しておりますように、文部科学省が法制上検討を進める上で、本年六月には国際卓越研究大学に申請をしていた大学に対して説明をするとともに、七月から八月にかけて国立大学協会や国際、同じく卓越大学に申請中であった学長と私も含め直接お会いして御説明をし、意見交換をしてまいりました。
 その中で、仮に、先ほども申し上げましたけれども、仮に異論が出たりすれば、それについてきちんと対応をすることもあったかと思いますが、一定程度理解を得たものと考えておりまして、八月に大臣まで、当時の大臣まで御説明をして、省としての方針を決めたものでございます。

吉良よし子

 法案を作成する前の段階で意見を聞きましたということをおっしゃるわけですけど、法案の中身見てみたら、その中で大学側の意思、意向を聞くというプロセスはないわけですよ。幾ら法案成立前に意見を聞いたからといって、法案成立した後に、例えばですけど学長が替わるとか、その意思決定が変わるとか、そういうことは幾らでもあり得るわけなのに、そういう意思を確認するプロセスもないまま運営方針会議の設置を義務付け強制するのは大学の自治に反するのではないかと聞いているわけです。
 大臣、いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 一般論として、法案の条文のところまで作ってそれを御説明するというのは、もう本当にぎりぎり直前になるのではないかと思います。
 それで、今その局長が申し上げましたのは、法案作成過程のところで、その各関係者とそういうようなアポイントも含めて御相談をしたということを申し上げているわけでございますので、そういう点で問題があるとは考えておりません。

吉良よし子

 いや、法案が成立した後の話を聞いているわけです。この法律できたら、問答無用で五法人にはこの合議体の設置を強制することになるわけでしょう。それが自治の、大学自治に反するんじゃないかと言っているんです。いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 それは、その学長が持っている権限の一部を運営方針会議というところで合議体の形で御議論をしてもらおうということでございますし、そして、それがその一定の規模のところ、それが今は五つということでございますけど、こういうところについては、ほかの大学法人に比べても大きいので、そういったところにはこういうものが必要であろうということで我々は案を作ったということでございますので、それ自体が先生御懸念のように大学の自治を脅かすというような内容のものではないと私たちは考えております。

吉良よし子

 いや、大学の自発性というのが奪われるよねという話をしているわけです。
 しかも、この間、その法案作成過程において様々学長にも意見を聞いてきたとおっしゃいますけど、意見聞くべきは学長だけではないはずですよ。大学運営の担い手である教職員とか学生とか大学内の構成員はもとより、広く社会一般に説明して合意を得ることが大前提のはずなんです。学長にだけ事前に説明したからいい、そういう姿勢そのものがこの大学の自治の軽視、文科省の姿勢の表れだということを強く指摘したいと思うわけです。
 そして、たとえ自発的であったとしても、この運営方針会議を設置する、このこと自体が大学自治を壊していくということも明らかだと思うわけです。
 大半が学外者で構成されるであろう運営方針会議ですが、これ、中期目標、計画など大学運営の基本的な方針策定の権限が移っていくと、数人の、少数の委員によってこの大学の運営がどんどん進められるという、そういう話になるわけですが、大臣は本会議で、その中期目標とか中期計画の作成等については、経営協議会、教育研究評議会の審議などを経て学長が原案を作成し、その原案について運営方針会議が議論して決定すると答えているわけですが、では確認したいと思います。
 この教育研究評議会等での議論や決定、運営方針会議において覆されることは絶対ないと言えるのですか。局長、いかがでしょう。

政府参考人(池田貴城君)

 お答え申し上げます。
 中期目標に関する意見や中期計画の策定等については、教育研究評議会の審議も経て学長が原案を作成し、その原案について、運営方針会議を置く法人については、この運営会議が議論して決定することになります。
 このプロセスにおきまして、教育研究評議会での議論と異なる議論に、結論になることはあり得るものと思いますけれども、当然、学内の教育研究協議会や経営協議会などと意を尽くし、議を尽くして、より望ましい大学の在り方に関して、を目指して議論をしていただけるものと思っております。

吉良よし子

 議を尽くすとおっしゃいますけど、結局、最終的にこの教育研究評議会等の意見と全く違う結論になることはあり得る。これでは教職員の意見、反映されるのか、尊重されるのか、甚だ疑問じゃないですか。
 もう一点伺いますが、学部、学科など教育研究組織の再編、これは運営方針会議で決めることになるのか、どうですか。

政府参考人(池田貴城君)

 基本的には運営方針会議は大きな方針を決めることになりますので、その学部の設置などで多額の費用が掛かるとかいう、その範囲においては運営方針会議もお話があると思いますが、基本的には、運営方針会議を設置しているかどうかにかかわらず、これまでと同様、役員会の議を経て学長が決定するということになろうかと思います。

吉良よし子

 決定権は学長にあるということですが、先ほどお話ありましたけど、この運営方針会議の中で研究組織、学部の再改編について議論することは一切ないということですか。

政府参考人(池田貴城君)

 一切ないとまでは言えませんけれども、基本的に大きな方針について運営方針会議で決めることになりますので、基本はやはり、役員会の議を経て、また教育研究評議会で議論をしつつ、学長が決めるということになろうかと思います。

吉良よし子

 一切ないとは言えないと、議論することもあり得るということだと思いますが、そういうことですよね。

政府参考人(池田貴城君)

 衆議院でもお答え申し上げているとおり、運営方針会議はマイクロマネジメントをするわけではございませんので、その大きな、大局的なところがかかることはありますけれども、個々の学部や学科の在り方について細かいところまで運営方針会議が議論をするということは基本的にはないものと考えています。

吉良よし子

 基本的にない。一切、絶対やらないということでよろしいですか、じゃ。

政府参考人(池田貴城君)

 基本的にはないと。ただ、例えば新しい研究科をつくって、物すごく大きな費用の掛かる教育研究施設、最先端の研究施設をつくるとかそういうことになれば、法人全体にとっての大きな財政支出を伴う計画ですので、そういうところは議論になるかもしれませんが、個々のその研究の、研究科や学部の在り方について運営方針会議が細かく意見を言うということは基本的にないと考えております。

吉良よし子

 一応、細かく意見を言うことはないと、しかも最終決定する権限は学長にあると、これは重要なことだと思うわけです。ただ、やっぱり一切ないとは言えないと、やっぱり議論することもあり得るという意味では、運営方針会議の委員である学長はその議論を踏まえた学部、学科の再編進めることが可能であるということはやっぱり懸念があるということは申し上げておきたいと思うわけです。
 さらに、法案によれば、先ほど来あるとおり、三か月に一回以上、運営方針会議に学長が報告することを義務付けているわけですが、逆に言えば、最低年に四回程度会議を開くだけでいいと、運営方針会議というのは。年に数回程度しか来ないような運営方針会議の委員が中期目標、中期計画など重大な方針を決定すると、そういう権限を与えると。じゃ、一方の義務や責任はどうなるのかという疑問があるわけです。
 衆議院では、その運営方針会議の委員は役員と同様の忠実義務、損害賠償責任を課すこととしているとの答弁がありました。では、仮にこの運営方針会議の決定どおりに運営をした結果、何らかの実害、損害が出た場合、直ちにこの運営方針会議の委員が責任を負うと、損害を償ったりすることになると、そういうことでよろしいですか。

政府参考人(池田貴城君)

 お答え申し上げます。
 運営方針会議の決定どおりの運営をした結果、何らかの損害が出た場合等の責任の所在につきましては、その具体的な内容や改善に向けた取組、あるいはその過程において学長や運営方針会議がそれぞれの責任をどのように果たしてきたかなど、個別の状況によって異なるものと考えております。
 運営方針委員につきましては、責任を持って国立大学法人の運営に参画していただくことを担保するため、今委員御指摘のとおり、役員と同様の忠実義務、損害賠償責任を課すこととしており、個々の運営方針委員の責任も問うことができますので、御理解いただければと思います。

吉良よし子

 責任を問うことはできるけども、何らかの損害が出たからといって直ちにその責任を負うとかいうことにはならないと、個別の状況によって異なるんだと、そういう話ですね。つまり、その何らかの損害が出ても、その因果関係とかが立証されない限り賠償責任も負わなくていいというのがこの運営方針会議の委員だということです。
 中期目標や中期計画を決定する権限持つだけでなく、学部再編に関しても場合によっては意見もできるし、何だったらもう教学側の意見を尊重する義務だって持たないんだと、そういう巨大な権限を最低年四回しか来ないような学外の委員に与えると。これはやっぱり大学の自治の破壊にしかならないと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 これまでも御説明しておりますとおり、運営方針委員は、大学自らが運営の当事者として共にその発展に取り組んでいきたいと考える方を学内外を問わず人選していただくことが重要であります。
 その上で、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認については、大学の自主性、自律性に鑑み、国立大学法人からの申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き拒否することはできないと整理しております。
 そういったようなこと、また、中期目標についても、先ほど局長が御答弁いたしましたけれども、学長が原案を作成し、その原案について運営方針会議が議論して決定するといったようなことを考え合わせれば、学外者が運営方針会議に参画しても大学の自治に反することはないと考えております。

吉良よし子

 つまり人選次第だよねというお話だと思うんですけれども、参考人質疑では、上山参考人、運営方針会議の委員には、財務構造についてちゃんと分析できる人、大学の中に資金を呼び込むことができる人がいいということをおっしゃっておりました。つまり、こうやって運営方針会議を設置することによって、大学に資金を呼び込む、稼げる大学をつくる、それを強力に進める体制をつくろうというのが本法案の狙いであることは私間違いないと思うわけですよ。
 本法案では、土地利用の規制緩和などもしているわけですよね。これ、報道によれば、東京工業大学、東工大は、キャンパスの再開発に伴い空いた土地に、民間企業、エヌ・ティ・ティ都市開発、鹿島、JR東日本、東急不動産などと協力してオフィスビルを建設して年間四十五億円の収入を確保するとか、東京医科歯科大学は、江東区の職員寮の敷地を利用して、野村不動産と商業施設、オフィスを備えた複合施設を計画しているというものがありました。まさに金を稼ぐために国立大学の土地、これ、元々は国有地、国民共有の財産だったはずの土地が民間の大企業の再開発に利用されると、そういう事例が出てきているわけです。
 先日、私、神宮外苑の再開発の問題も取り上げたわけですが、そういう再開発に伴って自然破壊がされる、そういう懸念もあるわけです。国立大学がこういう都市再開発に加わって、その土地を一部の企業の利益に利用させたり、町を壊して自然環境を破壊すること、これ、あっても仕方がない、やむを得ないという立場ですか。大臣、いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 大学が土地の貸付けを行うに当たりましては、これまでと同様に、騒音、振動、粉じん等を発生させるおそれや、風俗営業や暴力団事務所に使用されるおそれがないこと、こういったことを確認した上で認可することとしております。
 御指摘のように、町を壊し自然環境を破壊するというような事態が生じることは我々は想定しておりません。

吉良よし子

 想定はしていないということでしたが、先ほど、運動場や講堂なども土地の利用、一般化、活用可能になっていくんだというお話もありました。国立大学の土地、元は国有財産、国民共有の財産だった、そういう土地を企業のもうけに利用させていくことでいいのかというのは問われていると思うんです。
 そうでなくても、運営費交付金、基盤的経費が減らされる中で、もう本当に資金が足りない、施設維持ができないという大学が出てきているわけです。先ほどちらりと御紹介ありましたけど、この大学の教育研究活動、学生の活動を支えるためにもうクラウドファンディングに取り組むしかないという国立大学が増えているんです。
 クラウドファンディングのマッチングを進める会社のホームページ拝見しましたけど、大学ごとに様々なものを紹介していて本当にびっくりしました。例えば、東北大学の場合、百年間受け継がれてきた植物標本を次世代へ回すためのクラウドファンディングとか、筑波大学、資料費減少で危機、大学図書館に本を購入したい、そのための基金。筑波大学、サッカー場、老朽化した人工芝を張り替えたい。名古屋大学、重要文化財の絵図を守り継ぐ。金沢大学、金沢大学生の一人一人が安心して使えるトイレを少しでも増やしたい。国立大学が教育活動、研究のために必要な標本、文化財の保存、修復、果てはトイレの改修までもクラウドファンディングに頼るしかなくなっている、本末転倒ではないでしょうか。
 国立大学の基本的な機能、設備の維持、整備、これは、施設整備費、運営費交付金始め必要な予算はちゃんと国が責任持って確保し増やしていくべき、そういう問題なんではありませんか。大臣、いかがですか。

国務大臣(盛山正仁君)

 国立大学法人運営費交付金は、我が国の高等教育及び学術研究の水準向上や均衡ある発展を担う国立大学が人材の確保や教育研究環境の整備を行うために不可欠な基盤的経費であると私たちも考えています。平成二十七年度以降は、前年度と同額程度の予算額を確保しております。
 文部科学省といたしましては、国立大学が教育、研究、社会貢献を牽引する役割を果たすべく、基盤的経費である運営費交付金を始めとする必要な予算の確保に全力で取り組んでまいります。

吉良よし子

 必要な予算の確保取り組むと言いますが、法人化されて以降、国からの運営費交付金、もう十年、毎年一%ずつ減らされる、一割減っているって、そういう状況です。その結果、こうしてクラウドファンディングの対象にもならないまま国立大学の学生寮が廃止されたり保健診療所がなくなったり、学食、図書館も含めて、学生、教職員のために必要不可欠な大学の施設がどんどん切り捨てられている実態もあるわけです。
 一方で稼げる大学になれと言いながら、稼げない大学は学生の命さえ守れないと、必要となる経費でさえクラウドファンディングで集めろと、そうじゃなければ淘汰されろと、それが文科省の大学政策なのかということが問われていると思うんです。何より、こういった稼げる大学づくり強力に進めていく、運営費交付金などは減らされている中で、これを強力に進めていくことの中で、学費の値上げとか若しくは軍事研究とか、それもいとわない大学がつくられていくんじゃないかと、そういう懸念はもう山積みなんです。
 まだまだ議論すべきそういう論点はたくさんあるわけで、このまま採決をすることなんというのは絶対にあり得ません。もう徹底審議の上、この法案は廃案にするべきであるということを申し上げて、私の質問を終わります。

<反対討論>

吉良よし子

 私は、日本共産党を代表し、国立大学法人法一部改正案への反対の討論を行います。
 何より、本法案の審議はまだまだ不十分であるにもかかわらず、自民党、公明党、維新の会の多数の力でこの質疑を終局し、そして採決を強行する、このことに強く抗議をするものです。
 学問の自由は、戦前の国家権力による学問の自由への侵害への反省から日本国憲法第二十三条に明記されたものであり、この学問の自由を保障するためには、大学の構成員が大学運営に参加する民主的仕組みとしての大学の自治が不可欠です。この大学の自治への介入を繰り返してきたのが歴代自民党の大学政策でした。
 本法案は、政府が政令で指定する大規模な国立大学に新たに合議体、運営方針会議の設置を義務付け、その会議に中期目標・計画や予算、決算など大学運営の主要方針を決める権限を与える、大学の最高意思決定機関とするものです。文科大臣の承認を経て決められるこの運営方針会議の委員に多大な権限を与えることは、これまで以上に大学の自治を壊し、学問の自由を奪うものになることは明白です。
 そもそも、昨年の国際卓越研究大学法の審議の際には、この合議体の設置について、国際卓越研究大学以外の大学法人には適用しないと答弁していたものが、僅か一年足らずで変わり、対象が拡大されてしまいました。この間、法案審議を進める前提として、その理由や検討過程を野党各党が繰り返し問いただしたのに対し、文科省は公文書がないなどとまともに答えることができないままでした。
 法案作成経過が不透明、まともに説明もできないまま、かつての国会答弁と違うことを進めることは、民主主義として成り立たないし、国民の理解など到底得られるわけがありません。国立大学、大学全般に関わる大学運営の基本、大学自治にも係る重大な方針変更を、法案提出の直前、九月まで広く公表しないまま、一部の学長の意見を聞くだけで進める政府、文部科学省の姿勢は、大学の自治への軽視そのものです。
 今、学問の自由が危機に瀕し、研究力の低下が深刻な状況です。国立大学法人化以降、運営費交付金が減らされ続け、その結果、多くの大学では研究者の雇用が不安定化し、特に若い研究者の安定した職、ポストの数が減りました。競争的資金は増えましたが、資金獲得のために短期的に成果が見込める研究が優先され、大学は疲弊しています。
 その上、本法案で政府や財界の意向を押し付ける運営方針会議を設置することになれば、選択と集中を極限まで推し進め、高コスト、非効率とされる学問分野を切り捨てる、稼ぐためといいながら必要な経費はクラウドファンディングで自ら調達させる、大学の土地を民間企業のもうけに利用させることもいとわない、授業料を値上げすることも、デュアルユースといいながら軍事研究さえいとわない、そういう大学づくりを学内の教職員の意向を無視して強引に進めることになります。
 このような大学への政治的介入をやめ、学問の自由と大学の自治を保障し、運営費交付金始め基盤的経費を確保、増額することを強く求め、討論を終わります。