文化芸術活動支援事業(AFF事業) 減額・返還命令ただす
要約
日本共産党の吉良よし子議員は12日の参院文教科学委員会で、コロナ禍を乗り越える文化芸術活動支援事業(AFF事業)の決定・交付後の交付金の減額や返還命令の問題をただしました。
5日の同委での吉良氏の質問では、AFF事業による交付額の決定後に減額されたケースが明らかになり、その後、概算払いを受けた団体に数百万円規模の返還を命じた例も判明しました。
吉良氏の質問に杉浦弘文化庁次長は、返還命令は39件にのぼり、最高額は700万円で、当初計画からの変更などで交付要件を満たすことが確認できなかったなどの理由を挙げました。
吉良氏は、返還は「事業が継続できるかどうかの死活問題だ」と指摘。実際に相談を受けた例では、当初の計画からの変更などはなく実施しており、実施後に「申請ジャンルが違う」などの理由で減額されるなど、申請者側に問題はなく、「適切なタイミングで申請者が納得し理解できるような説明ができていなかった文化庁側に責任がある」と批判。同事業の課題や改善すべき問題について検証するよう求めました。
末松信介文部科学相は「きちんと現場の方に確認をしてみたい」と答えました
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
では、今日、初めに、コロナ禍の文化芸術支援、AFF事業について伺います。
四月五日の当委員会において、AFF事業について、交付決定後に交付額が減額されたケースが二千四百九十件、九億八千六百万円分もあったという問題を取り上げました。その後、この質問を見たという方から様々な反響や更なる相談も吉良事務所に寄せられたところであります。その中で深刻だったのが、交付決定後に概算払をもらっていた団体に対し、最終的な交付決定額がこの概算払の額を下回ったということで、既に払った概算払を返還してくれと言われて困っているという相談です。
これまで二団体が私のところに相談あったわけですが、確認します。このAFF事業で概算払を行ったうち、その後、返還を命令したのは何件あって総額幾らになるのか、また、一件当たりの返還額の最高額というのはどのくらいなのか、お答えください。
文化庁次長 (杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
返還命令は三十九件で、総額六千二百七十八万九千七百二十円でございます。最高は七百七万三千円でございます。
吉良よし子
三十九件と、まあ件数としては多いとは言えないかもしれませんが、最高額で一件当たり七百七万円と。この六千二百七十八万円を割ったとしても、一件当たり二百万円前後の返還額ということになるわけで、一つ一つの申請団体からすれば、これを払う、返せ、もう既に支払ったものであれば、それを返せと言われるのは、かなり事業が継続できるかどうかの死活問題だと思うわけです。
これら、返還を命令することとなった理由というのは何なのか、これも御説明ください。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
申請者御自身からの報告額の減、それから飲食費など補助対象外経費の領収書が提出されるなど証拠書類等の不備、それから従事人員数が減ったことによる補助上限額の減、そのほか、当初計画からの変更などによりまして要件を満たすことが確認できなかったことによりまして、最終的に確定した補助金額が概算払金額を下回ったためでございます。
吉良よし子
申請者の報告額の減というのは、つまりは、実際に概算払分、全額使用しなくて済んだ分だったと、済んだわけだったと。だから、返還請求されたら当然だし、それについて返すということは何ら問題なくできるのは当然だと思うんですね。問題は、やっぱりこの書類、証拠書類の不備などは、やっぱり御本人は支払われるものと思って出したわけで、それが、いや、払えませんよと言われたということでは、寝耳に水だった方も多いし、かなり返還不可能で困るという方も出てきているのではないかと。
私が相談受けた方の場合は、その他の変更等により要件を満たすことが確認できなかったという方で、申請した企画から実際に行った企画は変更があったというので返還してくださいって連絡が来たというんです。でも、お話を聞くと、申請時から、実施するイベントの方法、内容、一貫して変えていないというんですよ。
例えば、オムニバス映画の上映だということで申請をしたと。で、実際、四本の映画を撮って上映したんですけど、それはオムニバスじゃなくて四本それぞれの映画の上映だから、一本分しか支援できないとされたとか、当初から音楽ライブを撮影した映像を上映するライブ企画をやりますと申請してそのとおりにやったのに、いや、それはライブではなくて上映会だから、ライブから上映会に企画が変更されているから支援できないと言われたとか。
申請時から企画内容は一切変えずに交付決定もされていて、概算払も問題なく支払われたからそのままそのとおりに実施したのに、後になって事務局側からこれは対象外ですとかジャンルが違うとか言われたって納得できないと思うんです。私も納得できません、この話聞いて。
本来だったら、こういうジャンルが違うとかそういう問題というのは申請するそのときに整理をした、交通整理をするべき問題で、そうすればこういう問題出てこなかったと思うんですけれども、こういう適切なタイミングで申請者が納得し理解できるような説明ができていなかった文化庁事務局、これ責任あるんじゃないですか。いかがでしょうか、大臣。
国務大臣(末松信介君)
細かいことについては次長から詳しく説明あるかもしれませんけれども、私自身は、文化芸術団体の皆さんから直接お話を伺う中で、大変な状況に置かれていることは理解をいたしました。
御指摘の点については、申請に先立ち、交付決定を受けていても、先生には申し上げたいんですけれども、実績報告書等の確認時に補助の対象外経費の計上が判明したり、適正な証拠書類が確認できなかったりした場合には補助金が減額になるということとか、補助金の額の確定段階で概算払などの超過分があるときはその返還が生じることをお示しした上で申請者を募集をしてございます。
例えば、飲食の業種さんなんかが全く駄目です、これは対象外になっていますし、それと、結構大きく間違っておられたのは、二〇二一年の経費対象なのに二〇二〇年のものが結構出てきたりとかいろいろしているわけなんですけれども、ただ、今先生おっしゃった点につきましては、ちょっと次長から説明ができるようでしたらさせます。
政府参考人(杉浦久弘君)
失礼いたします。ちょっと補足でさせてください。
今委員から御指摘のあった件のことに絡んででございますけれども、映画制作の場合の要件はどうなっているかというと、主に、一つ目はまず二十分以上の作品であること、二つ目に映倫番号の取得をしてあること、それから三つ目が有料一般公開となっていることと、この三つでございます。昨年の八月の交付決定のとき……(発言する者あり)あっ、いいですか、はい、分かりました。はい、ええ、ということで……(発言する者あり)はい、申し訳ございません。
いずれにしましても、この要件に照らしながらしっかりと事務の方を進めていかなければなりませんので、あとは大臣からのお答えと重なりますけれども、相談会等の機会を通じてしっかりと説明をするということだと考えております。
吉良よし子
あのね、文化庁事務局の責任じゃないですかと、必要な説明していなかったんじゃないですかと言っているんです。
いろいろ要件があるんですよとかおっしゃっているわけです。で、それは事前に言っていたという話もあるわけです。例えばさっきのオムニバス映画も、映倫番号四本それぞれ取っちゃったから一本分しか換算されなかったという話なんですけど、それも事前に、オムニバスでこれ一体の作品だと申請者は思っているわけですから、そういう場合は映倫番号一本にしておいてくださいね、申請はと言っておけばよかった話なんですよ。そういうことをちゃんと事前に言わないままにやっていた、それが文化庁の責任なんじゃないんですかと、こういう返還問題になったんじゃないんですかということを伺っているんですね。
こうしたやり取り、しかも全てメールでやり取りなんです。対面で話し合う機会もなくて、いや、様々な書類出し直すなんていうのをコミュニケーションも試みたけれども、もう既に変更届は終わっていますとか期限が来たからって一方的にやり取り切られて、あとはとにかく返還しろ返還しろと、その催促のメールしか来ないって。いや、もう既にもらった概算払、企画を行う際にもう関係者に支払っていて手元に残っていないし、もうこれ、本当に返すにはこの機に立ち上げた事務所を畳むしかないというところまで追い詰められているというわけですけれども。
やっぱり、こういう問題は文化庁の責任認めて、そういった救済を、こうした一方的な減額とか返還じゃなくてやっぱり救済すべきだし、少なくとも、言い分聞かずに一方的に減額とか返還とか求めるんじゃなくて、申請者が納得できるようにちゃんと対面でコミュニケーション取るべきと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(末松信介君)
今先生からお話ありましたことを認識をいたしまして、ただ個別案件でございます。今先生おっしゃったように、二十分以上の作品で、映倫で、一般公開しなきゃいかぬ、そのような要件がありますから、ちょっと個別のことなので、それはそれでとしてちょっと整理をしたいというように思ってございます。
ただ、文化庁云々については、私自身まだそこのところは確認はしておりませんので、一度確かめてみたいと思ってございます。
吉良よし子
いや、適切なタイミングで適切な説明を行わなかったことの責任があるということを私は申し上げているわけです。
これはこういう概算払の返還の問題だけじゃなくて、前回申し上げた減額の問題だって同じですよ。説明不足が、丁寧な対応が取れていないという問題がもう多々出ているわけです。
先ほど相談あった方は、継続支援事業で支援もしてもらって、新たにライブ配信とかする応援する事業を立ち上げたという方がいるわけです。この回のAFF事業の応募始まったのを見て、自分の取組について背中を押された気持ちだったって、そうおっしゃって申請もしたわけです。それで、申請も認められたからということで頑張って企画もやったのに、最終的には、いや、ジャンル違いですねなんて言って取り下げられて、減額じゃない、返還を迫られて、数百万円。もうこれは、本当にコロナを乗り越えて頑張ろうとしていた方の気持ちを打ち砕く仕打ちだと思うわけで、こうした問題、AFF事業繰り返し起きているわけで、この問題、このAFF事業の問題、どこに課題があって何改善すべきかやっぱり検証すべきと思いますが、大臣、いかがですか。
国務大臣(末松信介君)
いろいろと、第一次のこのAFFにつきましても審査が遅いとかいろんな御意見をいただいてございました。
AFFにつきましては、予想をはるかに上回ります一万件を超える団体から申請をいただいて、既に七千件、七千団体への支援を実施する中で、今私申し上げたように、時間が掛かっているということ、決定まで、それと、申請書類が煩雑であるということとか交付決定額が今おっしゃったように減額されたとか、いろんなお声もございましたけれども、こういった意見を踏まえた上で、AF2では、その審査体制の拡充であるとか、随時申請とか、審査の集中回避とか、申請書類の一部免除とかそういうことをやっておるんですけれども、丁寧さに欠けるとか、あるいは対面でなくてメールで全部やり取りやるとか、大事なところについてそごがあるということがあるようでしたら、こちらの方でもうちょっと、きちっと現場の方に確認をしてみたいと、私そのように思っています。
吉良よし子
検証をしっかりしていただきたいと思うんです。このままだと、文化庁の支援事業というのは手挙げない方がましだと不信が関係者に広がってしまう問題ですから、検証をしっかりしていただきたいということは重ねて申し上げたいと思います。
以下、後編(就学支援の成績要件)へつづく