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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第200臨時国会

【給特法改正案参考人質疑】変形労働 教員望まず

要約

 参院文教科学委員会は28日、安倍政権が導入を進める、公立学校教員に対する「1年単位の変形労働時間制」についての参考人質疑を行い、郡司隆文・全日本教職員連盟委員長、西村祐二・岐阜県公立高校教諭、東川勝哉・日本PTA全国協議会顧問、相原康伸・日本労働組合総連合会事務局長が意見陳述しました。

 日本共産党の吉良よし子議員の質問に対し、4人中3人の参考人が、変形労働時間制は総労働時間削減のための優先課題ではないと表明しました。

 西村氏は、変形労働時間制について「大多数の教員は望んでいない。教職の魅力を向上させるものにもならない」と批判。相原氏も「(制度導入には)高度な勤務時間管理が必要であり、現状、導入は困難だ」と述べ、郡司氏は同制度により管理職の業務負担が「増える」と認めました。

 吉良氏が文科省主導の業務削減の必要性について質問すると、西村氏は「学習指導要領が、20年前、10年前、今と比べてみると、再び増えている」とし、「この削減も必要だ」と指摘しました。

 西村氏は「人生をかけて人の人生に向き合う」ことが教職の魅力で、そのために私生活を充実させることが大切だと強調し、「今国会で法案成立を急ぐべきではない」と主張しました。

しんぶん赤旗2019年11月29日号より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様、長い時間にわたって貴重な御意見伺わせていただき、ありがとうございます。
 教員の長時間労働の是正が喫緊の課題であると、これはもうここにいる全ての皆さん共通の認識だと思うわけです。一方、大臣は、今回の給特法改正案、特に変形労働時間制については、総労働時間の縮減にはつながらないと答弁をされているわけです。それでは意味がないんじゃないか、むしろ問題が大きいのではないのかという思いを持つわけですけれども、改めて、この教員の長時間労働を是正する、総労働時間を縮減するという目標を達成するために優先して取り組むべきは何なのかと、変形労働時間制がその答えなのかどうなのかということについて、四人の参考人の皆さんから意見を伺いたい。変形労働時間制が総労働時間縮減のために優先的に取り組む課題だと思うのか、そうでないのなら、それは、やるべきことは何なのか。できれば一言ずつ端的にお答えをいただければと思います。よろしくお願いします。

全日本教職員連盟委員長(郡司隆文君)

 では、一言でということなので。
 最優先かと言われれば、そうではありません。一番最優先すべきは業務改善だと思います。
 以上です。

岐阜県公立高校教諭・筆名「斉藤ひでみ」(西村祐二君)

 変形労働時間制は本当に必要なく、壮大な無駄だと思っております。そうではなく、やはり業務を減らす、そして人を増やすために、時間外の部分が一体どういう扱いなのかというこの給特法の抜本的な見直しについて議論すべきだと考えます。

公益社団法人日本PTA全国協議会顧問・中央教育審議会初等中等教育分科会学校における働き方改革特別部会前委員(東川勝哉君)

 きっかけになるという意味では、この変形労働制、一年単位の変形労働制は、ハードルが高いにしても取り組むべきかなというふうに考えています。

日本労働組合総連合会事務局長・中央教育審議会初等中等教育分科会学校における働き方改革特別部会前委員(相原康伸君)

 休日のまとめ取りという仕組みに魅力を感じる先生もおられるかもしれません。これは全くは否定できませんが、健康安全配慮は日々の中で培っていくというのが私は原則であろうと、このように思います。

吉良よし子

 優先して取り組むべきは変形労働時間制ではないというのが多数の意見だったかと思いますし、そのほかにやるべきこともたくさんあるというのが実情だと思うわけです。
 先ほど来、西村参考人からは現場のお話聞かせていただいていて、大変これは重大だなと思うんですけれども、例えば、この変形労働時間制を導入することが教員の業務を増やす可能性が大きいとの指摘があったかと思います。私もこの同様の懸念を持っているわけなんですけれども、それ具体的にどういうところなのかというところと、むしろ今文科省がやっていることを鑑みると、新学習指導要領などで授業時数が増やされているとか、若しくは全国学力テストや教員免許の更新制など、負担が増やされることばかりが進められていっているわけですが、こういったものを削減するということがもうより一層必要になってくるんじゃないのかと思ったりするのですが、現場にいて西村参考人はいかがお考えか、その点について、業務削減の辺りについてお答えいただければと思います。

参考人(西村祐二君)

 まず、変形労働によって業務が増える問題というのは現に発生しようかと思います。八時間分の仕事が終わらずに、今三、四時間の残業が発生していると。今度九時間になったときに、命令できる一時間が増えるということで、何らか命令される業務が発生するかと。若しくは、そういった業務が、そういった命令が発生しないようなこともあるかもしれませんけれども、そういった場合に、結局その後の残業時間というのが全く規制が外れているような状態にあります。そうなってくると、結局残業時間というのは残ったままで、総労働時間は全く変わらないか若しくは増えるかという、減ることはないということをお伝えしたいです。
 さらに、国に対しては、学習指導要領の問題。学習指導要領が増え続けたという問題がありまして、二十年前からどんどん仕事が増えてきたんじゃないかと言われている一つの証左になるのかなと思うんですけど、これが二十年前の学習指導要領です。(資料提示)それが十年前こうなりました。で、十年前から今回にかけてこうなりましたと。この間、人もまた教育予算もほとんど増やされてこなかった現状かなと思います。ですから、今後学習指導要領をいかに削減していくのか、これはもう十年を待たずに五年後に削減するというようなぐらいの姿勢を見せてくれたら、また現場からの信頼を獲得できるのかなと思います。

吉良よし子

 業務削減といったときに、現場任せにするんじゃなくて、文科省が主導でやるべき仕事があるということがよく分かったお話だったかと思うんです。
 また西村参考人に続いて伺いたいと思うんですけれども、先ほどお話の中で、授業準備をやる時間というのは、もう現在の学校の勤務時間の中ではほとんどないんだと、結局、自分のプライベートな時間をそこに費やすことになってしまっているというお話もありましたし、また、最初のお話の発言の中でも、この授業準備をちゃんと労働だと、労働時間だと明確にして、それを定時内に確保できるようにしていただきたいとの発言もあった。これも本当に重大な問題だと思うわけです。
 参考人は日々授業を大切にされて、十分な準備が欠かせないと努力されていると伺っているわけですけれども、じゃ、実際にはこの授業準備、どのくらいの時間が必要なのか、どのような思いでその準備に当たっておられるのかお話をいただきたいですし、また、この変形労働時間制が導入されることとなったらその時間どうなってしまう懸念を持たれているのか、その点も併せて伺えればと思います。

参考人(西村祐二君)

 ありがとうございます。
 先ほど部活の話なんかも出ましたけれども、生徒に対して一日六時間の授業が、一時間一時間が物すごく目をきらきら輝かせるような時間を提供できれば、それだけで学校生活の満足はあるのではないかと考えております。そのために私は私生活の時間も授業準備をやっておりますが、大体平日一時間から二時間、土日も六時間から八時間やっております。岐阜に住んでおりますけれども、名古屋に買物に行こうなんというのはもう一年に一回もあるかないかぐらいのものです。本当に、常に何か学校の仕事をやっているというのが現実であります。
 もう一つ何か質問が。

吉良よし子

 済みません。じゃ、併せて、変形労働時間制によってその授業準備の時間が逆に削られてしまう懸念があるのではないかという指摘もあったかと思いますが、その辺についても伺えれば。

参考人(西村祐二君)

 変形労働によって、今、私は、じゃ家に帰って二時間頑張ってあしたの授業準備しますとなっていますが、定時が延びて、学校の中でやらないといけない業務が増えてへとへとになって家に帰ると、今まで二時間やっていた授業準備をもう今日は一時間でいいかというふうに、私もそうなると思います。ということで、これも授業の質が下がることはあっても上がることはないんだということをお伝えしたいです。

吉良よし子

 まさに変形労働時間制で定時が延びることによって逆に授業の質が下がるようなことがあっては、もう本末転倒としか言いようがない事態だなということがよく分かったと思うわけです。
 相原参考人にも幾つか伺いたいと思うんですけれども、そもそもこの変形労働時間制、現状では導入するのは困難ではないかというお話が最初にありました。連合で行われた教員の勤務時間に関する調査結果というのも読ませていただいたんですけれども、勤務日平均五十二時間、週休日で平均三・二時間働いているとの結果だったということですが、つまりは上限ガイドラインの遵守が変形労働時間制の導入の大前提だとするならば、この連合の調査結果を見ても、今の勤務時間を十時間以上削減しなければもう導入できるような状態にないと思うんですが、やはりそういうことでよろしいのか、聞いた実態もあれば併せてお答えいただければと思います。

参考人(相原康伸君)

 ありがとうございます。
 今委員がおっしゃったような勤務実態調査の結果は既に出ております。それを前提にしたときに、変形労働時間制の導入については、様々な職場段階でのハードルを設けていかないと現実的な導入というのはなかなか相当程度困難な印象を持ちますというふうに申し上げたのはそれらの背景からです。ただ、休日まとめ取りということに魅力を見出す先生がおられるかもしれないということ自体は個々人の判断ですので、そのこと自体は私は否定できませんが、導入における条件は相当程度厳しいものがある、若しくはそれがないと導入しにくいのじゃないかということをまとめて申し上げた次第です。

吉良よし子

 やはり、現状、導入するには相当なハードルがあるというお話だったかと思います。
 あわせて、やはりこうした高度な管理も必要だと、変形労働時間制を導入するにはというお話もあったわけですけれども、ということは、つまり勤務時間の把握、正確な把握ということが、これも大大大前提になると思うわけです。
 一方で、先ほど来ありますとおり、学校現場ではタイムカードの導入が進んでいないとか、若しくはタイムカードが入っていても時短ハラスメントと呼ばれるような虚偽の記録の実態が蔓延しているなどの話を私も聞いているわけですが、参考人の方でその辺りについて聞いている実態などありましたら、また、時間管理把握の必要性について、あれば伺えればと思います。

参考人(相原康伸君)

 ありがとうございます。
 今回の答申の中で私が前進だなというふうに思っている点は、在校等時間を把握するということを明記した点です。この態度をはっきりさせたことは大きな前進だというふうに思います。ただ、そのツールと背景が整っていないというのが今の委員のおっしゃっているところなので、それが完備されない限り浮いた話になっちゃうなというふうに思っているところです。
 あと、高度な管理というのは、変形労働時間の点などでいうと、育児や介護でしたり配慮が必要な教員を除外した上で実施するということが前提になってきますから、日々が延びますので、ここのところについてきめ細かい管理ができていかないと、一人一人の働く人たちに目線を落とさないと本当に難しい制度なのだというのもよく理解された方がいいと私は思います。

吉良よし子

 高度な管理の必要性ということのお話ありましたが、重要な指摘だと思うんです。結局、育児や介護をしている教員が現場にいて個別の配慮をするといった場合に、要するにその一人一人の教員の状況に合わせて、それぞれの管理を管理職なりがやっていかなきゃいけないという話になるわけですよね。となると、変形労働時間制といいながらも、それ導入した場合には、結局その管理職、学校現場の校長や副校長の業務の負担が相当に増えるのではないかという懸念も出てくるわけですけれども、それについて、もしよろしければ郡司参考人、業務増えると思うかどうか、また、現在、管理職、管理職もいらっしゃる組合だと伺っていますので、また現時点で副校長がとりわけ長時間労働、長い状況になっていると思いますが、その点についても伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

参考人(郡司隆文君)

 変形労働時間制を導入したときに負担が増えるかどうかということ……(発言する者あり)あっ、管理職の。
 基本的にはマネジメントするわけですから、今まで全くやっていなかったものをするわけですから、それは増えるに決まっているのかなと思います。
 以上です。
 あと、何でしたか。

吉良よし子

 多岐にわたって申し訳ありません。
 改めて、現状の副校長が、やはり勤務時間とりわけ長くなっている現状があると思うんですが、その今の管理職の勤務負担についても併せて伺えればと思います。

参考人(郡司隆文君)

 そうですね、教頭、副校長というのは、主に地域との窓口になる業務が非常に多いのかなというふうに思っております。そういった意味で、先ほど校長のお話をさせていただきましたが、そのような観点から、地域とのものであったり、校内についてももちろんなんですけれども、業務改善をしていかなくちゃいけないというのは、それは当然なのかなというふうに思います。

吉良よし子

 要するに、現状も管理職はとても勤務が多くて長時間労働になっていると。更に変形労働時間制で高度な管理が必要となる新たな業務が付加されるとなれば、それは教員のみならず管理職にとっても多大な負担になる懸念のある制度だということが明らかになったことだと思っております。
 西村参考人にもまたもう一度伺いたいんですけれども、文科省は、この間、教員不足も問題だということをしきりにおっしゃっていて、今回の給特法の改正によってそれが解消されるのではないか、それで教職の魅力が一層発信できていくのではないかと、そのような答弁もされているわけなんですけれども、一方で、参考人からは、この変形労働時間制を入れることこそが教職の魅力を更に失わせるものだというお話がありました。これ重大な指摘だと思うんです。
 改めて、この教職の魅力とは何なのか、今その魅力を失わせてしまっているものは何なのか。教員志望の学生の皆さんの声、聞いていらっしゃるようでしたら、そういう声も紹介していただきながら、教職の魅力についてお話をしていただければと思います。よろしくお願いします。

参考人(西村祐二君)

 やはり自分の人生を懸けて人の人生に向き合うという、これは何物にも代え難いです。そのためには、やはり私生活の時間で自分が充実した時間を過ごして、こんなところに旅行に行ったよですとかこんな経験したよということを生徒に伝えていって初めて人というのは成長していくものだと感じています。それが、今は私生活も含めて本当にゆとりのないような状況に置かれている中で、そういった魅力の部分というのがなかなか感じられないようなこともあるのかなと思います。
 大学生たちに聞いても、やはり、何でこんな変形労働時間制なんかやろうとしているのという、政府は改善する気がないんだなと感じていますですとか、それから、そもそも大学生というのはブラックな職場というのにすごく敏感になっています。就職先を決めるに当たって、まずはそこがブラックかそうでないかというのを検索すると。
 そういった中で、やらなければいけないものでもうきゅうきゅうになっている教育現場というのは、仮にそういった人と人との触れ合いを通じて自分も成長できるとか、そういった魅力は現にあるとしても、それを上回るだけのマイナスが強いんだということです。
 大学生がとにかく最近いろんな声を上げてくれていますので、一点紹介しますと、現段階でも労働環境が悪いとされているのに変形労働時間制の導入は論外だと思います、ブラック企業、ホワイト企業の有無が職業選択における大きな決定要素であり、職業の選択肢が非常に増えてきている中、教員が選ばれないのは至って自然だと思います、こういうふうに言っております。
 ですから、まずは、この私生活を奪われてやらなくてはならない業務でいっぱいになっているという、ここに向き合わなければ、夏休み十分にゆとりがあるよという、教職だけはこういった特殊なすてきな部分があるよということを幾ら強調されても、もう倍率は回復しないと思います。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 夏休みをちゃんと取れるようにするというのは、どの職場においても当然のことだと思うわけです。それができていない今の教員の職場が異常なわけであって、それを正すためにやるべきは、やはり変形労働時間制でまた更に現場に負担を課すということではなくて、やはり文科省主導で業務を削減するとか教員を増やすとか、やるべきことはあるんじゃないのかなということを改めて感じましたし、そのことも引き続き審議の中でただしていきたいなと思いました。
 今日は、四人の皆さん、ありがとうございました。