loading...

吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2020年・第201通常国会

【著作権法改定案 参考人質疑/対政府質疑】「自由なSNS」周知を

要約

 日本共産党の吉良よし子議員は2日の参院文教科学委員会で著作権法改定案について質問し、海賊版サイトに誘導するリンクを掲載したリーチサイト規制により、SNSなどを通じた自由な発信が制限されないよう求めました。

 吉良氏は「リーチサイト規制は必要」としつつ、リンクの引用はSNSなどを通じて一般的に行われており、「SNSでの発信そのものが制限されてはならない」とただしました。

 萩生田光一文部科学相は、悪質なリーチサイトと評価できる場合は規制するが「一般的なSNS等における発信は引き続き安心して行える」と答えました。

 吉良氏は、丁寧な周知を求めるとともに、海賊版サイトのリンクと知らずに投稿した場合などは規制の対象とならないかを確認。文化庁の今里譲次長は「侵害コンテンツか否かを意識せず、たまたまリンクを提供してしまった場合は規制の対象とならない」と述べました。

 現在は映像や音楽の違法著作物のダウンロードは刑事罰が科されますが、改定案では違法ダウンロードの対象を全著作物に広げます。当初案にはネット利用の萎縮や人権の制約への懸念が広がり、二次創作物などを除外する規定が入りました。

 同日の参考人質疑で吉良氏は、当初案への懸念は解消されたか質問。日本漫画家協会の赤松健常務理事は、「当初案は(規制)範囲があまりにも広すぎ、われわれを守るための法律が、われわれの自由を制限してしまう部分が相当あった。そこは改善された」と述べました。

しんぶん赤旗2020年6月4日号より抜粋

議事録

<参考人質疑>

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 まずは三人の参考人の皆様、本日は貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。
 さて、本法案については、海賊版対策ということで、違法配信からのダウンロードの違法化、刑事罰化を、音楽、映像だけでなく全ての著作物に拡大すると、これが大きな焦点の一つかと思っております。
 この本法改正にかかわらず、このダウンロードの刑事罰化そのものについての考えをまず伺いたいと思うわけです。
 先ほど来、参考人の皆様からダウンロードを刑事罰化することの意義というところは一定語られたと思うんですけど、サイバーロッカーとの関係などからですね、あるんですけれども、じゃ、そもそもこれ刑事罰化したこと、刑事罰化することによってどれだけの効果、どのような効果が生まれると考えられるのかということと、もう一点、やはりこの刑事罰化することによる生まれる懸念、デメリットとしてはどのような問題が考えられるかという点について、三人の参考人の方々それぞれの御意見伺えれば幸いです。お願いします。

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事(後藤健郎君)

 今回の改正案につきましては、まず、違法にアップロードされたことを知りながらもダウンロードをする場合というまず規定がございまして、さらに除外規定というのが幾つも作られているわけでございまして、その辺で私は、やはりこれを、まあ刑事罰が付いていますが、これに対して刑事告訴という話はまずないと思うんです。やはりこれは抑止効果という形で、やはり家庭内での多分ダウンロードでしょうから、その辺は分からないという面があろうかと思います。
 ただ、一点あるのが、アップロードした者を検挙して、それでダウンロードの事実があった場合、アップロードの方が刑が重いですからダウンロードを立件することはないかもしれませんけれども、アップロードした情報がない場合ですね、消えちゃった場合、ダウンロードの事実しか残っていない、証拠が残っていない場合は、ダウンロードでも刑事事件があり得るのかなというふうには思っています。

公益社団法人日本漫画家協会常務理事(赤松健君)

 ダウンロードの刑事罰化についての是非なんですけど、まず、映画とか音楽ではもう既にこれ導入されているので、ここでもし漫画がオーケーよということになると、どんどんやりなさいよというような誤ったメッセージが伝わってしまうので、それは非常によろしくないとは思っています。
 先ほど山田議員の方から出た十要件で助けられないほどの対象に関しては、これ、刑がないとこれもう効き目がないというようなことを考えているので、非常に適切な感じになっていると思います。

早稲田大学法学学術院教授(上野達弘君)

 ダウンロードの刑事罰化に関しましては、その効果、もちろん課題になるところかと思います。ただ、平成二十四年のときに録音、録画について刑事罰を導入したときには一定の効果があったという報告があることは承知しております。
 また、今回、録音、録画以外について刑事罰を科すことにつきましては、元々の有償著作物という限定に加えて反復継続という更なる限定を加えているということもありますし、また、附則五条では刑事罰の適用に当たっての配慮を求めるということもしておりますので、それなりに、それなりにといいますか、非常に念の入ったものだというふうに認識しております。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 一定萎縮というか、自由を奪わない範囲での効果もかなりの効果があり得るというお話だったかと思うんです。ただ、やはり十分な説明がないままダウンロード全般が駄目だよというところだけ聞いてしまうと、利用者の萎縮、過度な利用制限生まれかねないという点ではやはり注意が必要じゃないかなということは思う次第です。
 さて、著作権というのは、権利者の許諾さえあればいかなる利用であれ許諾されるし、権利制限規定により権利者の了解を得ずとも著作物の利用を認められている場合もあるわけです。また、明示的に許諾がない場合であっても、二次創作とかパロディーとか、結果として許諾されているものも一定あるというふうに理解しております。こうした規定や運用というのが、過度に萎縮することなく著作物の自由な利用につながって、今でいうと実際に二次創作とかパロディーといったものは一定新たな創作文化につながっている面もあるというふうに聞いているわけです。
 本法案では、こうした二次創作やパロディーに関する違法化というか、新たな規制をするようなことにはなっていないとは承知しているんですけれども、例えば今後の在り方として、違法配信からのダウンロードであれば、もうその中身が二次創作であれパロディーであれ、何でも違法化、刑事罰化なんてことにはしてはならないし、そういうやり方は問題じゃないかなと思うんですが、この点について、赤松参考人、また上野参考人、いかがお考えか、お聞かせいただければと思います。

参考人(赤松健君)

 特に二次創作に関しては世界でも相当うまくいっているのが日本でして、例えばパロディーの合法化とかフェアユースとかというものを導入しようという話もあるんですけど、とにかく現在盛り上がっているので制度を変えると逆効果になるということから、非常に二の足を踏んでいるということがありますよね。
 以上です。

参考人(上野達弘君)

 今回のダウンロード違法化の対象からその二次創作のダウンロードというのは除外されているわけでありますけれども、これは今回の対象になっているダウンロード違法化の部分でありまして、元々からある録音、録画によるダウンロードにつきましてはそのような限定がないことですから、その違いがどこにあるのかとか、そっちも考えるべきじゃないかという考えもあるかと思いますし、また、そのパロディー自体につきましては日本法で今どのような対応になっているのかというのは不明確な状況にあります。これも立法しようと考えたことはあるんですけど、定めたら定めたで不明確になって、余り明確だとそれもまた問題だというので、課題としては残っていると思いますので、今後の検討、必要なのではないかと思っております。

吉良よし子

 二次創作やパロディーについても今後の検討課題ということもありましたけど、今のところは二次創作に関しては特にうまくいっているというお話であったと思います。大変参考になりました。
 それでは、また赤松参考人に伺いたいと思います。
 先ほど来も強調されているとおり、海賊版対策というのもとにかく進めてほしいという思い、立場というのは大変よく分かったわけですが、一方で、先ほど来議論にありますとおり、昨年の政府が提出予定だった当初案については一定批判的といいますか、提言も出されたと伺っています。昨年二月の日本漫画家協会の声明の中では、表現や研究などで萎縮はもとより、人権の制約につながることが決してないように、丁寧で十分な審議を要望すると表明されていたと伺っているわけですけれども、つまり、当初案では表現や研究などでの萎縮若しくは人権の制約につながる部分があったということかと思いますが、その当初案についての懸念について具体的にどのようなことだったか改めて御説明いただきたいのと、先ほど来それは解消されたという話もあるわけですが、どのように解消されたと評価されているのかもお聞かせいただければと思います。

参考人(赤松健君)

 当初の懸念では、余りにもこの範囲が広過ぎて、我々を守るために作られた法律が我々の表現の自由を制限してしまうような部分が相当あったんですよね。そこのところを批判し、批判ではないな、ちょっとどうかなということで、批判はしていないです。前向きにやって、こういうふうに変えてもらいたいなみたいな声明を出したんですけれども、そこのところはばっちり改善されているので今回賛成に回ったわけですけど、元から反対という立場ではありませんでした。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 上野参考人にも伺いたいと思います。
 先ほど来、当初案についての指摘、一定の指摘があったということですけれども、その点についての懸念というのはもう本法案で解消されたとお考えか、具体的にあればお願いします。

参考人(上野達弘君)

 最初のお話の中でも少し触れたんですけど、諸外国では私的複製というのは元々適法なソースからしなきゃいけない、違法なソースだということが分かっているのにそれを基にしちゃいけない。それはダウンロードだけじゃなくて、本をコピーするとかCDをコピーするとかでも海賊版のものから私的複製をするというのは許されないと、シンプルにそうなっているわけなんです。それは一つの考え方になっているものが多いんですけれども、そういう観点からすると、もっと、日本法はちょっと甘いんじゃないのかという見方もあるかもしれませんが、やはり日本人の、さっきも申しましたけど、日本人の場合は、そういう形でざっくりとルールができてしまいますと、これにやっぱり従わなきゃいけない、間違いがあっちゃいけないというふうに考えることが多く、萎縮するという可能性は十分にあるんだろうと思います。
 ですから、今回、その一年間、たくさんの除外規定を設けまして抜いていったということは、大変意義のあることかと思っております。やっぱり日本人は少しずつ進めていくと、これ一足飛びに行くのではなくて、今後また問題があるようであれば、効果を検証しながら再検討していくのが望ましいのではないかというふうに思っております。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 この議論を聞いておりましても、やはりこうした著作権について改正をするというときには、権利者、利用者、様々、研究者も含めて、利害関係者が多くいる下で、そこでのバランスを取るというのが大変重要じゃないかなということも思うわけです。今や多くの国民が何らかの著作物を利用する実態もあるわけですから、こうした今回の法案提出のプロセスで見られたように、著作権について国民の理解を深めるためには、こうした権利者、利用者、研究者らが大いに幅広く議論に参加して、起こり得る懸念事項の解消のためにある程度時間も掛けて協議を進めるというこのプロセスは今後も本当に重要じゃないかと思うんですが、こうした著作権についての議論の進め方、プロセスについて、それぞれ三人の皆様から御意見いただければ、今回の改正の経緯も含めて御意見いただければと思います。

参考人(後藤健郎君)

 先生おっしゃるとおりだと思いまして、たしかこの法律でも附則が付いていたと思いますので、ある程度の期間を経てそれをどうチェック、精査するということが入っていると思いますので、常にそのような形は取っていくべきだと思っております。

参考人(赤松健君)

 SNS時代ですので、もう権利者自らがそういうようなことを自分の絵とか口で説明していくということがこれから必要になると思っています。

参考人(上野達弘君)

 従来から、政策形成におきましては、審議会等におきまして有識者とか権利者とか様々な声が協議されているところかと思いますけれども、最近はそれを超えまして、例えば広告との協議、協調ですとか、あるいは検索エンジンとかプラットフォーマーと権利者の皆さんで協議されているとか、そうした法律とか制度をつくることも大事ですけれども、その実際の関係者の取組というのが日本で合っていると思いますし、そうした役割は今後も非常に重要じゃないのかなというふうに感じております。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 やはり関係者がきちんと議論をして懸念事項を解消していくというのは本当にこれからも必要だなということを改めて感じました。
 最後になるかと思うんですが、やはりこの今回の海賊版対策進めるということは本当に大事なことですけれども、今回の改正というのはダウンロードの違法化、リーチサイトなどですが、が中心になっているわけですけど、やはりダウンロードの前にはアップロードというものがあるわけで、先ほど来このアップロードの規制というのは非常に困難だというお話もあるわけですけど、やはりこのアップロードをまた更に厳しく取り締まるということは欠かせないと思うわけです。
 先ほど来いろいろ御意見もいただいているところですが、やはりこのアップロードの規制を更に前に進めるためにはどういうことが必要と思われるか、今後の課題も、また政府への要望も含めて三人の皆様から御意見いただければ幸いです。

参考人(後藤健郎君)

 先ほど来申していますように、もうパーソナルなんですね、もう国境がありません。ということになると、どう対応していくかということになると非常に難しい問題がございます。
 やはりこれは一つの、特効薬はありませんので、総合的な対策を行っていくということが必要であること。さらに、権利者もそれを認識して、共同でお金を出し合って活動する。さらに、政府の支援を得るという形で臨まないと、とても対応できないというふうに思っております。
 以上です。

参考人(赤松健君)

 クリエーターとしては、できることは、アップロード対策としてできることはすごい限られていると思うんですけれども、出版社と協調していろいろな施策、行われているんですけど、一枚岩になって対抗していくというのを読者に見せていくみたいなのがやっぱり総合的には一番役に立つかなと思っています。

参考人(上野達弘君)

 御指摘のように、今回のダウンロードとかリーチサイトというのは、あくまで到達させるリーチサイトは規制するとかダウンロードを規制するということで、大本のアップロードの海賊版サイトを止めるということが一番大事であります。
 ただ、立法上はもうこのアップロードをするというのは違法だということははっきりしておりますので、これ以上刑事罰を更に強めるとかということもなかなかできないと思いますので、その立法を超えた様々な対策というのが重要になるかと思います。
 昨年の十月にも総合的な対策メニュー、その前の年にも、私も知財本部の委員をしておりましたけれども、様々な、広告規制もそうですし、検索サイト等の対策というのもそうだし、今ブロッキングなんかもその一つですけれども、メニューを検討されていると思いますので、そうした中で当事者の方の協調を含めた、日本らしさを持ったような対策パッケージというのを今後も深めていく必要があるんじゃないかと思っております。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございました。終わります。

<対政府質疑>

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 この本法案、著作権法改正案については、インターネット上に違法にアップロードされた著作物の利用を規制することが大きな目的となっております。
 今や多くの方が年齢問わずにスマートフォンを持ち、インターネットを利用して情報を収集するということが生活上必要不可欠となっているわけです。また、SNSを始め、自らの主張、意見、思いなどを広く発信する、表現の場としての機能もインターネットにはあるということです。この国民一般、特に若い世代が日常ふだんに使用するインターネットの利用に一定の規制を掛けるということになるこの本法案については、やはりどのような行為が違法となり、またさらには刑事罰となり得るのか、この審議を通じて明確にしておくことが大事だと考えております。
 そこで、一つ一つ具体的に聞いていきたいと思うんですけれども、まず、リーチサイト規制について本日は伺いたいと思っています。
 この本法案、海賊版対策として、海賊版へと誘導するリーチサイト、リーチアプリを規制するということになっております。海賊版への到達を容易にする、海賊版利用を促進するということになるこのリーチサイトを規制するということ自体は必要なことだと思うわけです。このリーチサイトというのは、海賊版へのリンクを掲載した掲示板などのサイトが対象になるということだと思うわけですが、では、この海賊版へのリンクが貼ってあるならば、例えばツイッターやフェイスブックなどのSNSのアカウントであっても、そのリーチサイトとして規制されることはあり得るということでしょうか。お願いします。

文化庁次長(今里讓君)

 今回の改正案では、インターネット上におけるリンク提供が情報の流通にとって極めて重要な役割を果たしている、このことを踏まえまして、一般的な掲示板やSNSなどを規制対象から除外しつつ、悪質なサイトによる脱法行為を許さない観点から、リーチサイト、リーチアプリを、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの、それと、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものという二つの類型に区分して規定しているところでございます。
 侵害コンテンツへのリンクばかりを多数掲載しているようなSNSにつきましては、それがリーチサイトと評価されて規制対象となる場合もあり得ますが、今委員の御指摘のような一般的なSNSのアカウントによる投稿などが規制される、こういったことは想定していないところでございます。

吉良よし子

 一般的なアカウントは規制されることはないけれども、たとえツイッター等のアカウントであったとしても、そこでもう全てがリーチサイトのリンクが貼られているような状態のアカウントであれば規制の対象になり得るということになるわけですね。
 また改めて確認しますが、ということは、一般の投稿であれば対象になり得ないということは、つまりは、ほとんどの投稿は普通の投稿なんだが、たまたまその投稿の一つにリーチサイト、また海賊版へのリンクを貼った投稿があった場合、これはすぐには、その投稿が一つあっただけではすぐには対象になり得ないということでよろしいでしょうか。

政府参考人(今里讓君)

 今ほど申しましたリーチサイト、リーチアプリの規定というところで、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものという類型があるというふうに御説明を申し上げました。
 これは、例えば侵害コンテンツによるリンクが半数以上を占めるようなサイト、アプリなどについては規制対象となると、こういう趣旨でございますので、御指摘のような、SNSにおいてほとんどの投稿は問題のない投稿であるが、その中で一つだけ侵害コンテンツのリンクを提供するような場合、これは、通常はリンクの提供を行う場がリーチサイトとは評価されないため、そこでの侵害コンテンツのリンク提供は今回の規制対象とはならないというふうに考えてございます。

吉良よし子

 対象とならないということでした。ただ、このリンクを貼るという行為というのは、ツイッター上等ではよく見られる行為なんですよね。自らの思い、主張などと併せて新聞記事などのリンクを貼ると、一般的に行われていることです。
 こういう貼る行為ということで考えたときに、例えばツイッター上に新聞記事等のリンクを貼ると、そのリンク先がどういうものか全く意識をしないままタイトルだけを見てぱっと貼ってしまったと、ただ、それがたまたま海賊版、違法にアップロードされたリンクだった、そういう場合もあると思うんですが、それももちろん対象にならないということで、確認です。いいですか。

政府参考人(今里讓君)

 リンク先のコンテンツが侵害コンテンツであるか否かをリンク提供者が判断するのは容易でない場合もあることから、今回の法案では、侵害コンテンツであることを知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合のみを規制することとしています。
 このため、御指摘のように、リンク先が侵害コンテンツか否かを全く意識せずにたまたま侵害コンテンツのリンクを提供してしまった場合は、通常、規制の対象とはならないものと考えられます。

吉良よし子

 対象にならないと。
 もう一個聞きたいと思います。特に最近、公式サイトに似通った偽サイトというものもあるわけです。だから、相当意識的に公式なもののリンクを貼ろうと思っていて、ちゃんと調べもしてリンクを貼ったんだが、実は、この正規版のサイトのリンクを貼ったつもりだったんだがそれは偽サイトのリンクであった、それが例えば違法にアップロードされた著作物になっていたという場合もあり得ると思うんですが、それはどうなりますでしょうか。

政府参考人(今里讓君)

 先ほど申し上げましたとおり、リンク先のコンテンツが侵害コンテンツであるか否かをリンク提供者が判断するのは容易でない場合もあることから、今回の法案では、侵害コンテンツであることを知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合のみを規制することとしております。
 これに照らしますと、御指摘のように、リンク先のウエブサイトが公式サイトであるかのような体裁を取っていたことから、公式に配信されたものと誤認して侵害コンテンツのリンクを提供してしまった場合、これは通常、規制の対象とはならないものと考えられます。

吉良よし子

 つまり、知っていた、これが確実に偽サイトだと分かってリンクを貼っていればそれは違法になるのは当然なんだけれども、誤認してしまった場合、特にツイッターなんかで、それこそさっき言ったように、一個だけ投稿してしまっていたという場合は対象になり得ないということだったと思うわけです。これ本当に大事な、ネット利用を萎縮させないという意味では大事な確認だったと思うんですけれども、とはいえ、やはりそういうリンクを貼り続けていたことが場合によっては刑事罰の対象になり得ると言われると、相当不安も広がる懸念もあるわけです。
 この本法案は、先ほど来議論ありますとおり、昨年段階で相当様々な懸念が出される中で、当初案から追加修正が加えられたと。このリーチサイト規制についても、非親告罪だったところから親告罪に変更になった修正が行われたと聞いておりますが、この変更された理由というものをお教えください。

政府参考人(今里讓君)

 リーチサイトには様々な類型や規模のものがございます。著作権者に与える影響も多様でございます。
 こうした中で、国民の間では、著作権者の意思にかかわらず公訴が提起される非親告罪とすることへの懸念が強く、パブリックコメントでも、リーチサイト運営行為等に対する刑事罰を親告罪とすべきとの意見も多数示されていたところでございます。
 これを受けまして、様々な関係者、有識者で構成される検討会におきまして取扱いを検討した結果、権利者団体も含めて国民の懸念を踏まえて親告罪とすることに理解を示す意見が大勢を占めたことから、親告罪とすることといたしました。
 なお、親告罪とした場合でも、看過できない悪質なリーチサイト等につきましては権利者が積極的に告訴を行うこととなるため、海賊版対策の実効性には問題はないものと考えております。この点、有識者検討会におきましても、権利者団体の代表の方から実務上の影響はない旨の御意見もいただいているところであります。

吉良よし子

 非親告罪というのは、つまり権利者からの告訴がなくても問題だと指摘できるということなんですけど、親告罪となると、権利者からの直接の告訴がなければ基本的には刑事罰の対象になり得ないということであり、これは大事な、利用者にとっても大事なところなんですが、先ほどお示しいただいたとおり、権利者の側から見ても親告罪の方がいいという声もあると。例えば、我々権利者が自由にコントロールできてほしい、黙認したいときには黙認できると、そんな形で我々は大丈夫なので、権利者を守るために非親告罪にしてあげようみたいには考えないでほしいなどの意見も出された下で、この非親告罪から親告罪に変更されたと伺っております。やはり、この変更というのは権利者、利用者双方にとって大事な変更だったということは考えられるわけです。
 ただ、やはり、このリーチサイトの規制だけではないですけど、この規制について、主にリンクを貼る行為を行った者、つまりネットユーザーに責任を負わせるという形になっているのが本改正案だと思うわけです。つまりはネットユーザーによく調べもしないでリンクを貼らないでねということを言っているんだと思うんですけれども、やはりそうやってユーザーにだけ注意喚起を行うことだけでは海賊版対策の根本解決とは言えないんじゃないかという問題意識もあるわけです。
 ネットユーザーに利用を制限というか、抑制を促すことの前に、そもそもそのユーザーの前に、リーチサイトとか海賊版サイトみたいなものが出現しないようにしていく、間違った投稿を事前に防げるようにそういうリーチサイトへの広告出稿を抑制、停止していくとか、検索サイト、プラットフォーマーと呼ばれる汎用的なウエブサイトの提供者の側にも、今も協力を求めているということですけど、更に協力を求めることで、どちらかというと、利用者というよりはウエブサイト提供者にもこの海賊版対策について一定の責任をちゃんとしっかり持ってもらう、これはもう更に強化していく必要もあると思うんですが、大臣、その点いかがでしょうか。

国務大臣(萩生田光一君)

 海賊版対策に当たっては、御指摘のように侵害コンテンツを提供する側に着目した対策も含め、総合的な対策を講じていくことが重要であると考えております。
 この点、政府においては、昨年十月に作成された総合的な対策メニュー及び工程表に基づき、侵害コンテンツ提供する側と利用する側の両方にアプローチする観点から、関係府省庁が連携して様々な取組を進めているところです。
 例えば文科省では、本法案のほかにも、著作権教育、普及啓発を着実に進めるとともに、情報検索サービスにおいて海賊版サイトが表示されないようにする検索サイト対策について、著作権者等の、検索事業者との協議を支援するなどの取組も実施をしております。また、海賊版サイトの収入源を絶つための広告出稿の抑制について、経済産業省を中心に必要な取組が進められており、広告関連団体において自主的なガイドラインを策定、公表するとともに、広告出稿をすべきでない海賊版サイトのリストの共有が定期的に行われています。
 このほか、関係府省庁が連携して、国際連携、国際執行の強化や民間組織との協働など重要な取組が行われており、今後とも政府全体として効果的な対応を推進してまいりたいと思います。

吉良よし子

 既に取り組まれていることもあるということでしたけれども、まだまだ、やはり単純にユーザーに責任を負わせるという形ではなくて、やはり根本から絶っていく、海賊版、簡単にアップロードできないようにしていく、到達できないようにしていくという対策、是非包括的に進めていただきたいです。
 改めて、このネットというのは今やもう多くの皆さんが一般的に利用するツールになっていて、誰もが気軽にSNSへ投稿する、様々な表現を行うというのがもう日常になっているわけです。そういう中で、様々なツイッター上での発言が政治も動かしていく、社会も変えていくという、そういう実態も実際にはある。
 例えば、この間でいえば、検察庁法の問題であるとか、十万円一律給付だってツイッター上での声がきっかけだったと私は認識していますし、若しくは、クー・トゥーのような女性の服装差別の問題だってツイッターでのつぶやきがきっかけで政治にも反映していった。そういったようなツイッター上の様々な声が政治に届いて政治が動く例もあるわけです。
 そうしたようなSNS上の様々な表現、発言というのをやはりできる限り制限しない、自由な発言を保障するということも必要です。その表現の一つとしてリンクを貼り発信する方法があるわけですが、もちろんリーチサイト規制そのものは必要だけれども、改めて、このSNSを通じた発信そのものはやはり制限はしてはならない、それぞれ個人の自由な発言は妨げてはならないと思いますが、大臣、その点いかがでしょうか。

国務大臣(萩生田光一君)

 御指摘のとおり、リーチサイト規制を含む海賊版対策に当たっては、悪質な行為には厳格に対応しつつも、SNS等における発信の自由など正当な活動に萎縮が生じないよう十分留意する必要があると考えております。
 インターネット上におけるリンク提供が情報の流通にとって極めて重要な役割を果たしていることを踏まえ、悪質で多大な被害を招いているリーチサイトと評価できる場において侵害コンテンツへのリンク提供を行う行為などに限って規制することとしており、一般的なSNS等における発言は、発信は引き続き安心して行っていただけるものと考えています。
 今後も社会状況の急速な変化に対応して著作権制度の改正が必要となる場面も多くあると思いますが、その際にも、幅広いステークホルダーや専門家、国民の皆様の声を丁寧にお伺いしながら、権利の適切な保護と公正な利用の円滑化のバランスが取れた内容となるように対応してまいりたいと思います。

吉良よし子

 是非丁寧に、ネットユーザーの利用を萎縮させないような周知をしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります