【国と地方の役割分担 参考人質疑】自治体は命守る防波堤 医療、災害対策について質問
要約
参院行政監視委員会は17日、「国と地方の行政の役割分担」について参考人質疑を行いました。日本共産党の吉良よし子議員が質問に立ち、医療や災害対策をめぐり、住民の意思を尊重し暮らしを守るために、国が病床削減などの悪政の押し付けをやめ地方自治体へ必要な支援を行うよう主張しました。
吉良氏は、厚生労働省が昨年、病床削減のため424の公立・公的病院を再編・統合するよう医療機関の実名を公表したことに触れ、「国が掲げる医療費のコストカット(削減)政策を地方に具体化させるものだ」と批判。全国の地方自治体から批判の声が上がっていると紹介し、「住民の福祉の増進を使命とする地方自治体は、国のいいなりにならず、命と健康を守る防波堤の役割を果たすべきではないか」と質問しました。
参考人からは「市町村にとって福祉は一番切実な問題だ」「国が一律に要望を出すのは唐突で強引に思う」などの声が続出。伊集院幼・鹿児島県大和村長は、医療機関の確保が離島で安心して暮らすための条件だとして「今のような形で病院再編が進むことのないように、現状維持を確保しなければならない」と述べました。
吉良氏は、自然災害が相次ぐもとで、被災者へのきめ細やかな支援や生活再建の取り組みを自治体まかせにしないよう、国の財政支援を求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、伊集院参考人、木村参考人、そして礒崎参考人、三人の皆様、長い時間にわたりまして貴重な御意見伺わせていただいて、本当にありがとうございます。
とりわけ、伊集院参考人からは、合併しなかった自治体として、村民が安心して暮らせる村づくりというものを目指しつつも、国の政策、とりわけ計画策定などを押し付けられる下で、実質的には言いなりとならざるを得ないようなところでの苦悩若しくは困難についてのお話、リアルにお聞かせいただいたことは本当に大変参考になっている次第です。
その押し付け、言いなりというところに関わってになると思うんですけれども、昨年、厚労省は四百二十四もの公立・公的病院を名指しして再編、統廃合するよう各自治体に迫っているわけです。
これについては、病院、例えば名指しされた東京都の済生会中央病院の院長なども、地域の医療、福祉を支えることが当院の使命で、地域から信頼され頼りにされる中核病院であるとの自負を持って日夜業務に励んでいる、ある日突然、厚労省から再編、統廃合の対象として指定されたことへの不条理に憤りを感じますとおっしゃっているわけです。さらに、共同通信が自治体に行った調査によれば、全自治体の六三%が不満だと、やや不満だと回答して、唐突な公表の仕方は市民の誤解や不安、地域医療の混乱を招きかねないなどの批判の声が上がっていると報じられているわけです。
私、これはやはり国が掲げる医療費のコストカット政策を地方に押し付けて具体化させる事例の一つだと思いますし、その下で地域住民の命や健康が脅かされる懸念もあると思うわけです。
ただ、今、貧困と格差が深刻な現状だからこそ、地方自治体が国の言いなりにならずに住民の福祉増進、命と健康を守る防波堤の役割を果たすべきだし、そうできるような役割分担、体制が必要だと考えるわけですけれども、三人の参考人の皆様それぞれに、この医療問題での国と地方の役割、在り方について現状を踏まえてどうお考えか、御意見を伺いたいと思うわけです。
とりわけ、伊集院参考人からは、この大和村含めた奄美群島、離島での医療体制の現状、様々問題があると思うんですけれども、にも触れていただきながらお考えを伺えればと思います。
よろしくお願いいたします。
鹿児島県大和村長 伊集院幼君
病院の現状につきましては、確かにおっしゃるとおり、これから人口減少が進む中で病院の再編を図っていくということは、我々としては、離島に住む者としては、もう少し地域の条件を鑑みた中で我々は考えていくべきじゃないかというのは県の方に申し上げているところでもございます。
この中でも、やっぱり民間の病院も住民から信頼される地域医療を担っている医療でございますので、そこら辺はやっぱり視野を広める中で離島医療を考えていかなければならないんじゃないかということを我々も機会あるごとに申し上げておりますけれども、公的病院についてはやっぱり今後再編が進んでいくのかなというふうにも我々も危惧しているところでおります。
特に今、離島で、有り難いことに、四年前にドクターヘリが奄美群島を何とか、取り巻き、範囲が広まって本当に安堵しているところでもございます。これまでは、沖縄のドクターヘリ並びに自衛隊の皆さんにお願いをして急患搬送をさせていただいておりました。そういう観点からしますと、やっぱりいろんな関係機関と連携を取りながら、やっぱり住民の安全、安心を確保していかなければならないという思いは、私だけじゃなく、皆さんそう思っているところでもございます。
とりわけ奄美の現状においては、今のような形で病院再編が進むことのないように、我々もしっかり今の現状維持を確保していかなければならないというふうに思っています。
そういう中で、私ども、村におきましても直営で診療所と特別老人ホームを抱えている中で、先ほど来、人材育成も大変ですけれども、やっぱり医療がこの離島の中にあるということが人が住みやすい環境の一つに、条件になっていっていることは、我々も必要性があるのかなというふうに思っておりまして、やはり離島に行くとコンビニもないという中では不便さもありますけれども、安心して住んでもらうためには、やっぱり肝腎要の医療が先駆けてないと住民の人たちも不安を持っているのかなというふうに思っていると思いますので、我々もしっかりこの医療については、この大島本島その島一つでなくて、やっぱりそれぞれの自治体が身近に医療機関をしっかり確保していくことが大事じゃないかというふうに思っているところでございます。
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科専任教授 木村俊介君
この中で、このテーマとして私が特に強く思うのは、平成の市町村合併が二〇一一年に一区切り付いた後で、その後、市町村同士で定住自立圏やあるいは連携中枢都市圏という取組が今盛んになっています。
そのやり方というのが、お互いに自治体と自治体が必要な事務について協力しようということで、協約の形でお互いに約束事を提携して協力をしていくと。そのテーマがもう非常に一貫してはっきりしていまして、一番が福祉について協力をすると、二番目が地域交通について協力すると、これが一貫してこれらの定住自立圏等の構想の取組になっています。それだけ市町村にとって一番、総合病院とどうつなげるか、そのためには地域の足が必要なので、どのように公共交通を走らせるか、そのことが非常に市町村にとっての切実な問題になっているというふうに思います。
そういう意味で、公立病院の在り方自体の問題にも非常に関わるわけですけれども、総合病院とそれから診療所をいかにうまく組み合わせて、その間を地域の足としてコミュニティーバス等をいかに効率的に走らせることができるか、そういうことを当面、自治体は知恵を絞りながら取り組んでいるのが現状であるわけですけれども、そういう自治体の取組を国としてこれは支援をしていく必要がある、その支援の必要性が非常に強い分野だというふうに私も考えています。
中央大学法学部教授 礒崎初仁君
御指摘のとおり、地域医療というのは大変重要だと思います。超高齢社会を迎えるとともに、それから少子化を考えても、以前産科の公立病院がなかなか、診療をストップしたとか、こんなニュースもございました。やはり健康と生命を守るという意味で地域医療は非常に重要だと思います。
それから、地域それぞれ、病院のことは大変関心を持っておりますし、必死にそれを支えようとしておりますので、それを国の見地から一律ああいうふうな情報を出されるというのは、若干唐突あるいは強引だというような気がいたします。地方それぞれ、地域の実情に応じて考えているところ、ここを踏まえた判断が必要ではないかなというふうに思います。
ただ一方、これから公立病院あるいは公的病院をどう維持していくか、これは地域の大きな問題でもあろうかと思いますので、都道府県など広域自治体としてしっかりやっぱり取り組んでいかなきゃいけない課題だというふうには思います。
以上でございます。
吉良よし子
ありがとうございます。
やはり、地域医療は大事だと、住みやすい自治体、各地域で住みやすい条件の一つだという中で、強引な政策の押し付けみたいな形というのは望ましくないんじゃないのかなというのを改めて思いを強くした次第です。
次に、防災対策についての、先ほどもちらりとありましたけれども、国と地方の役割分担についても伺いたいと思うわけです。
おととしの西日本豪雨や昨年の台風災害、阪神・淡路大震災、東日本大震災、様々な自然災害、この間、日本は経験しているわけですけれども、そういう中で、国と地方自治体の役割分担というのはかなり課題が様々出てきていると思うわけです。
私自身も台風十九号の際には都内各地を回る中で様々な課題を感じたわけですけど、とりわけ被災者支援という点でいくと、非常に自治体が様々努力をされていると、被災者抱える自治体が独自に支援制度などを設けて支援している実態があると。一方で、ただ、その被災自治体そのものも被災をしているわけであって、人的にも財政的にも大変な状況にあると。そこにその自治体独自の負担ということを強いるというのは、非常に酷な状況になってしまうんじゃないのかなと思うわけです。
具体で言えば、例えば昨年の台風災害に関わっては、半壊とされた世帯への支援の必要性というのが国会では大きく議論になって、全国知事会の調査でも、多数の半壊した世帯が発生しているにもかかわらず支給対象外となっている、被災者の迅速な生活再建に結び付いていない可能性が指摘されていると。その上で、支援金の支給の対象を半壊世帯にも拡大するということを緊急要望として全国知事会が出しているわけですけれども。
自然災害から住民の暮らしと財産を守るのは自治体と国は共同の責任を負っているわけですけれども、とりわけ自治体は、現場にいるというところでいえば、災害が起きてすぐ機動的かつきめ細やかに支援を行うことが求められるし、一方で、国にはそうした被災自治体が財政面を気にせずに機動的に動けるように支える措置を行うことも求められるんじゃないかというふうに私は思うわけですけれども、こうしたあるべき救援、支援、生活再建を進めるための国と地方の役割分担というのはどうあるのが望ましいとお考えか、三人の皆さん、それぞれお考えをお聞かせいただければと思います。
参考人(伊集院幼君)
我々自治体としては、国からの支援があることにこしたことはないと思っています。
これは、どういう災害が起きるか分からない状況の中で、我々もある程度想定しながら、やはりそれを地域防災計画にうたい、そして、いざ災害が起きたときの支援をどうしていくかということは、我々もその想定をする中でやっぱり計画を立てるべきだろうというふうに思っています。
その中では、最低限私たちがするべきことは、もう災害が起きるという想定で避難をさせることが大事だということが我々も今思っていまして、特にこの奄美を含めた沖縄から南西諸島は台風常襲地帯ということで、台風が起きるたびに避難は今まではしていなかったんですけれども、最近の台風というか大雨も、もう今までにない雨の量とか風の吹き方とかというのがあるように思われて、もういち早く、山裾に住んでいる人たち、それから川沿いに住んでいる人たちのまずは避難をさせていくべきじゃないかということで、我々は、その共通認識をお互いで、自主防災組織の皆さんとやっぱり情報を共有しながら、しっかりその体制を取っていこうということで、我々自治体でも取り組んでいます。
それは、まずは国の支援をもらう前に自治体として何ができるかということをまずやっていかないと、私たちも次の対策も講じれないんじゃないかというのが今我々が進めているところでもございます。
また、そういう中では、私たち全国町村会の中で保険制度ができまして、この避難所の開設並びに消防団の待機につきましては、今まで財政措置もなく、自主財源で単独で今までやっておりました。三、四年前に保険制度ができまして、私なんかはいち早く手を挙げてその保険に加入しまして、有り難いことに、本当に職員の待機の時間外から含めて、消防団の招集から含めて、いろんな形でこの保険制度で手当てができていることは、我々小さい自治体にとっては大きな力になっております。
そういうことからしますと、我々が今まで進めておりました初期に避難の呼びかけをするということが今はもう気にせずにできるようになったということが、財政もしかり、村民が安心してそこで災害の待機を待つということができるということは、我々も大変有り難く思っています。
その中で、やっぱり災害は起きてほしくないんですけど、その中で大きな昨年の台風十九号とかいう被害の中でのやっぱり財政措置は、何らかのある程度の方針を決めていただいて、それに充てて支援をしていただくということが大事ではないかというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
参考人(木村俊介君)
先ほどの私の説明資料の五ページの参考の八のところで、遠隔型連携の自治体の取組というのを表で若干紹介しておりますが、その中にも筆頭で災害時の応援というのを挙げております。
特に、阪神大震災以降は、県と県との災害時の応援協定というのが盛んに結ばれました。その後、東日本大震災以降は、県レベルだけではなくて市町村のレベルでの災害時の応援の協定、こういうものが非常に盛んに結ばれるようになってきている、これが一つの新しい動きであろうかと思います。そして、こういうような遠隔連携というのは、私も今後更に広がっていくことを大変に期待をしているところです。
それから、やはり災害のときには、救助と復旧復興、それぞれの段階があるわけですが、災害救助の段階ですと消防庁を始めとして国の各機関が活動をすると。これは、ある意味でのその法制度やルールの蓄積というのもあるわけですが、今問題になっているのは、特に復旧の段階で非常に委員の御指摘の災害判定等を始めとして復旧に時間を要すると、こういったようなことが今の課題の一つになっているかと思います。
そういう意味で、災害判定等についても、これもやはりある程度の専門家というのが必要ですので、一つ我が国で発達してきているのが災害時に応援をするという手法は発達をしてきているので、救助の応援だけではなくて、こういう災害判定等についての、復旧についての応援というものも更にこれから発達をしていくことが期待をされるのではないかというふうに思います。
それからもう一つは、国の役割でありますけれども、今、新年度から、伺っていますのが、特に自然公物等についてのしゅんせつ事業について国が財政措置を講じて行っていくと。これまで国の場合は新規の事業しかなかなか国庫補助金というのは付かないというのが定番であったわけですが、そういう意味で、なかなか、一度河川の整備をしても、そのしゅんせつについての財源というのが余り見出せなかったということですが、今回からそういうしゅんせつについても力を入れてやっていくということで、国に期待することができるのは、そういうインフラ等についての安全性をより高めていくということが期待されるのではないかというふうに考えています。
参考人(礒崎初仁君)
防災政策における国、地方、あるいは国と都道府県、市町村、都道府県と市町村はまたちょっとこれ違ってまいると思いますけれども、これらの役割分担というのは非常に注意して議論する必要があろうかと思います。
私は、地方分権進めたいと、進めるべきだと言っておりますが、防災政策について地方任せでは困るというのもちょっと特殊性として指摘できるかと思います。
防災といっても、私は三段階に分けて考えるのがいいかなと思います。時間的な経過に沿って、まず予防の段階、それから応急対策の段階、災害が起こった直後の対応ですね、それから復旧復興ということで、三段階考えてみますと、予防とか応急措置は、やはりこれ、地域で何とかしないといけないというのが基本であろうと思います。それぞれ事情も違いますし、リスクの在り方も違うということで、地域でやっぱり考える、それを県や国が応援する、こんな形だと思いますが、復旧復興はそうはいかないだろうと思います。むしろ国が、被災地です、被災地はもう、ちょっと疲弊しておりますので、特に近年のような大災害になりますと、地域で対応するというのには限界がある。ここはやっぱり国の役割が非常に大きいのではないかということで、段階に応じて考える必要があるだろうということでございます。
以上でございます。
吉良よし子
ありがとうございます。
終わります。