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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【大学ファンド法】必要なのはファンドでなく、学生への緊急支援だ

要約

 日本共産党の吉良よし子議員は1月28日の参院文教科学委員会で、大学ファンド法について「3次補正で必要なのは、ファンドへの拠出などでなく、大学院生も含めたコロナで困窮した学生への緊急支援だ」と強調しました。同法は同日の参院本会議で可決・成立。日本共産党は反対しました。

 政府は、大学ファンドを創設し、運用益で研究や若手研究者を支援するとしています。

 吉良氏は討論で、「政府が大学への基盤的経費を削減し、研究基盤を壊しながら、その反省なく、運用損のリスクを大学に負わせる大学ファンドを創設するなど到底理解できない」と指摘しました。

 吉良氏は質疑で、ファンドの支援対象が一部大学にとどまり、「選択と集中」の予算と変わらないと批判。「成果を求める予算配分により、教授から学生まで、目に見える成果・業績をあげなければというプレッシャーがはびこっている」と研究現場の実態を紹介。ゆとりある研究環境確保にむけた予算配分に改めるよう求めました。

 また、基盤的経費の削減で若手研究者のポストがなくなっていると指摘。司書や学芸員など、大学院修了者が進む公的部門の職や場を確保するよう要求しました。萩生田光一文部科学相は「公的部門も含め、キャリアパスを確保し、明確化・多様化に取り組むことは重要」と答弁しました。

しんぶん赤旗2021年2月4日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 新型コロナの感染拡大が止まりません。緊急事態宣言も出されている下、例えば学生たちの生活、ますます困窮していて、更なる緊急の支援も求められている今、なぜこの大学ファンド法案を急いで通す必要があるのか、大いに疑問であることをまず冒頭に申し上げて、法案の質疑に入ります。
 本法案の大学ファンドで行われる支援の一つに、博士課程学生への経済的支援、先ほど来あるとおりあります。今回の補正では、このファンドでの支援に先駆けて、博士課程学生七千八百人分を支援する予算を付けたと伺っているわけです。
 これ、いつまで実施することになるのかと。先ほど御答弁では、ファンドの運用安定するまでは予算計上し続けるという話もあったわけですが、つまり期限が来れば打切りということはしないということでよろしいのか、大臣、いかがでしょう。

国務大臣(萩生田光一君)

 今般の大学ファンドによる支援開始に先駆けて、文科省では令和二年度第三次補正予算案及び令和三年度の当初予算案に合計で七千八百人規模の博士後期課程学生への経済的支援に関する経費を計上しました。博士後期課程学生支援の抜本的な充実を図ってまいりたいと思います。
 これらの取組については、予算成立を待ってできるだけ速やかに支援を開始したいと考えておりまして、また、将来的に大学のファンドの運用益による支援が開始される段階でこれに置き換わっていくことになると考えております。
 その具体的な時期については今後の運用状況を踏まえながら検討したいと思いますが、それまで継続的に続けてまいりたいと思います。

吉良よし子

 この間の国の若手研究生への支援策というのは、やはり期限 ありきの支援が中心だった、基本的にはそれだ、期限が来れば支援打切りと。例えば、博士課程教育リーディングプログラムの場合は、この支援期間が終了した途端にもう幾つかの大学でRAでの雇用が継続しなくなって、もう打切りになってしまったという話を現場、大学院生の皆さん、チェンジ・アカデミアの皆さんから聞いているわけです。やはり期限で区切らない、最後までの支援というのは求められているということを強調したいと思います。
 ただ一方で、先ほど説明あったとおり、大学ファンドの運用安定すれば、これはファンドからの支援に切り替えていくという話だったわけです。ただ、この大学ファンドというのは、株式投資などにより、先ほど来あるとおり、運用益を出すことを前提とした支援となると。
 しかし、じゃ、この運用益が出ない、運用損が出た場合どうなるのかというのはやはり疑問になるわけです。運用損が出た場合、こうした若手研究者への支援が打切りになったりすることはないのですか。大臣、いかがでしょう。

国務大臣(萩生田光一君)

 大学ファンドは、世界トップレベルの研究基盤を構築するための支援を長期的、安定的に行うことを目的として、GPIF等における運用と同様、長期的で分散型の資産運用により、リスクを分散、抑制させつつ、確実な収益を上げることを基本として運営することとしております。
 その上で、運用の状況に左右されて年度ごとの助成額が大きく変動することは大学の運営にとって望ましくないことから、例えば運用益の相当割合を元本に積み立てつつ、それまでの運用実績や中長期の見通しなどに基づき助成額を算出するなど、安定的な助成を確保する仕組みの構築に努めてまいりたいと思います。
 先ほど他の委員とのやり取りでも局長が何度も申し上げましたけど、いわゆるそのリスクバッファーを積み上げていって、そして、少なくとも、大学への支援そのものがもしかすると減額する年はあるかもしれないんですけど、この博士課程の皆さんの支援は、先ほどから申し上げているように、何としても継続的に続けてまいりたいと思っています。

吉良よし子

 博士課程の学生への支援は何としても継続的にという話でした。それは本当に重要なんですけれども、ただ、年度ごとに左右されないとおっしゃいますけど、その運用損が本当に一年限りなのか、二年、三年、四年と続いた場合にどうなるのかということはやってみなければ分からないところがあるわけで、そういう意味では、やはり安定的な財源なのか、安定的に運用できるのかという疑念は拭えないわけなんです。
 そもそも、この支援をするというのは、日本で二十年近くも研究力が低迷しているからだと、それを支援するためだということですが、その原因について大臣は衆議院で大学に財政的基盤がないからだという御答弁もされていたわけです。だとすれば、この研究力低下を防ぐ、研究力を向上するために必要なのは、そういう安定的な運用が保証されない大学ファンドではなく、やはりまずは基盤的経費、つまり運営費交付金や私学助成の拡充すべきと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

国務大臣(萩生田光一君)

 先生御指摘のとおり、それ大事なことだと思います。
 新型コロナウイルス感染症の影響により経済が低迷する中にあっても、世界各国はイノベーションへの投資計画を進めております。我が国としても、リーマン・ショック後の反省を踏まえ、科学技術イノベーション活動への力強い下支えを行うことが不可欠と認識しております。このため、国の資金を活用しつつ、大学ファンドを創設し、その運用益を活用することで世界トップレベルを目指す研究大学や博士後期課程学生等への支援に注力をしている大学への支援を行うこととしています。
 また、このコロナ禍の困難な状況においても、全国の大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施し、広く国民に高等教育の機会を提供していくことが重要です。このため、大学ファンドによる支援だけでなく、国立大学運営費交付金等の基盤的経費についても必要な資金が十分に確保されるように引き続き努めてまいりたいと思います。

吉良よし子

 運営費交付金等の基盤的経費も充実させていきたいというお話だったわけです。
 ただ、実際は、例えば来年度予算見てみれば、運営費交付金十七億円減らされてしまっているということでいうと、口だけになってしまわないんですかということは言いたいんですね。
 そもそも、こうした大学の財政的基盤壊してきたのは誰かというと、やはり政府じゃないのかと。この間、例えば二十四日付けの読売新聞では、鈴鹿医療科学大学の豊田学長も、政府が運営費交付金を年々削減した、それによって研究に専念できる環境が損なわれ、若手にポストが回らなくなったという指摘をされているわけです。なのに、こうした基盤的経費をどんどん削減したことに対する反省なく、運営費交付金というのは簡単に増やせないからとにかく大学ファンドだというこのやり方に私はやはり納得がいかないんですね。
 今回のファンドの支援の対象についても、やはり世界と伍したとか卓越したとか優秀なというような条件が付いて、一部の数大学への支援にとどまると。そういう選択と集中のやり方、この間もずっと続けられてきたわけですけど、そのやり方も変わらないわけですが、やはりこういう予算配分の選択と集中のやり方こそ今改めるべきではないでしょうか。いかがですか。

国務大臣(萩生田光一君)

 ちなみに、来年度の運営費交付金が若干減額になったのは、債務償還が終わるものがあるので、実際の運営費が減るわけじゃないんで、そこは安心してください。
 我が国が創造性あふれる社会として更に発展していくためには、大学における研究や人材育成が極めて重要です。特に、優秀な研究者が多様な分野で腰を据えて研究に専念できる環境を構築するとともに、世界においてしのぎを削っているAIですとか量子ですとかマテリアルといった分野、重点分野や新興・融合分野などにおいてしっかりとした投資を行い、我が国の知的プレゼンスを高めていくことが重要です。
 そのためにも、これまでも競争的資金により国として研究の加速に必要な分野への投資を行いつつ、運営費交付金や科研費などにより卓越した研究を裾野を広く支えてきました。このようなデュアルサポートシステムにおいてめり張りのある支援を行うのは、限られた予算を有効かつ効果的に配分するに当たって必要なことと考えております。
 その際、競争的資金の種類やメニューが多くなり過ぎて研究者としても申請しにくい、申請に時間が掛かるといった指摘もなされているのは事実です。第六期科学技術・イノベーション基本計画に関する議論でも指摘されているとおり、今後、これらの競争的資金の大くくり化などに取り組み、卓越した研究者が競争的な環境の中で優れた研究を進めることができる環境の確立を図ってまいります。
 なお、デュアルサポートシステムによる支援に加え、今回の大学ファンドでは、世界に伍する研究大学の抜本的な機能強化、博士後期課程学生への支援の充実を行うものであり、これらの施策全体で大学における研究や人材育成にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

吉良よし子

 この選択と集中、改めることはしないと、競争的な環境の中で卓越した研究が進むだろうということなんですけれども。でも、この選択と集中、成果をとにかく求めるという予算配分により、研究の現場ではどうなっているかというと、もう教授から学生まで、とにかく目に見える成果、業績を上げなければならないというプレッシャーがはびこっているわけです。もう支援を受けていればいるほどそういうプレッシャーにさいなまれているという声も聞いているわけです。でも、共同、協力して研究を進めるということよりは、もう自分のことで精いっぱいになって、みんな孤立してしまって追い詰められている。
 こうやってプレッシャーで追い詰めるので本当にいい研究ができるのかと。いや、そうじゃなくて、もっとゆとりを持った研究環境をつくる、しっかりと支援をしてあげることこそがより豊かな研究成果につながるんじゃないのかという意味では、やはり選択と集中の在り方を是非見直していただきたいということを強調したいと思います。
 また、基盤的経費の削減によって大学での若手のポストが減少しているということも若手研究者育成の障害になっていることも指摘しておきたいと思うんです。
 ポストがあったとしても任期付きで、大学外の場合でも、大学院修了した人たちが活躍する職や場というのがほとんどなくなっていて、公的部門の方ですら縮小されていっている現状があると。そうじゃなくて、私たちが活躍できる場を、職を、雇用を拡充してほしい、待遇改善してほしいということをチェンジ・アカデミアの皆さんから聞いたわけですけれども、大臣、やはり経済的支援の拡充とともに、例えば学芸員、司書など、大学院修了者が進むような公的な部門の職や場を確保し、待遇改善することでキャリアパスの道を明確に示すことも若手研究者支援として必要と思うんですが、いかがでしょう。

国務大臣(萩生田光一君)

 まず、先生今御指摘になった、確かに科研費などのように年度で切られて結果を出せといって、その結果、あくせくとした研究になるばかりがいいと思いませんので、したがって、創発的研究、十年間腰を据えてという新しいメニューも作らせてもらいましたので、いろんなメニューで組み合わせて研究現場では頑張ってもらいたいなと思っています。
 博物館の学芸員については、その数が年々増加傾向にありますが、他方、課題として、研究の困難さや職員数の不足なども指摘されておりまして、学芸員が十分に研究に打ち込める研究環境に向け、引き続き議論を進めてまいりたいと思います。
 また、図書館の司書についても、その数は全体として、資格者は増加傾向にあるんですけれども、期待される役割の多様化、高度化に伴い、その適切な配置が求められているところです。文科省としても、図書館司書の役割の重要性を踏まえ、各設置者に対し引き続き適切な配置を促してまいりたいと思います。その上で、御指摘の公的部門も含め、若手研究者のキャリアパスを確保し、その明確化、多様化に取り組むことは極めて重要だと思っております。
 このため、文科省では、多様な研究機関において活躍し得るキャリアパスを提示する卓越研究員事業の実施、ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの策定、国立大学における人事給与マネジメント改革の推進などの取組を進めてきているところであり、引き続き大学等におけるポストの確保も含めた若手研究者支援の強化に全力で取り組んでまいります。
 日本遺産というのをつくりまして、全国で百四の事業を採択したんですけれど、そこには是非研究して継続的に後世に残していくために専門的な知見を持った学芸員の配置を望んでいます。
 すなわち、何か指定だけされたけど、あとはもう全然観光の看板にしてしまうんじゃなくて、ちゃんとした学術的な研究続けてもらうためにも、各自治体に、どんどん今減っちゃっていますから、改めて逆に、専門職じゃなくてもいいから学芸員資格を持った人が職員の中に入っていただいて、部署を回りながらでもそのことをちゃんとしっかり勉強してもらうような人もこれからは必要だと思っていまして、そういう後押しもこれから文科省としてやっていきたいと思っています。

吉良よし子

 是非、基盤的経費削減はやめて、ポストをしっかりつくるということを重視していただきたいということを申し上げ、終わります。