【文化財保護法改定案】高輪築堤 全面保存が必要。伝統野菜の種は文化 保護・継承求める
要約
日本共産党の吉良よし子議員は15日の参院文教科学委員会で、文化財保護法改定案にかかわって、伝統野菜の保護に取り組むよう国に求めました。同案は、食文化などの無形文化財・無形民俗文化財も「登録」の対象とし、保護措置を拡大するものです。
吉良氏は、郷土料理など食文化の重要な構成要素である地域の伝統野菜は、1960年代からの農業の大量生産化・規格化で淘汰(とうた)されてきたと指摘。東京で伝統野菜「江戸東京野菜」の復活に取り組まれている事例を示し、「貴重なタネを守り、伝えること自体、大事な伝承だ」として、伝統野菜のタネも文化として守るべきだと強調。萩生田光一文部科学相は「トータルとして守るべきだ」と答弁しました。
吉良氏は、新型コロナの影響で伝統野菜を扱う飲食店が打撃をうけ、生産農家からの納入も落ち、生産継続が困難になるとして、中小法人に60万円、個人事業者に30万円を支給する一時支援金制度の対象に生産者も含まれるのかとただすと、経済産業省は、含まれると認めました。
吉良氏は、東京の学校給食での伝統野菜の使用や、総合的な学習の時間での栽培など、タネや食文化の継承が広がっていると紹介。学校現場でも食文化継承の取り組みを進めるよう求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
まず、法案に先立ちまして、同じ文化財ということで、高輪築堤について質問をいたします。
先日、上野議員からも御紹介ありましたけど、高輪築堤は、一八七二年、日本初の鉄道が開業した際、海上に線路を敷くために築かれたもので、二〇一九年に品川駅改良工事の現場から石積みの一部が見付かり、二〇二〇年、昨年の七月に、高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発現場から大規模な遺構が発見され、これまで確認された遺構は計約一・三キロに及ぶとのことです。
最近になって、JR東日本社長が、当時の沿岸から船で漁に出るための水路に架けられていた第七橋梁と呼ばれる部分は保存するということを表明しましたが、ほかの部分は、図面や写真などの記録を残した後、埋め戻すか取り壊す方針とのことなんです。
その表明した後、先週ですね、国内で最初に設置された鉄道信号機の土台跡が新たに公開をされております。これは、JR社長が保存すると表明した場所ではないほかの部分に当たる場所の遺跡になるわけですけれども、区教育委員会によると、海側の石がのり面の一部を盛り上げた形で信号柱を支えたと見られる木製の基礎も確認されたということで、日本考古学協会の会長は、明治五年の鉄道開業時の我が国最初の信号機の遺構と考えられ、極めて重要性は高く、築堤発見の歴史的意義を更に高めるとコメントされていると。
こうした専門家などから、その再開発計画見直して、やはり全面保存が必要だと、すべきだと声が上がっているわけですが、大臣、ここはやはり一部だけにとどまらず全面的に保存すべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
国務大臣(萩生田光一君)
高輪築堤跡は、明治五年の新橋―横浜間の鉄道敷設の際に構築されたものであり、私も二月十六日に現地を視察をして、明治日本の近代化を体感できるかけがえのないすばらしい遺産であるというふうに感じました。
その後も、今お話がありましたように、日本考古学協会などから様々な声明が出ておりまして、三月には、明治百五十年の関連施策アドバイザー、これ明治百五十年のイベントやったんですけれど、仮に三年前のあのイベントのときにこれが発見されていればもうその最大の象徴的な多分遺構になったんだろうという専門家からの御意見もいただきました。分科会、文化審議会の文化財分科会からは、第七橋梁とその両側の築堤が現在現地保存されれば史跡指定に値する旨の建議が既に出ております。
遺構の保存方策についてはJR東日本の有識者会議において検討が行われており、私からは、有識者の意見も踏まえながら丁寧に議論をいただき、開発と保存を両立させながら貴重な文化遺産を現地で保存、公開できるよう御検討いただきたいと視察の際に伝えたところでございます。
JR東日本の有識者会議において、関係者でよく知恵を出し合っていただいて、文化庁からも専門的な助言を行うことで、関係者による議論が建設的に行われるように支援をしていきたいと思っております。
吉良よし子
関係者で議論ということですが、この高輪築堤自体、大臣もおっしゃったとおり、日本で鉄道開業当時の遺構で、アジアの近代化の過程を示す大変貴重なものですから、是非全面保存ということで頑張っていただきたいということを申し上げまして、法案の方に移りたいと思います。
今回の法改正では、広い文化に保護の網を掛けるということで、無形文化財など、食文化もその対象となるわけです。
今回は、この食文化を支える伝統野菜について私取り上げたいと思うんですけれども、この伝統野菜、各地域で古くから栽培されているもので、地域の郷土料理の重要な構成要素であるわけです。東京でいえば江戸東京野菜というのがありまして、江戸の料理を再現するにはこの江戸の野菜でないとその味が再現できないと言われているわけです。
例えば日本食で有名なたくあんあるわけですけど、これ大根で作るんですが、私たちがよく食べる交配種の大根は青首大根がもう主流なんですが、伝統的な江戸東京野菜である練馬大根というのは、首が白い、全部白いものなんですね。味も、青首大根は万人受けする甘い味というふうになっているんですが、練馬大根はそこまで甘くないと。江戸時代のたくあんを色や味まで再現するとなると、やはり交配種の青首じゃなくて、伝統野菜である白首の練馬大根を使わないと当時の料理の再現とは言えないというわけで、どの野菜使うかが食文化の価値を左右するとも言えると。
そういう意味では、この伝統野菜も法案で保護の対象となる食文化に含まれるべきだと思うんですが、含まれるということでよろしいでしょうか、次長。
文化庁次長(矢野和彦君)
食文化ということでございますが、食文化につきましては、文化審議会の食文化ワーキンググループが三月に取りまとめた報告書において、食に関する風俗慣習及び技術と定義しております。
このことを受けて、今回の法案により食文化を無形の民俗文化財の登録の対象とする場合は、例えば郷土食に係る風俗慣習や地域特有の発酵食品の加工技術などを想定しております。今のところ、伝統野菜を栽培する担い手は、その生産技術についての文化財保護法の直接の対象とは考えていないところでございます。
吉良よし子
直接の対象とは考えていないということですが、そのワーキンググループ報告書を見ると、この伝統的な技術等には伝統食材も含むとかありますし、食材の生産者も含んで連携が重要だということですけれども、やっぱりその範囲に含むということでよろしいですか。もう一度お願いします、次長。
政府参考人(矢野和彦君)
繰り返しになりますが、食文化につきましては、食に関する風俗慣習及び技術というふうな定義でございますので、食材そのものではなくて、まあその周辺と申しますか、ものでございますので、直接にその野菜そのものが含むかどうかと問われますれば、直接の対象にはなっていないというふうにお答えしたわけでございます。
吉良よし子
直接じゃないとはいえ、欠かせない構成要素だというところは是非認識一致したいと思うんですけれども、伝統野菜、これやっぱり保護していかなきゃいけないものなんです。
というのも、保護するのは本当に困難で、種を保存する、そして引継ぎをするということが大事で、この間三十年ほど掛けて江戸東京野菜の復活に取り組まれている方からお話直接聞いてきました。この江戸東京野菜、昭和四十年代にどんどん淘汰されていくんですけど、東京が一千万都市になって農業の大量生産化が進められる下で、流通、野菜を流通する際に段ボールに入る規格に収まる交配種というのが中心となって、規格外になりやすい伝統野菜は淘汰されていったと。とりわけ東京の場合、宅地開発して農地が縮小していて、そういう都市農業独自の困難性がそれに拍車を掛けて、一九八〇年代、昭和五十年、六十年代には、もう伝統野菜は売れないと、なくなったと言われるような状態だったと。
ただ、その中でも、売れないけどどうしてもこの味が好きだとか、もうこの野菜を食べないと夏が来ないというような中で、細々と栽培しているお宅があって、そこを回りながら種集めて栽培方法を受け継いで、何とかこの間、五十品目まで江戸東京野菜復活させたという話も伺ったと。それでもまだ全てじゃないなと。
とりわけ、栽培している人が生きているうちに種を確保して、その新たに作る人に栽培方法も伝承しなきゃいけない、時間の闘いだという話も聞いたわけで、やっぱり私、この貴重な江戸東京野菜の種を守り伝えていくこと自体も大事な伝統文化の伝承の仕事だと思うわけですけれども、大臣、改めて農水省とも連携しつつ、文化として伝統野菜の種も守っていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(萩生田光一君)
先生のお話を聞いていて、その重要性を今感じました。この法案は、こういうことに皆さんが目を向けていただくいい点があるんじゃないかと。かつては貴族院、そして良識の府と言われている参議院で八丁みそやたくあんの話がもう本当に皆さんが真剣にされるというのは、今まで置き去られてきた食文化についてもう一回見直そうねという機運を皆さんが持っていただいているまさにあかしじゃないかなと思いますので。
多分、お話聞いている限りでは、次長がつれなく言ったのは、青首大根が文化財になるかと言われればこれは無理なんだけれども、今おっしゃったようなトータルで、大事ですよね、守りたいですよねという提案があった場合には十分検討に値するんじゃないかと思いますので、これからまたしっかり勉強してみたいと思います。
吉良よし子
トータルで是非守っていただきたいと思うんです。
やはり、この伝統野菜、作るだけじゃなくて食べてもらう、販路拡大ということでも皆さん努力されてきて、新たな販路の拡大も頑張っていて、この間、こちら、東京都が作ったパンフレット、とうきょう特産食材使用店ガイドですけれども、(資料提示)こういうお店で、その伝統と、江戸東京野菜使われていると、そうやって販路も拡大をしてきたわけです。
ただ、このコロナで多くの飲食店が危機に瀕していて、その影響によって、江戸東京野菜、少ない販路拡大している、そこの納入も落ちてしまっている状況があると。納入できなければ、江戸東京野菜の生産続けること困難になるわけですけれども。
確認をします、経産省来ていただいているので。この緊急事態宣言の時短営業により飲食店への納入量が減ってしまった江戸東京野菜の生産農家がいたとして、それは経産省の一時支援金の対象になるということでよろしいでしょうか。イエスかノーかでお願いします、端的に。
中小企業庁事業環境部長(飯田健太君)
お答えいたします。
今、一時支援金のことについてでございます。
御指摘の伝統野菜の生産農家も、緊急事態宣言の再発令に伴う時短営業、それから人流減少によって影響を受けた飲食店などに野菜などを納入していてその売上げが減少して、大幅に減少するなど要件に該当する方々であれば対象になります。
吉良よし子
対象になるということでした。
とはいえ、この一時支援金そのものの仕組みが難しくて、事前確認が必要とか、農家にとって使い勝手がいいかというと悪いんじゃないかとか、給付される金額も上限三十万から六十万円と安いというような問題もあるわけで、せっかくの支援が届かないなどということで、頑張っている伝統野菜農家が生産続けられないことになってはならないと思うわけで、大臣、是非、文化庁としても、食文化の担い手である伝統野菜の生産者、コロナで潰さないという立場で目配りしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(萩生田光一君)
大事な視点だと思います。
吉良よし子
是非、文化の一環として守っていただきたいと思います。
そして、この種や食文化の継承というのは、単純に農水省とか経産省とかだけじゃなくて、学校現場でもできることだということも指摘したいと思うんです。
今回の江戸東京野菜についても、例えば学校給食で地元の伝統野菜活用している例もあるわけです。さらには、食育の一環ということで、子供たちに伝統野菜の良さを、守る意義を伝えている取組もありまして、例えば江東区の小学校では、総合的な学習の時間で砂村一本ネギの復活栽培に取り組んでいるわけです。四年生の夏から五年生の五月頃までネギを育てて、収穫されたネギを給食に出されて全校児童と教職員が味わうのみならず、毎年八月下旬に種の贈呈式というのをやると。五年生から四年生へ種を渡していく、そういう贈呈式をやるわけですけど、スーパーなどで簡単に買えない種をちゃんと育てて次の学年に伝えていくと、そういう伝統を伝えていくことの重要性を体感する貴重な機会になっているのではないかと思うわけですけれども、こうした伝統野菜を含めた食文化を次世代へ継承していく、その取組を学校等でも進めていくことは本当に大事なことだと思うわけですが、是非こういう取組、また更に進めていただきたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
政府参考人(矢野和彦君)
お答え申し上げます。
子供たちが我が国の食文化について学び、その理解を深めることは、食育の観点のみならず、文化振興の観点からも大変意義の深いものだと考えております。
このため、我が国の伝統的な食文化についての理解を深めるよう、文部科学省におきまして小中学校で活用するための食育教材等を作成し、各学校における取組を促しているところでございます。また、子供たちが身近に実感を持って地域の伝統野菜や食文化の理解促進につなげるため、今年度から学校給食地場産物使用促進事業を実施しているところでございます。
今後とも、学校現場を含め、地域による様々な食文化継承の取組を通じ、多様な食文化を次世代に継承してまいりたいと考えております。
吉良よし子
是非広げていただきたいと思うんです。食文化を含め、先ほど来あるとおり、無形の文化を守り伝えるということは重要ですし、伝統野菜のような裾野まで含めて、先ほど大臣がトータルで、パッケージでということでしたけど、裾野まで目を配って守り抜くよう強く求めて、質問を終わります。