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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【国と地方の役割分担 参考人質疑】自治体独自の取り組み阻害に懸念

要約

 参院行政監視委員会は19日、国と地方の役割分担について参考人質疑をしました。

 日本共産党の吉良よし子議員は、デジタル関連法案で、地方公共団体の個人情報保護条例も国の基準に合わせるよう求めていることを指摘。条例は歴史的な住民の運動の中で制定され、独自性や国より厳しい規定を国の法律で認めないのは、地方自治の観点からどうみるかと質問。東京大学の金井利之教授は「一元的な仕組みの方がスムーズであるという議論は危惧する」「適切とは思えない」と表明しました。

 吉良氏は、自治体の税、社会保障、就学に関わる地方自治体の情報システムも、デジタル庁が策定するシステムに統一して管理することも求められると指摘。国のシステムに統一すれば、国保料、子どもの医療費の負担軽減、保育料の算定基準など自治体独自の取り組みを阻害するのではないかと質問。金井氏は「システムは法律よりも厳しい規制になる」と述べました。

 吉良氏は、新型コロナ感染症のもとで、削減されてきた保健所について質問。日本大学の鈴木秀洋准教授は、「(児童虐待の観点からも)質を高めることと、数を増やすことは必要」と答えました。

しんぶん赤旗2021年4月30日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 三人の参考人の皆様、今日は本当にありがとうございます。早速質問に移りたいと思います。
 今、参議院では、デジタル庁関連の法案が審議されております。この法案を見ますと、個人情報の保護に関して、国の行政機関、独立行政法人、民間事業者それぞれに定められている法律を一本化するとともに、地方公共団体の個人情報保護条例も国の基準に合わせるよう求める中身になっているわけです。
 本来、地方自治体の条例というものは、それぞれ歴史的な住民の運動の中で制定されてきたものだと承知しております。国より厳しいものもあれば、独自なものが中身のものもあるということですけれども、先ほど、冒頭、金井参考人からは、過剰な権力集中体制の下、内閣の政策に自治体が従属してしまうということの問題なども語られたと思うんですけれども、こうして国が法律によって各地方自治体の独自性のある条例を認めないというようにまとめていってしまうということは、地方自治の観点からおかしいのではないかと考えますが、三人の参考人それぞれの御意見を伺えたらと思います。

東京大学大学院法学政治学研究科教授・同大学法学部教授・同大学公共政策大学院教授(金井利之君)

 ありがとうございます。
 私は、既に最初に述べておりますけれども、個人情報保護のいわゆる二千個問題と言われて、一元的な仕組みの方がスムーズであるという声にやや傾き過ぎた議論になってしまったのではないかなというふうに大変危惧をしています。これは、全ての領域において、全ての自治体で施策が異なっているが、みんな困るんだと言われたら、全て、二千個あってはいけないと言われてしまえば全部国で統一するしかないというロジックでありまして、これは必ずしも個人情報についても適切とは思えないというふうに思っております。
 ただ一方で、自治体によってはその個人情報についての定義が古い、つまり最新のEUその他の知見に基づいていないとか、あるいは今日のデジタル経済の状態にうまく対応しないというのも事実なので、そこのアップデートができていないという意味でいえば、最低限のラインをそろえると、個人情報保護という観点については最低限のラインを整備するというのは必要だと思うんですが、上乗せについては、上乗せ規制といいますか、保護の上乗せですね、については認めていくということが本来のあるべき姿で、元々公害防止条例はそういうふうに運用されてきたのでありまして、そういう形で多様性を認めていかないと非常に脆弱な仕組みに、かえって弱体なものになってしまう。
 アメリカなどは、極めて多元的な、会社法でさえ州で異なるという国で、活力を持っているわけでありまして、千七百個問題で何か嘆きをしているというのは、むしろ産業界の、まあ言わば本来の技術力がないことを何か自治体のせいにしているのではないかということで、私はむしろ産業、情報産業の方にもうちょっとちゃんと奮起をしていただきたいなというふうに思っています。

日本大学危機管理学部准教授(鈴木秀洋君)

 地方が先行して後から国という例だと、情報公開条例と情報公開法の関係もあります。
 その関係ですと、先行していて、知る権利ですかね、を明記していたところがあって、その後、国の審議で知る権利は入れないと、で、国民主権ですよというような話になったときに、それに合わせて、国の形と合わせていって変えていったというようなことの経緯というのもあったりします。
 私も基本的には地方自治の学者として、それぞれが作った条例が優先されるべき話であって、そこを尊重して、後からの場合にはそこを尊重した形での法律が制定されるべきだというふうに考えております。
 ただ、一点、私のまた虐待云々の話の中では、要保護児童対策地域協議会、要対協の中での情報の取扱いとかといった場合に、自治体によってばらばらで、情報が取れるところと取れないものがある、個人情報だからというようなところのかなりの壁があるところで、実際、ネットワークで共有されないというのもあったりします。
 その辺の整理も必要なのかなと思いますので、この情報、個人情報の扱いについては一概に一刀両断で、一概に駄目とまでは言い切れず、私自身も悩んでいる問題というふうになっております。
 以上になります。

行政経営コンサルタント(田渕雪子君)

 個人情報なんですけれども、デジタルとの関連でいいますと、恐らく国民の皆さんはここがクリアされなければデジタル化というそのスピードも止まってしまうぐらいな大きなポイントだろうと思います。
 ですので、やはり国民の皆様にとってどういう形で議論がなされるのがいいのか、そういったスタンスでやはり議論は進めていく必要があるというふうに思います。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 地方が先行しているような条例もあるわけだし、まあ一元的というか、最低ラインはそろえるべきだけれども、多様性を認めることも大事という御意見、大変参考になりました。
 あわせて、同じような観点になるんですけれども、このデジタル関連法案では、先ほどの参考人からも触れていただきましたけれども、地方自治体の税、社会保障、就学に係る地方自治体の情報システムもデジタル庁が策定するシステムに統一して管理するということが求められているわけで、一方で、地方自治体は、その国保料や国保税若しくは子供の医療費の負担軽減とか独自の保育料の算定基準など、それぞれ地方自治体の地域事情、住民の要望を反映した、独自に国の基準に上乗せしたり横出ししたりするようなシステムというのを既に持っているわけで、そこにこの国のシステム統一ということを持ってくると、そうした地方自治体が国の基準に上乗せしたり横出ししたりした独自の取組を続けて行うには、新たな費用負担が生じてしまってそれができなくなる、地方自治体が独自に取り組むことを阻害することになってしまうのではないかという懸念も持つわけですけど、その点についても御意見あれば、是非三人それぞれ御意見、聞かせていただければと思います。

参考人(金井利之君)

 ありがとうございます。
 この情報システムについては、その政策的な中身とそれからその政策を実現するためのシステムというものがうまく切り分けられれば望ましいということで、J―LISといいますか、全体として標準的な仕様ができて、しかし、政策的な様々な判断が盛り込めるというような、カスタマイズができるような仕組みになればいいと思うんですが、そこら辺がどうなるのかと。しばしば、システムが組まれてしまいますと、そのシステムのせいで動かないという、実は法律より厳しい規制になるということが、よく電子的な手続をやっておられるとよく分かると思うんですけど、進まなくなってしまうということで、かなりこれは法律以上に厳しい規制になる可能性があるということで、そこは非常に政策判断とそのシステムの基盤の問題を切り離せるかどうかというのが一点目のポイントだと思います。
 それから二点目は、システムが標準化されて一つになってしまったときに、そこが非常に、下手なシステムをつくったらどうなるのかという、これはリスク分散の問題がありまして、その一つのところが、標準が、それが間違っていると、全体として非常に困った事態になるというような、リスク分散を情報の方でどういうふうに入れていくのかというのがありまして、いろんなシステムを導入した、鳴り物入りでやったはいいけれども、システム障害が起きるというようなことになると銀行も大変困ったりしていることがありますが、まあそういうことで、そのリスクの分散の話とそれから政策的なカスタマイズができるのかということが問題になると思います。
 そういう意味では、J―LISといいますか、そこで自治体ないし地方六団体の声をどれだけ反映できるのかということが多分焦点になってくるということになりますので、総務省や自治体の声が聞こえなくなるようなシステムだと困るので、そこら辺はしっかり自治体の声を反映できるような仕組みにしていかないとならないんではないかなと思っています。

参考人(鈴木秀洋君)

 私もレジュメでも書かせていただいているんですが、前半の部分はまさにそのとおりというか、最初に自治体が努力をして様々な整備をしたものについて、後から国が、いや、違うものを出してということで、そのシステムが使えないものになってしまうということであれば、自治体が、特に一番現場で住民の顔を見て率先的にやってきたところがこれからは二の足を踏むというか、やっぱり待っていましょうと、コロナも今そういう状況が出ている、現実出ている問題としてあります。
 なんですけれども、そこについてということで、後から、ここでも提案させていただいているんですが、後から、じゃ、国が新しいものを常に出せないかというと、全体的な観点から出せる部分というのは、出さなきゃいけない部分というのも当然あると思います。そのときに、先行した自治体に対しての投下資本というかがちゃんと回収できるようなものだったりとか、そこに対する補助、最初にアイデアをやってシステムをつくったんであれば、その部分を後からなしにするんであれば、その投下資本の部分は補填をしますよというような制度設計というのが必要になるのかなというふうに思っております。
 以上になります。

参考人(田渕雪子君)

 簡単に。
 ポイントとしては、連携という形ですね、連携というものができていないのではないかというふうに思います。それぞれがそれぞれでそれぞれのやりたいことをやっているというような、そんな感じが一国民として見るとあるんですけれども、しっかりそこを連携して、まず、全体最適という言い方がいいか分からないんですけれども、連携した上で、それでその後でどういうやり方で実施していくのがいいのかと、その議論が必要なのではないかというふうに思います。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 法律以上に厳しい規制になり得るという御発言は大変衝撃的に受け止めたんですけれども、大変そういう意味では、システム統一するという意味では相当な知恵が必要になってくる問題だし、簡単ではないということが分かりました。ありがとうございます。
 それでは、先ほどの冒頭のお話の中でも、緊急事態宣言、コロナ禍での対応、自治体の役割についてもるるお話があったかと思うわけです。この感染症対策を最前線で担っているのは、例えば保健所があると思うんですけれども、ここが深刻な疲弊状態に陥っているわけです。全国の保健所の皆さん、不眠不休の大奮闘されているわけで、朝から夕刻までPCR検査の相談、入院などのあっせん、検体の搬送などに忙殺されて、夕刻から深夜にかけては感染者の追跡調査、サーベイランスなどを行っていると伺っております。
 そんな中、電話がつながらないとか、PCR検査が受けられないというようなパンク状態にも陥っているわけで、どうしてこんなことになったのかということを遡って見ていると、一九九〇年代の地域保健法による業務効率化を推し進める動きだとか、二〇〇〇年代の地方分権改革、冒頭お話ありましたけれども、による国の責任後退の下で、全国の保健所の数が九〇年の八百五十か所から二〇一九年には四百七十二か所へと激減したことがあるのではないかと。私、東京選出ですけれども、東京の場合、七十一か所から三十一か所と。特に、多摩地域の保健所が減らされて、地域格差も深刻化していると認識をしているわけですけれども。
 先ほどPFIやPPPのお話もありましたけど、こうしたとりわけ保健所など公衆衛生の分野では、やっぱり国と地方自治体それぞれがちゃんと役割を果たせるようにすべきですし、そのためには、こうした分野において、とりわけ効率化一辺倒で、特に国が地域、地方自治体に押し付けるというようなやり方というのは駄目なんじゃないかなと私思うんですけれども、その点について、三人の参考人の皆さんの御意見、伺わせていただければと思います。

参考人(金井利之君)

 保健所は、数は減らされてはいるんですけれども、それなりに人員はある程度は維持されていたというのがあるんですけれども、ただ、保健所のシステムが、昔は実質的には都道府県の機関ではありましたが、運営費交付金がありまして、事実上、厚生省の出先的な側面があったというのは事実だと思います。
 ただ、それが国のままであったら行革の対象にならなかったのかというと恐らくそうではなくて、自治体が担っても、やはり公衆衛生はもう過去の、伝染病というのは過去のものなんだというふうに国も自治体も含めて思っていたんではないかということで、そこは事前の備えが結果的に見れば弱かったのかもしれないし、逆に言えば、アメリカやヨーロッパのような感染拡大に比べればやはり日本は抑えられていたので、あれがもしアメリカやブラジルのレベルだったら保健所はどうなっていたのかと考えるだけで、もっと大変なのかもしれませんが。
 その意味では、この程度の保健所の仕組みが結局のところぎりぎりだったのかもしれないので、そこはやはり事前の備えとして、しかも急にニーズが、鈴木先生の御指摘もありましたが、急にニーズが高まる分野というのは非常に難しくて、今度は保健所を拡充しますと、感染症が爆発しないと今度は暇じゃないかと言われて、これまた行革の対象になるということで、この問題は非常に、リスク分散というのは非常に難しいので、日常的な冗長性といいますか、一見遊んでいるように見えるというものをどれだけ備えられるのかというのはこれまた政治判断で、ただ、都道府県としてもそれは行革の対象になりやすいし、これは仮に国の出先機関だとしても、もう公衆衛生の時代は終わったと、これからは成人病と高齢者問題だというふうになってしまえばそっちの方にシフトするということにならざるを得ないので、これは我々全体が備えはどうだったのかというのを落ち着いた後で考えなきゃならないとは思います。
 ただ、今足りないとか言っても、足りないのは事実というのは、それは備えていなかったのは我々の責任だということですね。あとは、もうひたすら現場に頑張ってもらうしかないということだと思います。

参考人(鈴木秀洋君)

 保健所、東京二十三区だと、保健所を実際持っているので、そこのところで回しているというところがあります。実際、都道府県と市区町村、保健所の役割というのをどこが持つのか。ずっと従来も議論ありますが、もう一度議論する必要があるのかなというふうに思っております。
 もう一点ですが、やはり現在だと、僕のまた専門分野の児童虐待とかでもちゃんと保健師が必要だということになっていますので、これからの見通しとしては、やはり感染対策だけではなくて、母子保健、様々な部分で保健師が必要という部分がありますので、これからの中では質を高めるという話と数を増やすということは必要なんではないのかなというふうには思っております。
 以上です。

参考人(田渕雪子君)

 まず、あれですね、保健所の役割というのをもう一度しっかり見直すことが必要なのではないかというふうに思います。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。