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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【国大法改定案 参考人質疑】意見集約型再構築を 

要約

 参院文教科学委員会は11日、学長選考会議や監事の学長監視機能の強化を柱とした国立大学法人法改定案の参考人質疑を開きました。ごく少数の選考会議メンバーや監事に強い権限を与えるのではなく「ボトムアップ型(意見集約型)意思決定の仕組みの再構築を図る必要がある」(京都大学の駒込武教授)との意見が出されました。

 駒込氏は、改定案は学長に対するけん制機能を強化するとしているが、学長選考会議の委員を学長が選ぶ仕組みは変わらないとし、「むしろ学長による不正の温存や隠ぺいにつながる恐れがある」と指摘。文科相が任命する監事の権限強化も「自主性が損なわれ、国による間接支配につながる恐れがある」と述べました。

 また、各地で問題になっている学長の“独裁”ともいわれる大学運営の背景には、文科省通知や閣議決定で学長選考での教職員の意向投票が廃止・形骸化され、大学内のボトムアップ機能が弱められてきたことがあると指摘しました。

 日本共産党の吉良よし子議員は、意向投票など、学長に対する学内構成員のけん制機能強化の必要性について質問。駒込氏は、意向投票が重要だとし、さらに、学生・教職員による学長リコール制度の創設や、学長の最長任期の制限が必要だとの考えを示しました。

しんぶん赤旗2021年5月12日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 三人の参考人の皆様、本日は貴重な御意見、ありがとうございます。
 それでは、早速ですが、法案に関わって、監事の果たす役割、権限強化について皆さんに伺いたいと思います。
 先ほど来もちらりと指摘もあったところですが、四月二十一日の衆議院文科委員会での監事の常勤化についての質疑の中で、萩生田文科大臣が、国家公務員が長い間積み上げた行政経験、様々な機会を還元するために再就職で自分が得意分野のところに就職することそのものは決して悪いことじゃないと思いますと述べ、また、OBはふさわしくないのかと言われると、私、例えば国立大学法人で事務局長などを務めた方が将来的に監事になっていただくのは一つの選択肢としてありだと思うのですねと答弁をされています。
 つまり、退職した国家公務員、文科省OBが常勤監事になること自体を否定されなかったと、むしろ一つの選択肢と言ったわけですけれども、となると、今回の監事の常勤化が天下りの温床になりかねないんじゃないかという懸念があるわけです。それは、そうなってしまうと、大学の自治という観点からも問題じゃないかと思うんですけれども、三人の皆さん、それぞれどう思われるか、お答えください。

参考人 国立大学法人金沢大学長(山崎光悦君)

 私は、やっぱり選択肢として、先ほども申し上げましたように、大学のことを熟知している人材のプールの一つだと思いますので、その人に、だから、その天下りとならない仕組みをどう入れるかとか、特定の関係で利益誘導にならないようにするにはどうしたらいいかという仕組みを別途考えるべきかなと。最初からそういった人材を排除すべきではないというふうに個人的には考えます。
 以上です。

参考人 国立大学法人東京工業大学監事(常勤)・国立大学法人等監事協議会会長(小倉康嗣君)

 今どんな人が監事になっているかというのをお話ししますと、百七十八名いるんですが、そのうちの四十四名は会計士さんなんですよね、税理士さん含めた。あとは、銀行から企業経営者、弁護士、地方自治体、それから理事、教授がほとんど、二十名ずつなんです。それで、学長が十三名入っているんですよね。
 それで、私が思うのは、例えば学長経験者というのは物すごく見識もありますし、それから、いろんな、何というんですかね、大学のことも知っているし、非常にもっと増えてもいいんじゃないかと思っているんですが、見ても大体平均的になっているんですね。この中にはもちろん国の、官僚の方もおられます。それが悪いかというと、決して悪いわけではないような気がするんですよね。
 要するに、きちんと仕事すればいいわけで、それから、選考するときに、うちの大学もそうなんですが、ちゃんと有識者会議で決めるわけで、そのときにもし駄目なら否定すればいいわけですよね。ですから、それが何かその天下りの温床になるということではないんじゃないかなというふうに私自身は思っています。
 よろしいでしょうか。

参考人 国立大学法人京都大学教授(駒込武君)

 今回の改正案では、中期目標、中期計画に関わる文科省の介入の余地というのを高めています。これと監事の権限強化、そして文科省のOBが監事になるということを結び付くと、本当に国による間接支配になってしまう、そのように懸念しています。
 衆議院での参考人質疑で光本参考人がるる説明されていましたが、中期目標、中期計画の策定において、文科省が作った中期目標大綱の中から項目を選んで中期計画とせよというのが新しく加わってきています。既にこの大綱は発表されておりまして、その中では、例えば各地域の産業の生産性向上や雇用の創出に努める、そう書いております。大切なことですが、果たしてこれが大学の目標なのだろうかと思います。
 例えば、こうした文科省の提示した目標を大学がいかに達成したか、効率的に、効果的に達成したかを監事が監視するわけです。そうすると、文科省の提示した目標を文科省OBの監事がその達成度を判定する、そういう仕組みができ上がることになります。その監事となられた文科省OBの方がたとえどんなに優秀で有能な方であるとしても、このような体制はやっぱり仕組みとしておかしい、とても危険なものなのではないかと思います。

吉良よし子

 天下りの温床にならないような仕組みづくりはそれはそれで必要だということだったと思いますし、それを通じて大学への国の支配の強化になってはならないということはそのとおりだと思いました。
 また、牽制機能の強化ということでいうと、先ほど来からも議論がありますけれども、学長選考会や監事の在り方だけではなく、やはり学内、教授や学生など学内から声を上げる仕組み、そういう学内からの牽制機能についての議論もやはり必要だと思うわけですが、やはり現状、学内からの牽制機能というのはほぼなくなってしまっている状態にあるのではないかと懸念します。
 こうした場合に、この学内構成員から学長への牽制機能を強化する仕組みづくりは欠かせないと思うんですけれども、どのような方法が考えられるか、これは山崎参考人、駒込参考人、それぞれお聞かせいただければと思います。

参考人(山崎光悦君)

 ありがとうございます。
 そうですね、私、学長になってから、私は学長の権限は結構強いというふうに思って、私自身も思って、恐れております。
 そういう意味で、やっぱりみんなの意見をしっかり聞くということを大事にしてきました。少し具体的な例で申し上げますと、学長になった途端に、先ほども御紹介しましたSGUという、スーパーグローバル大学創成支援事業に採択をいただいて、非常に高い目標値、例えば学士課程では英語で五〇%教えるとか、とんでもないとみんなが言うような数値を掲げて採択をいただきました。大学院は一〇〇%と。
 そのときとか、あるいは、今、第三期は三つの機能の中から自分で各大学は類型を選びなさいというので、金沢大学は第三類型を選んでおりますけれども、そういったけじめ、けじめのときに、大学全体を四か所に分けて、どこで出席していただいてもいいというので、先生方あるいは職員の方、病院の職員みんなに説明をして、何で大学がこんなことに取り組むかというようなことをしっかりと意見を交換をするというのを常々、大体一年、二年、一年半かそこらに一回ぐらいはそういったことをやるというのが私の習わしというか、私のやり方になっています。そうやってみんなの意見を引き出すということで、対話を取ることで、独り歩きというか、学長の独走にならないようにと。
 やっぱりみんなが付いてきてくれないと、少々プレゼンスが上がってもみんなの気持ちが頑張れないんじゃ、やっぱり組織はみんなで頑張るというのが私のモットーなので、そうやって最大限の、フルパワーが出るというふうに思いますので、そこは大事にしています。そこが一番肝腎かなと私は思うんですけれども。
 以上でございます。

参考人(小倉康嗣君)

 済みません。牽制をいろんな方から機能をもらうということは、これはもう大賛成だと思います。
 学生からという話があったんですが、これは例えば東工大の場合には、ちゃんとチームを学生が組んで、ちゃんと資料を六十ページぐらいにまとめて、学長に、要するに研究評議会で発表しているんですよね。ですから、そういうやり方もあるので、実際にアンケートもしょっちゅう取っているんですよね。だから、やり方によってはちゃんと学生からのあれはできているのかなと、これ自分の大学ですけれども、思っているところです。
 以上です。

参考人(駒込武君)

 今の山崎参考人や小倉参考人の話を聞いて、確かにそうしたこともあり得るんだな、大切なことだなというふうに思っています。
 ですが、残念ながら、学長と教職員あるいは学生との対立が深まってしまう場合もございます。そもそも、余りに少数の方、学長を中心とした人に余りにも過大な仕事が向かう中で、どうしても学生や一般の教職員との意見が離れてしまう場合があると思います。そうした場合には、先ほども少し言いましたが、直接請求による学長の解職制度というものが必要だと思っています。
 今も多くの大学でこうした場合には学長の解任を発議できるという制度がありますが、大体、教育研究評議会あるいは経営協議会での発議というふうになっています。ところが、先ほどから申し上げているとおり、これらの会議体は学長の指名した委員です。ですので、そうではなくて、一般の構成員、その例えば三分の一の賛同で解任を発議し、過半数の賛同で解任を決議する。もちろん、例えば京都大学で過半数の賛同者を取るというのはすごく大変なことです。ですから、それはもちろんめったに成立しないことですが、いざとなった場合にはそうした直接請求による解任の制度があるということが大事だと思います。
 あともう一つは、牽制機能として学長の最長の通算任期を定める必要があるということです。
 今、多くの大学で学長の最長通算任期が撤廃されて、学長は定年の定めもありませんから、自分で望めば亡くなるまで学長の任にあり続けられる、そうした状況にあります。そうしたことになると、当然、牽制機能が働かなくなってしまいます。自分が辞めたときどうなるんだろう、そうした想像力というものが不要になるわけですね。
 そうした意味で、例えば大学で十年越しのプロジェクトがあるから学長の長い任期が必要だみたいな話がありますが、本当にそのプロジェクトが支持されていれば、たとえ学長が替わっても続くはずです。形式的に学長の通算任期の上限を定める必要があるというふうに思っています。

吉良よし子

 大事な御意見、ありがとうございました。
 やはり、この学内の声を、牽制機能の強化ということでは、意向投票の復活ということも、先ほど伊藤議員のところでもお話ありましたけれども、大事だと私思うわけです。となると、先ほど来、駒込参考人が指摘している、二〇一四年の学校教育法と国立大学法人法の改正に伴う施行通知の適法性というのが問われてくるのではないかと。また、その駒込参考人の御説明では、施行通知に伴うチェックリストでの行政指導が問題であるという御指摘もありましたが、これ、どのような点で問題があるとお考えなのか、もう少し具体的に駒込参考人に御説明いただければと思います。

参考人(駒込武君)

 学長への牽制機能として、第一に意向投票が必要だと思います。
 この二〇一四年の施行通知というものは、意向投票は望ましくない、学長選考会議が不要と考えたらしなくてよいと規定したわけですね。ところが、先ほども言いましたとおり、法律それ自体には意向投票をすべしともするなとも書いていません。施行通知というのは、本来ならば、法律で決まったことを実際に動き出す、そういう通知であるはずです。そうした通知、省令ですらない通知に意向投票をするのは望ましくない、そうした要求を入れ込むというのは、非常に不適切かつ不当なやり方であるというふうに思います。
 また、文科省は、各大学にチェックリストを配付して、過度に意向投票に重視していないか、そうしたチェックをして、各大学に内部規則の運用の見直しを求めています。この文科省が各大学に、しかも一つの大学ではなく全ての国立大学に対して一律に内部規則の運用の見直しを求めるというのは、国立大学の自主性、自律性を損なうものであり、適法性を問われるものだというふうに思います。

吉良よし子

 やはり法律に書いていないことが施行通知で示されるというのはちょっとおかしい、いかがなものかなと私自身も話聞いて改めて思ったわけですが、もう一つ、二〇一九年の閣議決定についても伺いたいと思います。
 先ほど石川議員の御質問に答える中で、この閣議決定が学長だけじゃなくて学部長についても意向投票によるべきじゃないと定めているのが問題だというお話ありました。この点について更に説明をお願いいたします。

参考人(駒込武君)

 閣議決定では、学部長についても、意向投票によることなくというふうに記しています。ですが、学部長選考についても、その選考の在り方を記した法律というものはありません。
 辛うじて関係するのは、国立大学法人法施行規則、文科省の省令で、学部長等の任命は学長の定めるところにより行うものとするという条文です。これは、学長が中心となった規則によって学部長を選び、そして最終的に学長が任命するということであって、学長が指名せよということではないし、教授会での投票を禁止したものでもございません。
 それにもかかわらず、閣議決定という形で、学部長による、意向投票をすることなく、意向投票をすることなく学部長を選考せよと決めているのは、これは明らかに違法であり、そして憲法との関係でいえば違憲であるというふうに私は思っております。

吉良よし子

 終わります。ありがとうございました。