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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【改正著作権法】実演家に適切対価を 

要約

 図書館資料のデータ提供を可能とし、放送番組と同様のルールをインターネット同時配信にも適用する改正著作権法が5月26日の参院本会議で採決され、全会一致で可決、成立しました。

 同法は、放送番組の許諾をすれば、同時配信も許諾したものとする許諾推定を規定。日本共産党の吉良よし子議員は25日の参院文教科学委員会で、放送番組の出演者である実演家は、もともと出演契約などの交渉で基本的に立場が弱いとして、「同時配信の実施にあたり、実演家に適切な対価が支払われるということは必須ではないか」とただしました。

 文化庁の矢野和彦次長は、同時配信は、放送に係る対価とは別途支払う必要があり、実演家を含む権利者に対して適切な対価還元が行われることが重要だと答弁しました。

 吉良氏は、今後の課題として、実演家、フリーランスの保護をすすめる必要性を取り上げ、「適切に対価が実演家に支払われる、仕組み、法制度を」と求めました。萩生田光一文科相は、「契約慣行や著作権に関する意識啓発」をするとし、「直ちに法律をと言われると難しい」と述べるにとどまりました。

しんぶん赤旗2021年6月11日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 著作権法を改正する際、先ほど来議論ありますけど、何より重要なのは、その著作物の権利の保護と利用促進のバランスをどう取るかということだと思います。
 本改正案の放送番組の同時配信等に係る権利処理の円滑化について言えば、放送事業者というのは利用者であり、番組への出演者や著作者が権利者に当たりますが、この権利者に当たる放送番組に出演する実演家について言えば、元々出演契約等の交渉において基本的に立場が弱いという指摘が相次いでいるわけです。今回の改正では許諾推定規定というのが設けられるわけですが、これにより、同時配信などの放送の二次利用は推進される一方で、その分の対価が適正に支払われないままになるのではないかという懸念の声が上がっているわけです。
 改めて確認したいと思うんですが、この同時配信等の実施に当たり、実演家に適切な対価が支払われるということは必須だと思いますが、いかがでしょうか。

文化庁次長(矢野和彦君)

 御指摘のとおりだというふうに考えております。
 今回の改正では新たに、同時配信等に関して権利制限を行う実演について、放送事業者から権利者に通常の使用料額に相当する報酬や補償金を支払うことを義務付けております。この報酬や補償金は同時配信等の対価に相当するものであり、放送に係る対価とは別途支払う必要がございます。
 放送事業者が同時配信等を行うに当たっては、実演家を含む権利者に対して適切な対価還元が行われ、放送事業者と権利者の双方にとって有益となることが重要であるというふうに考えており、放送事業者においても同様の理解に立っているものと理解しております、認識しております。
 また、対価の支払は当事者間の協議で決定されますが、例えば今回の改正で創設される許諾推定規定については、権利者に支払われた対価が、明らかに放送のみ、インターネット送信の水準が考慮されていないという場合であれば、推定が覆り得る事情として考慮される場合があるというふうに考えております。
 文化庁といたしましては、こうした事情も考慮しながら、総務省とともに、対価の支払に関する放送事業者と実演家を含む権利者の協議が円滑に行われるよう努めてまいりたいと考えております。

吉良よし子

 適切に対価が還元されるべきであり、その同時配信等の分が上乗せされていないと思われるのであればその推定が覆され得るという大事な答弁だったと思います。
 ただ、現状を見てみると、本当にちゃんとそれが還元される仕組みができているかというのでいえば、この二次利用、様々多様に広がっているにもかかわらず、放送番組の再放送時の適切な対価すら支払われていないと、再放送時の報酬請求権というのもうまく機能していないという指摘もありますし、そもそも出演料が低いんじゃないかという指摘もあるわけです、実態もあるわけです。
 日本俳優連合などが主催する著作権法の勉強会では実演家の皆さんが次々と窮状を語っていて、とにかく出演料が低いんだと、そのことを正当化されてしまう根本には、俳優に対する法や制度が不十分だからじゃないかという声もありました。実際、この出演料の問題というのは、個別の事務所との契約関係かというと、確かにそういう側面もありますけど、それだけじゃなくて、このそれぞれの実演家が契約を結ぶ際の最低限のルールすら今の日本にはないという問題が根本にあるのは間違いないと思うんです。
 実際、この多くの実演家の役者の皆さんというのは、そもそもフリーランスになりたくてこの仕事を選んだわけじゃなくて、役者になるという道を選んだらそのままフリーランスの道を選ぶしかなく、そうしたら、労働者と違ってほとんど保護がなくて、最低報酬の取決めもないというような状態に追い込まれてしまっているわけです。
 先ほど、同時配信分含んだ報酬にならなかったらと言いましたけど、やっぱり最低報酬の取決めもない下で、今の出演料そのままに、いや、これは同時配信分も含んだんだと言われたときに、いや、違うでしょうと言える根拠が果たしてあるのかといえば、ない状態としか言いようがないと思わざるを得ないわけですね。
 やはり、こういうときにこのフリーランスを保護する制度、法律、必要だと思うわけです。衆議院での議論でも、まあ文化次長も、今の我が国文化芸術界の契約慣行についてどう見直していくか考えていきたいという答弁もありましたし、大臣からも、将来的には法律をきちんと整備していくこと更に必要というふうに答弁もあったと聞いていますけれども、私、やっぱり将来的にということじゃなくて、やはりこの著作権法を改正している今こそ、ネット配信どんどん進めていくよという今こそ、こうした同時配信などの機会にもちゃんと適切に対価が実演家に支払われる、そういう仕組み、法制度を議論すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

文部科学大臣(萩生田光一君)

 映像実演の利用に当たっては適正な対価が実演家に還元されることは、将来にわたって良質な作品を継続して生み出す環境を維持する観点からも重要であると考えています。
 実演家の方々からは適切な対価が支払われていないとの御意見があると承知しておりますが、今回の改正により、同時配信等については報酬の徴収、分配がより実効的に行うことが可能となりますので、まずは今回の改正に伴う対価の支払について、放送事業を所管する総務省とともに、放送事業者と権利者の協議が円滑に行われるよう努めてまいりたいと思います。
 また、実演家の報酬額や分配については、当事者間の交渉力の違いや、それを背景とした契約慣行などが影響しているものと考えております。
 文科省としては、契約慣行や著作権に関する意識啓発などにより、実演家に適切な対価が支払われるような取組を進めてまいりたいと考えています。

吉良よし子

 是非前向きに進めていただきたいんです。法制度、法整備、進めていただきたいんですね。
 そもそも、実演家には録音権、録画権、放送・有線放送権、送信可能化権等認められていないという実態もあるわけです。やっぱり、放送番組の利用を促進するだけじゃなくて、こうした実演家を含むフリーランスの権利を保護する、適切な契約を結び報酬を得られるように文化庁が先頭に立たなきゃいけないと思うんですけれども、もう一度、大臣、前向きにお願いします。ペーパーじゃなく、思いをお願いします。

文部科学大臣(萩生田光一君)

 気持ちは分かるんですけどね、あくまで民民の契約です。
 それで、やっぱり駆け出しのときって、不条理な条件でも、もう、一本でも舞台に上がりたい、一本でも番組に出たいと思いながら皆さん努力して、いつの日からは逆に、出てくださいと言われて高額な報酬をもらうことも可能なわけですよ。
 ですから、下積みのところだけ法律で保障しろと言われても、これまた民民の話なので難しいところはあるんですけれど、ただ、だからといって、そういう人たちが全くその将来が予想できないような、そういう職業であっては夢がなくなってしまうと思いますから、こういう様々な権利を整理していく中で、そういった分野で活躍をしたいという人たちも将来に希望をつなげるような、そういう環境は必要だと思うんですけど、直ちに法律をと言われると難しいかなというふうに思っております。

吉良よし子

 この間、フリーランス保護の必要性というのは国会全体で議論はされていることだと思うんです。大臣、今、下積みはとおっしゃいますけど、この間、そのコロナの中で芸術文化大変だというときに、芸術文化の裾野を守らなきゃいけないんだということを私、繰り返し申し上げてきたと思うんです。そういう意味でも、とりわけ不利な条件に置かれている、コロナに感染しても傷病手当すらもらえないような実態があるのがフリーランスですから、やはりそういうところを保護していく、支援していく対象にしていかなきゃいけない、それは政治の責任だということを重ねて申し上げておきたいと思います。
 続いて、図書館の方の資料のインターネット送信に係る規定の見直しについても伺いたいと思います。
 今回、図書館資料のデータ送信を可能にするに当たり、補償金の制度が新たに設けられるということです。ただ、この水準をどうするのかというのもかなり大きな課題だと思うんです。余り高額になってしまっては利用者の負担になって利便性の観点から好ましくないですし、かといって、じゃ、余りに低額にしてしまうと、今度は権利者への補償という観点から不十分になるということで、まさにバランスだと思うんですけど、これ、本当に関係者間での議論丁寧にやる、特に権利者の理解、納得得られるように進めていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

政府参考人(矢野和彦君)

 委員全く御指摘のとおりだというふうに考えております。
 補償金の徴収、分配については、図書館側の事務負担軽減を図るとともに、権利者への対価還元を確実に行うため、文化庁が指定する指定管理団体が一元的な窓口となって行う仕組みとしたいと考えております。
 この指定管理団体につきましては、図書等の著作物の公衆送信権を有する者や電子出版権を有する者の団体から構成することなどを要件として検討することとなります。
 補償金の額については、指定管理団体が料金体系や金額の案を作成し、それを文化庁長官が文化審議会に諮った上で認可の判断を行うということとしており、文化庁長官の認可に際しては、著作権者等の利益に与える影響等を考慮し、適正な額であるかを確認することとしております。
 また、補償金の額の設定に当たっては、基本的に権利者の逸失利益を適切に補填できるだけの水準とすることが適当であると考えており、具体の運用については、権利者を含む幅広い関係者の意見を丁寧に伺いながら、合理的な基準が策定されるよう対応してまいりたいと考えております。
 以上です。

吉良よし子

 幅広く丁寧に意見を聞きながらということでした。
 ただ、今回、この法案化に当たって、出版業界の皆さんから出版業を圧迫するという強い懸念の意見が出され、しかも、それについて意見交換なく法案提出に至ったんじゃないかという、意見交換が不十分だったとの指摘も出されているわけです。
 問題は補償金だけじゃなくて、そうしたデータ送信できる対象となる資料について、先ほど来も議論されているわけですけど、出版者の利益を損ねないためにはどこで線を引くかとか、その量や範囲を適切にしていくにはどうするのかというところについては、もう権利者の理解と納得が得られるように丁寧に対応しなきゃいけないわけです。現場の声をよく聞いて丁寧に議論をしていただきたいということ、重ねて求めておきたいと思います。
 次に、利用者の観点から、先ほどもありましたので確認にとどめますが、私の元にも、海外で活躍する日本研究者、日本資料専門司書らが外国人にも同様のサービスが提供されることを強く望んでいるとの声が届きました。
 確認します。この今回の送信サービスの送付先というのは、国内に限らず海外にまで可能になるということでよろしいでしょうか。

政府参考人(矢野和彦君)

 お答え申し上げます。
 図書館資料のメール送信等に関するサービスの利用については、著作権法上、その送信先を国内には限っていないというところでございますので、法律的には可能だということでございます。
 繰り返しになりますけれども、一方で、個々の図書館等はその設置目的等に応じて利用者の範囲を判断しているため、実際には各図書館等によって利用者の範囲は異なってくるものと考えております。特に公立図書館については、その設置目的や現行の複写、郵送サービスの利用実態を踏まえれば、基本的にその地域に居住する方々が主な利用者になると考えております。当該地域に居住してきた方が海外赴任等により海外からの、海外からメール送信等の申請を行うことも想定されますが、そのような個別の場面については、当該図書館等の設置目的等を踏まえて各図書館等においてその取扱いが決められることになるというふうに考えているところでございます。

吉良よし子

 可能になるということですので、丁寧に柔軟に対応していただきたいと思います。
 もう一点聞きたいのは、今回、ネット送信求める声というのは、新型コロナ感染の拡大の下で図書館が休館したことで、特に大学院生、研究者から出されたものと承知していますが、こういう声を踏まえれば、大学院生や研究者の皆さんの一番身近な大学図書館で取組進めること必須だと思うんですが、この場合、図書館がデータ送信行う場合、コピーガードの付加とか電子透かしなどの技術措置なども条件になっているわけですが、大学図書館の職員数、もうこの間、十年前に比べ二割減少、運営費一割減っているという現状を踏まえると、人や予算の面で制約があるのじゃないかと、やっぱり法改正だけじゃなくて、財政支援必要だし、運営費交付金、私学助成の拡充、この点からも進めなきゃいけないんじゃないかと思いますが、最後に大臣、是非お願いします。

文部科学大臣(萩生田光一君)

 図書館資料のメール送信等については、施行までに二年間の準備期間を設けており、文部科学省の関与の下、現場の実情を十分に踏まえつつ関係者協議を進め、現場に過度な負担が生じない合理的な制度運用、簡素な事務処理スキームを構築したいと思っております。
 このサービスの実施に必要な経費については、まず、補償金の支払に要する費用はこのサービスの利用者に御負担いただくことを想定しており、これに加えて、図書館等の手数料を利用者から徴収することは考えられます。
 このほか、実施に当たっては、実際上の具体的な支援の必要性は現時点では明らかではありませんが、いずれにせよ、引き続き、各大学の継続的、安定的な教育研究活動に支障を来さぬよう、国立大学法人運営費交付金や私学助成といった基盤的経費の確保にもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

吉良よし子

 そうじゃなくても大学、資料費が足りないという声も聞いておりますので、是非、運営費交付金等の充実、改めて求めて、質問を終わります。