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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【参考人質疑】コロナ対策口実に改定案 「合理的根拠ない」

要約

 参院憲法審査会は2日、改憲手続きの国民投票法改定案について参考人質疑を行いました。

 福田護弁護士は意見陳述で、現行の国民投票法について公務員の投票運動を禁止し、最低投票率を規定せず、CMなど有料広告での賛成・反対派の実質的公平を担保していないと指摘し、「憲法制定権力であり主権者の国民の自由な意思の表明であるべき公平・公正な国民投票として根本的欠陥がある」と批判しました。

 名古屋学院大の飯島滋明教授は「CM規制など同法の付帯決議の項目が14年間も放置されている」と批判。近畿大の上田健介教授は「(改定案論議は)熟議になっていない」と述べました。

 4人の参考人全員が広告規制の議論の必要性に触れました。

 質疑で、日本共産党の吉良よし子議員はコロナ対策を口実とした改憲論議と一体に改定案を進める菅政権の姿勢を質問。福田氏は「緊急事態宣言の問題を指摘されている時に、さらに政府に権力を付与する『緊急事態条項』の議論に進むだけの合理的根拠はない」と述べました。

 委員間の意見交換で、山添拓議員は改定案が改憲論議を進める「呼び水」として提出され、「最低投票率などの重大な欠陥を抱えたまま審議を進めることに反対だ」と強調しました。

しんぶん赤旗2021年6月3日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 参考人の皆様、本日は貴重な御意見をありがとうございます。
 それでは、初めに飯島参考人と福田参考人に伺いたいと思います。
 菅首相は、五月三日の憲法記念日に、国民投票法改正案の成立は憲法改正への議論を進める最初の一歩と位置付け、新型コロナウイルスの対応を受け、緊急事態への備えに対する関心が高まっているとおっしゃいました。さらに、下村博文自民党政調会長も、今回のコロナを、ピンチをチャンスになどと言い、改憲と一体にこの法案の議論を進めるんだと言っていると。
 こうしてコロナ対策の失政を憲法のせいにして、緊急事態宣言とは別物の緊急事態条項をちらつかせながら、火事場泥棒的に改憲と一体に本法案の議論を進めているこの事態について、状況についてどう思われるか、飯島、福田両参考人の御意見をお聞かせください。

名古屋学院大学経済学部教授(飯島滋明君)

 質問ありがとうございます。
 どう答えようかなってちょっと考えさせていただきますけれども、やっぱり憲法改正の手続というのは、やっぱりどんなものが出されてこようと、まあ言い方は悪いですけれども、公平公正にやっぱりできる、そういったシステムづくりであって、あくまでそれに関しては色が付いているというのはまずい気がするんですよね。ですけれども、やっぱり総理大臣がそういうことを言ってしまうと、どうしてもそのために作っているんじゃないかというふうに、それこそ政治と関係あるんじゃないかって、これ国民に疑わせる要素になってしまうと思うんですよね。そこがやっぱり非常にまずいところなんだろうなと思います。
 どんなものが出されようと、やっぱりそれはちゃんと国民投票、主権者の意思を聞くというのであれば、それに適した制度づくりというのがどうもゆがめられちゃっているんじゃないかという、誤解を与えている発言という意味では非常にまずい発言だと私は考えています。人が亡くなっているかもしれない、苦しんでいるかもしれないのに、ピンチをチャンスになんというのはちょっとどうなのというか、これはやっぱり、それは思います、正直言って。
 緊急事態条項に関して一言、ちょっと私も国会の議論見させてもらって感じるところを言いますと、例えばドイツやフランス、緊急事態条項あります。ですけれども、今のドイツやフランスは緊急事態条項は危険だからこれは使うのやめようということで、あえて法律でやっているわけですよね。そこら辺の議論が全然ないという気はします。
 例えば、一九六一年、フランスでも憲法十六条の非常大権が使われましたけれども、そこでは警察官が四十八人も虐殺しているわけですよ。戦後ですよね、これ。ですから、実はそういったのは危険だということで、わざと今は公衆衛生緊急事態法というのを使って憲法を使わないようにという、そういうことで対応しているんですよね。そういった、要するに危険だという考え方が全然、ちょっと感じられないなというのがあると。
 例えば、ドイツのメルケル首相であったりフランスのマクロン大統領なんかは、例えば法律でやるけれども、それでもやっぱり個人の権利、自由、民主主義にとって危険だからということで、これを濫用させないようにしたい、政府が濫用させないようにしたいということをさんざん言っているわけです。メルケル首相というのは東ドイツの出身なので、自分がその移動の自由を行使できないということが非常に、どれだけまずいかというのを分かっていると。だから、今回、法律でやるとしても、それでもやっぱり危険なんだという、その認識を持って対応しているわけですよね。
 実は、国会議員の先生方の発言を聞いていますと、私権の制限、私権の制限だという発言はあって、政府の対応、緊急事態を使われるということは危険だという議論が余り聞かれないなというのがドイツやフランスとの違いだというのは一つ感じますし、私権の制限がないという言い方もちょっと私、違和感がありまして、そもそも今休業要請とかでさんざん大変な目に遭っている人たちっているわけですよね。それで、これ以上私権の制限と言われて国民が果たして納得するのかどうかという辺りはやっぱり考えていただきたいと思いますし、あくまで憲法改正権力の主体というのは国民ですから、国民がこれを変えなきゃということにそれでなるのかどうかという辺りはやはり考えていただく必要があるんだと思います。

弁護士(福田護君)

 私も今、この日本、私たち、まあ日本だけではなくて世界、新型コロナの問題で大変な大きな、何というのかな、苦難、人類全体の苦難に直面しているのだろうというふうに思います。そういう中で、今その憲法の問題についてどこまでどういうふうに優先をすべきなのかという、そういう問題の大局的な判断というのがあってしかるべきなのかなというふうに、前提として思います。
 その上で、緊急事態宣言というのが鳴らされていて、飯島参考人もおっしゃったように、そのこと自体で国民に対する権利の侵害というのも不安、あるいは危惧をされる、そういう状況にございます。そういう中で、更にその政治、政府に対して権力を付与する必要があるというふうな議論が、それがあっていいのかというところについては大変大きな疑問を感じます。
 今現在でも国民の権利侵害の危険というのがある、あるいは緊急事態宣言をどういうふうに活用するのかというその活用の仕方の問題というのが指摘をされている、そういう中で、緊急事態条項が更に必要だというような議論に進むだけのその合理的な理由というのは、私は今の日本にないんだろうというふうに思っております。
 既に、例えば災害対策基本法などで十分に政府が国民を義務付けるような、そういう体制というのが既にかなり非常に整備をされている、そういう中であえて、権限はあるのに、それがどれだけ十分に有効に行使できるかということが問われているのに、更に憲法上の緊急事態条項が必要だというふうには私は全く思いません。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 やはり、国民の権利の侵害があり、また私権制限による危険性の議論などもないままに緊急事態条項についての議論を進めるということはあり得ないと思いますし、同時に、その改憲と地続きに一体に国民投票法案の議論を進めるということもあってはならないという認識を改めて思ったわけですけれども、この国民投票法自体も、先ほど来参考人のお話を聞いていても、やはり問題があるんじゃないかということも思ったわけです。
 先週の審査会では、法案発議者から、国民投票法は投票環境整備など投開票に係る外形的事項と、国民投票運動に関わるCM規制などに代表されます投票の質に関する部分から構成をされているとの発言があって、本法案については外形的事項に関して公選法に合わせた改正であるという旨が述べられたわけですけれども、しかし、現状の公選法の下で行われている国政選挙においても、先ほど飯島参考人からも御指摘ありましたけれども、投票所の数が減らされたり投票所の閉鎖時刻を繰り上げたりする自治体も多くあるわけで、こうした投票機会が縮小されていると。
 こうした投票機会の縮小を止めることこそ必要だし、投票機会の縮小に対する歯止めがない現在の公選法並びの法改正で本当にいいのかというのが問われていると思うんですけれども、この点について、飯島参考人、福田参考人、両参考人の御意見をお聞かせください。
 

参考人(飯島滋明君)

 質問ありがとうございます。
 外形的事項だから公選法並びで合理的だと説明があったというのは私も議事録等で拝見をさせていただいています。それについては答弁させていただいたとおりで、選挙と国民投票というのはやっぱり質的に違うところがあるので単純に横並びにすればいいという話ではないということも実は答えさせていただいたかと思います。
 今先生がおっしゃったように、やっぱりその期日前投票の弾力的運用というのをやることによって、結局、期日前投票できる人たちが減ってしまうかもしれないと。しかも、その期日前投票の事由に自然災害なんかが入っているということであれば、自然災害で投票ができないにもかかわらず、それで投票時間が減らされてしまう。今災害の対策しなければまずいので投票できませんなんてやられたら、それこそ大変なことになると思いますので、そこの法的な歯止めというのは私は必要なんだと思います。
 その法的な歯止めが今の公選法並びのところにあるかといいますと、ないと。ですから、その危険性があるということは指摘させていただきたいと思います。
 繰延べ投票に関しましても、繰り返しになりますけれども、日曜日に自然災害があった、で、土曜日の段階で、じゃ、今の改憲手続法であれば木曜日以降に繰り延べるという話になりますけれども、それに関しては月曜日にということ可能になると。一応、衆議院の審議なんか見ていますと、いや、そんなことはしませんという言い方が、答弁されていたんですけど、できるけどしないとできないはやっぱり違うんですよね、法的には。ですから、やられたときにやっぱり大変なことになってしまうと。
 言い方ですけど、余り国民に知らせたくないから早くやっちまえみたいなことをやられてしまう、これはフランスでよくプレビシットになりますけれども、そういったことがないように、やはり投票できる機会というのはできるだけ多く設けるという趣旨から、やっぱり繰延べ投票の告示期間の短縮というのは、やっぱりここ修正か廃止かどちらかだというふうに考えています。

参考人(福田護君)

 御質問ありがとうございます。
 外形的な事項というふうに整理をされた中にも、今日も飯島参考人を始めとして御指摘あったように、いろんな問題があるように私も考えております。
 その中で、ちょっとだけ、特にこの点は興味のある問題だなというふうに思ったのは、刑務所における受刑者の国民投票権とそれから選挙権の問題でして、今現在その両方が違う制度になっている。その場合に、受刑者が選挙権がなくて本当にいいんだろうかというところまで含めて議論をしていい問題ではないかと。これはやっぱり参政権、人権の問題に関わるので、今回のそういう違いから更に進んで、受刑者の選挙権というのをもう一度考え直してみる機会にしていただいてもよろしいのではないかというふうに思います。
 そういうふうに外形的事項というふうに整理をされた、あるいはされてしまった中にも、実質的に内容的に人権に関わる問題というのがたくさんあるように存じますので、その点を参議院においては更に解明をしていただくということを私としては是非望みたいと思います。
 それから、投票の質に関わる問題につきましては、先ほどもまとめて私の方で申し上げさせていただいたように、今の現在のこの附則の第四条だけでもまだ不十分というか、それをきちんと審議をし、そしてそれが中身が詰められるまでなさったとしても、まだ例えば私どもの方で少し申し上げましたように、例えば最低投票率の問題ってどういうふうに考えるんだとか、それから国民投票協議会というのをどういうふうに構成するのが本当は望ましいのかとか、それからその投票協議会、これを通じて、政党等というふうに規定されていますけれども、その政党等を含めて国民が、有料広告放送とか有料広告インターネットではない、無償の公費の発言機会、そして議論をする機会、こういうのをどういうふうに保障していくのかということを、外国でも幾つかあるようですけれども、それをきちんと国民投票法の中で位置付けをしていただきたい、それが私の国会に対する強い希望でございます。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 外形的な事項だといっても、そこにも人権の問題もあるし、やはり丁寧な議論が必要だということは改めて分かりました。
 先ほど福田参考人からもありましたとおり、この投票の質に関する議論は、じゃ、どうなのかというところも問題だと思うんです。
 先ほど御指摘もありましたけど、修正案附則第四条でCM規制、資金規制などについて法律施行後三年をめどに検討を加えるとされたのみで、二〇〇七年の法制定時、二〇一四年の改定時や改正時に参議院で付された附帯決議の中身である公務員の国民投票運動の在り方や最低投票率については本法案では触れられてもいないわけで、そういう意味での欠陥法という指摘もあったと思うわけですけれども、この投票の質を確保するための議論や検討を置き去りにした本法案のままでは公平公正な国民投票にはなり得ないと思うんですが、この点について四人の参考人皆様のお考えを是非伺いたいと思うんです。とりわけ、この投票の質向上、確保に必要な課題とは何かという点も併せてお答えいただければと思います。

近畿大学法学部教授(上田健介君)

 ありがとうございます。
 これ、投票の質というのが、じゃ、要するに何をもって投票の質が確保されているのか、何をもって投票の質が、まあ何というか、ねじ曲げられていて、これは不公平な投票になっているのかというのの判断はすごく難しいです。
 私は、基本的には、自由に選挙運動ができて、自由に、できるだけ、もちろん全員がということでありますけれども、投票の機会が与えられ、自由に投票ができれば、基本的にはそれで、そこでベースに考えていいんじゃないかなと考えています。
 ただ、本当にねじ曲げられているんじゃないかという話であれば、もちろんそこに規制を掛けて整序するというか、そういうこともあってよいとは思いますけれども、それはより良くしていくのが何なのかという、そういう話になるのかなというふうに考えております。
 以上です。

参考人(飯島滋明君)

 御質問ありがとうございます。
 いや、これもちょっと何分で答えろという話なのかって、ちょっとあれなんですけれども、いや本当、検討すべきことはたくさんあると思います。
 最低投票率あるいは最低得票率と。一七九三年、フランスのジャコバン憲法ですと、もうそれこそ十何%の投票で成立してしまったと。これが国民主権の発露と言えるのかということになりかねませんので、やっぱり最低投票率というのは必要だというふうに思います。
 あるいは、CM規制ですけれども、賛成でも反対でもどっちでもいいんですけど、一方の見解だけが大々的に流されて、片一方は流されない、その状況で国民が影響を受けて投票に入るということがあれば、やはりこれは投票の質というのも、どちらかというと、言い方ですけど、つくられた世論、要するにマインドコントロール受けたような状況で主権者が投票するとなると。
 これでは非常に問題だと思いますし、そういった意味でCM規制というのがあってしかるべきかと思いますし、まして、何か操る、裏にいるのが外国企業だったり外国政府であれば、これこそ国民主権の観点から問題となると思いますので、やっぱり外資規制、あるいはそういったことも非常に問題だと思います。
 あるいは、公務員に関しては運動できないみたいな、こういった規制、先ほどもそういった質問ございましたけれども、これも問題だと思いますし、広報協議会に関しても、やっぱり公平に資料なんか提供されるのかどうかというのも非常に疑問なところがあります。
 こういったことをやっぱりいろいろ議論していくと、やっぱり三年でも足りるのかどうかという辺りはやはり感じるところでございます。

大東文化大学法学部政治学科教授(浅野善治君)

 これ、どう考えるかということになるわけですけれども、この憲法改正の改正手続をどういうものにするかということについては、やっぱり国民の意思というものが的確にまた適正にきちんと表れること、ねじ曲げられることなく表れること、これがまず一番の基本だというふうに思います。
 そのためにはどういう制度をつくったらいいか、どういうことを検討しなきゃいけないか、いろんなことがあるんだろうと思います。今、吉良先生おっしゃられたいろんなテーマもそれもきちんと検討されるべきことだろうともちろん思うわけですね。ですから、そういったことの検討が、仮に今回こういう形で一つ仕切られたとしても、今後ずっとそれが継続して検討されていくべきことというように思います。ですから、そういう意味では、今後、この検討というのがこれで終わるわけではなく、できるだけ丁寧に、また慎重にやられるべきだろうというふうに思います。
 ただ、それが憲法改正の論議に影響するのかというところ、これが一つ大きな問題でして、別に、それは憲法改正の論議とは別に憲法改正の手続を慎重に検討すればいいだけの話であって、それが両立し得ないということだとすれば、これはやはりおかしな話だなというように思います。
 むしろ、その憲法改正の手続については、憲法改正のその発議の議論が十分に行われ、それが発議されるときにきちんとしたものができていればいいわけですから、そのときまで十分時間掛けて検討してもいいわけだと思っています。
 ですから、どちらが先とかというのではなくて、並行してそれ十分な検討がされればいい、そういうように思います。

参考人(福田護君)

 不十分な、問題のある国民改正手続法によって憲法改正国民投票が実施された場合に、それは場合によって本当に取り返しの付かないことになってしまうのではないかというふうに危惧します。
 やってみないと分からないというところがあるのかもしれませんけれども、合理的に予測できる範囲で、財力のある側が広告放送をたくさん打ち、財力のない人が、ない側がそれができない、そして、これは大阪の住民投票の例でもはっきり数字として出ているわけでありますけれども、その格差というのはやっぱり覆い難いものがあるわけです。
 特にCMというのは、その人の情緒に訴えるという側面が非常に強いわけですから、本来、憲法の改正の問題というのは理性的な熟議に基づいて判断がされるということが必要不可欠なんだろうと、そのための条件づくりをするという、そのことの国民投票改正手続法、失礼、憲法改正手続法の内容の重大さということはやっぱり改めて強調させていただきたいというふうに思います。
 そういう意味でいうと、憲法の改正、憲法本体の改正の中身について、それは先ほど申し上げたように、自由討議をなさり、それから国民に対してその価値というものを提示をなさる、それが国会の一つの役割だとは思いますけれども、まずそれに至る前に手続法を、十分に公正公平な投票ができるためのそのテーブルづくり、システムづくりというのを先行させるべきだと私は思います。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 熟議が必要だということを申し上げて、終わります。