外環道の中止迫る 陥没 費用増える一方
要約
日本共産党の吉良よし子議員は21日の参院行政監視委員会で、東京外郭環状道路(外環道)の事業費が当初計画より約1・1兆円も膨らんだ上、陥没事故でさらに費用も増える見込みで、事業として到底「妥当」とはいえなくなっていると中止を迫りました。
昨年9月の事業再評価の時点で、事業費は2兆3500億円に膨らみ、費用に対する便益の比率である費用便益比は1・01と算出されていました。
吉良氏は、「妥当」と評価される「1」からみてもギリギリだが、再評価後の昨年10月以降の陥没事故などで総事業費はさらに膨らみ、費用便益比も悪化しているはずだと指摘。国土交通省の宇野善昌道路局次長は、今回の陥没事故を受けた家屋等への補修、地盤補修への対応、再発防止策の実施は「事業費の増加要因となる可能性がある」と認めました。吉良氏は「事業費は増える一方だ」「工事を続行しようとしていること自体が信じがたい」と中止を求めました。
補償方針について吉良氏が「個別対応も重要だが、地価低下の懸念など地域全体に影響が及んでいる」として地域全体への補償を求めると、同省の大西英男副大臣は「対応の必要性について当該自治体と相談してまいりたい」と答えました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日は、東京外郭環状道路について伺いたいと思います。
公共事業については、予算化の判断に資するための評価、新規事業採択時評価、そして、事業の継続又は中止の判断に資するための評価、再評価、及び改善措置を実施するかどうかなど今後の対応に判断に資するための評価、完了後の事後評価を行うことになっていると聞いています。
この東京外郭環状道路についても、国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会が昨年九月に三回目の事業再評価を行ったと聞いております。では、昨年の再評価の際のこの東京外環道の事業費総額は幾らになったのか、あわせて、当初計画と比較した場合の増減額も示してください。
国土交通省道路局次長(宇野善昌君)
お答え申し上げます。
昨年九月三日の事業再評価における東京外環の関越から東名間の事業費は、約二・四兆円でございます。当初計画と比較した場合、平成二十八年五月の事業再評価において、本線トンネルのセグメント及び床版構造の変更等により約〇・三兆円の増額、昨年九月の事業再評価において、中央ジャンクションにおける地中拡幅部の断面形状及び工法の変更等により約〇・八兆円の増額があり、当初計画から約一・一兆円の増額になっているところでございます。
吉良よし子
当初計画から一・一兆円の増額で、約二・四兆円もの総額の事業となっていると。当初、一メートル一億円の事業だと言っていたわけですけど、今や一メートル一・五億円掛かる事業に膨らんでしまっているということなんですね。
もう一点、事業再評価について関わって伺います。
この事業の実施に要する費用に対してこの事業の実施によって社会的に得られる便益の大きさがどのくらいあるかを見るものとして費用便益分析というのが行われていて、これ公共事業の評価で主として使われている指標で費用便益比、BバイCというのがあるわけですけど、じゃ、この東京外郭環状道路についてはどうなのか、今回の再評価で幾つになったのか、お答えください。
政府参考人(宇野善昌君)
お答え申し上げます。
費用便益比、いわゆるBバイCは、事業評価における要素の一つであり、走行時間の短縮など直接的に貨幣換算することが可能な便益のみを費用で除したものでございます。
昨年九月三日の関東地方整備局事業評価監視委員会において、東京外環の関越から東名間を御審議いただいた際にお示しいたしました費用便益比は一・〇一でございます。
吉良よし子
一・〇一と。これ、先ほど御説明あったとおり、この費用便益比というのは事業に要した費用の総計に対する事業から発生した便益の総計の比率なので、値が一以上ならばこの事業は妥当なものと評価されるわけですけど、逆に一未満となると妥当性が疑われるというわけで、一・〇一というこの指標というのはかなりぎりぎりだと。実際、新規事業採択時は二・九だったんです。前回の再評価時は一・九だったのが今回の再評価で一・〇一と、どんどん下がり続けていると。総額事業費も増えていて、この費用便益比はどんどん指標が下がってきてしまっている、悪化している状態です。
しかも、これ昨年九月の時点の評価額なんですけれども、その直後の昨年十月にこの工事現場の地上で陥没事故が発生をいたしました。資料を御覧ください。昨年十月十八日に、調布市の工事現場の地上部付近で道路と住宅のガレージに巨大な陥没が発生いたしました。そして、これだけで終わらずに、さらに十一月には陥没場所から約三十メートル北側のルート上の地下に長さ三十メートル、幅四メートルの巨大な空洞が発見されて、南側でも長さ二十七メートルの空洞が見付かりました。さらに、年が明けた今年一月十四日にも、同じこの地域の公園の十六メートル地下で長さ十メートル、この地域で三つ目の空洞が見付かるという大事故が起きているわけですけれども、シールドマシンがこの地域通過したのが昨年九月中旬頃と。その前の八月頃からこの地域ではもう大きな振動、騒音、低周波音が広い範囲で発生していて、周辺住宅の外壁タイルが剥がれたり、地割れなども起きていて、低周波音症候群の症状を示す住民もいたと。その上で、十月についに陥没事故が起きて、さらに空洞の発見も起きたという、もう大惨事なんですけれども。
この工事、大深度法により、いわゆる大深度法により、通常利用されない地下、大深度だから地上には影響がないといいながら、地権者に何の断りもなく工事が進められてきたわけです。けれど、実際には、この工事によりこれだけの生命、財産の危機にさいなまれる状況になってしまっているとんでもない事態なんですけれども、当然、この影響が出た全ての人に補償しなければならないと思うのですが、この補償方針、どうなっているでしょうか。
政府参考人(宇野善昌君)
お答え申し上げます。
今回の陥没、空洞により甚大な社会的影響が生じていることを踏まえ、東日本高速道路会社として、早急に社会的不安を解消し、住民の皆様が被った被害を回復するため、広範な補償の枠組みを事業者独自に設定し、住民に寄り添った形で補償を行っていく方針と承知しているところでございます。
具体的には、建物等に損害が発生した場合に、原則として従前の状態に修復、復元するなど原状を回復することに加え、家賃減収相当額や地盤補修工事完了後において生じた不動産売却損、疾病等による治療費など実際に発生した損害についても補償すると聞いております。
また、地盤補修については、確実に補修を行うため緩んだ地盤の直上から工事を実施する必要があると聞いており、今後の調査によって地盤補修範囲を特定しつつ、その範囲にお住まいの方については、仮移転又は事業者による買取り等をお願いさせていただいているところと承知しております。
これら補償、補修に当たっては、事業者において、住民に寄り添った形で個別に事情を丁寧にお伺いし、誠意を持って対応するものと承知しております。
吉良よし子
個別に対応ということで方針示されたわけですが、じゃ、その補償件数、補償額というのは全部でどの程度になる見込みなのでしょうか。
政府参考人(宇野善昌君)
今般の調布市での陥没に対する補償につきましては、陥没、空洞箇所周辺にお住まいの約千世帯を訪問し、個別に状況をお伺いし対応を進めていると承知しております。
具体的には、建物等の損害への対応については、家屋中間調査を御希望の方が全体のおおむね四分の一程度あり、現時点でこの家屋中間調査がおおむね完了しつつあります。また、そのうち約二割で補修を実施中若しくは完了となっております。このほか、地盤補修のための仮移転や買取りへの御協力の依頼、家賃減収相当額や疾病等による治療費など、実際に損害を被られた方への補償対応を実施していると承知しております。
なお、具体的な補償額については、現時点では算出できる状況にはございません。
吉良よし子
現時点では具体の補償額、算出できる状況にはないと。まあ、個別の調査進んでいる最中だということですが。
ただ、これ、先ほどの方針でも、実際に損害被られた方を対象に個別に補償するんだと、丁寧にやるんだとおっしゃっているわけで、これはこれで重要なんですけれども、先ほど申し上げたとおり、この事故というのは、単に穴空いたところだけではなくて広範にわたっていて、地域全体に影響が及んでいると思うわけです。
実際、この地域全体の地価だって下がる懸念だってあるわけですから、実際にその家屋が損傷しているかどうかとか、家賃の減収があったとか収入の減収があったかどうかだけではなくて、やはりこの地域全体が被害に遭っていることを踏まえて、地域全体への補償というのが私必要じゃないかと思いますが、国交副大臣、いかがでしょうか。
国土交通副大臣(大西英男君)
東京外環事業におきまして昨年十月に調布市において陥没が発生したことについて、御不便や御苦痛をお掛けしている地域住民の皆様に心からおわびを申し上げます。
今回の陥没、空洞により大きな社会的影響が生じていることを踏まえ、事業者であるNEXCO東日本においては、速やかに社会的不安を解消し、住民の皆様が受けた被害を回復するため、幅広い補償の枠組みを事業者独自に設定し、住民に寄り添った形で補償を行っていく方針と承知しています。また、NEXCO東日本からは、様々に事情が異なる住民の方々を個別にお伺いすることにより、きめ細やかな住民の方に寄り添った対応が可能であると聞いています。
国土交通省としては、住民の方々の不安を取り除けるよう、有識者委員会による報告書を踏まえて、NEXCO東日本が行う今後の進め方等の検討及び住民の方々への説明について、最大限協力してまいります。
なお、御迷惑をお掛けしている地域全体に対して補償すべきとの提案をいただきました。補償は家屋の損傷など具体的な被害が生じている場合に個別に行うものと考えていますが、地域全体の課題がある場合には、地元自治体から丁寧にお話をお聞かせいただいた上で、対応の必要性について当該自治体と相談してまいりたいと考えております。
吉良よし子
地元自治体と相談してということですが、地元住民の皆さんは地域全体の補償を求めているわけですから、早急に検討していただきたいということを申し上げたいと思います。
いずれにしても、この補償総額幾らになるか現時点では分からないということなわけですが、さらに、この費用という面でいえば、陥没事故に伴って先ほど地盤補修を行うとおっしゃっていました。
じゃ、これに掛かる費用というのは幾らぐらいになる予定ですか。
政府参考人(宇野善昌君)
お答え申し上げます。
有識者委員会の報告書において、地盤の緩みが生じている可能性のある範囲については、地盤補修予定範囲として引き続き調査を実施し、補修等の措置が必要となる地域を特定していく、補修工法については、今後具体的に検討していく必要があることが示されており、現在事業者において調査及び検討を行っているところでございます。
したがいまして、現時点では地盤補修等に掛かる費用を算出できる状況にはございません。
吉良よし子
算出できる状況にないと。
そもそもこの地盤補修というのは、単純に補修するためだけじゃなくて、工事を継続するための地盤補修だというんですけど、これだけの事故を起こしてなおこの工事を続行しようとしていること自体、私は信じ難い思いなんです。
実際、現時点ではシールドマシンは止まっている、中断しているわけですけど、となると、工事完了時期だっていつになるか分からない、どんどん延びていくだろうということが予想されるわけなんです。
こうした状況も踏まえて、この事故が起きた後、だから昨年九月の事業評価時点での総額事業費、膨らんでいたわけですけど、事故が起きた今、更にこの総額事業費、事業総額、増えるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
政府参考人(宇野善昌君)
お答え申し上げます。
今般の陥没事故を受けた、陥没、空洞地域周辺で影響を受けた家屋等への補修や、地盤補修への対応や、有識者委員会で取りまとめられた再発防止策の確実な実施は事業費の増加要因となる可能性があると認識しております。一方で、今後ともコスト縮減に努めることとしており、現段階では総事業費を見通せる状況にはございません。
現段階では、まずは家屋補償など必要な補償を誠意を持って対応しつつ、工事により影響を受けた地盤の補修などを行っていく必要があると認識しております。
吉良よし子
増加要因になるということでした。これだけ事業費が膨らんでいる、もう費用便益比も悪化している、更に悪化する可能性もある。
やはり、国交副大臣、もうこの事業、中止するべきではありませんか。端的にお願いします。
国土交通副大臣(大西英男君)
東京外環の関越から東名道間については、関越道、中央高速、東名高速を環状方向に結ぶ、首都東京の根幹となる道路ネットワークを構成する重要な道路です。この道路は都心方向に集中する交通を適切に分散し、首都圏の慢性的な渋滞の緩和に効果を発揮するとともに、物流の効率化や生産性向上などの効果が見込まれる首都圏にとって必要な事業と認識しております。
この区間の事業評価については、昨年九月の事業評価監視委員会の審議を経て、事業者として事業継続の対応方針を決定したところです。
事業評価において費用便益比は、いわゆるBバイCは重要な要素の一つですが、事業評価はBバイC以外にも様々な効果、例えば物を……
委員長(野田国義君)
時間が来ておりますので。
国土交通副大臣(大西英男君)
はい。
物を配達する等々、様々な問題があります。といった効果などを含め、総合的に評価するものだと考えております。
吉良よし子
いや、もうBバイCは本当悪くなっているだけなんです。事業費も増える一方なわけですね。これ、もう事業を見直すしかないと思うんです。
最後、時間なんですけど、総務大臣、一言。
やっぱり、こういう継続ありきじゃなくて……
委員長(野田国義君)
時間でございますので。済みません。
吉良よし子
中止も念頭に置いて事業再評価、急ぎ必要だと思いますが、それについて一言お答えいただいて、質問を終わります。
委員長(野田国義君)
時間でございますので。終わります。