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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2022年・第208通常国会

【参考人質疑】保健所数「元に戻してほしい」 東京・稲城市長

要約

 参院行政監視委員会は14日、国と地方の役割分担について参考人質疑をしました。日本共産党の吉良よし子議員は、コロナ禍で保健所業務がひっ迫している背景には、1990年代の地域保健法などにより保健所数が激減したからではないかと指摘。保健所の広域化による弊害について質問しました。

 参考人の高橋勝浩東京都稲城市長は、現在の保健所体制について「新型コロナのような新規の感染症により、いかに脆弱(ぜいじゃく)かが明らかになった」と述べ、保健所の広域化によりコロナ感染者の情報が共有できず、自宅療養している人への食料提供もできないと指摘。「熱を出し電話もできない状態の人へ支援の手が届かないことは非常に大きな課題だ」と語りました。

 吉良氏は、東京では71カ所から31カ所になり、特に多摩地域の保健所が減らされ地域格差も深刻化しているとして、保健所のあるべき姿について質問。

 高橋氏は保健所再編を見直すべきだとし、「元の数に戻してほしいというのは一つの大きな要望だ」と述べました。

しんぶん赤旗2022年2月15日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 本日は、三人の参考人の皆様、貴重な御意見を本当にありがとうございます。
 それでは、早速質問に移りたいと思います。
 まずは、新型コロナ対策に関わって、高橋参考人に自治体の現場の実態について幾つか伺っていきたいかなと思います。
 一つ目は、保健所についてです。
 冒頭のお話の中でも、保健所の再編、広域化で大変弊害が出ているというお話もありました。これ全国で起きていることで、コロナ禍で保健所業務が逼迫していると。その背景にあるのは、先ほどお話あったとおり、九〇年代の地域保健法や若しくは地方分権改革の影響もあって、全国の保健所の数が、九〇年代八百五十か所あったものが四百七十二か所に二〇一九年には激減しているということがあると思うわけです。東京の場合は、七十一か所あったものが三十一か所、特に多摩地域では、先ほどお話あったとおり十七か所から五か所ということで、地域格差も深刻化している問題だと思っております。
 この保健所の広域化の弊害について、先ほどは疫学調査が困難だというお話もありましたが、より具体的な実態、もしあれば教えていただきたいのと、保健所の再編の見直しが必要というお話でしたが、とすると、例えば稲城市に一つは保健所があった方がいいとか、あるべき姿について何か御意見があれば併せて伺いたいと思います。お願いします。

参考人 稲城市長(高橋勝浩君)

 まさに感染症の最前線で闘っていただくのはもう保健所でありまして、これがなければどうにもならないわけでありますけれども、保健所が再編して縮小されてきた理由というのは、一つはその法改正に基づいてということがあるわけであると思いますが、やはり疾病構造の変化、かつて感染症が一番死亡要因の大半を占めていたところから、今は成人病といいましょうか、慢性疾患、がん、心筋梗塞等々ですね、そういったことが死亡原因になって、いわゆる日本は先進国だから感染症の危機からはそれを乗り越えてきたという多少慢心があったんだろうと思いますけれども、いざこういう新型コロナみたいな新規の感染症があると、それにいかに脆弱であったかということが今回分かったわけであります。そこで、その疾病構造の変化に基づいて、そんなに感染症対策って重要なものじゃないよねという中で減らされてきたという側面もあるので、是非これはもう一度見直さなきゃいけないと。
 そして、各市に保健センターなるものをつくって、保健所の機能の一部をそういうふうに市町村に、これは分権なのかどうかということはありますけれども、業務を下ろしながら、順次保健所としては数も縮小、そして、数が減っただけではなくて、中の体制、職員の人員体制であるとか部署の数も減ってきているわけでありますから、全体的に今一部を市町村に下ろすということでありますけれども、今回、実際の弊害としては何があるかというと、情報共有ができないと。保健所はあくまで都道府県、まあ東京都がやっているので、東京都で得たいわゆる発症、発生情報ですね、どこに住んでいる誰がコロナの陽性ですと、行政検査をしたその情報を持っているわけですが、これが個人情報なので渡せないということであります。
 我々とすると、保健所ではありませんので、そういった意味での仕事はしていませんけれども、保健所があっぷあっぷで入院ももうできないと、自宅で療養しなきゃいけないというような方に、食料提供も都道府県では滞っている、特に東京都は人口多いですから、その一人一人に食料を渡すことがなかなかできなくなっているというところで、やはり市町村に対してSOSが来るわけですね。ところが、どこの誰が陽性か、自宅療養しているかについては個人情報だから教えられないということで、我々は助けたい、支援したいんだけれどもその個人情報は渡せない、じゃ、どうしたらいいんだということで、かなり東京都とは交渉して、限定的には今教えてもらっていることになりますが、やはり自前で保健所を持っている政令市、特別区、これは同じ区ですから当然どこの誰べえが陽性になったか全部知っているわけなので、それを情報共有しながらプッシュ型の支援ができているわけですね。ところが、我々のところは教えてくれないということで、結局一般公募というんですかね、御自宅で療養している人で食料がなくて困っている人があったら言ってきてくださいと。中には熱を出してもう本当に電話もできないような方がいらっしゃるわけですから、それで単独死などしたら誰が責任取るのかということはあります。
 是非とも、ですから、この保健所が縮小されたというのは、管轄が違うということで情報共有ができないということも非常に大きな課題であると。
 じゃ、どうしたらいいのかと。アフターコロナでは是非この見直しをして、元の数に戻してほしいというのが一つの大きな要望ですけど、これはなかなか難しいのは分かっています。むしろ、今の方向性とすると、全市町村が保健所を持つというのは、やはりこれは行政効率的にどうか、あるいは人、物、金の関係でできないということもあると思いますけれども、そういった意味では、都道府県行政から市町村行政に下ろすとともに、単独でできるところは単独でやり、単独でできないところは、今現行法ではできませんけれども、一部事務組合で共同処理するような仕組み、これ是非法的に考えていただければ、今我々のやっている南多摩保健所、なかなか人員増してくれって東京都に頼んでも増やしてくれないんですね。これが、日野、多摩、稲城が仮に一部事務組合で自分たちでできれば、そこへ応援職員を送ったり一時的に増やしたりということはできるんではないかなと思います。
 そういった意味では、再度、保健所がどこにあるべきなのか、そして緊急時にはどうやって人を、体制を取ることがいいのか、これをゼロから御議論いただければ有り難いなと思っています。

吉良よし子

 大変貴重な実態、ありがとうございます。
 情報共有さえされず、食料提供、食事の提供も大変困難になっているという実態、やはり広域化の問題大きいなということを改めて実感をいたしました。ありがとうございます。
 もう一点聞きたいのが、自治体病院、市民病院の在り方についてです。
 自治体の病院というのは、この感染症対策においてもコロナ病床を引き受けるなど大きな役割を果たしていると思うわけですが、一方で、このコロナ禍で深刻な減収に陥っていて、このままでは倒れてしまうような深刻な実態もあると聞いています。
 稲城市の場合も市単独経費の市民病院があるということですが、高橋参考人、二〇二〇年十一月の市長コラムの中で、政府の措置では減収分の補填にさえ十分ではないと、更なる財政支援が必要だということを述べられていらっしゃったかと思うんですが、現在、政府はこの支援拡充ではなくて、発熱外来の補助金とか診療報酬の加算は昨年中で打ち切ってしまっているという状態なわけです。ではなくて、やはり政府から自治体病院への支援も拡充していくべきじゃないかと思うわけですが、この辺りについて、自治体病院への財政支援について御意見をお聞かせいただければと思います。

参考人(高橋勝浩君)

 そこのコラムを読んでいただきまして、ありがとうございます。
 その当時はまだそういった補助のかさ上げとかそういった制度がない段階で、その段階では稲城市立病院、年間の赤字が三十億円ぐらいになるんじゃないかと、病院が潰れるだけじゃなくて稲城市自体もちょっと倒産しちゃうんじゃないかなというぐらいの赤字幅を見込んだわけですが、その後様々なルートでお願いをしまして、診療報酬の自体のベースもアップしてもらったり、あるいは数々の補助金についてかなり自由度の高い補助金を付けていただきまして、このコロナ対策の期間だけは乗り切ることができて、かなりこれは手厚くやっていただいたことは、政府、国に対しては感謝を申し上げたいと思いますけれども。
 これ、やっぱり期限付のものであるということですから、これでもう継続はない、延長はない、これでこれっきり、何月いっぱいで打切りということではなくて、取りあえず今の財源措置の形はこれまでということは言われていますけれども、当然まだコロナが続く限りは続けていただかなければいけないので、それは続くものだと思っていますが、問題は、これが全部片付いた後に全部切ってしまって元のもくあみだと、これはどうなのかなということですから、やっぱりアフターコロナへの、対する医療提供の拡充、まあ保健所の拡充もそうですけど、それをゼロベースでもう一回議論いただいて、どうしたら感染症が急拡大したときに医療提供体制を整えられるか、それをコロナ病床をつくったところが割食って大赤字になっちゃうなんてことがないように、元々制度設計上、それをビルトインしておいてもらうということがこれから望まれるんじゃないかなと思っております。

吉良よし子

 ありがとうございます。
 本当、期限付ではなくて、コロナある限りの補助は必要だし、アフターコロナの医療拡充が必要だというの、本当に大事だと思います。今、国は逆に、この公立・公的病院の削減、統廃合など進めようとしていますが、そうではなくて、やはりそういった公立病院も含めてきちんと医療を拡充していく、必要な医療を提供していく体制整えるということが大事だなということ、よく分かりました。ありがとうございます。
 それでは、三人の参考人全ての皆さんに伺いたいと思うんです。
 現在、新型コロナウイルス感染症の対応で、自治体の現場、先ほど来もありましたとおり、大変苦労しているわけですが、その中でもやはり職員が減らされてきたことの弊害というのは大きく出ているのではないかと。例えば、先ほどの保健所の業務逼迫への応援ということで、図書館や博物館を休館してそこから人を応援させているというお話も聞いたりもしているわけです。
 土山参考人から、役所の職員減らし過ぎだと言っていいと最初お話ありましたし、稲継参考人は「ガバナンス」二〇二一年一月号の記事の中で、自治体の人的リソース、過去二十年ほどで大きく減少傾向にあって、新型コロナウイルス感染症が自治体を襲ったということを述べられているわけですけれども、とりわけこのコロナ禍、明らかになってきたこの自治体職員の減少による弊害について、各参考人どうお考えか、是非御意見をそれぞれ伺いたいと思います。

参考人(高橋勝浩君)

 これまでの長きにわたる行政改革の積み上げで、相当、市町村、私どももそうですが、職員の人数は激減をしております、まあそうせざるを得なかったということがありますけれども、これは単に財源だけの問題ではなくて、やはり総務省を中心とした国からの定員管理、厳しい御指導があって、これはどちらかというと財政的な問題じゃなくて、正規職員の頭数で実人数を減らしていけという厳しい減数指導があったものですから、そういうことで減らされてきた。結果的には、それを代替する者が必要でありますから、結局、職員減らしたところで、それをアウトソーシングということで委託をし、結局、人件費が減る分だけ物件費が上がっていくということで、仕事自体が減らない以上は絶対にそれを対応する職員は必要なんだろうと考えています。
 そういった意味では、いざというとき、こういった感染症が起こったとか、あるいは大規模災害もそうでありますけれども、頼りになるのはやっぱり公務員、地方公務員であります。それ自体が実数で減員されてしまっているので、なかなか対応が難しい。今後は、やはりこういう危機管理等を考えると、もう本当の最低限のかつかつの人数でいいのかどうか、いざというときのバックアップを考えて、もう少し業務として余裕を持った人数の配置が必要なんではないかなというふうに考えております。
 ですから、脱行革、そのアフター行革の後の本来あるべき適正人員というのをもう一度考え直していきたいなというふうに考えています。

参考人 早稲田大学政治経済学術院教授(稲継裕昭君)

 一九九四年に約三百二十八万人いた地方公務員数は、その二十五年後ですかね、二〇一九年には二百七十四万人、五十四万人減少しています。特に、集中改革プラン、これは〇五年から一〇年ですけれども、二十三万人減少しています。しかしながら、その中で、警察とかあるいは消防の部門、これは安全、安心に関わるものとして職員数増えていますので、一般の行政職員数が非常に大幅に減少しています。その中で、このコロナという、こういう感染症が拡大するということが発生したわけであります。
 私は、この二百七十四万人というところまで減らしたのは、自治体によっては減らし過ぎたところが多いというふうに思っております。十分な職員数を確保することがこれは財政的にできないとか様々な要因はありました。そして、今、稲城市長もおっしゃったように、アウトソーシングする、あるいはアルバイトを雇用する、非常勤職員を雇うということでこなしてきましたが、この非常勤職員すら昨年の会計年度任用職員制度への転換により人件費カウントにされるようになったということであります。なので、なかなか自治体にとっては非常に苦しい選択を今迫られているというふうに思います。
 先ほど稲城市長もおっしゃったように、総務省の方で定員管理のカウントがあるわけですけれども、諸外国見るとなかなかそういうことをやっているところは少ない。むしろ、総人件費としてカウントし、それについて財政的な支援とかなんとかするというところが多うございます。定員管理を国の方でやっている、まあやっているわけではないですが、事実上それをかなり見ているというところは諸外国比べると非常に珍しいので、そのこと自体も場合によっては今後見直す必要があるのかなというふうにも思いました。
 ありがとうございました。

参考人 法政大学法学部教授(土山希美枝君)

 ありがとうございます。
 どのような状況が起こっているかということについては既にお話しさせていただいたことにもありますけれども、それでは一方で、どのぐらいが適正規模なのかという議論も、それではその減らし過ぎたという前提は共有されたとしても、それではどのように適正規模に持っていくのかということには議論が必要です。
 今お二方の参考人からお話があったように、定員管理も含めて、国の号令も含めて減らしてきた結果、いびつな形で減っているところがある。年齢の偏差があったり、例えば能力的にも、例えば今求められている行政、丁寧な市民対応とかほかの多様な政策主体との連携ができるという人が育ってきているかといえば、そこにもやっぱり疑問がある。そうすると、人、事業から見たときの適正規模というのがどれぐらいか、また、自治体に求められる、その自治体に求められる役割を果たすような、どういうその人材戦略が必要か。例えば、その人材育成の計画もありますけれども、それがなかなか十分に、単に書かれただけ、物によっては県レベルのモデルの引き写しになっているところもあります。
 そうした人事管理等ですね、労務管理と人事管理がセットになるわけですね。そうした中で、どれぐらいが我が町の適正規模なのかということを考えることから始めなければいけないというふうに思いますし、しかし、これまで、国の号令の話もありましたが、九〇年代頃の公務員バッシングもあったわけですね。そうすると、その市民の理解を得るということも必要になってきています。そうした適正規模というのはどれぐらいなのか、また、それに対して市民又は多くの理解を得ることが必要。そうした理解、実はもう自治体の職員というのは、ひょっとしたら国の職員さんもそうですけれども、足りないんだよねということの前提をメッセージとして発するのは、それはやはり自治体の役目でもあり、国の役目でもあるのかなというふうに思っております。
 ありがとうございます。

吉良よし子

 大変貴重な御意見ありがとうございました。終わります。