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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2022年・第208通常国会

博物館長 女性登用を 指導的地位へ積極的に

要約

 日本共産党の吉良よし子議員は7日の参院文教科学委員会で、博物館の館長など指導的地位への女性の登用を促進するよう求めました。

 吉良氏は、博物館の学芸員、館長の総数、男女別人数について質問。文化庁の杉浦久弘次長は、登録博物館、相当施設の学芸員の総数5025人のうち、男性は2696人、女性は2329人で、館長の総数1285人のうち、男性は1121人、女性は164人だと答えました。

 吉良氏は「学芸員として業務にあたる女性が半数に上る一方で、指導的立場に女性が極端に少ないという現状をやはり変えていく(べきで)、博物館の指導的地位である館長などにも女性を積極的に登用するよう促すべきではないか」とただしました。

 末松信介文部科学相は「博物館にはやはり多様な考え方、女性の活躍は必要」だとし、「施行通知を含め、あらゆる機会を捉えて女性職員の育成や幹部登用に積極的に取り組むよう設置者や各博物館に促す」と答えました。

 また、吉良氏は博物館の学芸員の未配置や予算がない現状を示し、博物館法改正を機に博物館の予算を増額するよう求めました。

しんぶん赤旗2022年4月14日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 現在、博物館は危機だと言われています。二〇二〇年八月二十七日の博物館法改正へ向けての更なる提言では、公立館の多くが人事、予算、運営の面で窮迫するに至った、その結果、予算や人員の削減に始まり、挙げ句は休館や廃館にしたりするなど、まるで博物館を厄介者扱いにする事例もあり、設置主体の責任が問われるべき事態が起こっていると指摘されています。この人員、そして予算が足りない、これが博物館の現状だと。こうした現状を改善することも本改正案の目的の一つだと私は理解しているわけですけれども。
 ここで確認をしたいと思います。現在、登録博物館は全国九百十四館あると聞きますが、そのうち学芸員がいない、ゼロ人の博物館というのは幾つあるのでしょうか。

文化庁次長(杉浦久弘君)

 お答え申し上げます。
 平成三十年度社会教育調査報告書によりますと、二〇一八年十月一日現在で、全国の登録博物館のうち学芸員の配置数がゼロ人となっている館は二百五十六館となってございます。

吉良よし子

 二百五十六館、九百十四分の二百五十六なので、実に二八%の登録博物館に学芸員がいないということなわけです。
 本法案では、現在登録を受けている博物館も経過措置のある五年以内に再登録をしなければならないと。それから、今答弁のあったこの二百五十六館というのは、つまりは、このまま何もしないまま放置しておけば五年後になれば登録から外れてしまうということになってしまうわけですね。そうでなくとも、博物館が資料の収集、保管、展示、教育、調査研究といった基本的な機能を果たすためには、人の配置、とりわけ専門職である学芸員の配置というのは不可欠なわけです。
 これまで登録博物館であったところが、この学芸員の配置が困難だということを理由にして再登録を断念、本当はしたいけれどもそれを断念してしまうようなことにならないで済むように、やっぱり国として今こそ学芸員配置の底上げ、雇用の改善、進めるべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

文部科学大臣(末松信介君)

 学芸員は、先生御指摘のとおり、資料の収集、保管、展示、教育、調査研究という博物館運営の中核的な役割を担う専門的職員でありまして、その役割は引き続き重要であるという認識でございます。
 現在の博物館法では登録博物館には学芸員を配置することが求められておりまして、そのことは今回の法案でも全く変わりはございません。一方、博物館に学芸員を配置するかどうか、また学芸員をどのように処遇をするか、最終的にはそれぞれの博物館の設置者が判断すべきであると考えておりますけれども、博物館が、全体を見た場合に、御指摘のように配置の促進や処遇の見直しは重要な課題でございます。
 このため、文科省としては、学芸員の能力の底上げを図ってその処遇の改善につなげるため、若手から中堅に至る学芸員の研修、研修はもう積極的に行っております。また、本法案では、既に登録されております博物館については、改正法の施行後、先生お話しになったとおり五年間は登録博物館となる経過措置を置いておりまして、今後、国として登録を促すこととなります。
 文科省として、この過程を通じて各博物館が必要な学芸員を配置してもらえるように、登録博物館となるよう様々な機会を通じて設置者に働きかけてまいりたいと、そのように考えております。

吉良よし子

 この学芸員の配置、重要な課題だという御答弁でありました。
 本法案では、この登録博物館の水準を維持するために定期報告も求めるということになっているかと思うんですが、この水準維持ということであれば、やっぱりそれ博物館任せにせず、やはり少なくとも今の登録博物館が学芸員ちゃんと配置できるように、国として何らかの財政措置も含めた学芸員配置の底上げ、強く求めておくものです。
 あわせて、この人員問題、ちょっとジェンダーの観点からも私見ていきたいと思うんです。
 登録博物館、そして博物館相当施設の学芸員の総数と男女別での人数、そして、それら施設の館長の総数とその男女別の人数をそれぞれお答えいただけますか。

政府参考人(杉浦久弘君)

 お答え申し上げます。
 平成三十年度社会教育調査報告書によりますと、二〇一八年十月一日現在で全国の登録博物館及び博物館相当施設には合計で五千二十五名の学芸員がおります。その内訳は、全国九百十四館の登録博物館の合計でいきますと、男性が千九百六十七名、女性が千六百二十六名、全国三百七十二館の博物館相当施設の合計でいきますと、男性が七百二十九名、女性が七百三名となってございます。
 同様に館長についてでございますが、全国の登録博物館、博物館相当施設の合計千二百八十五名でございまして、登録博物館では、男性が七百九十八名、女性が百二十名、博物館相当施設では、男性が三百二十三名、女性が四十四名となってございます。

吉良よし子

 学芸員そのもの、学芸員の総数から見ると男女比率というのは大体ほぼ半々だと、登録でも相当施設でもそういう数字だったかと思うわけです。しかし、館長となると途端に女性の数が少なくなると。総数で見ると、登録と相当施設合わせると、男性千百二十一人に対して女性館長というのは百六十二人と、女性の比率というのは一二・七%という数字になってしまう。かなり少ないということが分かるわけですが、こうした組織の末端では女性比率は一定あるが、地位が高くなると男性比率が高くなってしまう、女性比率が低くなってしまうという傾向というのは、ここ国会も含めた、政治分野も含めた日本社会全体の問題であり、これらの改善というのは急務なわけです。
 それはもちろん博物館、美術館、文化芸術の分野であっても同じなわけで、こうした学芸員として業務に当たる女性、半数に上る一方で、指導的立場に女性が極端に少ないという現状をやっぱり変えていく、博物館の指導的地位である館長などにも女性を積極的に登用するように是非この機に促すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。

文部科学大臣(末松信介君)

 今回の改正案におきまして、博物館が地域や社会の多様な課題に対応するよう求めていることを踏まえれば、女性も含めた多様な人材に博物館職員としてその知見、経験を生かしていただくこと、重要なことであります。まさに先生の主張と方向は同じですね。
 具体的にどのような資質、能力を持った者を博物館の館長にするか、それぞれの設置者が適切に判断することでありますが、全体として見れば女性の登用が少ない状況でございます。これらの博物館の運用を考えますと、やはり多様な考え方が必要でありまして、女性の活躍は必要でございます。先生、今数字を示されまして、一二・七%ということでした。
 法案成立の暁には、施行通知を含めまして、あらゆる機会を捉えて女性職員の育成や幹部登用に積極的に取り組むよう設置者や各博物館に促します。

吉良よし子

 法案の改正の暁には、こうしたジェンダー平等、女性登用を積極的に求めていくという御答弁でした。もう是非やっていただきたいと思うんです。
 そうでなくても、この間、博物館や美術の世界というのは本当男性中心になっているという指摘があって、国公立の美術館の場合ですが、その収蔵作品の男女比について調査をしたものを見ると、男性作家による作品というのは七八%から八八%を占めていて、女性作家による作品というのは一〇%から一三%と。これは単に女性作家が少ないとかいう話ではなくて選ぶ側の視点も問われる問題であり、それは美術館だけじゃなくて博物館の収蔵品についてもそういう問題が指摘される、ジェンダー的な観点を取り入れる、多様性が重要だというところで、そのためには女性の参入も不可欠なわけですから、是非、積極的にということは併せて、重ねてお願いしておきたいと思います。
 ところで、冒頭申し上げたとおり、博物館には予算もないということは指摘されていることであります。
 平成三十年、二〇一九年の文化庁委託事業、持続的な博物館経営に関する調査によると、博物館全体の五二・七%、特に郷土博物館の約七割、歴史博物館の約六割が資料を購入する予算がないと答えています。また、同じ調査で、博物館での調査研究に充てる予算についても、全体の五二・六%、特に郷土博物館では六四・二%が予算がない、足りないではなく、ないと回答をしているわけです。
 この博物館資料の収集、そして調査研究というのは博物館法第二条の定義にも明示されている博物館の基本的な役割なんですが、その予算がない博物館が半数超えているというのはゆゆしき事態で、今回の改正を機に改めて国として博物館の資料購入、調査研究などへの財政的な支援すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

文部科学大臣(末松信介君)

 今日は、宮沢先生、伊藤先生からもこの同様の御指摘をいただきましたです。
 先生御指摘のとおり、博物館の資料購入とか調査研究というのは、博物館の基本的な機能であり、一番重要なことです。一方、限りのあるリソースをどう配分していって維持発展させていくかにつきましては、まず、何度も申し上げるんですけれども、やっぱり設置者が館のミッションであるとか地域の実情を踏まえて適切に判断いただかなければなりません。
 文科省では、地域博物館の創意工夫を生かした先進的な取組を支援するために令和四年度から新たに博物館機能強化推進事業を実施することとしておりまして、この中で調査研究に係る経費を措置することも可能であると考えてございます。まだ令和四年度始まったばかりですからあれですけれども。
 厳しい財政状況でございますが、文科省としては様々な予算事業を通じまして、より多くの博物館が地域や社会に貢献するとともに、地域住民に親しまれて信頼される存在になるように取り組みたいと思います。

吉良よし子

 機能強化推進事業など進めているということでしたけれども、そもそも、予算が足りないんじゃなくて、先ほど言ったように、ないって答えているところが多数、半数以上いるというところなわけで、そのない状況というのをやっぱり変えていかなきゃいけない、そのためには公立博物館設置している地方自治体が財政的にも責任持てるように国が支援する、そういう体制整えていくべきだということを指摘しておきたいと思うんです。
 そして、同時に、今回の法改正の対象、直接の対象ではないですが、国の文化施設についても予算が十分にあるというわけでは決してないわけです。それでも、今回の改正を機に、国立の博物館、美術館への運営費交付金なども多少は拡充されるのかなと思いましたらそうではなくて、今年から国立文化施設の自己収入の増加インセンティブを強化するということで、運営費交付金に競争的資金枠を設けて、自己収入の増加率に応じて再配分を行うと。
 要するに、国立博物館等、様々な施設の間で競争をさせて、その運営費交付金の多寡が変わっていくというシステムになったということなんですが、いや、国の文化施設そのものが、劇場から博物館、美術館、研究所まで、そもそもその性格も成り立ちも違っていて、それらを横に並べて競わせるということ自体がやっぱりおかしいんじゃないかと。そもそも、博物館、美術館の予算がない、足りないって言っているときに、無理に競わせて、ただでさえ少ない予算の取り合いさせるような仕組み入れることは社会教育や文化芸術に対する見識がないと言われても仕方がないんじゃないかと思うんですが、こうした競争的な経費を運営費交付金に入れること、これは大臣、やめるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

文部科学大臣(末松信介君)

 交付金の中から一%ということと聞いております。先生は競争であるという見方でありまして、これを少しでも工夫してくれないかという、そういう一%と捉える見方もございます。
 したがいまして、今回、文化関係の独立行政法人におきましては、ポストコロナを目指しまして、入場料収入だけに頼るのではなくて、施設の貸出しやクラウドファンディングの活用など、多様な財源の確保に向けた積極的な取組が必要でございます。このため、今年度から自己収入増加インセンティブの仕組みを導入しました。この仕組みは、入場料収入を含む総収入のそのものを評価することに加え、寄附金の確保や施設の貸付けの外部資金の獲得に向けた取組を評価する仕組みと考えてございます。
 私、この一年、状況を見守りたいなということは思ってございます。

吉良よし子

 大臣、様々工夫なんだとおっしゃいましたけれども、一方で、日本学術会議の提言でも、国立博物館への運営費交付金が減少傾向にあって、新たに開拓した収益源からの総額というのは決して十分じゃなくて、これらを多様化するには限界があるということも指摘がされているわけで、やはり私は、今回の法改正を機に、競争的経費ではなくて、博物館予算そのものを増やしていくべきだということを申し上げて、質問を終わります。